一月二十五日
記憶喪失だった三日間の記憶のすり合わせを咲夜と行った。
その時のわたしの行動を細かく知って改めて昨日の約束が頭をよぎる。
『私の分も生きてください』、その約束だ。
とりあえずその為にはもうお姉様の料理は食べないと心に誓ったよ。
さて、それはともかく三日ぶりに寺子屋に行くと皆から心配の声を貰ってしまった。
「フランちゃん体調崩したんだっけ? 大丈夫?」
「馬鹿は風邪引かないってアタイ聞いたけど……」
「それはフランちゃんが馬鹿だと言いたいのかなチルノちゃん!? 言葉間違えただけだよねっ!?」
「みすちー、私お腹が空いたのだー!」
「ちょっ、ルーミアちゃん腕を齧らないで!? 私は食用の鳥じゃないよ!?」
「フラン、これ。幽香と私から。
「あっ、お花といえば私も持ってきたよ。ほら、
「ありがとうメディスンちゃん、リグル!」
上から大ちゃん、チルノちゃん、大ちゃん、ルーミアちゃん、みすちー、メディスンちゃん、リグル、私の言葉だ。
あと隣の席のナナシ君からも「風邪引かせたのもしかして俺の修行に付き合ったからか? わりぃ……」と心配の言葉を貰ったなぁ。
それと慧音先生も「体調は気を付けないとな! 妖怪といえどズボラではいかんぞ」という言葉と、副担任の先生からは「三者面談した時に薄着のエロい門番の人に聞いたが修行の一環で寒中水泳をしてるらしいな。水から上がったら風呂入れよ?」とちょっと引っかかる言葉を貰った。
うーん、心配かけさせちゃ駄目だよね! 自分の体調は大切だし、もっと普段から気を付けていこうと思いました!
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読み終えて真っ先に反応するところは副担任の先生の発言であった。
「……薄着のエロい門番の人って美鈴……よね? えっ、エロい?」
「そりゃ年中横から見たら下着が見えそうな格好してたらそりゃエロいでしょ。もう慣れたせいかそうと思えないけど」
エロい。改めて言われてレミリアは「えっ?」と首をかしげる。
それからよくよく美鈴の普段の装いを思い出してみた。
華人服とチャイナドレスを足して二で割った服装。スリットの下は何も履いておらずその色気ある脚線美が露出しているが、いやしかし。確かに動けばドレスの下がめくり上がり中が見えることは必須なような、気がした。
年がら年中ドレスの中が見えそうで見えない。が、その脚線美だけは常に見ることが出来、色気を感じさせる。レミリアにとってはよく分からないが、男性にとってはその『見えそうで見えない』という点はとてもエロいポイントではないのか? ついでに美鈴は胸も大きいし、人間相手でも基本敬語で話す、妖怪でも珍しく温和な性格だ。よく人間の武闘家が彼女に挑むこともあるし……あれ?
(……いや、でも別に紅魔館の門番の制服として渡した服でも無いし、本人が勝手に着てるだけなら私に責任は無いわよね?)
でも、あれ? エロい?
(う……うー……分からないわ。男の人ってそのあたりどう考えているのかしら?)
基本女ばかりの紅魔館だ。住んでいる人も、妖精メイドも、強いていえばホフゴブリン達はオスかもしれないが彼らは彼らで性的趣向が人間とは異なるだろうし、そんな素振りを見た覚えもレミリアには無かった。
と、そこで早苗が手を挙げて発言する。
「……んー、少なからず胸には目線がいきそうですよね。次に生脚? 学校に居た時は私もよくチラチラ見られましたし」
「へぇ、そうなの?」
「はい。水泳の授業とかで盗撮しようとする人も居ましたし……私より身体つきの良い美鈴さんと考えるともっとそういう視線を向けられてもおかしくはないかと……」
「ふんふむ……」
確かに生徒に勉強を教える先生が「エロい」と断言するほどだ。早苗の意見も聞いてよくよくかんがえるとかなり美鈴はきわどい衣装をしているのではないか、レミリアは考える。
すぐには答えは出ず目を閉じて、うんうん唸った。
が、そこで彼女の優れた耳が妙な音を聞き取る。
……ペラッ、と。本をめくる音が――――、
「って何、私を放置して次のページめくってるのよ!?」
「尺が無いからよ!」
「……だから尺って、いや。良いです。やっぱり話さないで下さい」
無茶苦茶理論の霊夢の言葉に突っ込もうとしてさとりはやめた。
ともかく、怒るレミリアを後ろ手に一同は次のページをめくる!
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一月二十六日
香霖堂に行くと微笑ましい光景が見れた。
デバイスの量産中に疲れて寝てしまったのか、机の前で寝てしまっている霖之助さん(毛布が掛けてある)と、その霖之助さんに寄りかかって横で寝ているリアラさん。
霖之助さんはなんだかんだイケメンだし、リアラさんは超美人だしで絵になりますなー。
霖之助さんの肩にリアラさんが頭を傾けて寝ているあたりすっごい恋人同士みたい!
私もいつかそういう相手が出来るのかな?
うーん、どうだろ。まだ恋愛とかよく分かんないや。
ともかく二人とも仲睦まじいようで何よりだよ! リアラさんが香霖堂に住むようになったのも突然だったからなぁ。
ちょっぴり幸せな気分になれました。
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「えっ、霖之助さん……やっぱりあの人と恋仲だったの?」
「いや、確定じゃありませんよ。少なからず密着出来るくらいの仲なのでは?」
「ふーん……、でもリアラとやらは将来こうなったらっていう理想のフランでしょ?」
「……理想だからこそ、でしょう。女の子ですからそういう話は興味あるでしょうし、理想の女性が幸せそうなら見ている本人も幸せに思えますから」
そんな事を呟いて一同は次のページをめくる。
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一月二十七日
やっと紅魔館のあれこれが終わった。
瓦礫も全部片付いたし家具も配置したし。
これで完璧じゃないかな!
よーし、これでまた思う存分色んな事に挑戦出来そうだ。
そうだなぁ、例えば裁縫しようかな? 普段お世話になってる人達に向けて手袋を編むとか良いよね!
ほら、霖之助さんとリアラさんにペアルックの手袋作ったりさ。
いやでもあの二人って恋仲なの? うーん、分からない。
もし違ったら迷惑だろうし色違いにしておこうかな?
あとあと、咲夜とかにも作ってあげたいな。それとめーりんにも!
めーりんはこの冬の中でも寒そうな格好で門番してくれてるから、手袋とマフラーも作ろう!
私も吸血鬼だから季節ごとの温度差なんてどうって事ないけどオシャレとしてマフラーとかつけてみたいし、季節ごとのファッションってやつも女性にとって大切ってiPhoneで載ってた!
というわけで可愛い冬用ファッションを作ろうと思います!
よーし、頑張るよ!
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「冬服ですかぁ。良いですねー。私は年がら年中巫女服だからなぁ……」
「それを言ったら私もよ。このクソ寒い冬に掖出しの巫女服とか作ったやつの気がしれるわ。しかも紫も強要してくるのよ? 基本その格好で居なさいって」
「……え、そんな制限あったんですか?」
「うん。お陰で毎年毎年凍傷になりそうになるわ。昔の博麗の巫女には死者が多かったって聞くけど絶対凍死とかもあると思う」
「それは……あまり聞きたくないわね」
霊夢の巫女服の意外な縛りに一同はえぇ……と顔をしかめるのだった。
それから「ともかく次に行くわよ」と霊夢が気を取り直して次のページをめくる――――!