BLEACH/Excalibur〜約束された勝利の剣〜   作:ザイソン

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強さを求めて

望月が目を覚ましたのは四番隊の綜合救護詰所の病室だった。身体の痛みは既になく、疲労感のみ残っていた。

 

望月は大虚があの後どうなったのか覚えていない。エクスカリバーを放ち、剣を鞘に戻したところで霊力切れで気絶していた。おそらく援軍が助けてくれたのだろう。

 

「おー、目が覚めたみたいだな」

 

「まさか大虚を倒すとは思わなかったぞ、望月」

 

「海燕副隊長、ルキア・・・」

 

病室には十三番隊副隊長、志波海燕と十三番隊の仲間である朽木ルキアが居た。

 

「そうか・・・俺を連れて帰ったのは海燕副隊長だったんですね」

 

「そうだぞ。援軍は、俺と朽木と隊長だった」

 

「げ、隊長まで出てきたんですか・・・後で謝らないと・・・」

 

「そして服はボロボロだったが傷はなかった」

 

「は?」

 

それはおかしい。虚閃を受け止め大虚のビンタで地面に叩きつけられたのに無傷なのはありえない。これもエクスカリバーの能力なのだろうか。

 

望月が考え事をしているとルキアが申し訳無さそうに口を開けた。

 

「お前は助かったが・・・その、斬魄刀が見つからなかった。()()()()()()()()()()()

 

望月が部屋の隅を見ると、確かに鞘があった。斬魄刀の開放と同時に形状とデザインが変化しており、西洋の剣を収めるタイプのものになっている。

 

(・・・妙だな。見えないがそこに剣が有ることは認識できる)

 

望月は立ち上がって剣を抜いてみた。刀身も、柄も見えないが、確かにそこにある。どのくらいの大きさで、どんな形でをしているのかがはっきり認識できる。

 

「いや、ルキア。斬魄刀はここにある」

 

「いや、望月。何を言ってるんだ?」

 

「遂に頭まで逝かれたのか?」

 

「海燕副隊長まで何言ってるんですか⁉︎」

 

望月の頭にエクスカリバーの情報が流れ込んでくる。精神世界から本体が何かしているのだろう。

 

そして、第二の鞘である風を操る鞘、風王結界を外した。

 

「なるほど・・・見えないのか・・・しかも常時開放の斬魄刀ときた」

 

海燕は納得したようでもの珍しそうにエクスカリバーを眺める。

 

「海燕殿、そろそろ時間です」

 

「お、そうかそうか。じゃ、俺たちは帰るぞ。今から寝込んでる百目木の代わりに大虚の報告書を提出しなきゃなんねーからな」

 

「うっ、すいません」

 

海燕とルキアは足早に病室を後にした。おそらく提出期限が迫っているのだろう。

 

望月はもうひと眠りしようと布団に潜り目を瞑ると、

 

「ではこれから修行を始めます」

 

精神世界のエクスカリバーの元に飛ばされた。

 

「・・・エクスカリバー・・・もう少し寝かしてよ」

 

「傷は全て()()()()()()()()()

 

「ん?どゆこと?」

 

「あの後傷が酷かったので勝手ですが鞘の能力を使わせていただきました」

 

鞘の力は、"全て遠き理想郷(アヴァロン)"。発動すれば持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す。また、数百のパーツに分解して使用者の周囲に展開され、この世界では無い「妖精郷」に使用者の身を置かせることであらゆる攻撃・交信をシャットアウトして対象者を守る事も可能。ちなみに常時発動ではないのでいちいち発動する必要がある。

 

「なるほど・・・ところで、修行って何するの?」

 

「貴方はまだまだ未熟だ。取り敢えず霊圧の上昇から開始しないと最大開放を数回するだけで何回も倒れることになる」

 

なるほど、と望月は呟いた。確かに最大開放・エクスカリバーは強力だ。しかしいちいち倒れていては意味がない。

 

「で、何するんだ?」

 

「簡単な荒療治です。先ず貴方に"霊力放出"という技を教えます」

 

霊力放出。それは身体から霊力を噴射して加速する、いわばロケットのようなもの。直線移動ならば瞬歩よりも速く、攻撃力を増加させる事もできる。

 

「え?それって、連発すると霊力が直ぐ枯渇してしまうんじゃ」

 

「ええ、なので頑張って霊力を増やしてください。私と徒競走をして勝てばその場で終了。できなければ、毎日やってもらいます」

 

「フザケンナよ!エクスカリバー!!!!」

 

結果として、一日で霊力放出はマスターできたが、徒競走には負けた。霊力が無くなっって倒れてしまう。

 

「それではまた明日です。そうだ、貴方に一つ教えましょう」

 

「・・・何を?」

 

「彼処に白いテーブルがありますね」

 

エクスカリバーの指差す方向には確かに白いテーブルと椅子がある。

 

「私は美味しい物が好きです。貴方が心乱せばテーブルに雑な食事が、悲しめば美味しくない物がでます」

 

「何言ってんだエクスカリバー」

 

「私はそれを防ぐために貴方に力を貸します」

 

「うん、言ってる意味がわからん」

 

大丈夫、誰にもわからないから。取り敢えず、美味しいもののためにエクスカリバーは何でも協力するということだけはわかった。

 

「ところでさ、エクスカリバーって名前・・・長くね?人の名前っぽくないし」

 

「私は斬魄刀ですから」

 

「せめて本体の愛称を考えたんだけど・・・」

 

そう言って望月はどこからか紙を取り出し、書いていく。

 

 

腹ペコ王

 

獅子王

 

騎士王

 

 

「ロクなのがないですね。腹ペコ王って何ですか⁉︎」

 

「いや、さっきのセリフからね」

 

「却下!」

 

「えー。じゃ、セイバー(剣士)

 

「何というか・・・安直ですね」

 

「じゃ、腹ペコ王にするか?」

 

「やめてください」

 

エクスカリバーもとい、セイバーは呆れたように首を振った。

 

「私の事は腹ペコ王以外なら何と呼んでも構いません。ですが、霊力の底上げはきちんとしてもらいます」

 

それからというもの、セイバーとの徒競走は毎日続いた。肉体的苦痛よりも精神的苦痛のほうがデカい。

 

取り敢えず、セイバーに勝つまで5年の時を要した。5年の間に霊力放出の改良を行い、身体のどこからか、どの程度の力で、どの角度へ霊力を放出するかを研究し、一日中霊力放出を連発しても問題のないようにした。

 

5年もの間に霊力は何度も枯渇し、それに耐えるべく徐々に霊力及び霊圧は上昇していった。

 

望月はその後もセイバーとの鍛錬を絶やさなかった。昼は護廷十三隊としての任務をこなし、夜は精神世界でセイバーとの鍛錬。寝てるのかと言いたいがアヴァロンを使えば疲れも全てリセットされるようで徹夜には向いていた。

 

もっと強くなって十三番隊の仲間を守る。そう、セイバーと自分の魂に誓った。


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