BLEACH/Excalibur〜約束された勝利の剣〜   作:ザイソン

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始まりの始まり
約束された勝利の剣


「あ〜、めんどくさぁ〜〜」

 

現世と尸魂界(ソウル・ソサエティ)をむすぶ穿界門の前で金髪の死神、十三番隊所属の百目木 望月(どうめき もちづき)はそう呟いた。

 

ただでさえ同期と遅れを取っているのだ。任務とはいえ現世に行く暇があったら副隊長に頼み込んで特訓してもらいたい。

 

「おぅ、望月。駐在任務がそんなに怖いのか?」

 

声の方を振り向くとそこには長い赤髪を後ろで結んだ眉に刺青を入れた死神、阿散井恋次がそこにいた。

 

「恋次・・・少なくとも鬼道に関してはお前より上だからな。恐るわけ無いだろ」

 

「フン、雛森は副隊長、吉良と俺も席官。早く自分の斬魄刀に名前を聞けるといいな。俺は忙しいからかえるぞ。なんたって席官だからな!」

 

「うっさい馬鹿変態マユゲ」

 

そう、斬魄刀にはそれぞれ名前がある。恋次の斬魄刀ならば"蛇尾丸"という名がある。しかし、望月は斬魄刀の名前が分からない。聞けなかった。

 

鬼道は達者、剣術もなかなかで霊圧も高いく、素養もあるが、斬魄刀の名前が聞けず、始解すらできないため未だに一般隊士だ。

 

望月がウダウダ愚痴を言っていると瞬歩で高速移動しながら望月の隣に人が現れた。

 

「斬魄刀の名前が聞けないのは何か理由がある。お前の実力なら逆に聞けない方がおかしい。現世に行けば何かつかめるかもしれない」

 

「う、浮竹隊長⁉︎」

 

彼は浮竹十四郎。護延十三隊十三番隊の隊長で望月の上官でもある。普段は肺が弱いため寝てることが多いのだが。

 

「・・・小椿さんと虎徹さんはどうしたんですか?」

 

「はは、母上みたいで少し煩いから瞬歩で振り切って来た。こんな天気の良い日は出歩かなければむしろ身体に悪い」

 

「いけません、寝てください。今から虎徹さんに連絡しますからおとなしく・・・しませんよね。縛道の六十三"鎖条鎖縛"、縛道の九"崩輪"」

 

浮竹の身体を太い鎖が巻きつき、黄色い霊子が足と手を縛って行動を封じた。

 

「詠唱破棄・・・!いやいや、なんで縛るんだ!」

 

「虎徹さんに連絡しましたからおとなしくここで待っててください」

 

望月は若干涙目の浮竹を縛ったまま体育座りさせて自分は任務のため穿界門に入った。

 

 

 

現世での駐在任務は滞りなく、順調に進んでいた。指令を受け、現地に赴き、虚を叩き斬る。斬魄刀の開放ができずとも優秀な望月にとっては簡単な任務だった。

 

しかし、

 

斬魄刀に名を聞けず、開放が出来ずにいた。

 

なぜ名を聞けないのか、教えてくれないのか。

 

「なぁ、お前の名前・・・なんなんだよ・・・」

 

望月は斬魄刀にそう語りかけるが答えてはくれなかった。

 

 

現地駐在最終日。何事もなく終わると思われた。

 

指令を受けて現地へ向かった望月は異様な光景を見た。

 

「・・・ッ。あの虚、虚を喰ってる・・・」

 

般若のような面をつけ猿の胴体をしている虚が鮫のような虚を頭から噛み砕いて捕食していた。

 

事はそれで終わりではなかった。

 

その虚の霊圧が急激に上昇した。

 

「なんだ⁉︎」

 

虚は一気に膨張、巨大化し、頭から黒い布状のものをかぶり、鼻の部分がとがった仮面をつける形状へと変化した。

 

「オイオイオイ・・・冗談じゃないぞ・・・成長したのか⁉︎」

 

ここで、一つ話をしよう。虚とは、現世を荒らす悪霊。その正体は何らかの理由で堕ちた人間の魂。人間の魂魄が主食で、生きた人間を襲っては死に至らしめる。が、時折人間の魂魄では飽き足らず共食いを始める個体がいる。そして、数百もの虚を喰った虚が成長して、巨大な虚、大虚となる。

 

望月の目の前に現れた虚も大虚で、隊長格ならともかく、一般の死神では手に負える相手ではない。

 

望月は尸魂界(ソウル・ソサエティ)に連絡を取り、援軍を要請した。

 

「こちら十三番隊所属 百目木望月です」

 

『御用件をどうぞ』

 

「虚が急遽大虚に変貌。ここは市街地であるため多数の魂魄が巻き込まれる可能性大。俺を中心とした半径100間の空間凍結を要請します。魂魄の保護を最優先にし、建造物に関しては通常通り出撃料から引いてください』

 

『了解しました。援軍をお呼び致しましょうか?』

 

「それもよろしくお願いします」

 

望月は斬魄刀を抜いた。勝てないのは分かっているが誰かが足止めしなければならない。

 

策はない。望月は跳び上がり空中に足場を作り、瞬歩で大虚の顔に迫る。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ———破道の七十三"双連蒼火墜"!破道の九十一"千手皎天汰炮"!」

 

二重詠唱により巨大な蒼炎と長細めの三角形の光の矢が無数に大虚に降り注いだ。

 

爆炎か上がり、煙で大虚の姿が見えなくなったが少しくらいの手傷は与えられたと感じていた。

 

煙が晴れると同時に大虚の巨大な手で望月は地面に叩きつけられた。

 

「ガァッ!」

 

大虚は確かに手傷を受けていた。が、あまりにも大虚は巨大すぎた。

 

例えば蝿をハエ叩きで叩くと蝿は死ぬが、これで人間を叩いたとしてもいい大したダメージはない。

 

それは鬼道でも同じ。大虚にとって望月の鬼道にやるダメージは擦り傷にすぎなかったのだ。

 

(くっ・・・落ち着け・・・耐え忍ぶんだ。俺の役目はアイツを倒すことじゃない・・・)

 

望月は立ち上がった。

 

「軍相八寸退くに能わず・青き閂 白き閂 黒き閂 赤き閂・相贖いて大海に沈む 竜尾の城門 虎咬の城門 亀鎧の城門 鳳翼の城門———"四獣塞門"」

 

大虚の前方に“竜尾の城門”、左側に“虎咬の城門”、右側に“亀鎧の城門”、真上に“鳳翼の城門”という四種類の壁を発生させ、足止めを開始した。

 

大虚は破壊しようと暴れるが壁は全く壊れない。

 

望月は肩で息をしながら壁を維持させていた。流石に上位の鬼道、ましてや慣れないモノを連続使用するのはかなり力が必要だ。

 

九十番代の鬼道を放つ、二重詠唱。どれも出来はしたが霊力の枯渇を恐れて使ってこなかった。故に席官にも入れず、一般のままでいた。鬼道のスキルは席官クラスだが、誰にも見せてこなかった。

 

できれば大虚にはおとなしくして貰いたい。と、思っていたら唐突に大虚が叫び声をあげた。

 

「ゴオアアアアァァァァアアオオオオオォォォォ!!!!」

 

空気を振動させるほどの咆哮を放ったかと思えば、急に大虚の霊圧が高まり出した。

 

(まさか・・・虚閃か⁉︎さすがに俺の四獣塞門でもあれには耐えられない・・・いや、空間凍結させた範囲を超えて市街地を破壊する!)

 

もう霊圧が溜まり終える。もう逃げ場はない。望月はとっさに空中で斬魄刀を構える。

 

大虚の顔の先に光が見え、霊圧の集中された赤き閃光が発射された。

 

壁を破壊した閃光は望月の刀に激突した。

 

「グッ・・・!!!!」

 

手から血が滲み刀を支えている腕は今にも折れそうだ。

 

刀は、既に亀裂が入り始めている。

 

(無理なのか⁉︎俺には・・・ここで犬死にして果てるしかないのか・・・?せっかく死神になったってのに・・・まだ、斬魄刀に名前すら聞けてないのに!!!!)

 

ピキッと斬魄刀から嫌な音が聞こえたその刹那、

 

世界が突如青空と緑の丘へと姿を変えた。

 

「よくもまぁ・・・あれほどの窮地で私・・・斬魄刀の名の事を考えられるものですね・・・」

 

望月の前には王冠をかぶり金髪の髪を後ろで結い上げ、青と銀の甲冑を着た少女が立っていた。

 

「えっと・・・どちら様?」

 

「私ですか?私は貴方の剣。即ち、斬魄刀です」

 

「・・・つまり、斬魄刀の本体ってことか?」

 

少女は静かに頷いた。

 

「今で、見極めてきました。貴方が真に私のマスターに相応しいかどうかを。大虚の虚閃を受け止めさえしなければ危険にはさらされることはなかった。しかし貴方はそれをした。何故ですか?」

 

「え?・・・あれが市街地まで飛んでいったらマズイから・・・」

 

「ですがその結果、危険に晒されることとなりましたが」

 

「それは・・・なんとなくやったんだよ!悪いか⁉︎」

 

「いいえ。それならば文句はありません。なんとなくで身体が動くのはそれが心からやりたいことだから」

 

少女は望月の前に剣を突き出した。

 

「私は貴方をマスターと認め、剣になりましょう」

 

望月はその剣を掴んだ。

 

「私の名は———」

 

 

虚閃を受け止めていた望月は我に返った。そして、叫んだ。

 

「我が王に勝利を!『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』」

 

斬魄刀は一瞬風を纏って見えなくなったかと思うと黄金色に光り輝く西洋の剣に変換し、虚閃を上に弾いた。

 

『もう霊力も少ないから一気に決着をつけましょう。アレを使うのです。慣れないうちは使うには鍵となる呪文が必要になる場合があります。復唱してください』

 

精神世界から少女、エクスカリバーが話しかけてくる。

 

「言われなくても!」

 

望月は剣を構えた。

 

「『束ねるは星の息吹。輝ける命の本流』」

 

剣に星の光が宿り、輝き始める。

 

『そのまま振り下ろし、放て!』

 

「最大開放———『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!!!」

 




初投稿ですが読んでいただきありがとうございます。

この作品ではエクスカリバーは斬魄刀という設定です。本体である少女は、Fate/GOのセイバー、アルトリア(最終再臨)と同じ姿と考えてください。

最後の"最大開放・エクスカリバー"は例のレーザーっぽいヤツです。

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