一日分で一話なのは今回まででまた次回からは数日分書きたいと思います。
一月二日
宴会から一夜明け。
……正確にはまだ宴会は終わってなくて夜中の三時くらいまで給仕とか酔った人の介抱をしてから咲夜に後をお願いして寝た私だ。
で、昨日言ってた初夢だけどちゃんと見たよ!
見たには、ね。うん。
とはいっても色んな夢を見たからこれは吉夢なのかなぁ?
とりあえず覚えてるのをいくつか書いてみるよ。
最初に見たのは、学校? 外の世界の学校で暮らしてる話だった。なんでもゾンピパニックとかが起こってて……学園生活部? そんな感じのメンバーだった気がする。
ピンクの髪の女の子に「ふーちゃん」ってあだ名を付けられた。
とはいえその夢はバリケードの外に出た時に終わってさ。
次の夢は町の出口? だった。
田舎の町らしい。まっさらなイメージのある町だった。で、ひとまず街の外に出ようと思って足を踏み出すと…….
「おぉーい! 待て待つんじゃあ!」
そんな声をかけて白髪混じりのお爺さんが駆けてきた。
「危ないところだった! 草むらではポケ○ンがとびだす! こちらもポケ○ンを持っていれば戦えるのだが……ふむ、こっちに来なさい」
途中何度か頭の中で規制音が聞こえてよく分からなかった。何を言ってたんだろう。ともかく案内されるままついて行くと研究所についた。
「おー爺さん! なんのようだよ」
「…………(コクリ)」
「お主は……ああワシが呼んだのじゃったな!」
そこには赤い帽子の男の子と別に緑色の服は着てないけどグリーン、な印象の男の子が立っていた。
それからモンスターボールなるものを選べと言われて適当に選んだところでまた夢が切り替わったんだ。
「……あれ?」
気付いたら今度は密室の中に居た。周りを見ると私を含めて四人の人がいる。一人は全身真っ黒で、人型をした何かだ。
残り二人は眼鏡を掛けた小さな男の子、と間抜けそうな顔をしたお兄さんだ。
「……そっか」
「……そういう、ことか!」
地面に座り込んで何やら証拠品を採取する二人は同時に叫び、決め台詞を口にする。
「謎は全て解けた!」
「真実はいつも一つ!」
それから物凄い推理が二人の口から展開された。
「殺人の武器はこの模擬刀だったんだ!」
「その証拠に犯人の手には今もびっしりと模擬刀の金箔が付いている筈なんだ……そうだろ。犯人の✳︎✳︎さん」
「ぐ、ぐっ!」
「アンタがやったのはこうだ。事件現場の密室、そこに飾ってあった模擬刀を抜いて被害者に襲い掛かった。死体の様子から多分喉を突き刺したんだろう。模擬刀といっても打ちつけるには十分な代物だからな、金箔が付いている上に首が折れている」
「そして、犯人はそのまま部屋の外に出ると立て続けに三二人もの人を襲って殺害した。これまで犯人とバレなかったのは見つけた人を全て殺していたから、だよね?」
「……だがそれもここまでだ。動機も分かってる……なぁ、自首しないか。三二人も殺したんじゃどうなるか分からないけど、どうせ捕まるよりかはその方が良いだろ!」
そんな感じに推理したけどなんだろう。
無双ゲームかな? でもその無双出来る人の前に二人しか居ないけど……あっ、二人とも斬られた。
と、また夢が切り替わる。
「ようこそ! ラビットハウスへ!」
次の夢はどうやら喫茶店らしい。
三人の女の子が働いていて、どうやら私はそこに新しく来たバイトという設定みたいだ。
「フランちゃんって言うんだね! よし、私をお姉ちゃんって呼んでーって、あう!?」
「馬鹿なことやってないで、さっさと仕事しろ」
「うー、お仕事お仕事って確かにお仕事も大切だけど新しいアルバイトちゃんと仲良くなるのも重要でしょーっ!!」
「仕事が終わってから、だ! 全くそんなのだから……」
楽しそうだね。喫茶店でのバイトも。
というか今更ながら中々夢が覚めない上に、夢って気付けてるんだけど何これ。明晰夢ってやつかな?
と、また夢が切り替わる。
が、
「……これは」
今度の夢は見覚えのあるものだった。思わず絶句して目を背けそうになったが、こらえて見る。
見えたのは暗い地下室だ。ザリザリと錠の音が聞こえる。辺り一面は血のような赤に染まっていて、その中心に一人の女の子が座っていた。
人形を抱きしめた女の子だ。金髪で、赤い服を着ている。
「……っ」
コオォォ……と風が通り抜ける音が響いた。
瞬間、女の子が小さく唾を呑む。それから手に抱いたぬいぐるみをギュッと抱きしめて……粉砕した。
「あっ……」
やってしまった、そんな声を上げる女の子だがその時、外へ繋がる鉄扉の開く音が響いた。
「フラン」
お姉様の声だ。そうだ、これは私の夢だった。
久々に開いた鉄扉に夢の中の私は喜んだように立ち上がると鉄扉の方へ駆け寄る。
けれど、私の手の中にある壊れた人形がお姉様の視界に入った途端お姉様は悲しそうな顔をした。
「プレゼント、……また壊したのね」
「お姉様! ……あっ、これは違っ!」
「……そう、なのね」
「待って、お姉様待って!」
声を掛けるけれどお姉様は止まることなく、久々に開いた鉄扉はまた重い口を閉じた。ガシャーン、という扉の閉まる音が何度か反響して……やがて、消える。
「……ぁ」
夢の中の私は悲しそうな顔をして、それで。
それで……それでそれで気付いたら。
「……っぐ……ひっぐ……」
いつも泣いていた。思い出した、これは閉じ込められたばかりの頃の私だ。慣れてくると部屋を自分用に改造したりする余裕が生まれてくるんだけど、この頃の私は感情が表に出やすかったんだ。
一人ぼっちが耐えきれなくて、でもいつも物事が悪い方へ進んでいた。
それが何年も続いて。
そして、そしてそして。
「……キュッとして、ドカーン」
夢の中の私がそう呟いて、右手を握り締めた瞬間私の視界は暗転した。
――目覚めたのだ。
「……ぅっ、うう」
あの夢は吉夢? それとも悪夢? はたまた予知夢?
分からない。分からないけど今年もまた波乱が待っている、そんな予感がした。
……なーんてね。
最後のは作り話だよ。全体的にほのぼのだったからちょっと惨劇という名のスパイスを加えようと思っただけだ。
そもそも幽閉時代に血溜まりの中に座ってた覚えなんかないしね。ぬいぐるみの件はあったけど。
……うん、今更ながらに私疲れてるのかな?
こんなことを書いて。うーん……徹夜だったしなぁ。
とりあえず今日はもう起きるけど明日はしっかり寝ようと思う。
#####
読み終えてまず言うことは一つだった。
「って作り話かい!」
「だからって日記を投げつけんな!」
最後で騙されていたと気付いたレミリアが日記をぶん投げたのだ。
真っ直ぐと投げられた日記は霊夢の顔にバサっと当たって膝の上に落ちる。
……霊夢が文句を言うのは当たり前の話だった。
「大丈夫ですか、霊夢さん?」
「うん……つかレミリア、アンタ妖怪なんだから気を付けなさいよ? 今の投球、地味に百キロ近いパワー篭ってたわよ。日記自体に魔法かけられてなかったら木っ端微塵よこれ」
「う……ご、ごめんなさい」
「……じゃあこの話はここまでにして」
素直に謝ったレミリアを見てさとりが助け舟を出すと、パンパンと霊夢が手を叩く。
「次のページにいきましょうか」
そして一同は次のページをめくったのだった。