ジータちゃんが闇堕ちしたら……   作:もうまめだ

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よく見る展開だけど、いいよね?


もうまめだです、第13(ry


カリオストロっぽい視点でお送りしますが、一人称がずっと「オレ様」だとなんか書きづらい……

あと独自設定(もしかしたら公式設定)使ってます、どっちだったっけ

というわけでどうぞ


魔法vs魔法

 

 

 

 くっそ、一体どうなってやがるんだ?

 

 もう何回目だかわからないが、疲労しきった腕を動かしウロボロスを振って九種類の魔法を放つ。そのどれもが波長・周期はもちろん、属性、性質、付加効果が異なり、瞬間的に空中を滑るように飛んでいき、対象を指定した今、回避することはできない。今まで出会ったどんな錬金術師や魔術師でさえ、これらの魔法の性質を一瞬で理解することはできなかった。つまりそれは魔法や錬金術でこのオレ様の魔法に対処できた奴はいなかったってことだ。一発一発がこのエルステ帝国の街並みを半壊させるほどの威力を持ち、間違えて家屋に当たってしまった暁には、そこを中心として人も物もまるで存在していなかったかのように消し去り、あとには灰の臭いと巨大なクレーターしか残さないだろう。それなのに……

 

 

 ジータが掌から出現させた小さな光球は、空中へ高速で飛び出したかと思うと、オレ様が放った魔法とぶつかり、元の威力とはかけ離れた小さな爆発を起こし、消失した。属性も付加効果もまるでなかったように、あっさりとオレ様の魔法を処理していく。

 

 

「カリオストロ、もうわかったでしょ? カリオストロの錬金術はもう私には通用しないの。あなだが、錬金術のすべてを私に教えてくれたおかげでね」

 

 ジータの身体が揺らぐ。くっ、またか。

 

 オレ様は空間に三重の結界を張り、さらに二人分の高硬度金属でできた盾を錬成、物理法則を無視したかのような高速で突っ込んでくるジータの攻撃の威力を少しでも減らそうと努力するが、それらもすべてが焼石に水と思えるほどジータの攻撃は圧倒的だった。

 

 狙いは……クラリスか、よし……

 

 時それ自身でさえも、時間が経ったと気づかないほどの極薄い時間の間に、ジータの剣先の方向を確認したオレ様は錬金術で魔法を生成し、クラリスとジータの間の空間に多数設置していく。透明なそれらの罠は目をこなしても誰も気づけないほどに光を透過し、空間に馴染んでいる。けれど何も気づかずにそこを通ろうと思えば、命はおろか、肉体でさえ欠片も残らないだろう。

 

 揺らいだジータの身体が霞み、空間を疾る。剣先をまっすぐクラリスの首に向け、一直線に飛んでいく。今度こそという願いはたやすく破られ、結果は何度も見てきたものと変わりなく、オレ様が仕掛けた罠はすべて作動せず、ジータが通った後にはその存在ごと消し去られた。三重の結界はまるでごく薄い氷壁のように破られ、金属盾は泥でできていたかのように砕けた。まぁ、結界も盾も目くらましの役目は果たせたようだ。盾が泥のように砕け散るその瞬間にクラリスの下の地面に穴を生成、重力だけでは間に合わないため、その穴内の気圧を一気に下げてクラリスの身体を引きずり込む。

 

 間一髪といったところだろうか。剣を携えたジータの身体はクラリスのすぐ頭上を飛び去った。その速度故、ジータの身体に少し触れてしまうことでさえ大怪我に変わる今、致命傷は何とか避けだようだ。だが今のクラリスにとっては、ジータが過ぎ去った後の疾風でさえ大ダメージのようだが。

 

 

 端的に言えば、オレ様たちはやばい状況だった。

 

 

 正直、最初はジータとの戦闘を舐めていた。性格も人格も変わったとはいえ、ジータには封印を解いてくれた恩があり、最近では珍しい才能のある弟子であり、仲間だった。だから最初は、片足の欠損ぐらいで戦闘不能にしてやろうぐらいの意気込みで、魔法の威力も今の千分の一ぐらいだったか。クラリスも全力でやるとは言っていたが、やはり元団長だからだろう、爆発の威力はそれほどでもなかった。

 

 

 けれどジータは違った。

 

 

 オレ様の手ごたえのない魔法とクラリスの爆発を、まとわりつく羽虫のように軽々と振り払うと、消えた。気が緩んでいた俺の目には跡を追うこともできず、気づけばクラリスの右肩にグランの剣の先を突き刺していた。

 

 

「えっ?、う、うわあぁあ……」

 

 すぐにウロボロスを召喚したオレ様はジータに嚙みつかせ、クラリスから引きはがそうとする。しかし、ジータが掌に出現させた光球をウロボロスに投げたかと思うと、構成原子がばらばらになったようにウロボロスの身体が崩壊し始めた。

 

「なんだと……、ウ、ウロボロス!、杖に戻れ!」

 

 ウロボロスを一度杖に戻したが、ジータが何をしたかは理解できなかった。

 

「ジータ、おまえいったい何を……」

 

「そんなこと言ってる場合なのかな? この剣を左に薙ぎ払えばクラリスは死ぬよ?」

 

「ジータ……、本気なの?」

 

 体に力が入らないのかクラリスが膝から崩れ落ちる。その肩からは血が流れ落ち、地面に溜まっていく。

 

「嘘だよクラリス、本気なわけがないでしょ、ごめんね?」

 

 剣がゆっくりと引き抜かれ、それと同時に流血の量も増える。その顔には笑顔がへばりつき、目は笑っていなかった。さーっと鳥肌が肌を流れていく。

 

「この、くそ野郎が! それでも団長か?」

 

「元団長でしょ、カリオストロがさっき言ってたじゃん?」

 

 クラリスから少し距離をとったジータは剣を振って血を振り払う。その滴が白銀の衣装に染みを残し、クラリスの顔に当たり、地に痕を残していく。

 

「もう二人とも分かったでしょ? 今の二人の攻撃は本気じゃなかったね? だから私も本気でやらなかったんだ。やろうと思えば今の一瞬で二人の頭を地面に並べることだってできたのにね……。でも二人から受けたものはこんなんじゃ足りないからさぁ、二人の身体でもう少し私を楽しませてねぇ!」

 

 

ーーー

 

 荒い息を整え立ち上がる。隣にはさっきから身動きを一切見せない少女が穴に下半身を埋めたまま俯いている。死んだか、と思ったが微かに息をしているようだ。柄にもなくほっとする。

 

 オレ様一人なら何とかなったんだがな。一人手持ち無沙汰がいるだけで戦闘の幅はぐっと狭くなる。

 

 第一オレ様が本当の意味で死ぬ恐れはほとんどない。精神は一つ上の次元に保存してあり、身体もスペアが誰も知らない場所に保存してある。死ぬ寸前に保存してある精神に記憶を保存し、それをスペアの身体に移してやればまた活動を再開することはできる。だから死ぬことは怖くない。封印は話が別だ、あれは記憶の保存やらなにやらができなくなるからたちが悪い。

 

 だが仲間がもう一人いるとそうもいかなくなる。オレ様が死んだら何をどうしてもクラリスも殺されるだろう。オレ様は生き返るがその他の人間はそうはいかない。だとしたらあとでグランに会うオレ様が気まずいだろうが。

 

 だから何としてでもここは生き残ってクラリスを守ってやらなくちゃいけねえ。一応でかい爆発も何度か起こしたんだ、他の団員達が気づいてくれればありがたいんだが、何しろ帝都は広いからな……

 

「ずいぶん楽しそうだな」

 

「うん、すごく楽しいね。他人を嬲り殺しにするっていうのはほんと気持ちいいね」

 

「いつの間に随分と趣味が悪くなったんだな」

 

「何を言っているの? 最初はそっちが私に対して始めたんじゃん。 カリオストロは私の身体を……」

 

「だからそれは一体何の話なんだよ? 第一そんなことしてたら何でお前は今五体満足なんだ?」

 

「……えっ?」

 

 オレ様の言葉を聞いて初めてジータの顔が引き攣る。何か気に障ったことを言ったか?

 

「うるさいなぁ。グランもルリアもうるさかったけど、カリオストロも一緒なのね。夢の中で私が仲間だと思ってたみんなで、私のことを嬲って傷つけて……」

 

「夢? なんだお前、自分の見た夢のなかでされたことを逆恨みしてるってわけか?」

 

「何を言ってるの? 夢?、だってここは現実でしょ……あれ、ここが現実なんて分かってるよ、え……じゃあ夢って……ワタシハ……うぅああっ!」

 

 くぐもった声と共に急にジータが苦しみだした。以前格下の錬金術師に幻覚の魔法をかけて自己矛盾に陥れたことがあったが、あのときも同じように苦しんでいた。もしかしてジータは……

 

 そのまま続いてくれれば好都合だがそうもいかず、すぐに仮面のような身震いのする微笑みを顔にはりつけて笑う。

 

「ふふっ、そんなことどうでもいいんだった。私は私の恨みを晴らせばいいんだよね、うん。そろそろ戻らなくちゃいけないから決着をつけようか。カリオストロはどうせスペアの身体と精神があるんだよね、だからまぁいいや、カリオストロは助けてあげるよ。でもね、クラリスはだめだねぇ!」

 

 ジータの身体が揺らぐ。またか、でも今度は本気だ。なけなしの結界をすぐに張り、今度は盾を一人分しか用意しない代わりに強度を高める。さらにクラリスの身体にも防護壁を纏わせ、衝撃が伝わらないように最善を尽くす。

 

 この攻撃が終わったら死に物狂いで逃げるぞ、だから耐えろよ……!

 

 

 しかし、ジータのほうが一枚上手だった。 

 

 

 白雷のごとき速さで向かってくるジータの狙いはクラリスではなかった。寸前まで剣先はクラリスを向いていたため油断していて、急な方向転換に身体が追い付かない。結界は二人を包んでいるため効果はあるが、いつものように軽々と壊されていく。何とか錬成した金属盾も砕かれ、身体をひねり直撃を避けようとしたがうまくいかず剣先が軽く首に当たる。小さな切り傷ができたのが感じられるがこのぐらいの傷なら……ん?

 

 

 手に力が入らない。いや手だけじゃない、身体全身に力が入らない。重心をうまく保てずうつ伏せに倒れたオレ様は死刑執行人がだんだんと近づいていくその足音を聞くことしかできなかった。

 

 この状況はやばすぎる。以前封印された時も身動きを止められたんだった。あの時は麻痺を付加した魔法だったが、その時の教訓もあって麻痺魔法に対する耐性も、物理的な麻痺毒に対する耐性も付けたはずだが……

 

 

「惨めなカリオストロ……。そのままだと何も見えないだろうからちょっと待ってね」

 

 何かが錬成される音が聞こえ、そのすぐ後に身体が持ち上げられ、何かに座らせられる。首にも力が入らないため首の座っていない赤ん坊のようになっているのが気に障るが、首を固定する部分も椅子にはついているみたいで、妙に居心地がいい。椅子の前には疲労とダメージによって動くことも声を出すこともできないクラリスが微かな輝きしかない瞳をこちらに向けている。

 

「それにしても何が起きたかわからないって顔だね。ふふっ、今教えてあげるよ。っていっても大体はカリオストロも知ってる話だね」

 

 オレ様の知っている話?

 

「まず今カリオストロの身体を縛っているのは麻痺魔法。正確には麻痺を付加した爆発魔法」

 

 だから麻痺魔法に対する耐性は完璧なはずだ。それに爆発魔法とはどういうことだ?

 

「まだわからないかな? じゃあヒント! ヒントはねぇ、クラリスの魔法なんだ~」

 

 こいつの魔法? 確かこいつはオレ様の子孫だったはずだが……

 

「クラリスの家は、そのご先祖様がカリオストロなんでしょ? それで何でかわからないけれどカリオストロを始末したがってたじゃん。その中で生みだしたのが、カリオストロの魔法に対して致命的にまで効く爆発魔法だったんだ」

 

 ……どういうことだ。

 

「カリオストロの錬金術もクラリスの錬金術も基礎は同じ。でもクラリスの錬金術はカリオストロの錬金術に対抗するためだけのものだったんだ。カリオストロのが光だとしたら、クラリスのは闇って感じだね。その効き目は絶大で、さっきの高威力のカリオストロの魔法も軽々と相殺して消し去ることができるんだ」

 

 それでオレ様の魔法が全く効かなかったのか……

 

「そしてカリオストロは自分の身体を自分の錬金術でいろいろと改良していたでしょ。だから身体そのものにもクラリスの錬金術は絶大な効果を発揮するってわけ。もうわかったでしょ」

 

 クラリスの爆発魔法に麻痺を付加してそれを剣先にくっつけ、オレ様にぶつけたというわけか。

 

「クラリスも優しくてね、錬金術を教えてっていったら教えてくれてね。その時に気づいたんだ、カリオストロの唯一の天敵がクラリスだってね」

  

 すぐ横でしゃべっていたジータがクラリスのほうへと歩いていく。いつの間に抜いていたのか左右の手に一本ずつ剣を持ち、それをクラリスの頭の前で交差させる。

 

「よかったね、カリオストロ。あなたの天敵はこれから私の手で抹殺してあげるよ。うれしいでしょ? ふふっ、仲間の首を持っていったらグランは喜ぶかなぁ」

 

 何もできない自分に怒りを覚えた。感覚さえも麻痺しているせいでうまく魔法を練ることができず、ただ目の前の光景を記憶する機械のようだ。

 

 もっと警戒していれば……。もっと早めに逃げていれば……。オレ様は死んでも大丈夫なんだから、命を懸けてクラリスをほかの団員のところに連れていくべきだった。くそ……

 

 

 

 ごめん……

 

 

 

 

 彗星が見えた。目の機能さえ麻痺したのかと思った。上空を飛ぶ二対の星。青白く輝く尾を引き、彗星はこちらに向かってくる。そして……

 

 

「ちっ」

 

 

 ジータも彗星に気づいたようだ。一度は剣を薙ぎはらってから避けようと考えたようだが、思った以上に彗星は速かった。ジータが宙返りをして後方に飛んで避けるがまるで意志を持つかのように彗星は執拗にジータを追っていく。

 

 その時やっと気づいた。これは彗星じゃなくて、剣?

 

 

「ディエス・ミル・エスパーダッ!」

 

 

 どこからともなく無数の剣が飛んでくる。それらは剣の形をしているが実体はエネルギーの塊のように青白く光り、尾を引きながらそのすべてがジータを狙うがごとく刃先を向けている。

 

「どうしてみんな邪魔するの! みんながやったことでしょ! もう……クラリスだけでも……エーテルブラスト!」

 

「ユエルちゃん急いで! 陸ノ舞!」

 

「「雲龍!」」

 

 ジータから放たれた高密度の魔法の輪が正確にクラリスを狙っていく。しかし突如地面が燃え上がり、そこから狐を模した炎が立ち上る。魔法の輪がそれに直撃し、火の粉を散らして霧散する。爆炎が晴れ、見るとクラリスにはダメージがないようだ。

 

「フュンフ、クラリスとカリオストロの傷を手当てしてあげて。 俺はジータに用がある」

 

 姿を現したのは、穏やか表情に違和感を感じさせるほど目を怒らせた、空の世界における最強の剣士、十天衆のシエテだった。

 

 

 




どうでしたか


ソシエちゃん声だけだけど登場、やったー!


次の話までまた日が開きそうです、申し訳ないです。


感想ありがとうございました、とてもうれしいです!


というわけで次の話もよろしくお願いします!

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