ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

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団イベが忙しくて……


どうもお久しぶりです、第15話にもお越しいただきありがとうございます。


2週間ほど暇だから完結させるといったな、あれは嘘になりそうだ!


団イベで疲れ切った心に、闇堕ちジータちゃんはどうですか?(少ししかないけど)


てなわけで、どうぞ!


お土産

 厚さが腕の長さほどありそうな鉄の壁は、真上に落ちてくれば軽々と生き物の命を散らすことができる重量感がありながら、きれいに俺たちのいない一直線上に落ちてきた。まさに自らの役目が道を分断するただそれだけであるかのように。地面との衝撃音が壁に跳ね返りながら遠くまで響いていく。向こう側でも同じように響いているのだろうか。

 

 

「いよいよ鉄の壁まで降ってくるとは、この建物は全くどんな構造になってるんだ?」

 

 向こう側からオイゲンの声がする。何とか話はできるようで安心するが、ネズミ一匹通さないように作られたのか、壁や地面との間に隙間は全く見られなかった。

 

 

「オイゲン!、そっちのみんなは大丈夫か?」

 

「グランか? あぁ、大丈夫だ、六人全員無事だ!」

 

「そうか、よかった!」

 

 こちら側の全員も無事だった。カタリナがルリアの頭をなだめるように撫で、それをビィがすこし心配そうに見守り。イオが腰が抜けたかのように茫然と座っているのを見て、ロゼッタが大丈夫かと歩み寄り。リーシャはいち早く立て直したのか、壁を見仰いでいる。

 

「だがグラン、これからどうする? ただでさえ少人数で侵入したのに、分断されちまうとはよう……」

 

「やることは変わらない。リアクターを停止させ、フリーシアの計画を止めさえすればいい」

 

「そうだな、黒騎士。分断されたのは事実だが、物は言いようだ。二手に分かれて行動するのと同じだろ? こんなにバカでかい建物なんだ、そっちのほうが効率がいいかもしれない」

 

 

 この会話もすべて帝国軍に盗聴されているかもしれない。フリーシアの思惑が何なのかはわからないが、分断されたことで精神的にダメージを受けているとみられるのは嫌だった。でも、どうしてこのタイミングで、それも分断? フリーシアにしてみれば俺たちがタワーに侵入していることさえ嫌なはずなのに、足を止めさせるんじゃなくて、分断で終わらせるなんて……。

 

「俺たちのほうは先に進めばいいが、オイゲンたちはどうする?」

 

「そうだな、戻ってほかの道を行くしかねぇだろうな……」

 

「それならさ、ほら、裏道を進むっていうのはどうかなぁ~」

 

 ドランクがふと思いついたように口をはさむ。

 

「裏道? 街でもないんだし……」

 

「違う違うって~。ほら、急に敵さんが壁の隠し扉から出てきたことが何度かあったじゃん? あの道を進んだらさ、敵さんの懐に潜り込めるんじゃないかなぁ、って思ったんだけどね」

 

「……なるほどな、ドランクの言うこともわかる」

 

「もう、スツルム殿~、もっとはっきりほめてくれてもいいのに……って痛っ!、スツルム殿ォ、空気読んで!」

 

「……そのやり取りはどこでもやるんですね、ふふっ」

 

 リーシャがすこしあきれたように笑う。けれど、そのやり取りのおかげで緊張がほぐれたのも事実だった。

 

 

「ドランク、それはいい考えだと思うけど。でも、もし隠し扉の先が帝国兵たちの巣窟になってたらどうする? タワーにいる全帝国兵に会うことになるかもしれない」

 

「うーん、それも確かにあり得るねぇ。でも、それはつまりリアクターに近づける最短経路っていう意味じゃない?」

 

「うん……、あれ、でも黒騎士たちってもともと帝国側にいたんでしょ? タワーの構造に詳しくはないの?」

 

「全部知っていると思っていたが、どうやら思い違いだったようだ。フリーシアに渡されたタワーの構造図にはこんな隠し扉や罠は載っていなかった。まぁもともと私を利用する算段だったんだ。手の内を明かさないようにしたんだろう。今進んでいるこの道がどこに通ずるのかはわかるが、隠し扉の先は全く分からない」

 

「そうだったのか……そうだ、カタリナは?」

 

「私も黒騎士と同じだ。それに私はタワーの内部に入ったこと自体あまりなかったからな……」

 

「最悪、ドランクの案を採用するしかないか……、リーシャ、壁は壊せそうか?」

 

「無理そうです。厚さがそれなりにあるので、私たちの武器だと逆に傷めるだけですね。専用の武器がないと突破は不可能だと思います。……魔法ならわかりませんけれど」

 

「そうか。イオ、魔法でどうにかなるか調べてみてくれないか?」

 

「うん、分かったわ」

 

 イオが立ち上がり、壁のほうへ近づく。ロゼッタも気になったのかその横に立って壁に手を触れている。

 

「うーん、ごめん。無理だと思うわ。耐魔法用の結界が壁の表面を覆っているみたいで、魔法で突破するにも時間がかかりすぎると思う。それになんだか、それだけじゃないみたいで……」

 

「イオちゃんにはわからなかったかしら? グランさん、どうやら耐錬金術用の結界も張られているようね。でもエルステ帝国は随分と腕の悪い錬金術師を雇ったようだわ。初心者の私でもわかるほど、耐錬金術の結界はお粗末ね」

 

 

「ロゼッタありがとう! 錬金術なら……」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ははっ、あははは、はーぁ、もうおしまいなの二人とも? 最強にして開闢の錬金術師だっけ? 蒼天の総てを掌る最強の剣士だっけ? どうして二種類の最強がここに集っているのに、私は全然楽しめてないのかなぁ、ねぇ、なんでかなー?」

 

 

 少女の前には、伝説とも謳われる二人がその身に無数の傷を作り、荒い呼吸をして立っていた。一方はその手に半分に折れて使い物にならない杖を持ち、もう一方は自身の持つ三千の武器の大部分を失っていた。それでも、かつての仲間を助けようと奮闘する二人をジータは鼻で笑い、その後ろから近づいてくる人物を見て残念そうにつぶやく。

 

 

「あぁ、楽しい時間も終わりみたいだね、ねっ、ガンダルヴァ中将」

 

 

「……くそっ帝国兵か」

 

 

 百人ほどの帝国兵を引き連れ、その手に背丈ほどもある長剣を持ち、悠々とガンダルヴァが近づいてきた。ジータの顔を一瞥したガンダルヴァは、満身創痍になっている二人の顔を見て少し驚いた表情をした後に口を開いた。

 

 

「ところで思ったんだが、オレ様はお前さんのことをなんて呼べばいいんだ? 軍の規律だとか立場だとか面倒くせぇんだが、一応な」

 

「ん?、別に気にしないから、何でもいいよ」

 

「そうか、よかった。まぁ、お前はオレ様よりもずっと強いみてぇだから、様をつけて呼んでも良かったんだがな。……そんな話はいいとして、一応任務だからなぁ、伝えておくぞ」

 

「どうせフリーシアからのでしょ?」

 

「はははっ、まぁそれしかないよなぁ。その通りだ、お前の昔の仲間が所定の場所までたどり着いた。分断も直に成功するだろうから戻ってこい、だってよ」

 

「はーい。私も一応楽しめたし、グランへのお土産ももうできるし、戻ろうかな」

 

 

「それでよぉ……」

 

 

 不意にガンダルヴァの表情に笑みが浮かび、今だ疲労を回復しきれていないシエテを顎で指す。

 

「これでオレ様の役目は終わったんだが、この後は自由にしていいか? 街に言伝に行くっていうくそつまらねぇ任務に飽き飽きしていたら、全空に名を轟かせる剣士様がいるじゃねぇか。お前の人脈の広さにはあきれていたが、今回ばかりはオレ様も腕が鳴るなぁ。なぁジータ、こいつの処理はオレ様に任せてくれねぇか?」

 

 

「シエテを? あぁそっか、ガンダルヴァは戦闘狂だもんね。でも、もうこんなにぼろぼろにしちゃったし、シエテの首をグランへのお土産にしようと思ったんだけど……」

 

「お土産ならそっちの小娘でいいじゃねぇか?」

 

「カリオストロを? うーん、いろいろと問題があってね、カリオストロだと意味がないんだよね、うーん……ん? ふふ、私いいもの見つけちゃった」

 

 顔一面に浮かんだその笑みは強者として知られるガンダルヴァでさえぞっとさせるものだった。

 

「ガンダルヴァ、あなたたちがやることはただ一つ。そこの二人が私を止めようとするのを止めること。手段、生死は問わないから」

 

「じゃあシエテは?」

 

「好きにしてどうぞ」

 

「あぁ、感謝するぜ。で、お前は?」

 

「お土産を仕留めにいくんだっ」

 

「お土産? あぁ、そういや俺たちの姿を見てこそこそとついてきた小娘がいたな……」

 

「うん、その子。だからさ、ちょっとどいて?」

 

「えっ……あのバカ、何で戻ってきたんだ……!」

 

 

 ジータが狙いを定める方を見てカリオストロが絶望したようにつぶやく。すぐさま不完全な杖を振ろうとするが、目の前には大勢の帝国兵が立ちふさがっている。

 

「くそ、ごみが! おい、お前らとっととそこをどけ!」

 

「おいおい、かわいい嬢ちゃんがそんな言葉を使うんじゃないよ? ほら、俺たちのいうことを聞いて、そうしたら痛くはしないからさ」

 

「今はお前らに構っている暇はねぇんだ! あとでいくらでもウロボロスの餌にしてやるから、くそ、シエテは………」

 

 カリオストロの視線の先ではシエテの目の前でにんまりと笑うガンダルヴァがいた。

 

「おいシエテ、オレ様はガンダルヴァという者だ。いや、名前なんでどうでもいいな。今オレ様は無性に興奮している、だってなぁ、全空一の腕を持つともいわれる剣の名手で、十天衆の頭目に偶然出会えたんだからなぁ! なぁ、すこし手合わせを頼むぜ?、お前ならその程度の傷どうってことねぇだろ!」

 

「その程度の傷とは、言ってくれる……。エルステ帝国中将ガンダルヴァ、その戦闘狂ぶりは俺の耳にも入ってきているがこれほどとはな。だが、今お前に構っている暇はない……俺たちは、助けないと……」

 

「助ける? 何をだ? 獲物はもう、仕留めたみたいだが?」

 

 

 砂埃が舞っている。カリオストロとシエテの視線が重なるがその場所には人影はない。血の気が引き、顔が青ざめる二人の耳に響くのは、途中で途切れた甲高い悲鳴に続くくぐもった苦痛の声、そして静寂だった。

 

「ク、クラリス! おい、どけ!」

 

「それはできない相談だね。俺たちは君たちを止めるように指示を与えられたんだからさ。おい!、結界を張るぞ!」

 

「くそ、本調子ならこんなやつら数秒で始末できるんだが……くそ! シエテ!、お前だけでも……」

 

「そうはいかねぇんだよなぁ。シエテはオレ様の獲物なんだ。それにオレ様もお前たちをこの場に留めておくっていう任務があるしなぁ!」

 

 

 ガンダルヴァの大剣がシエテに振り降ろされる。その頭上にはシエテ、カリオストロ、そして帝国兵を包むようにドーム型の結界が張られ始めた。敵味方もろとも閉じ込め、誰も出さない意図のようだ。

 

 

「シエテ、カリオストロ。あなたたちは殺さないであげる。死んだらそこで終わっちゃうんだよね、怒りも後悔も絶望も全部なくなっちゃう。でも、生きてればさ、まだそういった感情は心をいつまでも痛めつけてくれるの、ふふ、それってすごく素敵だと思うんだ!」

 

 

 夜空に少女の声が響く。

 

 

「伝説とも呼ばれながらたった一人を助けることもできない自分の未熟さを死ぬまで恨むことね。あぁ、そういえば朗報だけど、クラリスはまだ死んでないんだ。ちょっと痛めつけて気を失わせてあげてるだけ。だってさ、ふふっ、あははははははは……」

 

 

 長い長い笑い声は、街中の悲劇とはかけ離れた狂喜さをたたえて。

 

 

「グランの目の前で殺してあげたほうがずっと面白そうじゃない? 代わりに俺のことを殺れとかさ、お願いだからやめてくれって私にお願いするの。それを無視して、苦痛を与えて、嬲って、虐げて、それで……、あぁぞくぞくしてきちゃった……。じゃあね、二人とも、せいぜい余生を楽しむことね」

 

 

 結界が完成し、二人の伝説は街と完全に断絶される。急に静かになった街にはいまだに誰かの悲鳴、叫ぶ声が飛び交っている。そして、街の喧騒の一つに、鼻歌を歌い、何かを引きずって歩く者の音が加わるのだった。

 

 




どうでしたか?


一応念を押しておきますが、クラリスが嫌いだとか、逆に好きずぎて痛めつけてるだとか、そんなことは全くありません!

もともとカリオストロは出す予定でして(錬金術使えるから)、よくわからないけれどいつの間にか二人組行動になってて、

じゃあカリオストロといっしょに行動するのはクラリスだ!

あれ、なんでクラリスをこんないじめてるんだ?


ってなってます。クラリス好きな方申し訳ありません……


というわけでジータちゃん街に遊びに行く編(?)終了です、あとはタワーで……


また次回もよろしくお願いします! あと、評価のゲージ(?)に色がついててとてもうれしかったです! 高評価ありがとうございます!

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