今回短いです。
十二月二十二日
香霖堂でのバイトの帰り道に、変な子と出会った。寺子屋の低学年くらいの子。迷子っぽくは無かったけどね。私を探してたって言ってたし。
なんというか……妙に子供らしくなかった。
あと全体的に白かったなぁ。髪も、服装も。羽衣みたいな服着てた。
いきなり名前を呼ばれたからビックリしたよ。名前は『龍神』ちゃんらしい。でも明らかに偽名だよね。だから他に名前は無いかと聞いても無いって言われちゃった。
でも龍神。どっかで聞いたことあるな、と思ってたら確か幻想郷の最高神が龍神じゃなかったっけ? 思い出したのは家に帰ってからだったけど。
龍神を騙ってたのかな? だったら怒らなきゃいけないよね……。
でも何で龍神ちゃんは私の名前を知ってたんだろう? アイドル活動が原因かな? それともどこかで会ってたり? と思って聞いてみると首を横に振っていた。
なんでも天界で魔界神やイザナミ達と仲良くしていたところを見ていたらしい。なんだどっかの神様か……いや、それはそれで問題だけどもう慣れたよ。
それからいくつかお話ししたけどやっぱり神様でも子供は子供だね。やけに難しい言葉ばかり使おうとしてた。
ちなみに私のアイドル活動とかは知らないらしい。良ければ今度見てね、うん。
でも、なんか少し話しただけで帰っていったよ。マイペースなのかな?
何しに来たんだろう。神綺さんもそうだけど神様ってよく分からないね。
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読み終わると同時に二人の巫女は白目をむいて椅子に深く座り込んでうずくまった。
「」
「……れ、霊夢さーんっ!!?」
「」
「……さ、早苗さんも!? ちょ、ちょっとしっかりしてください!」
「……龍神まで、龍神まで出てくるの……? 八雲紫に聞いた話だとあの女すら相手にならない文字通りの幻想郷の最高神と聞いたわよ……? その姿を最後に見せたのは博麗大結界以来だと言うのに……?」
「……りゅ、龍神ってまさか本物なんですか!?」
「……信じたくないけど霊夢と風祝が倒れたってことはそうでしょうよ」
「…………、」
「…………、」
ちらりとレミリアが二人の巫女を見るが二人とも何やら小声でブツブツ呟くばかりで反応しない。
その様子を見てレミリアは溜息を吐いて言う。
「駄目ね、次のページにいきましょう」
「……い、良いんですか?」
「仕方ないわよ。むしろ下手に龍神の記述があるページを開いたままにしておく方がマズイわ」
呟いて彼女は次のページをめくるのだった。
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十二月二三日
阿求さんの家に招かれた。
なんでも私の話を聞きたいらしい。最初、何で私の話を聞きたいのか分からなくてちんぷんかんぷんだったけど、どうやら最近阿求さんが編纂を進めていると沢山の妖怪の口から私の名前が出てくるんだとか。
人里でも私を信仰している人も居るんだってさ。
かなり前に……それこそもう日記の初めにあったサインを書いてあげた罪袋さんを筆頭に『フラン教』なる宗教が生まれているらしい。
しかももう入信者は数千人規模を超えているとか。ネットのみの登録を含めると万を超えるらしい。
……うん、初耳。超初耳だよ。寝耳に水とはこのことだね。
……道理で少し前に物凄い勢いで神格化が進んだわけだ。お陰で今じゃ魔界神、イザナミ、エリス、フレイヤ、といった錚々たるメンバーとお知り合いですよ。
そんな話をすると阿求さんが食いついて来た。
「そういえばフランさんは神器もお持ちだとか」
「いやいや、持ってませんよ」
「いえ。しかし以前お話を伺った森近霖之助さんから二つの神器を所有していると聞きましたが」
えっ、マジで? 私、神器持ってるの? うわぁ知らなかった! 多分一つはブラギの竪琴だよね? 前に弾いた時凄い効果を発揮してたし。じゃあもう一個はなんだろ?
そんな感じでお話ししてその場はお開きになった。
にしても阿求さんも大変だよね。人間の身で、それも普通の人より圧倒的に身体が弱いのにあちこちに赴いて話を聞くなんて。
幻想郷縁起編纂頑張ってね! 応援してるよ!
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「遅っ! 神器に気付くの遅っ!!」
「……あ、起きたんですね霊夢さん」
「私も起きましたよ……ちょっとSAN値を削られてしまいましてお見苦しい姿を見せてしまいました」
少し疲れた顔で早苗が言う。
すると日記を読んでいたレミリアが疑問の声を上げた。
「というか稗田の一族ってなんで身体が弱いの?」
「稗田の一族は完全記憶能力者で、死後も知識を引き継いで転生出来るように閻魔にお願いしたの。幻想郷縁起編纂の為にね。で、それを了承されたけど代わりに寿命が極端に短くなったって聞いてるわ」
「へぇ、珍しい一族もいるものね」
霊夢の説明を聞いて納得したようにレミリアは呟いた。