これぐらい好き勝手やるとどこか楽しくなってきた作者です。
「……うー、良いから始めましょ」
二十分の停滞とフランの帰宅を挟み、ようやくレミリアが復帰したのを確認して一同は読み始めることになった。
十二月十九日
魔理沙が紅の幽霊楽団のメンバーを連れて紅魔館に来た。
なんでも次の「一二月二四日のライブ」に向けて新メンバーとの顔合わせを済ませたいらしい。
……そういえばそう言ってたね、前に。
ちなみに新メンバーって事は現在、私と魔理沙しか所属していない霧雨プロダクションに所属する新メンバーになるんだけど、魔理沙曰くかなり期待出来るらしい。
かつて世界一位になった事もあるとか。何の世界一位かは知らないけどきっと凄い人なんだろうね!
で、色々な前置きを踏まえてようやく呼ばれた新メンバーは――
「貴女の後ろにいまーす!」
「残像ですけど……」
「はうあっ!?」
何故か電話を抱えた古明地こいしちゃんだった。
前に見た時のキラキラオーラはまだ健在で後ろに回られたのが簡単に分かってしまう。なんか無意識を操るらしいけどまだそんな素振りを見た覚えはないのが少し物悲しい。
こいしちゃんとは会ったのかなり前だよね。日記を付け始めた頃以来じゃない?
ともかく他のメンバー、プリズムリバーの三人とお互い挨拶して紅魔館で歓迎パーティーをした。
その時に魔理沙となんかコント? をしてたよ。
「私は去年は何位ー?」
「一位だぜ」
「今年は何位ー?」
「一位だぜ」
「よしんば三位だったとしたら?」
「世界、一位だぜ」
……なんだろう、よく分からない。
とりあえず二人が楽しそうで何よりだ。
でも一つ疑問があるんだよね。前に会った時に無意識を操れなくなったってこいしちゃんはどっちかというと世界一位をあまり好んでなかったのにどんな心境の変化があったのかな?
聞いてみるとこんな返事が返ってきた。
「……世の中には知らない方が良いこともあるんだよ?」
その時のこいしちゃんの目の中からはハイライトが消えていた。
きっと、何かあったんだろう。でも突っ込むべきじゃないよね?
まぁ新メンバーとしてはかなり良い人選だとは思う。割と本気で。
でもどうせなら姉のさとりさんも連れてこれないかな? あの人も見た目すっごく可愛らしいからさ。美少女姉妹で出せたら売れそう。
……まぁそれを言ったら私もお姉様を連れて来いって話だけど、絶対嫌がるからなぁ。
目立つのは好きでも「目立ってナンボですわ!」ってキャラでも無いし。
ともかく新メンバーを加えた新生、紅の幽霊楽団爆誕だ! 皆で頑張ろう!
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「私は去年は何位だった?」
「一位です」
「今年は何位かい?」
「一位です」
「よしんば私が二位だったとしたら?」
「世界、一位です」
「……いや、何やってるんですか霊夢さんに早苗さん」
「だって世界一位のネタなら私の
「いや、だからそのネタが分からないんだけど……」
真面目な顔つきでまくし立てる霊夢に対し、訳が分からないわと呆れ顔のレミリアだった。
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十二月二〇日
ルーミアさんと昼食を食べた。
ルーミアちゃんじゃなくてルーミアさんだ。偶にルーミアちゃんがルーミアさんに体を貸して自由に使わせてくれるんだって。
それで人里に最近出来たらしい、外国人の外来人が立てたらしいイタリア料理のお店に入った。
表の看板に『お客様しだい』って書かれててさ、最初は意味が分からなかったけど後でよく分かったよ。
どうもこのイタリア料理のお店、メニューが無いらしい。お客様を見て料理を決めるんだとか。前に咲夜がやってるのを見たけど、相手の顔色を見て最も良い料理を作るってやつだね。
待つ間にルーミアさんも交えてお話しした。
どうやら二人とも仲良く暮らしているらしい。前に起こった出来事を考えると二人とも仲良くしているようで何よりだ。それにルーミアさんとっても強いからもしルーミアちゃんの身に何か起こっても何とかなるしね。
あ、そうそう。食べた料理だけどすっごく美味しかったよ。
ルーミアさんが余りの美味しさからか「ンマアアアイ!!」とか叫んだ上に体のあちこちが治ったとか騒いでたけど。
……淑女としてあれはどうなの? 確かに物凄く美味しい料理だけどさ。
「It was very delicious. Where did you train?(とても美味しかったです。どこで修練を積まれたのですか?)」
「In Italy. In the outside world I was cooking a Itary specialty shop.(イタリアです。外の世界ではイタリア料理専門店のコックをしていました)」
「Really?(本当ですか?)」
「Yes(えぇ)。それと日本語でも話せますよ」
「あら、そうですか」
「えぇ。ご満足いただけたようで何よりです。それにしても貴女はとても素晴らしい食生活をされているようですね。私の目から見ても悪い部分が見当たりません。さぞ高名な料理人の料理を召し上がっておられるようだ。私も感服しましたよ。さて、またのご来店をお待ちしております。グラッツェ」
やっぱり咲夜と同じく相手の姿から最も適切な料理を出すタイプの人だったんだね。そりゃ美味しいわけだ。
でも外来人ってよく妖怪の餌になったりしてるけどよく無事だったね?
それを聞いてみると「多少心得もありますから」と笑顔で返された。確かに凄い筋肉質な人だよね。
でも妖怪に使える心得って……か。
やっぱりこの人の『目』が二つあるのが関わってるのかな? 普通の人間は壊す為の目は一つしかないのに、ね。
まぁそれ以上詮索すると人の切り札を暴く真似になるからやめておこうかな。
ともかく美味しかったです、ご馳走様でした。
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「あー、ありましたね。幻想郷じゃイタリア料理なんて食べれないから私も行きました。最近じゃ美容効果もあるって噂になってて凄い人気ですよね。トニオさんのお店」
「へぇ、そんな店があるの? 知らなかったわ」
「レミリアさんは生まれが外国でしょうし一度行ってみてはどうですか? 良ければ案内しますよ?」
「あぁ、ありがと。その時は頼むよ」
「……イタリア料理ですか。私も食べてみたいものです」
「私も行ったこと無いのよね。イタリア料理かぁ、ちょっと食べてみたいわ」
「あっ、じゃあ今度全員で行きませんか? 折角の日記を読んでる縁ですから!」
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十二月二十一日
人里でヒーローショーをするらしい。
暇潰しに観に行こうかな、と行ってみるとどうやらヒロイン役の人が病気欠席したらしく偶々目に付いた私がお願いされてしまった。
女優体験と思えば楽しいかもしれないけどいきなり過ぎて正直ビビったよ。
で、気になる話の内容だけど。
まずは女の子、マホが病気になったお母さんの為に薬草を取りに妖怪の蔓延る人里の外に行く事になるんだよ。でも人里に出る為には人里の周りをグルリと囲む五〇mの壁を抜けなきゃならない。その為に外へ繋がる門を守る門番と話を付ける必要があるんだけど、子供であるマホを通すわけもなかったんだ。
しかし諦められないマホはまず国の軍隊の駐屯所から許可をもらう事を考える。でもそれは失敗して門前払いされてしまって、その後マホは人を動かすにはお金だと考えて門番達に金を握らせて通してもらう事を思いついた。でも一般階級のマホの家にはとてもそんなお金は無い。だからマホは付近の雀荘で博打をする事に。カン、もう一個カン、ツモ。嶺上開花と暴れまわるマホは、最終的に利根川という男とマホの身体とお金を掛けてEカードと呼ばれる勝負を行う事になった。負けが続いて危うく奴隷にされそうになるマホだが何とか勝利して、ようやく意気揚々と門番の元に向かうけど門番はなんでも喉が渇いているから通さないとか言い出す。そこで水を手に入れて渡すが「こんなのいらん。ロマネコンティもってこい」と言われてしまう。仕方なくロマネコンティを探すマホだがロマネコンティは最高級のお酒。簡単に見つからず途方に暮れていると、魔女教とか言われる宗教に誘われる。もう母を助ける為には神にでも縋ろう、と思ったマホがついて行くとそこでロマネ・コンティという男と出会った。ロマネコンティである。マホは「この人を連れて来いって意味だったのか!」と理解し、母親の事情を話し協力すると申し出てくれたロマネ・コンティを連れて門番の前に行った。
「仕事をサボるとは、アナタ、怠惰デスね?」
そんなロマネ・コンティの優しい説得によってようやく人里の外に出る事に成功する。
そして目的の薬草を手に入れる為にマホの旅が始まった。
山を越え谷を越え火山を潜り抜け氷の大地を生き抜いた。そうした果ての世界でようやくマホは薬草を見つける。
しかしその薬草を手に入れるには守護者と呼ばれる敵を倒す必要があった。マホは果敢に挑むも所詮は人間の女の身。妖怪の如き強さを誇る守護者には勝てない。
もう駄目なのか……敵の手に落ち諦めかけたマホの目の前に、救いのヒーローが現れる。
……うん、こんな感じだ。
とりあえず一言言わせて欲しい。長い! 長過ぎる! でも原案ではここにさらに色々と物語が付け加えられていたらしい。
……まぁやったよ。精一杯やりましたよ!
「マホ、負けません!」
「ぬわーッ!?」
全力で演じたよ。うん。
そして本日のハイライトも書いておこう。ヒーローの登場シーンだ。
『
「その程度か、勇者マホよ」
「もう……マホは、駄目です。だって、こんなの……っ」
諦めかけたマホの目から色が失われていく。
ダラリと伸びた腕は交戦する気も起きない事を表していた。
だが、その時。一つの声が響いたのだ!
『諦めるな!』
「誰だお前は!?」
響いた声にマホを倒した守護者が反応する。
同時、こんな音が聞こえてきた。
デーデッデーデレッデ!
『地獄からの使者。スパイダーマッ!!』
そして現れたのは、ヤマメさんだった。
』
終わってから言うのもアレだけどよく拍手もらえたよね。
このヒーローショー。
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「……ヒーローショーってなんだっけ?」
「……さぁ」
「いや、これヒーローショーじゃないから! 絶対違いますからこれ!」
「……というかいきなりやれと言われてこれを演じ切れたフランが凄いわ」
読み終わった四人はそんな感想を述べた。