フランドールの日記   作:Yuupon

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一月編3『宴会終了!』

 

 

 

 一月三日

 

 

 初夢を見て、翌日。昨日のうちに紅魔館に帰ってた私なんだけど、一月三日になってもまだお姉様とか咲夜が帰ってこないので博麗神社に行くと……、

「勇儀! デュエルだ!」

「飲みなよ、ぐいっと一気にさ。そうすりゃあ昨日と同じ泥沼の日がまた始まる」

「びゃぁああ美味いぃいいい!!」

「あんたらいい加減にしなさい! 飲み過ぎよ!」

 うん、とんでもない場面に出くわした。

 鬼の人とかあとなんか見慣れない人が混ざってまだお酒を呑んでたんだ。霊夢さんが激おこだったよ、うんその気持ちは分かる。

 宴会が三日も続いてるのはおかしい、真面目に。場所を提供してたらなおさらだと思う。

 とか思ってたら酔いどれ萃香さんが霊夢さんを見て言った。

「れいむぅ……酒飲むなってぇー?」

「そうよ! さっさと片付けなさい。いい加減宴会は終わり! 良い?」

 

 霊夢さんが尋ねると萃香さんは首を横にふるふると動かすと、

 

「駄目ぇー妖怪いつ死ぬかわからないんだよ、飲める時に飲んどかなきゃ……」

「家 で 飲 め ! 後、妖怪が今日明日で死んでたまるかぁっ!!」

 

 正論のナイフでメッタ刺しだったよ。

 でも呑んでいた人達は一向に帰ろうとしない。

 と、ちょっとこのやり取りも気になるけど今日はお姉様と咲夜を探しにきたので一旦スルーすることにして私はお姉様を探すことにした。

 それから数分、ほどなくして見つけたよ。

 

「私とやろうっての? 良い度胸じゃない」

「己の強さに酔う…! どんな美酒を飲んでも味わえない極上の気分だぞ………小娘には分からんだろうがな」

「ハンッ、己の強さに酔う……馬鹿みたい。日本ではこんな言葉があるわよ? 『井の中の蛙大海を知らず』ってね! この永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレット様が大海を教えてやるわ!」

 

 なんか酔っ払ったお姉様が魔王みたいな見た目の人と対峙してた。とりあえずフランちゃんスカウター(私の勘)だとお姉様が酷い目に遭う予感しかしなかったので、間に割って入って止める。

「二人とも、それ以上するなら私が相手になるよ?」

 すると相手の人がなんか引き下がってくれた。大人な人で良かったね。あとお姉様もせっかく真面目だったのにごめん、猛烈にバシュゴォ! ってなる予感しかしなくてさ……。

 で、お姉様は見つけた私だけどまだ咲夜が見つかってないんだよね。

 というわけでまた探しました。

 

「……どこだろう?」

 

 そして歩き回ること数分、やっと見つけたよ。

 

「酒! 飲まずにはいられないッ!」

「どうぞ、もう一献。お酌致しますわ」

 

 なんか見知らぬ男の人にお酒を注いでた。黄色い髪の人でかなり筋肉質な感じだ。前に私がルーミアさんと行ったイタリア料理のレストランの店主さんと似た雰囲気を感じる。

 笑顔でお酒を注ぐ咲夜の様子がどこかマッチしているような……ハッ!

 

(これはもしかして……いや、そうに違いない! お姉様! 咲夜が恋をしているッ!)

(なに! それは本当なのフランッ!!)

 

 なんか喋り方がうつったけど私はお姉様に説明する。

 

(あの顔を見てよ、男の人に対してあんな笑顔の咲夜をお姉様はいつ見た?)

(……見ていないッ! わ、私は知らない! ……ハッ!)

(そう! つまり咲夜は恋をしている!)

(な、なんだって――ッ!!?)

 

 そんな感じにテレパシーでの会話をしていると、

 

「まさか勘違いですよお嬢様、それに妹様。あの方は少し縁があっただけで何もありません」

「「きゃああっ!?」」

 

 うん、本気でビビった。気が付いたら目の前に咲夜が居るんだもん。流石なんだけど正直ビビるよね。

 で、あとの事をまとめると、何度注意しても帰らない人たちにブチ切れた霊夢さんが所構わず弾幕ごっこを仕掛けて叩き潰していくことでようやく宴会は幕を閉じたみたいです、まる。

 とりあえず霊夢さん、お疲れさまでした。

 

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 読み終えて霊夢は言う。

 

「……本当にお疲れさまよね」

「というかそんなに残ってたんですか? 皆さん」

「図々しくもね! というか三日よ? 三日、さっさと帰りなさいよって話でしょ!? しかもまともに片付けしてくれたの、五、六人よ? フランと咲夜、早苗は来てて、あと妖夢と鈴仙だけ。ふざけんなって話じゃない!」

「……それは、御愁傷様です」

「でも私のとこからは二人手伝いに行ってるから文句を言われる筋合いはないわ! また来年もよろしく頼むわよ」

「……私、あんたのその性格が羨ましいわ」

 

 レミリアに向かって霊夢は呟くと次のページをめくるのだった。

 

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 一月四日

 

 

 久しぶりの完全オフだ。宴会とかライブとか商品開発とか去年は年末大忙しだったからね。それに昨日も咲夜が居ない分いつもより掃除に手間取ったり、家事をやったりと疲れてるし、一昨日は徹夜だったしとバッタリ倒れて一日中寝てたよ。

 昼からはレミィたんとお茶してた。なんだかんだ沢山手伝ってもらってるしね。

 話してて思うけどやっぱり見た目がお姉様なのにお姉様らしからぬ言動をしてるから違和感あるなぁ。あ、駄目ってわけじゃないよ? お姉様みたいに抽象的な話し方しないから説明も分かりやすいし。

 いや、それこそお姉様の姿をした人を見て一瞬大人っぽさとカリスマを感じてしまうほど……うん。やっぱりお姉様も本質はこうなんだろうけど、おかしいな? なんか姉に対する残念感が湧いてきたぞ。

 まぁ残姉と呼ぶのは可哀想なのでやめておくけど……。そのうちカリスマのある人にお姉様にカリスマのなんたるかを教えてもらえるよう頼んでみようかな?

 お姉様の目指すカリスマってのは絶対的な君主ってイメージでしょ。それか誰にでもあの人凄いわねって言われる感じのやつ。

 良さそうな人……ううむ。居たかなぁ。一歩間違えると傲慢になっちゃうからその線引きの出来るカリスマの権化。

 とりあえず適当に何人かに聞いてみようかな。映姫さんとかならこういう悩みとかにも沢山向き合ってきただろうしあのあたりに。

 ともかく今日一日、そんな感じに過ごした。

 

 

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「……カリスマの教育、ですか」

「そもそもカリスマって目指してなるものというよりいつのまにか周りにそう思われるものだと思うんですけど」

「そうよね、というか自分からなるカリスマってそれ、自称カリスマだし……」

 

 そこまで言って三人はチラリとレミリアを見る。

 

「失礼ね! 私はこんなにもカリスマに溢れてるのに!」

「失礼ですけどどこがですか……?」

 

 怒気を露わにするレミリアに対し、冷静に突っ込む早苗であった。

 

 

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 一月五日

 

 お姉様が悩んでいた。

 どうしたのか聞いてみると人里に遊びに行った帰りに、近くにいた子供の運命が見えたらしい。で、その運命がなんとあと三時間後に井戸に落ちて死んでしまうという残酷なものだったのだとか。

 それで、気まぐれで助けたのは良いけどその後に懐かれてしまったみたいで今度遊ぶ約束をしたらしいんだけど、子供の遊びなんて知らないしどうしようかと悩んでいたんだとか。

 お姉様、意外と普通の悩みもあるのね。というかお姉様大丈夫なの? 確か阿求さんが書いてた幻想郷縁起でお姉様は危険度極高判定でしょ? それなのに人里の子供と遊んでセーフ……かな?

 それを言うと「あっ」とお姉様は声を上げてた。多分忘れてたよね、これ。もう、肝心なところでポンコツなんだから!

 でも私は手伝いません。これは自分でやる事だと思います。しっかり悩んで良い決断をしてください。

 ファイト、お姉様!

 

 

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「良い子ですね」

「良い子だわね」

「……そうですね」

「急に優しい目して撫でるんじゃないわよ! あっ……も、もうちょっと後ろ! そう、そのあたり……」

「……なでなで拒否からのオチまでが早っ!? レミリアさんっ!?」

「はっ!? や、やめなさい! やめっ、やめろーっ!!」

 

 流れるような落ちっぷりに思わず突っ込む早苗だった。

 

 

 


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