新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さて、今回は短編のお話ですが、少し重たいかもです。よければどうぞ。
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「うーん、今日もこれで終わり!」
私、雪ノ下陽乃は今日の講義を終え帰宅途中だった。とは言っても単位はほぼとれているためゼミだけだが。
「さて、今日はもう遅いからあれだけど、明日はまた雪乃ちゃんのところにでも行こうかな?」
私の妹の雪ノ下雪乃は私と同じくらい可愛い。前は私に対してもあれだったが、最近は少しずつ話をしてくれる。家が家だけに仕方がなかったこともあるが、とても嬉しい。
そんな妹の雪乃ちゃんだが、彼のおかげで変わってきた。
「それと比企谷君もいじりにでも♪」
比企谷八幡、妹の同級生で同じ部活の男の子だ。独特の価値観を持っており、ある意味常識が通用しない。男の子なので私の胸を見て顔を背けることもあるが、私に向かってこれる存在。
私や雪乃ちゃんなどが考えつくことができない、あるいは考えついても実行するなんて思わないことをしてしまう子。
自分のことなんて後回し、その場で何が最適か見分ける驚異の観察眼。
私が長年家族以外には見抜けなかった仮面を見破ったのは驚いた。
でも、同時に嬉しくも思った。
なぜなら偽りのない私を、雪ノ下陽乃を見てくれていたから。
だから彼のことが気になって、会いたくなって私は彼の元に行く。
こんなことは初めてだけど悪い気はしない。
「明日はどんなことをしてからかおっかな?」
そんなこんなで浮かれていたのか、私は気づかなかった。
前からくる自動車に
「えっ…」
死にそうになっている状況だからだろうか、これまでの思い出が頭の中で次々と流れてくる。そして最後に現れたのは妹と彼の顔。
「雪乃ちゃん、比企谷君…」
意識せずに呟いたその言葉の後、私は強い衝撃に襲われ意識を手放した。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ゆきのん〜、ここわからない!」
「そこはさきほど教えたところよ。ほら、この場合はどの公式を使えばよかったのかしら?」
「んー?あー!たしかこれ!」
「そうよ、きちんと考えればできることなのだから焦らずやっていきましょう」
「うん!ゆきのんありがとう!!」
「由比ヶ浜さん少し暑苦しいわ」
今日は奉仕部で由比ヶ浜の勉強を雪ノ下教えている。俺、比企谷八幡はそんな様子を少し遠くから見ながら読書中である。
…にしてもこれはどこまで続くんだ?終わりが見えないんだが。新約30ぐらいまでいくのか?
「ヒッキー、クッキー食べる?」
「なんだ?お前の作ったのだったら今からお腹が痛くなる予定だから無理だぞ?」
「ち、違うし!駅前で買ってきたやつだから!ってなんで私が作ったクッキーだったらお腹痛くなる予定とか意味わかんないし!」
いや、だってお前のクッキー食ったら間違いなく大抵の人はお腹痛くなるだろ。これは嘘じゃない、経験談だ。
「そうね、私もあれは遠慮したいわ」
「ゆきのん!?」
「ふふ、クッキーなら紅茶でも入れましょうか」
「うん!ありがとうゆきのん!」
「頼む」
雪ノ下は雪ノ下で最近、姉、陽乃さんのほうとも仲良くなっているみたいだ。あの人のことだから雪ノ下で遊んでそうだが、なんだかんだいっても姉であることに変わりない。
というかあの人過保護、いやシスコンだし。
雪ノ下も長年、苦手だった姉となるのは最初はかなり戸惑ったようだが、嬉しそうでなりよりだ。
そうしていつもどおりの日常が過ぎ去っていくものだと思っていた。
ここまでは
それはある一本の電話だった、雪ノ下の携帯にかかってきたある一本の電話。これが始まりであった。
「あ、ゆきのん電話鳴ってるよ?」
「誰かしら?こんな時間に…」
「知らない番号なの?」
「ええ、間違い電話かしら?それともいたずら?とりあえず、こんなのは放っておけばいいわ。必要ならまたかかってくると思うから」
「まて、雪ノ下。今、調べてみたらその番号…病院みたいだぞ?」
「病院?…まあ、一応出てみるわ」
ピッ!
「はい、もしもし…」
「はい?ええ、雪ノ下陽乃は私の姉ですが…」
「はい、はい…、え…」
「雪ノ下?」
「ゆきのん?」
電話をしていた雪ノ下が携帯を落とした。俺と由比ヶ浜は何事かと思って雪ノ下を見るが、当の本人は心ここに在らずという様子だった。
「雪ノ下どうした?何があった?」
何かとは言わない。何かあったことは雪ノ下の様子から一目瞭然であるからだ。由比ヶ浜もそんな雪ノ下を心配そうに見ている。
雪ノ下は俺の言葉ではっとし、こちらを見た。少しずつだが、こう言った。
「ね、姉さんが…姉さんが、事故にあって…救急車で運ばれた…病院から連絡が…」
「雪ノ下さんが!?」
「ゆきのんのお姉さんが!?」
俺と由比ヶ浜がそう聞き返すと雪ノ下はゆっくりだがうなづいた。姉が事故にあって動揺しない家族はいない。きっと入学式のときはあの人もかなり雪ノ下のことを心配していたと思う。と、こんなことは今は関係ない!
「雪ノ下、その病院はどこだ。今すぐ向かうぞ」
「え…」
「そうだよゆきのん!家族なんだからすぐに行ってあげなきゃ!」
「そうだ、妹のお前が行かなくてどうする。俺なんて小町が運ばれたんてしたらすぐに飛んでいくぞ?」
「ええ、ええ…、そうね行かないと、姉さんのところに」
「場所はどこだ?」
「○○病院よ」
「そこだとここからだと少し距離があるな…」
そう言っていると部屋のドアが突然開いた。
「おお、諸君元気に…なんだこの状況は?」
「平塚先生!」
「お、おお…どうした比企谷?」
「実は…」
「何!?陽乃が事故にあっただと!?それは本当か!」
「は、はい先ほど病院から電話があって…」
「それで雪ノ下をそこまで送って頂きたいのですが…」
「事情はわかった!すぐに車を用意してくる!あと比企谷!お前も乗れナビゲートしろ!」
そこまでいうと平塚先生は走っていった。こういうときに頼りになる先生でよかった。
「あ、あたしは待ってるからお姉さんのところに行ってあげて。ヒッキー、ゆきのんのこと頼んだよ!」
「ああ」
そうした俺と雪ノ下は先生の車ですぐさま病院に向かった。
いろいろと先生はぶち抜きまくったが、そのおかげで病院にはすぐに到着した。
「私は駐車場に車を止めてくるが君たちは先にいけ!」
「平塚先生…」
「礼ならあとで聞く!今は急げ!」
「「はい!」」
俺たちはそうして病院の中に入り、彼女の居場所を受付に聞いた。幸にもそこまで大きなケガはないと言われたので俺たちは安心した。
俺と雪ノ下は教えられた病室に向かった。その病室の前には雪ノ下の両親もすでに到着していた。
「雪乃、来ていたのか」
「ええ、先生に車を出していただいて。受付の人から聞いたのだけれど大きなケガではなくて安心したわ」
「…まあ、そうだな」
ん?なんだそこまで大事ではないならここまで雪ノ下の両親が気落ちしてる理由がわからない。まさか、ケガ以外に何か!?
そんな両親のことは雪ノ下には見えていなかったのかそのまま病室へと入っていた。俺はそれを追いかける形で入った。
入ってみるとそこには雪ノ下の姉、陽乃さんがいた。目を覚ましていて起き上がっていた。雪ノ下はそれを見て安心したようだった。
だが、俺には何か違和感があった。
それが何かはわからないが違和感はあった。
「姉さん、事故と聞いて驚いたけど元気そうでよかったわ。母さんたちも来てたけどもう話したの?」
「………」
しかし、陽乃さんは雪乃を見て困惑している様子だった。
「聞いてるの姉さん…?」
「…ねえ…さん?私が?」
「今更何をいっているのかしら?あなたは私の姉の雪ノ下陽乃でしょう」
「陽乃…?」
「ね、姉さん…?」
次の言葉を聞いたとき、俺と雪ノ下は固まった。それと同時に俺は理解した。なぜ、雪ノ下夫妻が病室の前でああしていた理由を。
しかし、これはあまりにも雪ノ下にとって理解しがたい現実であった。
「あなたは誰…?」
雪ノ下陽乃は記憶をなくしていた。