異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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 やはり年末は皆さん投稿されてないご様子ですね、この時期書いてるのは療養中の筆者位でしょうか?


第29話お姫様とカツ丼

 アルバートはいつもの如く城を抜け出してエチゴヤに行こうとしていた、不意に何者かが後ろから抱きついてくる。振り返ると目鼻立ちの整った17歳くらいの美少女がいた、ラターナの姫であり現国王レックスの娘、シャーロット。つまり己の孫である。

 「お祖父様、そんな簡素な装いでどちらへ行かれるのですか?まぁ聞くだけ無駄でしたわ、どうせエチゴヤとかいう異世界の料理が食べられるお店に決まってますもの」

 「シャーロット、この事は内密にな、特に宰相には絶対言わんでくれ。この通りじゃ」膝を折ってまで孫に懇願する前国王、端から見ると情けない光景だ。

 「ダメです、お父様に言い付けます、イヤだとおっしゃるなら」

 「イヤだと言ったらなんじゃ?」

 「わたくしも連れていって下さいまし」こうして2人は一緒に馬車に乗って出掛ける事になった。勿論シャーロットも一般市民に見えるようシンプルな服装に着替えている、

 「良いなシャーロット、さっきも話したが王族であると気取られぬ事じゃ」

 「分かってますわ、お祖父様」アルバートは馭者に命じ馬車をコルトン公爵の屋敷の前で止めさせる。

 「ここからは歩いて行くぞ、なぁにすぐそこじゃ」確かに大して歩かない内にエチゴヤに着いた、シャーロットは普段歩き慣れてないのが災いし途中から不満タラタラだったが。

 「いらっしゃいませ、アレ?」ウェートレスが一瞬怪訝な顔をする、いつもは1人で来店し席へ案内するまでもなくカウンターにさっさと陣取るアルバートに連れがいたからだ。

 「これはワシの孫娘じゃ、今日はるばる訪ねてきたのでな。一緒に食事をしにきたんじゃよ」

 「そうでしたか、では本日はテーブル席でよろしいですか?」シャーロットと2人テーブルに向かい合わせに座る、程なくしてウェートレスがグラスに入った水を2つ持ってくる。アルバートはテーブルに備え付けの本らしきモノを孫娘に渡し説明する。

 「これはメニューといってな、この店で出せる料理が書いてある、水はオヒヤと呼ばれとる、金は取らないそうじゃ。ここの方針らしい」メニューには数多い料理や菓子の名前と絵が載っている。

 「お祖父様、このカツドンとかだけでも2種類ありますわ。どう違いますの?」

 「ホゥ、初心者にしては良いとこに目をつけたの(店員はともかく客に初心者もベテランもないと思うが)ならワシはいつものギューナベはやめて今日はそれを1人分ずつ頼むとしよう」

 「お待たせしました、卵とじカツドンとソースカツドンです」オリゼを詰めた深めの器の上には同じ揚げ物が乗っている、ただ揚げてからの調理方法が違っている、一方はケパと共に煮られて崩した卵でまとめられていて、もう一方はオリゼに刻んだプラッカが被せてあり、揚げ物には黒い液体がかけられている。

 「卵の方は衣がしっとりしてますわね、お肉も柔らかいし。それにケパが甘いですわ、もっと辛くて苦みの強い野菜だと思ってましたのに」

 「こちらは揚げたてのサクサクした食感を残しておる、オリゼとプラッカと合わせるとまるで三重奏じゃ」

 「お祖父様、交換いたしましょう。そちらも半分残して下さいまし」

 

 「ふーっ、お腹いっぱいですわ」満足気にお腹をさするシャーロット。世間には知られてないが実は王族の食事は意外に満足とは程遠いものだったりする、いつ如何なる状況でその命を狙われぬとも限らない、当然毒殺も念頭に置かれている為毒味役だけで数人が皿に手を付け初めて食卓にだされる、いわば冷めきったしかも誰かの食べかけを毎度食べさせられているのだ、しかし今は出来立ての温かい料理を心行くまで堪能した。何しろここでは店員も客も自分等が王族である事すら知らない。ふと眠気を感じる。ここで眠らせる訳にはいかん、大輔はアルバートが難儀する様子に気づいて

 「ご隠居さん、座敷を使って下さい、今日は空いてますから。上に掛けるモノ持ってきますね」

 「スマンのう、マスター」乾し草で作られた床板が張られた個室を借りて孫を寝かせる、この店の幼いウェートレスより我が孫は歳上のはずじゃったが。

 「レックスといい、この()といい、まだまだ子供っぽさが抜けとらん。こりゃワシもすぐにはあの世に行けそうにないのう」口ではボヤきながらどことなく嬉しそうな笑みを浮かべるアルバートであった。

 




 ラターナ王家3代に渡り越後屋料理のとりこになったみたいです、しかも父娘揃ってカツ系って( ̄▽ ̄;)

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