警察官の
「それじゃお前も何処へ行ったかわからないのか?」
「ああ、共通しているのは越後屋に取立てに行ったまま帰ってこないってだけだ」高坂は越後屋の店主に事情聴取をする事を決めた、彼は徹底的に真実を追い詰めないと気が済まないタイプの熱血バカな刑事だった。
翌日、高坂は越後屋に聴き込みへ向かうが出入口が見つからない、裏口に回りチャイムを鳴らしてみる。
高坂は自分の目を疑った、さっきまで確かに存在した建物がチャイムを鳴らしたと同時に一瞬で消えてしまったのだ。慌ててその場から数メートル離れると同じ建物がまた目の前に現れた、再びチャイムを押して家主を呼び出そうとするとまた消える、3回程繰り返すと近所の老人が咎めにきた。
「いい歳をしてそんな悪戯辞めなさい」子供がよくやるピンポンダッシュに見えたらしい。
「じ、自分は警察官です。事件について聞きたい事があって訪ねてきたのです」
「越後屋さんなら今日はおらんし、いつ戻ってくるかも分からんよ」すっかり項垂れて管轄署に戻る高坂を見送ると老人はスッと姿を消す。
翌日の晩から高坂は夢にうなされ続ける、でてくるのは昼間の老人だ。
「越後屋にこれ以上深入りしてはいかん」
「イヤだ、俺は真実を見つけて本庁へ届ける。それが警察官としての務めだ!」
「それは出来ん、これはお前さんの為を思っての忠告なんじゃ」
「お前は誰だ?犯罪者の仲間か」老人は半ば呆れ顔で続ける。
「よいか、もう一度分かりやすく教えてやる、真実を知ろうと越後屋に行けばそこは治外法権どころか警察自体が存在せんのじゃ、務めもへったくれもなくなる」
「騙されるモンか、悪党め!」大量の寝汗をかいて目が覚める。
次の日、高坂は越後屋に食材を卸している邑楽食品店に聴き込みをした。
「越後屋さんですか?お得意様ですよ、受け渡しも支払いも外で済ませますね。中に入れたくない事情があるみたいですが私共には分かりませんね」これではっきりした、越後屋は犯罪者の海外逃亡に一役買っている。令状をとって家宅捜索してやろう。
その晩、寝苦しさに目を覚ますとあの老人が目の前にいた、と思ったら老人の姿は消えて目の前には美人だが凄味のある目付きをした女性と棍棒を携えたサルがいた。以前交通課にいた高坂はこの2人に見覚えがあった。
「確か君らは交通事故で死んだはず、そうか、保険金詐欺で…」
「「そんな訳ねーだろ!」」2人同時にシバく。それから越後屋の秘密を話すが、
「裏口が異世界に?神の加護が?信じられるか!俺を騙すつもりだろう」なんでも犯罪に結びつけて考える事しかできないこのバカに頭痛を感じる2人。
「あのな、そんな事して俺達に何のメリットがあると思うんだ?それに出入口が見つからない、建物は近づくと消える、離れるとまた現れる、アンタもその目でみただろ?他に説明がつくか?」ルカはあくまで話し合おうとするが、
「殺しちゃお❤そしたら信じるかもよ」白夜は怒りのボルテージが振り切れている、愛しの大輔にあらぬ疑いをかけたのが許せないらしい。
「俺を殺すだと?警察が黙ってないぞ!」
「うっさい!こっちは女神様の勅命受けてんのよ!」
「殺す命令自体は受けてないんだが…あの術を使うしかないな」ルカは自分の口元に人差し指と中指を当てると呪文を唱える。
目を覚ますといつもの朝だった、高坂はいつものように署に出勤する、何か忘れてる気がするが普段と同じ仕事をこなす。
「で、何したのよ?」
「記憶を操作したのさ、あのバカだけじゃなく警察全体が越後屋に関する全てを忘れてる。2度と思い出せないようにもしたから今後警察が越後屋を調査する事もないはずだ」
「よかったぁ\(^o^)/じゃ私ご飯食べに行こ。大ちゃ~ん今行くわ(≧∀≦)」
「オイ!女神様に報告はっ?まあどっちにしろ俺が行くしかないけどさ」白夜は大輔に会いに、ルカは觔斗雲で天界へ昇って行く。尚、大輔本人は裏口の日本でこんな騒動があった事は一切知らない。
次回、長らくモブだったあのキャラが主役で登場します。