今回から一月編じゃい!
一月編1『始まりの宴会』
一月一日
あけましておめでとうございます。
改めて新年の始まりだ。昨日から徹夜で博麗神社にいるから少し眠い私です。
予定通り博麗神社で宴会があったよ。魔理沙とか早苗さんとか皆来てた。妖夢さんとか幽々子さん、紅魔館の皆と知り合いの妖怪は大半来てたね。
チルノちゃんとか大ちゃん、光の三妖精にクラピちゃん、それからルーミアちゃん達も皆いたよ。みすちーもリグルも、それから鬼の人達、さとりさん達の地底組、こいしちゃん。
咲夜と一緒に給仕を手伝いながら宴会に参加したけど楽しかったなぁ。霊夢さんが、「参加費用としてキッチリ賽銭入れてってよ!」と忙しそうにしていた。やっぱり俗物的な人だよね、彼女。
私も忙しかったなぁ。宴の途中歌ってと言われて即席ライブをしたり、鬼の人達と大酒呑み勝負したり。
とはいえ給仕として酔ったら仕事にならないから口内に異空間を繋いで別の空間にそのままポイーとやっていた。
異空間には空の酒瓶とか大樽を沢山用意してあるので今度呑もう。あ、勿論唾液とかは混じってないよ? 本当だよ。
「あーあははうふふふふ! 楽しいれすねぇ! ふらんちゃん!」
「さ、早苗さん? 酔ってます?」
あとこんな風に早苗さんに絡まれた。しばらく適当に相手をしてあげていると、「よぉーっし! 早苗、今から奇跡をみせまぁーす!」とか言って場を沸かせると無造作に奇跡を起こす。
「いでよ! 僕らのヒソウテンソク!」
瞬間、超巨大ロボットが現れた。
うん、本当に現れたんだよ。あり得ないでしょ。馬鹿なの?
「クリーンな戦士! クリーンな兵器! ヒソウテンソクーっ♪」
しかもなんか歌ってたし。めちゃくちゃノリノリだよっ!? 奇跡を起こす酔っ払いはなんてタチが悪いんだ!
それと諏訪子ちゃん! 早苗さんに乗じて「じゃあ私は呪いを見せてやろうかね、えへへへへ!」ってやめてくれない!? シャレにならないから! 本当にシャレにならないからぁ!
と、そんなツッコミを入れていると今度はお姉様と小傘ちゃんが何やらボソボソと話し始める。
「クックック、大勢の人々が楽しんでいますね! レミリア、今こそチャンスですよ! 我らが
「えぇそうね小傘! 酒を呑むと皆気が抜けるもの。私達の力を見せるチャンスよ!」
そんな事を話して二人はそれぞれ傘と樫の杖を片手に詠唱を始める。
「「黒より黒く。闇より暗き漆黒に」」
何やら長い詠唱らしい。そっと後ろから近づいていくと二人はまるで気付かない様子で続きを唱えていく。
「「わが真紅の
小傘さんはともかくお姉様はなまじスペックが高いせいか樫の杖から何やら危険なエネルギーが見えた。何やってんだこの姉は。とりあえず何かの詠唱なのは間違いないけど、念のため『
「「我が力の奔流に望むは崩壊なり、並ぶ者なき崩壊なり。これぞ究極の
あ、これ洒落にならないやつだ。足元に巨大な魔法陣が生まれたのを確認した私は確信する。
だから私の取った行動は簡潔だった。
「わっ」
「「――ジョンッ! ってきゃああああっ!!?」」
わっ、と後ろから声をかけて二人が驚いてる間に間に魔法を消去消去。ついでに能力で魔法陣の目を潰して、異空間からピコピコハンマーを取り出して二人の頭を叩く。
「小傘さんはともかくお姉様は馬鹿なのっ!? なんか洒落にならない魔法陣出来てたよ!?」
そうやってお説教して二人を論破した後はまた給仕のお仕事だ。
別の方に目を向けるとこんな人もいたよ。
「じゃあ私ピコ太郎やります! アイ、ハブアペーン? アイハブハアッポー? お゛ぉ゛ーん! アポーペーン?」
皆楽しそうだね。というかハッチャケてるのか。
他の方に目を向けると妖夢さんが悲鳴をあげていた。
「幽々子様やめてください! 食料が、食料そのものがーっ!!」
「まだ腹五分目よ、足りないわぁ!」
叫んで同時に幽々子さんのお腹がグー、となる。あっ、妖夢さんの目が死んだ。妖忌さんがしょうがないなって顔で見てるや。
「……失礼ですが幽々子様。それ以上は肥満の原因にもなりますが」
「妖忌〜? 女の子に体重の話はNGよぉ☆」
「しかし……もう百キロ近く食べられているではありませんか! 動物園の象でもそんなに食べませんぞ!」
「何言ってるか分かんなーい☆」
……苦労してるね。
あとは……さとりさんの方も見てみたよ。
「……お空! あっちの腹ペコ幽霊に張り合って食べちゃ駄目よ! あっ、お燐! こらっ! 酔い潰れた人を死体みたいに運んじゃ駄目っ! あ、こいし! こいし何やってるの!? 人の頭に飛び乗っちゃ駄目よ! えっ、世界一位だから大丈夫ってその人神様だから! お空に核融合の力を与えた人だからっ!!」
「いや、さとり。別にあたしは気にしないよ?」
「……駄目です神奈子さん! こういうのはしっかりしないと……!」
「はぁ、まだまだ宴会なんだからそう肩肘張る事ないだろう、無礼講さね。ほらさとりも一献呷りなさい」
「……あ、すみません。んくっ、んくっ……ふぅ、美味しいですね。なんていうんですかこのお酒?」
「酒虫で作った酒だよ。ほら、鬼の瓢箪からは酒が無限に湧いてくるというだろう。実はアレは、酒虫っていうナマズみたいな鬼のエキスを瓢箪に入れてるからなんだ。酒虫は少量の水を与えるだけで次から次へと美味なお酒を作るからねぇ。それが美味で美味で、あぁこれは私が昔、鬼子母神様から分けてもらった酒虫が作ったのさ」
「……へぇ、酒虫ですか。以前本で読んだことが……ってこらこいし! 人のお酒を盗っちゃ駄目よ! なに、世界一位だから良い? 駄目に決まってるでしょう!?」
うん、大変そうだね。
特にさとりさんの場合神奈子さんの相手もしながらツッコミを入れてるから大変そうだ。
ツッコミとしては色々見習うべき点もあるけどね。
で、次は端っこで神社に寄りかかってチビチビ呑んでいる霖之助さんの方に行く。
「やぁフランかい」
「お疲れさまです霖之助さん。年末シーズンで凄い売り上げましたね、デバイス」
「あぁ、お陰様でね。宴会が終わったらまた増産作業だよ。年始も稼ぎどきだからね。と、それよりもキミの書いた『フランちゃんが教える弾幕ごっこ〜入門編〜』もかなり売れてるみたいだね」
「はい。思ったよりも好評で今は、easy編とnormal編を執筆してます」
最近じゃ人里の外れで空を飛ぶ練習をしている人達を多く見かけるんだよね。そこに話しかけて霊力の使い方を教えたりとかしてるけど、やっぱり嬉しいもんだよ。
数十センチ浮いただけでも凄い喜んでくれるからさ。中には地上で弾幕ごっこしてる人もいたし。それに里の自警団の人は訓練でデバイスを導入したみたい。
危険な妖怪に対して弾幕で対応出来れば危険度が大分下がるかもしれないとか言ってた。
妖怪の私としてはうん、どう反応すれば良いんだろうね。とりあえず売上はすごい、本当に。
そんなことを考えていると霖之助さんが私に向けて手を出してきた。
「ところでフラン。去年はありがとう、僕を手伝ってくれて。こうやって成功したのも、挑戦しようと思えたのも全て君のお陰だ」
「そ、そんな!」
「それでね、もし良かったら君の為に何かしてやれることがあれば、と思うんだけど何かないかい? 出来る限り力になるよ? ご褒美が欲しければ考えるし……」
「ご褒美!? あ、じゃあナデナデしてください!」
パッと浮かんだのを言うと霖之助さんは苦笑いして私の頭を撫でてくれた。
……男の人の手って大きいね。撫で方もなんか違う。咲夜は凄い丁寧で優しい撫で方で、めーりんは少し大雑把だけど包み込むような柔らかさがあった。
でも霖之助さんのは少し無骨な手だ。真面目に働いて出来た硬い手。そのゴツゴツした手で撫でられると、なんだろう。安心する。
「……安いね、君。とはいえこんなもので僕も返しきれたと思ってないから、また何かあったら言ってくれ」
そんな感じで別れて、最後に私はまたお姉様達の方に戻った。
私が戻ると、お姉様と小傘ちゃんは正座体勢で膝の上に100tと書かれた岩を載せていた。
ちょっと涙目の二人に私は声をかける。
「……お姉様、小傘ちゃん?」
「「……ハイ」」
「反省した?」
「「……ハイ」」
「なら良し」
瞬間二人は膝の上の岩をどこかに投げ捨てると咲夜に泣きつく。
「うわあぁぁん! 咲夜ーっ! フランがフランがーっ!!」
「重かったです……痛かったです……! 放置するなんて鬼畜です!」
泣きつく二人を抱きしめながら咲夜は私に言う。
「妹様、今回の処置は少し酷いのでは?」
「大丈夫よ。どうせ二人ともフリだけで実際そんなに痛がってないだろうし。私より咲夜の方がそれは分かってるでしょ?」
「「ハッ!?」」
「……それは、まぁ」
「な、ナズェバレたっ!?」
「こいつ、まさかスタンド使いか!」
いや、バレバレだよ。演技が下手なんだよ。
やれやれと手を振りながらパチュリーに視線でなんとかして、と気持ちを込めて見ると『無理ね、あと面倒だからイヤ』とアイコンタクトが返ってくる。
パチュリー……。
「とりあえず今日は無礼講だから許すけど、もう変なことしないでね? さっきのエクスなんとかってやつ発動したらそこら一体焼け野原だったんだよ?」
「それは割と真面目に反省してるわよ!」
ジトっと見つめるとお姉様がそう騒ぎ立てる。
むーそこまで言うならもう言わないでおこう。
ともかくそんな感じに濃い一日でした!
紅魔館に帰ってこれ書いてるけど……凄い眠いしそろそろ寝ようと思う。
明日は初夢の話を書くかな……じゃあおやすみなさい。
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読み終えた早苗は感慨深そうに呟く。
「年末年始ですかぁ……恥ずかしながら酔っ払ってしまったんですよね、私」
「そうそう。それより早苗、あのロボットは何よ? ヒソウテンソクって」
「何故か守谷神社にあったロボットです。クリーンな兵器、クリーンな戦士! ヒソウテンソク〜♪ってフレーズの音楽もありますよ」
「いやだからそのヒソウテンソクに何の用途があるのか聞きたいんだけど……世界観ぶち壊しよアレ。ここはガンダムの世界じゃ無いのよ?」
「だから言葉の端々になんでその幻想郷に無い作品名が出てくるんですか! ガンダムって外の世界のアレでしょっ!?」
「……早苗さん早苗さん、そのツッコミはキリが無いのでやめた方が吉ですよ」
と、そこでさとりが突っ込むと「……それもそうですね」と早苗は大人しく引き下がった。
その様子を見てレミリアが口を開く。
「そういえばさとりだっけ? アンタはツッコミ役なのね」
「えっ、今まで何だと思ってたんですか!? これまで感想を言い合ってた時ボケてませんよ私!?」
「いや、主って基本部下を振り回すものじゃない。私もよく咲夜とかを振り回すけど」
「……控えめに見ても最低ですよそれ」
「レミリアって悪いヤツだなー」
「か、かっこわるいたる〜」
「ええい! なんなのよ急に鬱陶しい! 霊夢に風祝は茶々入れんな!」
妙にネタ口調で割り込んでくる二人にレミリアは腕をブンブン振り回して怒る。
が、そこで止まる二人ではない。まず霊夢がこう述べた。
「うわぁぁぁん咲夜ー」
「……っ」
レミリアは耐える。その程度で怒るようでは煽り耐性が低いと言わざるを得ないからだ。
が、続けて早苗が述べた言葉で彼女はぷっつんした。
「カリスマ(笑)」
「……死ねっ!!」
レミリアは瞬時にグングニルを出現させると容赦なくぶん投げる! ぶん投げたグングニルは早苗のわずか数センチ横を通り過ぎ、窓を割って門付近の地面に着弾して爆発した。
外から、「折角修復した門がーっ!!」という美鈴の悲鳴が聞こえてきたがレミリアは気にしない!
「ちょっ!? レミリアさん今のはシャレになってませんから!」
「殺す! もう怒った本気で殺す! こんなに腹が煮え繰り返るから――本気で殺すわよ」
「それセリフの無駄遣いですって! あっ、ちょっと待って! それはガチでヤバい! うわっ、待って! 待ってコポッ!?」
瞬間、レミリアの弾幕が早苗に炸裂した。