フランドールの日記   作:Yuupon

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あと十話で百話……マジか。
ここまで来たら完結まで毎日投稿し続けたいなぁ……。







一月編4『お姉ちゃんの優しさ』

 

 

 

 一月六日

 

 

 ……疲れてたせいかな。寝坊した。お姉様に起こされた。

 最近じゃ朝ごはんも交代で作るようになってて、今日は私の当番だったけど咲夜が作っていた。

 やっぱり咲夜のご飯は美味しい。でも寝坊は駄目だよね……。美味しくて嬉しい気持ちと寝坊して少し危機感を抱く気持ちとが混ざりあってちょっと微妙な心中です。

 朝ごはん作れなくてごめんね、って咲夜に謝ると

「そんな申し訳無さそうな顔しないでください。最近お疲れだったようですし、ね?」

 って返してくれた。うぅ、励ましてくれるのはありがたいけど申し訳なさが倍増だよ。あと顔が凄い微笑ましそうな顔なのは何故?

 起きるのが遅かったせいで修行もあんまり出来なかった。めーりんもごめんね?

 ともかく明日は寝坊しない、そう決めた。

 

 

 #####

 

 寝坊、そのキーワードに早苗があぁ、と頷いた。

 

「寝坊ですか……偶にありますよね」

「へぇ、早苗もあるの? 寝坊」

 

 意外ね、と視線を横にずらし早苗を見た霊夢が問いかける。

 

「ありますよ。ただ寝坊する時は決まって何か厄介ごとが舞い込んでくる時とか、それか諏訪子様や神奈子様の元に友人の神様が内密に訪れる時とか、都合の良い時ばかりですけど……」

「……ほんと奇跡って言葉でなんでも片付きますね」

「すっごいお得ですよ。ただ、勝負事とか賭け事に大抵勝ってしまうのは難点ですね。面白味が無くて……それにゲームで乱数が絡んでくると……。この前、紫さんにお願いして『ムーン』を取り寄せてもらったんですけど出るポケ○ン出るポケ○ンがみんな色違いとか低確率出現ばかりで……」

「何の話よ何の」

 

 話が脱線し始めたところでレミリアがストップをかけた。

 それから視線を逡巡して、やがて曖昧な顔でこう言った。

 

「……じゃあ、次のページいきましょうか」

「やけに元気がないわね」

「べ、べべっ別に何も無いわよっ!? ほらほら元気元気! な、ななっなにも後ろめたい事なんて無いんだからねっ!?」

 

 霊夢のツッコミに慌てふためくレミリアだがそのあまりにもな姿に三人は呆れた顔を見合わせて呟く。

 

「(……もはやフリじゃないわよね? コイツ)」

「(……天然です、頭の中を覗きましたけど)」

「(あの、お二方。もはやレミリアさんが一周回ってウザくなってきたんですけどどうすれば……というか天然であれって生きていく上で大丈夫なんですかっ!?)」

「(大丈夫だ、問題無い)」

「(それ問題ある時のセリフですよねぇっ!! それくらい知ってますからっ!!)」

 

「? 何話してんのよ」

「なんでもない。ほらちゃっちゃと次のページいくわよ」

 

 そう言って日記に手をかける霊夢だがその時ボソッとレミリアが呟いた。

 

「……霊夢、吸血鬼は耳が良いんだからね」

「…………、」

 

 霊夢 は レミリア を 無視 した !!

 

 

 #####

 

 

 一月七日

 

 

 年末年始ってイベントだらけだよね。

 カレンダーにその日のイベントを書き付けていくとここ数週間の忙しさがよく分かる。というか自分の日記を読み返しても分かるね。

 でも……昨日の寝坊は少し疑問があるんだ。

 別に徹夜した翌日の就寝ってわけじゃなく、前日に普通に睡眠をとってるのに寝坊するなんて不自然だもん。

 あともう一つ私がそう思った理由がある。なんていうか、お姉様の様子がおかしいんだよ。

 私をチラチラ見ては、何か物欲しそうな目で見てくる。で、どうしたの? って声を掛けると離れてくし……なんだろうね。

 ちょっと調べてみる必要がありそうだ。

 この事件、アイドル探偵フランちゃんが解き明かします!

 

 ……いや、この決めゼリフはどうなんだろう。

 他に何かないかな。

 

 ジッチャンの名にかけて! 真実はいつもひとつ! 

 

 なんか違う。えっと……あ、そうだ。

 そのロジック、壊します! とかどうかな。

 むむぅ……難しいな。これは今度考えておこう。

 

 

 #####

 

 

「推理モノの決めゼリフですかぁー」

「QED、証明完了とか? あっ、私なら『この異変、博麗の巫女が解決するわ!』かな」

「……探偵ですか。私は、出たら駄目なキャラですね。犯人が心を読めば丸わかりです。立ち位置としては犯人が分かっても言えない立ち位置か、それか殺される役割ですね。決めゼリフは『……視えましたよ、この事件のすべて』とかですか」

「皆思ったより格好付けないのね、私ならこうよ! 『暗愚、実に暗愚よ。このレミリアの前に立ったのが運の尽きね。こんな事件、暇潰しにもならないわ』。どうどうっ!? 格好良いでしょ!」

「あー……まぁ、はい。格好良いですね。ちなみに私ならこうですかね。『私の奇跡の前には、いかなる犯罪も誤魔化せません!』か、それか『私に非常識(ハンザイ)は通じませんよ』とか」

 

 

 #####

 

 

 一月八日

 

 

 謎は全て解けた!

 私が寝坊したのはお姉様の仕業だったんだ!

 永遠亭で私の体を調べて貰って分かったんだけどね。

 二日前、私が寝る前にお姉様から紅茶を貰ってさ、あれが全ての原因だったみたい。

 なんか紅茶の中に睡眠薬が溶かされてたらしいんだ。

 それでグッスリ寝てしまったと。

 で、今はお姉様を弾丸で論破して逆転の裁判をしてます。

 

「で、でも私が入れた証拠は無いでしょう!? 咲夜なら時間を止めて入れられるし……」

「それは違うよ! ……つまりお姉様はあれなんだよね? 咲夜のこと疑ってるの? あれだけ尽くしてくれる子なのに? だとしたらお姉様、最低だよ?」(論破)

「はうあっ!? そ、そんなわけないじゃにゃい! 私が咲夜を疑うわけないでしょう!」(BREAK)

 

「ならば、先程の『咲夜なら睡眠薬を入れられる』という発言の取り消しを要求します! それが筋ってもんでしょお姉様!」

「……う、うう。分かったわよ。で、でも私は……」

「異議あり! 被告人の発言に信憑性はありません! よってこれ以上の発言権を剥奪します!」

「待って横暴過ぎないっ!?」

「よって判決は――――」

「ちょっ、待って待って! 全部話すからっ! だからその手に持ってるレーヴァテインをしまいなさい! 話し合いに武器は要らないわ!」

 

 それで有罪、という前に自白したので仕方なく話を聞くことに。

 さてどんな言い訳が口から飛び出すだろう、と思ってたらお姉様の話は予想外のものだった。

 

「……その、ね。最近フランすごーく忙しそうだったでしょ? でも毎朝早起きしてるからちょっと疲れが溜まってるように見えて、心配でね? それで……偶にはゆっくり寝てほしいと思って……前日に咲夜に家事の事も含めてお願いして薬を盛ったの」

 

 ……私は馬鹿だ。

 ごめん、本当にごめん。お姉様。まさかそんなに私のことを考えてくれてたなんて思ってなかったよ。

 ……ありがとう、心配してくれて。

 嬉しい。私はすっごく嬉しい。お姉様がそんなに心配してくれてたなんて。お姉様にも愛されてたんだなぁ、と気付いたよ。

 それに気付いた途端、心がぽわぁって暖かくなった。と、同時に涙が出てきた。じんわりと涙が溜まって、一筋流れ出す。

 

「あ、あれっ? ふ、フラン!? ご、ごめんね? 何か泣かせるようなことしちゃった!?」

「違うの……これは、違うの。お姉様」

「あ、あうあうあう……こういう時はさく、や……って、えっ?」

 

 急に泣き出した私に驚いたのかオロオロし出して咲夜を呼ぼうとするお姉様だけど、それを服を掴むことで止める。

 それから精一杯お礼の気持ちを込めて、そっと抱きついて言いました。

 

「……ありがと、大好き。それだけ」

 

 言い終わってからあれだけど実の姉に言う言葉かな、これ。

 ちょっと気恥ずかしいよ(*/∇\*)キャー

 

 

 #####

 

 

 読み終えてまず一言、霊夢が言った。

 

「キマシタワー」

「何言ってるんです、霊夢さん?」

 

 聞きなれない単語だったのか早苗が聞き返すと霊夢はあり得ない顔で尋ね返す。

 

「え、早苗アンタ、ネット使ってるくせに知らないの?」

「???」

「マジか……マジか」

 

 手を頰に当てて首を傾げてまるで分からない、とアピールする早苗を見て霊夢は愕然とした。

 ハッキリと差が出る巫女二人だがそれはさておき、さとりが突っ込む。

 

「……内容は知らない方が幸せだと思います。というかこの文章を読んだ感想がそれですか霊夢さんっ!?」

「……だって変に真面目に回答したら誰もボケるやつ居ないし」

「……別にボケは強要されてませんから!」

 

 ……日記読むたび誰か一人必ずボケなきゃいけないルールなんてありませんし! とツッコミを入れられて霊夢はう、うんと頷いた。

 すると早苗がレミリアを見て言う。

 

「というかレミリアさんがさっき慌てふためいてたのって、睡眠薬を入れた犯人だったからですか?」

「えっ? あ、そ、そうよ!」

 

 何か思い付いたように慌てて頷くレミリアだが、さとりが一言。

 

「……レミリアさん。嘘つくなら私が、その。居ない時に……」

「あっ……」

 

(……oh)

 

 絶対これ、何かやらかしましたよね。

 そう確信した早苗だった。

 

 

 

 

 

 

 


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