異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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体調崩して入院していた為、書き進める事ができず遅くなりました。
一足早く冬のお話、初期にも言いましたが本作品内の時系列及び季節はランダムです


第93話帰ってきたマイルーンとおでん

 すっかり冬の色に染まったエドウィンに今年もマイルーン達がやってきた。渡り鳥のような旅暮らしをしている彼らは春までこの街の外れにある湖を拠点にしながら滞在先のあちこちでそうしているようにここでも冬季にだけ山に現れる魔物を退治する事で生計を立てている、他の冒険者や衛兵隊に冬山は辛いしなんといっても遭難する可能性が高い。その点寒さに強くて空中移動できる彼らならその心配は無用なのである。

 

 今日もバグベアという巨大な魔物の討伐依頼をこなし冒険者ギルドから報奨金を得る事ができた。毛皮や骨は引き取ってもらい肉だけはこちらにもらった、夕食にその肉を焼いて食べる。どの土地にいてもこれがマイルーンの日常生活である、味に関しては賛否両論なのだが。旅の途中に張り積めていた緊張の糸が切れたのか群れのみんながガヤガヤと騒ぎ始める中、長のミルコは報奨金を数えながら何やら一つ頷くと少し出掛けると告げて群れを後にした。

 

 数日後、ミルコは例の金を持って群れの数名と共に越後屋に来店した。彼らは全員いつも野営に使っている大鍋を抱えている、まだ陽が昇り始めた朝で開店には早い時間にやってきたのだがそれには理由がある。

 「すみません、まだ開店の時間じゃないのですが」ミルコにとっては初対面の褐色肌の女性に制される、白い襟シャツに黒のパンツという服装であるから自分達がこの地を離れている間に新しく雇われた店員だと思われた。

 「ニド、いいのよ。ミルコさんお久し振りですね」顔見知りのマティスが店から出てきてニドという新人をフォローしつつミルコ達を店内に招き入れる。

 「お早うございます、ミルコさん。いらっしゃいませ!」大輔も作業しながら笑顔で迎える。

 「この前予約しておいた料理はできてるかしら?」

 「ええ出来てますよ、後は移し替えるだけです」従業員一同で大輔が作った料理をミルコ達が持ってきた鍋を預かり厨房にて移し替えて代金を受けとる。

 「これを今の棲家に運んで火にかければいいのね」

 「はい、煮詰め過ぎにはご注意下さい」来る時より随分重くなった鍋を抱えて寝泊まりしている野営地に戻るマイルーン達。

 

 辿り着いた頃には昼時を少し過ぎていて留守番していた仲間達は空腹に腹を押さえ表情を曇らせている。

 「今帰ったわよ、後はこれを暖めればいいだけ。早速食べましょう」家族や友人等で幾つかのグループに分かれ焚き火の支度をして各代表が大鍋から家族サイズの鍋に移し替えてそれぞれの竈の火にかけ中身が暖まるのを待つ。

 「「「「天におわす女神様、我らに生きる糧を与えて下さって感謝します」」」」マイルーン達もやはり女神様を信仰しているので指を組み祈りを捧げて食事となる。

 「この丸いのは何かの肉だね、ほんのり甘くて混ぜてある野菜のしゃきしゃきしたのが美味しい」

 「これはラパー?スープが染みていて柔らかい」

 「腸詰めに卵、チューバがとろけるくらいホクホクになっている」

 「アレ、財布が入ってる。これ食べられるのかな?」首を捻る子供のマイルーンに

 「勿論食べられるわよ、それはヒスピとオリゼで作られたキンチャクっていうモノらしいわ」ミルコが教えるとその子供は勢いよくかぶりつく。

 「ホフホフ!熱っつい!」慌てる子供を母親は嗜めるが群れのみんなはその姿に顔を緩ませる、全員が満足した様子にミルコもまたお腹と心が満たされたのだった。

 

 「今日の賄いはスープの残りをうどんにかけるか、タネも材料が余ってるし」大輔は一度冷蔵庫にしまった魚のすり身を取りだし油と熱湯に投入してさつま揚げとはんぺんを作り今朝のおでんの余りモノに足しながら

 「まるでコンビニグルメだな」とひとりごちて苦笑するとうどん入りおでんを盛り付けた丼を厨房内にある従業員用のテーブルに乗せた。

 

 

 

 




ファミ○やロー○ンでみかけるおでんに合わせる蕎麦、うどん、中華麺、皆さんはどれがお好みですか?

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