フランドールの日記   作:Yuupon

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十二月編6『物売るってレベルじゃねーぞ!』

 

 

 

 十二月一〇日

 

 

 西暦20××年、一二月一〇日、香霖堂が新型魔法器である『デバイス』の発売を前に、幻想郷人里の霧雨商店では多くの人が押し寄せていた。

 大勢の人が押し寄せる中、混乱が発生。怒号や悲鳴が飛び交った。

「オイこれ何とかしろよぉっ!!」

「押さないで! 押さないでください!」

「もう、モノ売るってレベルじゃねーぞ、オイ!」

 スタッフは懸命に人々を抑えようとするが人数が足りず失敗。

 最終兵器として発売までの三十分程、真横で突発的にアイドルのフランドールが「私の歌を聞けーっ!!」と叫び人々の注目を集め、ライブを行うことで人々の興奮をフランドールに向けることに成功。

 その後すぐに初期ロットが完売。それでもまだ買う客は大勢居たので生産ラインの見直しが必要と思われる。

 

 

 ……とまぁ、今日一日をまとめるとこんな感じだった。

 うん。今更だけど突発ライブはやり過ぎた感あるかもしれない。

 でもそれくらい人が集まってたんだ。

 というかお客さんを抑えるためにロープ張ったり、押さないでください! って言い回る役をしてたけど収まんなくてさ……。

 挙げ句の果てには人混みの中で誰かに胸とかお尻とか触られたし……ちょー最悪だよ!

 でも怒っちゃ駄目だから怒りを歌に変えて歌いました!

 集音魔法(マイク)の魔法を使って、ブラギの竪琴で弾き歌い。

 まぁかなり好評だったと思う。ライブ会場じゃないのにかなり皆楽しそうにしてたし。

 霧雨(父)からもお礼を言われた。

 いやー、でも売れて良かったよ。

 お客さんにも次の入荷は? って聞かれたし、張り切って作らないとね! 三十分程、覗きに来た霖之助さんもすっごい気合入れ直してたし!

 ともかくまずは私達も作れるようにならないと。

 よーし、頑張るぞーっ!!

 

 

 #####

 

 

「この時、私も買いに行きました。いや人多かったですよ。外の世界でのゲーム機の発売か何かかと思うくらい人が居ましたね」

「……そんなに人が多かったんですか。人混みだったからこそ痴漢に遭ったのかなぁ、フランさん」

「それよ! 本当に許せないわ、有罪(ギルティ)よ。いえ……それじゃ甘いか。これは……そう、戦争だろうが……っ! 思うだけならまだしも行動に移したなら戦争だろうが……っ!!」

 

 憤怒を表に出しながらレミリアが叫ぶ。

 心なしか鼻が尖り肩幅が広くなっているが、その言葉に早苗も頷いた。

 そして口元を吊り上げ目を狂気に染め、語り始める。

 

「その通りですよレミリアさん。

 

 私は『可愛い』が好きです。

 私は『可愛い』が大好きです。

 

 幼女が好きです。

 お姉さんが好きです。

 巨乳が好きです。

 貧乳が好きです。

 ツンデレが好きです。

 デレデレが好きです。

 ケモ耳が好きです。

 ロボ娘が好きです。

 妹が好きです。

 姉が好きです。

 

 この世のありとあらゆる可愛いが大好きです。

 

 さて、それを踏まえて質問します。

 あなた達は許せますか?

 金髪妹系ロリっ子純真賢い努力のアイドル吸血鬼フランちゃんの胸や尻に痴漢という邪悪な手を伸ばされる事が!

 

 そのような所業が許されて良いと思いますか!?」

 

「よく分かってるわね風祝! 勿論許されないわ! 戦争(クリーク)! 戦争(クリーク)! 戦争(クリーク)!」

 

 

『よろしい、ならば【戦争(クリーク)】です!』

 

 

 一方。

 

「……あの、霊夢さん」

「……なによ?」

 

 ワーワーと叫ぶ早苗とレミリアを他所にさとりは霊夢に話しかける。

 

「……次のページ、行きません?」

「……うん」

 

 本当に何とも言えない顔で霊夢は頷く。

 そんなの当たり前の話だった。

 

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 十二月十一日

 

 

 デバイスが発売された翌日。

「あ、髪切ったんですか?」

 寺子屋に行くと副担任の先生が髪を切ってきたらしく割とさっぱりしていた。

「おぉ、昨日な」

 そんな感じで私の質問は終わる。

 で、数分後。

 後から来た女生徒のmさんも先生が髪を切ったことに気付いたらしく、自分の頭を指差して「頭、行ったの?」という言葉を尊敬語に変えてこう言ったんだ。

 

「あたまいかれたんですか?」

「あっ」

 

 …………………ニヤリ。

 

「あぁっ! 痛い! やめ、やめてください! グリグリしないでください!」

 

 凄い良い顔をした先生に頭を両拳でグリグリされてた。

 

 

 #####

 

 

「相変わらずノリ良いわねこの先生」

「……というか生徒の反応も良いからこそ出来るんでしょうね」

「あー、確かに。生徒も大げさに反応してくれたらギャグとして消化出来ますからね、教育委員会とかに問題になりませんし」

「楽しそうで良いわね」

 

 

 #####

 

 

 十二月十二日

 

 

 今日は久々にネットをやった。

 ぐーやさんにオススメされて2ちゃんねるってサイトだ。

 

 

1 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:45:21.25 ID:布都ちゃん!

さっきから5分毎に火災報知機が誤作動するんじゃ。

音めっちゃうるさくて堪らない。

うう、誰か助けて欲しい。

 

20 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:56:08.93 ID:布都ちゃん!

ごめんなさい。

火事でした

 

21 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:56:57.74 ID:ナズリンリン

なんだ火事か

 

22 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:56:57.74 ID:毘沙門天の遣い!

派手にやるじゃねぇか!

 

23 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:57:28.01 ID:地底の主

……火事ならしょうがないですね。

 

25 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:58:19.56 ID:マスタースパーク!

人騒がせだな

 

29 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 19:59:51.38 ID:おくぅおくぅ!

よかったね! (火災報知器が)壊れてなくて!

 

…………………………

……………………

……………

 

354 名前:以下、ゆかりんがお送りします[] 投稿日:20××/12/12(木) 23:56:50.51 ID:豊聡耳神子

あれ? やけに焦げ臭い……?

ああっ!? 神霊廟が! 神霊廟が燃えてるううううう!

 

 

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「神子おおおおおっ!!」

「……あ、これ私もいたスレですね」

「居たとかそんなことより、というかこれガチの火事じゃないですか!」

「全焼だっけ? 確か」

「全焼はしてないわ。術で何とかしたとか聞いたけど……」

 

 何にせよ災難には変わらないわね、そう霊夢は呟いて次のページをめくる。

 

 

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 十二月十三日

 

 

 なんか面白い人に会った。

 すっごい天邪鬼なの。お団子をすっごく美味しそうな顔で食べた後に「最悪に不味いわ、二度と来ねぇ」って言ってたから少し驚いたけどよく見るとツノ生えてたし多分妖怪の天邪鬼だよね? 天邪鬼といえば言ってることが逆転するから人との会話が難しそうなもんだけど、店のおじさんが「おうまた来い!」って言ってたしかなり打ち解けているらしい。

 試しに話しかけてみると面白かった。

「こんにちは、今日は雲ひとつない快晴ですね」

「誰だアンタ、あとそうだな、濃い雲覆う雨空だ」

 早速反転。うん、天邪鬼で間違いなさそうだね。

 

「私は吸血鬼のフランです。貴女は……天邪鬼ですか?」

「私は鬼人正邪だ。私は天邪鬼じゃあないさ」

「正邪さん。私のスタイルってどう思いますか?」

「ああん? いきなりなんだよ。えっと、金髪のナイスバディなお姉さんってとこか?」

「ほうほう……やっぱり天邪鬼さんですよね?」

「違うぞ」

 

 ほら、面白い人だよね。

 

 

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 読み終わった四人の反応は芳しくなかった。

 

「ええー……私アイツ苦手なんだけど」

「……レジスタンス、鬼人正邪ですか。針妙丸さんをして『まさに外道』と言わしめた……」

「……端的にいえばテロリストですよね。あの人。幻想郷崩壊をもくろんで異変を起こしてますし、方法がえげつないですし」

「うわぁそんな相手と付き合いを持たないで欲しいんだけど……」

 

 いずれも微妙な顔つきである。

 しかしいつまでもそうしていられないので四人は次のページをめくった。

 

 

 

 

 

 


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