ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

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二度見をありがとう


もうまめだです、第16話にもお越しいただき(ry


投稿が一週間に一度のペースという亀速度になってしまい申しわけないです。どうでもいいところで表現に悩んで……、みたいなところがあって


前書きもこれぐらいにしてどうぞ、つなぎの話なのでそこまでおもしろいことはおこりません、すみません


偶然か必然か

 

 

 

 錬金術なら、ジータ、やってみてくれないか!

 

 

 その言葉はみんなの耳に届かなかった。……俺が、言わなかったからだ。

 

 

 考えなくても気づかなくてもいつも隣にいた、それが普通だと思っていたのに。隣にいるべき人がいない、ただそれだけなのに。ただそれだけで俺は心臓ががぎゅっと握りしめられ、呼吸でさえも苦しくなった。

 

 場を沈黙が包む。俺が何も言わなくてもその場の全員がわかっていた。俺が何を言おうとして、なぜ口を閉ざしたか。そして、だからこそ、皆が何も言うことはできなかった。

 

 

「あ……あはは、カリオストロも潜入組に入れておけばよかったね。俺は錬金術は向いてないみたいだからなぁ……」

 

 

 ジータとは違って。

 

 

 苦し紛れの言葉に俺の心が返答する。そう、俺は錬金術も魔法も得意じゃなかった。魔法は苦心して人並み以上のものを会得したが、錬金術はからっきしだった。そして頼みの剣の腕ですら、俺はジータとほぼ互角の才能しかなかった。才能の差を感じ、伸び悩む俺がジータを少しの僻みとともに羨むのは当然だった。けれど、それに気づいたジータは平然と明るく言い放ったのだった。

 

「魔術が得意じゃないんだったらそっちは私に任せて、グランは剣術を極めればいいじゃん? 役割分担って感じだよ、だって私は……ずっとグランと一緒にやっていくんだからさっ!」

 

 それ以来ジータは剣術よりも、魔法の研究に勤しんだ。カリオストロの入団後は錬金術にも知識の幅を広げ、錬金術の開祖が認めるほどの錬金術師となった。そして俺もジータの言葉で不安を拭い、十天衆のシエテや剣の賢者アレーティアに認めさせる剣術の持ち主となったのだった……が。

 

 

「おいグラン、今はそんなことを言っていても仕方がない。この場に錬金術師はいない。ということは我々にこの壁をどうこうできないんだろう?」

 

「あぁ、すまない黒騎士。……そうだな、そっちの進路は黒騎士たちに任せる。ドランクの言っていた隠し扉を進むんでもいいし、他の道でもいい。オルキスもいるんだしリアクターの場所も一応わかるだろう? こっちにもルリアが……」

 

 タワーに入る前にルリアとオルキスの二人が妙に気になったのを思い出した。そう、何かに気づけていない……。この壁の役割は俺たちじゃなくてこの二人を分断するためのもの……?

 

「どうした?」

 

「……なんでもない。あぁ、こっちにもルリアがいるんだから大丈夫だって言おうとしたんだ。それじゃあ、俺たちは先に進むよ。黒騎士たちも、無事で」

 

 

 確率は半分半分なんだ。偶然に……決まってる。そう思い込もうとしても、のどに物がつっかえたように釈然としない俺の頭は混乱していた。そんな俺をみんなが不安そうに見るが、俺には何も言うことができなかった。壁の向こうの六人が遠ざかるのを聞き、俺たちも出発する。

 

 

 薄暗く迷路のような道はまだ続くようだった。

 

 

ーーー

 

「ほら~、やっぱりまだ開いてるね~」

 

 黒騎士ら六人は来た道を戻り、ドランクの言った隠し扉の前まで戻っていた。周辺には帝国兵の一個小隊が、全員意識を失った状態であちらこちらに倒れている。

 

「帝国兵はまだ気を失っているな。……リアクターの仕業じゃねえだろうな?」

 

「それはわからない。リアクターの対象範囲はこのエルステ帝国全域にわたる。無論、タワー内部も範囲内だろう」

 

「だとしたら宰相様の意識もリアクターにとられる可能性があるのか?」

 

「ゼロではない。だがあの宰相のことだ、悪魔が来ても意識は手放さないだろう」

 

「はっ!、あぁちげぇねぇな。それで、こっから進むのか?」

 

「あぁ、当たり前だ。我々の目的はリアクターを止めること。そしてそんなことは一人でだってできる。この中の誰か一人でもリアクターのある部屋に入り、止めることができれば我々の勝利だ。そのためには危険も犠牲も……承知の上だ」

 

「私もそれに賛成だ、今は時間が惜しい」

 

 スツルムが黒騎士に賛成し、迷わずに隠し扉の中に入っていく。黒騎士とオルキスがそれに続き、ドランクも肩をすくめてついていく。残されたオイゲンとラカムは数瞬逡巡したのち、敵の隠し通路に飛び込むのだった。

 

「なぁ、アポロ。もちろん、時間が惜しいのは分かるし、オレたちの行動にエルステの全住民の命がかかっていることもわかっているが、オレたちの勝利には必ずオレたち全員の無事がなくちゃいけないんじゃねぇか」

 

 オイゲンの言葉が狭い通路に反響して響いていく。

 

「ふん、貴様らの実力は数だけでしかない帝国兵におびえるようなものだったのか? どうやら私は貴様らのことを過大評価していたようだ」

 

 それだけを口にし、黒騎士は足を緩めず進んでいく。

 

「オイゲン、黒騎士ってああ見えていいとこあるよな」

 

「あたりめぇだ。オレの自慢の娘だぜ?」

 

「蛙の子は蛙、ってか?」

 

ラカムが笑う。

 

「静かにしろ、敵の本拠地だぞ? 敵に見つかって戦闘になるのは時間の無駄だ」

 

 

 数分も立たずに一行は別の通路にたどり着いた。見た目にはさっきまで進んでいた広い通路と同じだが黒騎士にしてみれば初めてくる場所らしい。

 

 

「タワーの中に私の知らない場所がここまであったとはな……」

 

「うーんとねぇ、たぶん宰相さんは、精巧な偽の構造図を渡したんじゃないかなって。そうだオルキスちゃん、リアクターはまだ上かなぁ?」

 

「うん……、まだ上みたい。でも……、さっきより近づいてる」

 

「広い通路に出てきたはいいが、どっちに進むんだ?」

 

 目の前には左右に延びる道。曲がり道の途中にいるようで、どちらも先がほとんど見えない。

 

「悩んでいる暇はない。ここで間違えて間に合わなければ、我々にはそれだけの運しかなかったということだ」

 

「君たちから見て右に進めばいいんだよ。そうしたら君たちの目的の場所に着くことができる」

 

「ん?、て、てめぇはロキか!?」

 

 一人の少年が天井にできた空間の歪みから姿を現す。いつも隣に連れた青い星晶獣は連れていないようだった。

 

「ロキ?」

 

「あぁ、グランの故郷で一度会ったんだが、よくわからないやつでな。確かエルステ帝国初代皇帝とかって名乗っていたな。そうだ、あと星の民とも言っていたな」

 

「この中で会ったことがないのは君だけだね、アポロ。いや、黒騎士って呼んだほうがいいかな?」

 

「星の民で帝国の初代皇帝だと? そんな馬鹿なことが……」

 

「長くはない期間エルステに仕えてきた君ならそれなりに驚くかもね。でもさ、今はそんな事はどうでもいいんじゃないかな? 急いでいるんだからさ、ほら、早く行きなよ」

 

「あぁ。だが、なんで敵であるお前が俺たちに正しい情報を与えるって約束できる?」

 

「うーん、その質問は根本的に間違ってるね。まず、僕は君らの敵ではないし、エルステの味方でもないよ。僕はただ……楽しいものを見たいだけだ。フリーシアの計画が成功して君たちが悔しがる顔を見るのも楽しいと思うけどさ、多分君たちに正しい道を教えてあげたほうがもっと楽しいと思うんだ」

 

「腐ってるな……。おい、こいつは信頼できるのか?」

 

「信頼できるかは分からねぇが、嘘は言ってねぇみたいだ。前会った時も、連れていた星晶獣に近くの住民を喰わせようとしたが、ただただ自分のやりたいことだけをやりたいって感じだった。今回もその感じなら……」

 

「そうか。ならこいつの言った通りに進むぞ」

 

「ふふ、形だけは上司の僕に向かってこいつ呼ばわりなんて、君たちは本当におもしろいね。でも僕の言葉を信じてくれてありがとう、これでもっと面白いことが見れるよ。それじゃあ、楽しみにしてるからね」

 

 ロキは一行が自身の言った道を選び進んでいくのを、姿が見えなくなるまでずっと見ていた。

 

「君たちの目的は、フリーシアを止めること、それでいいんだよね?、ふふっ」

 

 その言葉は誰に聞かれることもなく、一瞬の煌きとともに一人の少年の姿はかき消える。

 

 

 

 

 

 ガチャッ。

 

 

 足を止めている暇はなかった。休んでいる暇はなかった。ロキの言葉が嘘か真か、それさえもわからなかったが、一行はそれを信じ、進んでいった。都合のいいことに帝国兵の急襲はなく、分かれ道も隠し扉もない通路は確実に侵入者を主のもとへと誘導して……

 

 しばらくの一本道は行き止まりと共に終わりを見せ、しかし古びた鉄の扉が静かに佇んでいて。黒騎士がゆっくりと握る取っ手は歴史を感じさせるようにひどくさび付き、ほこりをかぶっていて。けれどそれはスムーズに動き、扉特有の音と共に開いていき、明かりが六人を照らす。初めて聞く黒騎士の息を飲む音と共に一行の前に現れたのは。

 

 

「ごきげんよう、侵入者の方々」

 

 

 エルステ帝国宰相フリーシアだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 黒騎士たちと別れた俺たちは元いた道を進んでいたが、目の前に現れた一人の魔導士によって道をふさがれていた。今までの帝国兵と異なり、明らかな戦意も、敵と相対したときの焦りもないその男は、俺たちを待っていたかのように、たった一人でそこに立っていた。

 

「こんばんは、みなさん」

 

「あぁ。会ったばかりで悪いんだがそこをどいてくれないかな? 俺たちは急いでいるんだ」

 

「帝国に仕えているのに、それを裏切るような行為ができるわけないだろう? ましてや君ら全員は指名手配中の重犯罪者なんだ。そんな奴らを素通りさせるわけにはいかんでしょう」

 

「だが君は一人なんだぞ? 君だって多数を一度に相手するのは不利だとわかっているだろう?」

 

「一人……ああ私は君の言った通り一人だ。だが、一人がたった一人分の戦力しか持っていない、というのは違う」

 

 そういうと男は右手を上げ、その手に付けた指輪を禍々しく輝かせる。

 

「くっ、魔晶か……。全員武器を構えろ!、星晶獣が……なんだと?」

 

 カタリナが全員に声をかけるが、その声は星晶獣の出現によってかき消される。薄暗い通路を照らし出現した星晶獣の数は……12体。

 

「いいね、その絶望した表情! これでどうだい? これでも君たちは自分たちが数の上で有利だと言えるのかい?」

 

 男が嘲るように笑いながら手を振りかざす。それに従うかのように、リヴァイアサンが牙を剥いて突進し、コロッサスがその手に持つ大剣を構え、ティアマトが風のエネルギーを溜める。見たことのない星晶獣も何体かいて、そのすべてが攻撃態勢に入っている。

 

「くそっ、ライトウォール! グラン!、リヴァイアサンは私が止める、その間にみんなを避難させるんだ!」

 

 カタリナが魔法の防御壁を張り、抜刀した愛剣、ルカ・ルサに氷の波動を纏わせる。

 

「カタリナ、無茶だ!」

 

「今はこれが最善、だ?」

 

 カタリナの声が驚きとともに裏返る。猛進してきたリヴァイアサンがカタリナの張った魔法の壁にぶつかり、大きな衝撃音とともに跳ね返るのを皆が茫然と見ていた。そのまま首から地面へと倒れこみ、刹那光を放ってその巨体は虚空に消えた。

 

「これは一体……」

 

「カタリナ、ちょっと頼む。試したいことがあるんだ」

 

 そういって俺は艇から新しく装備してきた剣を構え、コロッサスに向かって突進する。振り上げられた大剣は俺の身長と同等、いやそれ以上の長さと大きさを持ち、一太刀で万物を両断する圧倒的な強さを秘めているかのように見えるが……

 

「はぁっ!」

 

 叫び声とともに振り下ろされた剣に自分の得物を思いっきりぶつける。手に伝わる衝撃はほとんどなく、俺の剣は薄い金属の板を切るかのように、コロッサスの剣を真っ二つにする。そのまま、身体に切りかかるとあっけなく星晶獣の身体は消失した。

 

「やっぱりな……」

 

「グラン、これはどういうことなんだ?」

 

「この子たちはいわば複製品、レプリカのようなものなのね」

 

 ロゼッタが納得したかのようにつぶやく。

 

「これだけの数の星晶獣をあんなに小さな魔晶で制御できるわけがないんだ。今この場に召喚された星晶獣の力は本来の星晶獣の足元にも及ばない、見た目だけの、張りぼてだ。ルリア、力を吸収できるか?」

 

「はい、大丈夫です! この子たち、私の呼びかけにも全く返事をしてくれなくて。自分の意志すら持たせてくれなかったなんて……」

 

 ルリアが星晶の力を使う。ルリアと召喚された星晶獣たちの身体がリンクしたように光り輝き、その巨体な姿がすべて消え去る。

 

「なんなんだよ、使えねぇ奴らだな。星晶獣っていってもこんなもんなのか?」

 

 召喚した星晶獣がすべて消え去るのを唖然とした様子で眺めていた魔導士の男は舌打ちをして吐き捨てるように言い、手にはめられた指輪を外し始める。

 

「何を馬鹿なことを言っているんですか? あなたは星晶獣の本来の力を知らないからそんなことが言えるんです」

 

「あぁ?、うるせえな。くそ、フリーシアめ、いいものをあげるって言っておきながらこんな偽物を渡しやがって」

 

 そう言い、外した指輪を地面に捨てた男はそれを踏み潰す。結晶が割れる音がわずかに聞こえ、一瞬の静寂の後禍々しい輝きがあふれ出す。

 

「う、うわぁ!、なななんだこれは……」

 

 バランスを崩し倒れこむ男の足元で、破壊され制御できなくなった魔晶が封印されていた星晶獣を吐き出し、まばゆい輝きとともに、神とも呼ばれる姿を顕現させる。比較的広い通路もその数々の巨躯にとっては満足のいかないものらしい。おしくらまんじゅうのようにひしめき合う姿を見るのがかわいそうになったのか、ルリアは無言でうつむき星晶の力を使うべく腕をのばす。

 

「ルリア、ちょっと待って」

 

「えっ、グラン?」

 

 ひしめき合う星晶獣の中に弱弱しくも地上に立つ姿が一つ。その姿に似合わぬ大剣を右手に携えた少女は感情のない瞳でこちらを見ている。

 

「なぁ、魔導士さん」

 

 俺はゆっくりと男のほうへと向かう。驚きで腰が抜けたのか、未だ立てないでいる男の前に立った俺はその首元に剣先を突き刺して、

 

「なぁ、どうしてお前の持っていた魔晶の中に星晶獣アネバルテがいたんだ?」

 

 ジータと瓜二つの姿をした星晶獣は、自身の名前に反応し、こちらを振り向く。

 

 

 

 




どうでしたか


タワー潜入組のみんなぐらいは何かしゃべってほしいと思ってメインストーリー見返してたら結構細かいんですね……

例えば一人称を、ラカムは「俺」で、オイゲンは「オレ」だったり、
黒騎士は「貴様」、「私」、「我々」を使ってたり……

もう少し後の話になりますが、最終話を投稿した後、こういった口調だとか誤字脱字、展開とかを全話修正して、そのあとエピローグを投稿しようと思ってます。今までの話にも違和感あるところはあるかと思いますが、いずれたぶんきっとおそらく修正しますので……

さすがにビィが自分のことを「俺」って言っているところがあって修正したけど

というわけでありがとうございました、少なくとも一週間以内に投稿します


また次話も、よろしくお願いします。


↓残りは感謝の言葉です、見たい方だけどうぞ


先週15話投稿して、いつも通りどんな感じかなって夜に確認してみたら、UA数がすごいことになっていて、思わず二度見しました

( ゚Д゚)

こんな顔で。

いろいろと調べていたら日間ランキングに載っていました。

こんなこと初めてだったのでとても驚いたし、うれしかったです。

そのまま次の日ぐらいまでランクインしていたようです、ありがたいことにUA、お気に入り数共に2倍ぐらいになっていました。


これも皆さまのおかげです、本当にありがとうございます。稚拙な文章ながら、最終回までもう少し、満足できる文章を書いていこうと思うので、よろしくお願いします


とても励みになります、本当にありがとうございました。

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