フランドールの日記   作:Yuupon

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50件近い誤字報告をして下さった方が居ました。
(どんだけ誤字ってんだ俺……)
本当にありがとうございます。




十一月編10『フランちゃんは怠いそうです』

 

 

 

 

 十一月一九日

 

 

 帰った、それだけ。

 

 

 

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「短っ!?」

「昨日までのやる気はどこに行ったのよッ!? 一日あたり四〇〇〇文字近く書いてたのにッ!!?」

「……こ、これは……」

「なんと反応すれば……いいんですかね?」

「と、ともかく次のページをめくりましょ? 何かフランが書けなかった理由が書いてあるかもしれないし」

「そ、そうしましょうか!」

 

 頷いて早苗が次のページをめくる。

 

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 十一月二〇日

 

 う—……怠い。

 あぁそうそう事の顛末を書かないとね。

 神綺さんのお宅に泊まっての療養は本当にただのお休みだった。

 ご飯を作ってもらって、神綺さんに可愛がられて、アリスさんと裁縫したなぁ。

 あっそうそう、夢子さんに私のメイド技術を見せてみたら普通に真面目な笑顔で『うちに来ませんか?』という言葉をもらえたよ。

 まぁそれはともかく。

「じゃあ元気でね。またいつでも来てちょうだい!」

「はい、ありがとうございました!」

 一泊してまだその頃は元気もあって、お世話になりましたっ! ってアリスさんと一緒に元の世界まで送り届けてもらったんだけど、紅魔館に帰ってから妙に怠いんだよね。

 神様の力だっけ? あぁ神格だ。アレが抜けてからやたら疲れてる。なんでだろうか……何もしてないのに体力がゴリゴリ削れていくんだ。

 そのせいで修行も満足に出来ないんだよね。

 もしかして魔界の瘴気にやられたのかな? でも体は健康そのもので体力だけが妙に削れてるんだよね。

 となると呪いの(たぐい)? 恨みを買った覚えは無いけど……、念の為調べてみようかな。

 ちょっと明日、永遠亭に行ってくる。

 

 

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「……魔界から帰って来たと思ったら今度は呪いですか」

「あぁ、これは覚えているわ。フランがベッドから起き上がらないまま『……ダル』って衝撃発言をしたものだから皆ビックリしちゃって……」

「普段から勤勉な人はちょっとサボるとすぐ周りに心配されるからねぇ。やれ体調が、やれ疲れがって。まぁ今回は本当に何か掛けられているみたいだけど……」

「いや……何となくその原因が想像ついたんですけど」

「え? 早苗、アンタ何か知ってるの?」

「知ってるというか……まぁ次のページをみましょうか。多分それでご理解頂けるかと」

「?」

 

 疑問符を浮かべる霊夢だが、言われた通り次のページをめくった。

 

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 十一月二十一日

 

 

 永遠亭に行った。

 で、診断結果出ました。

「身体から大量の力を吸い取られている……ですか」

「それも自分で発動した術みたいよ? 心当たり無い?」

「……最近使った術でそんなのあったかなぁ?」

 永琳さん曰く、私の体から絶えずエネルギーが吸い取られているらしい。それもかなりの力を。

 勿論私には心当たりないよ。そんな術なんて使ってないし。

 それでとりあえずお薬はもらいました。

「じゃあこれが薬ね」

「何ですかこのきのみ?」

「ボッコの実よ。体内のエネルギーを回復出来るわ。齧ってみなさい」

 言われるままに齧ってみる。

 一口かじって呑み込むと……、

「!?」

「その顔は効いたみたいね」

 ジュウッと体全体に一瞬で薬が沁みた。

 熱い。一瞬にして体温が跳ね上がる。代わりに体内に魔力や霊力といったエネルギーが戻って来た気がした。

「ともかくしばらく安静にすることね。私もそうなった原因を探ってみるわ」

「おっ……お願いします」

 未だ体内で起こる爆発的現象に戸惑いながら頭を下げて私はワープで帰った。

 で、

「やっはろーです、フランちゃん」

 帰ってみると早苗さんがいた。

 どうやら数学の授業で来てくれたらしい。けどごめんなさい。ちょっとやる気が出ないの。ダル……。

 すると早苗さんは私をみて首を傾げる。

「神格が消えてますね……それと怠いって、なんで怠いなら式神を出してるんです?」

「えっ?」

 式神が、なんだって?

「だから式神ですよ式神。普通に出しても疲れるのに、見る感じ相当強い式神出してますよね? ……様子から考えると神格があってパワーバリバリの時期に本気で籠めた感じの超エネルギー食うやつ」

「まっ、待ってください。式神って常にエネルギーを使わないと維持出来ないんですか?」

「いやそういうわけじゃありませんよ? 最初にある程度の力を込めて、そのあとは最初のエネルギーでやりくりさせる事も出来ます。なのに相当力を送り続けていたみたいですし、どうしたんですか?」

「…………、」

 ここで判明した衝撃の事実っ!!

 つまりこの倦怠感は全て私が神様パワー持ってた頃、力が有り余ってた頃に殆どの力を注ぎ込んで生み出したリアラさんが原因だった!!

 つまるところ解決法は一つだった。

「あの、早苗さん。お願いがあります」

「なんですか?」

「式神が消えない程度に送る力を抑えるとか出来ます?」

「出来ますけど……」

「そのやり方を教えて下さいっ!」

「は、はぁ、構いませんよ?」

 で、覚えました。

 それでやったら滅茶苦茶体が楽になりました。リアラさんには念話で事情を説明したからこれで完璧だよね。

 ……歩き回ることさえ辛かったから本当に良かった、切実に!

 

 

 #####

 

 

「というわけです」

「把握」

「納得したわ」

「……というか式神、そんなフラグになってたんですね」

「フラグ!? いや元々そんな術ってだけですから!!」

「ともかく次行くわよ、次」

 

 レミリアの声で一同は次のページは移る。

 

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 十一月二十二日

 

 

 復活!

 フランちゃん完全復活!

 体も完全回復だよ! ちょー元気! というわけで今日からまた香霖堂に行って商品開発だ! と思ったんだけど。

 

「駄目です」

「なんでよ咲夜!」

「もう七日も寺子屋に行ってませんから行って下さい」

「……ハイ」

 

 そんなわけで寺子屋だ。

 久々の慧音先生が鞭撻を握る。

「今日は外の世界の歴史について勉強しよう。関ヶ原の戦い以後徳川家康がその支配を強め、幕府を開いた話まではしたな。今回はそのさらに先。日本の鎖国と、キリスト教の禁教についてを話そう」

 禁教ねぇ。宗門改とかあの辺りかな。踏み絵をさせてキリシタンか判断するやつとかを思い出す。吸血鬼としてはお父様が「良いぞもっとやれ!」とか歓喜してたっけ。

 鎖国といえば皆は何が浮かぶかなぁ。

 

「天草四郎時貞を首領とした大きな反乱が起こり、隠れキリシタン達が集結した、それが――――」

 

「…………フッ」

 とか考えているとふと隣の席の男の子がガサゴソとキシリトールガムをこっそり取り出しているのが見えた。

「何やってるの?」

 小声で尋ねると隣の席の男子は無言でキシリトールガムを開けて食べ始めると一言。

「これが本当の隠れキリシタン……!」

 思わず笑いそうになって悶えたのは内緒。

 

 

 次に印象に残ったことが起きたのは一時間後かな?

 今度は副担任の先生の授業中の事だ。

 まず手始めに世界史の問題なんだけど「アメリカを発見したのは誰?」って問題を居眠りしていた子にあえて指名して起こしたのよ。

 その子が言った言葉。

「え……? お、俺じゃないって!」

 笑った。

 

 お次は同じ授業時間内のこと。

 外の世界で言う所の小学生から中学生の境目の頃の女の子ってよくメイクとかに興味持つ子がいるでしょ? 寺子屋に来てる子の中にもメイク好きな子が居て、で今日のメイクがあまりにも派手だったので流石に副担任の先生も気になったらしい。

 女の子の側によるとこう言った。

 

「……そのメイクはなんだ?」

「……何か問題が?」

 

 明らかに険悪な雰囲気。普段、副担任の先生のこんな姿を見ないからクラス内にも緊張がはしる。

 すると副担任の先生はおもむろにこんな話を始めた。

 

「そうだな、先生の過去の話をしようか。先生が寺子屋通いの頃な、三年間ずっとメイクしてた子が居たんだよ。その子どうなったと思う?」

 

「…………、」

 

 真剣な声色に女の子は思わず黙り込む。

 その様子を見て小さく笑うと先生は続けてこう言った。

 

「超メイク上手くなってた」

 

 いや怒らないんかい!! 当たり前過ぎて逆にクラスの皆笑ってたよ!! やっぱりいつも通りだった先生でした。

 

 

 あと最後に今日印象に残ったのは理科の先生かな。

 今日は星座の授業をしたんだけどその最中にこんな事を言ってた。

 

「実は痛みと星座は関わりがありまして、人は痛い時星座の名前を言うんですよ」

 

 例えば、と先生は魚座のA君を目の前に立たせる。

 それから軽く小突いた。

 

「うおっ!」

 

「はい、この通り痛みを感じた時反射的にうおって言いますよね。他にもありますよ?」

 

 立たされたA君は顔真っ赤だったけど先生は構わず次の生徒を呼ぶ。今度はいて座のB君だ。

 同じように目の前に立たせると理科の先生はB君の額目掛けて勢いよくデコピンした。

 

「痛てっ!」

 

「はいこの通り痛い時にいてっ、といて座を言うんですねー」

 

 じゃあ次で最後にしましょうか。と、先生は腕っ節の強いC君を呼ぶと自分を軽く殴るよう指示した。

 C君は先生を殴ることに躊躇いがあったみたいだけど、「はよ」という先生の言葉にしぶしぶ頷いて腕を振るう!

 

「みずがめっ!?」

 

 いや、それは無理があるよ先生。

 ただクラスで笑いは取れてた。というか大爆笑だった。

 

 #####

 

 

「小学校や中学校であるあるですよね。なんかフランちゃんのこういう子供っぽいところ久々な気がします」

「しばらく商品開発したり魔界行ったりだものね。そりゃあ周りの空気が違うわよ」

「……楽しそうで良いと思いますけどね」

「そうねぇ。私は小さい頃寺子屋通ってないしちょっと羨ましいわ」

 

 上から早苗、レミリア、さとり、霊夢の言葉だ。

 最後の霊夢の発言に少しだけ哀愁が漂っていたが、誰もそれを口にすることなくそっと次のページを開く――――。

 

 

 

 

 


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