フランドールの日記   作:Yuupon

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 誤字教えてくれた方、ありがとうございます。
 あと感想や評価もとても励みになっています。


 


四月編7『幼児退行した王』

 

 

 

 四月一八日

 

 

 最悪だ、咲夜に日記を見られた。

 『最近、妹様が様々なことにやる気になられていたのはこういうことでしたか』ってペンで書かれていた。

 色々はっちゃけて書いてたこの日記を、見られたことがどうしようもなく恥ずかしい。

 いや、でもあのそのこのどの、ああああああ!!!!

 

 (以下読めない文字の羅列でページが埋まっている)

 

 

 

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「……そう言えばフランが唐突に叫びだした日があったような」

「いや、発狂状態じゃないのこれ? 暴れてはいないの?」

「えぇ、それは大丈夫だったわ。いきなり叫んだからまさか狂気が再発したのかと……」

「再発って狂気は病気か何かか!」

 

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 四月十九日

 

 ……落ち着きました。うん、部屋に帰ったら私の日記帳が開かれてて赤ペンで添削されてたらそうなるよ。昨日書いた『こういうことでしたか』ってところに『頑張れ!』って判子と花丸書かれてたし。

 うわああああああ!! って叫んだせいでお姉様がまた私の狂気が再発した! って叫びながらグングニルの槍を片手にすっ飛んで来たのにもビックリしたけど心配してくれてるんだなって嬉しくなった。

 ……でもさお姉様。本当に狂気に染まったか確かめもせずにいきなりグングニルぶん投げるのは私、どうかと思うの。お陰で私の部屋半壊したし。ついでにお姉様がぶん投げたグングニルの槍、そのまま紅魔館の外へ飛んでいったし。

 

 ……というか昨日今日とあまり日記書けてないな私。ちょっと飽きてきているというかだれてきている気がする。

 咲夜に日記を見られたのもあるんだけど、なんだか日記と向き合いたくない感じ――分からないかな?

 

 

 

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「……ねぇ咲夜」

「はい、なんでしょうお嬢様」

「アンタもうナチュラルに現れるわね……」

 

 メイドってすごいわねー、呆れすら混じった霊夢の声色だった。

 それはともかくレミリアが質問を述べる。

 

「なんでフランの日記に添削なんか入れたの?」

「簡単です。妹様が日記というものの意味を履き違えていたからですよ」

 

 そう、端的に咲夜は答えた。

 

「……いやまぁ確かに今までの日記というより小説だけどね。一日当たりの文量多いし。一日当たり三〇〇〇文字は書いてるわよね。そりゃ飽きるわ、しかも毎日毎日」

「そうなの。そこで正しい日記の書き方を教えようと思ったのよ。あれじゃ長続きしないし……折角やる気なんだから」

 

 ちなみに3,000文字を現代時間に換算して約一時間弱である。

 ただでさえ修行やらで精神がゴリゴリ削れているのに一時間も机に拘束されるのは苦行以外での何物でもないだろう。元より誰にも読まれないはずの日記なのだから。

 

「メイドとしては主をより良い方向に導く。それはお嬢様も妹様も変わりませんわ」

 

 言って瀟洒かつ恭しく十六夜咲夜は(こうべ)を垂れる。

 しかし空気を読まない霊夢は言った。

 

「で、その妹様と接触するたびに血を噴き出す件について」

「おっと、用事を思い出しました」

「おいこら」

 

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 四月二十日

 

 

 咲夜からアドバイスをもらった。日記というのはもっと簡単で良いらしい。一々長ったらしく書くと長続きしないそうだ。途中で投げ出してしまうのは何よりも駄目らしいので気を付けたい。

 

 午前の修行は順調だ。やっと安定して気弾を出せようになってきた。次の目標は身体に纏うことだけどすぐに出来ると思う。

 あと向日葵の種はまだ芽が出ない。もうしばらくかな。

 

 で、ここから本題なんだけど。

 今日。紅魔館に妖怪の賢者様が来た。

 八雲紫(やくもゆかり)って名前で金髪のナイスバディなお姉さんだった。お付きの人――式って言うらしいんだけどその式の九尾の狐こと八雲藍(やくもらん)(かつて見たことないおもち(巨乳)の人)と猫又の(ちぇん)ちゃんを連れて来ていた。

 どうやら昨日投げたグングニルが人里に墜落するところだったらしい。すんでのところで藍さんが気付いて慌てて紫さんのスキマを使って回収したらしいけど、危うく里の多くの人間が死ぬところだったんだって。

 物凄く怒られてて、最初は余裕そうにしていたお姉様が最後には大泣きしてた。妖怪の賢者様って凄いね。元々チョロいとはいえあの尊大にして無駄なくらいのプライドを持つお姉様を大泣きさせるなんて。

 しかも最後は泣き疲れて寝るっていう……、カリスマって何処にあるんだろう(遠い目)

 

 あ、そうそう。(ちぇん)ちゃんだけどどうやらチルノちゃんの友達らしい。今度遊ぼうって約束した。

 

 

 

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「レミリア、アンタ……」

「……わ、私は悪くないわ」

「泣いて許されるって子供じゃない。いや、その薄紙みたいなカリスマが役立った貴重な出来事かも……」

「…………ふ、ふん! こ、紅魔の王は成長したの! 過去の話をほじくり出されても今の私に効くと思わないことね!」

「レミリアー、涙出てるわよー?」

「汗よ!」

「あー、うん。もうそれで良いわ」

 

(もっと言うと妹にサラッと『チョロい』だとか『無駄なプライド』とか言われてるけどそれは良いのかしら) 

 

 色々心配になる霊夢だった。

 

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 四月二十一日

 

 

 昨日のお姉様は酷かった。お陰で今日の朝、若干幼児退行してた。豆腐メンタルを虐めてはいけないと学んだよ。でもいつもより口調が子供っぽくなってたお姉様のお世話をする咲夜が心なしか楽しそうに見えた。

 昼頃には元に戻っていたけど大丈夫かな? 幼児退行していた時のことを覚えていたら、正直自殺するんじゃないかってくらいな言動してたし。

 まあ多分大丈夫だろう。

 あ、あと気を纏えるようになった。それと二百メートルのタイムが一三秒から八秒まで上がってた。

 

 

 

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「幼児退行も話したいけどちょっと待て最後! サラッと進化し過ぎじゃない!?」

「……………、」

「あぁ! なんかレミリアが魂抜けたような顔してる! ちょっとアンタしっかりしなさいよ!」

「……悲しきものだな、若さ故の過ちは」

「たった一年前でしょうが! 現実逃避すんな馬鹿! 吸血鬼の王を自称してたアンタは何処いった!?」

「いや、だってもう何も言えないわよ。こんなの、ズルすぎる。正直今でも時折思い出しては衝動的に死にたくなるし……」

 

(…………うん、これ以上突っつくのはやめておこう)

 

 ガチで現実逃避している顔を見て霊夢はそう決めた!

 

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 四月二十二日

 

 

 やった。気で空が飛べるようになった。一度出来ると一気に色々出来るようになるね。封印状態の身体能力も急激に伸びてるし、順風満帆とはこのことか。

 次は気を増幅させ、怒りのパワーで目覚める変身を覚えるのが目標ってめーりんに言われた。それが出来たら戦闘力が数百倍になるんだって。それが出来たらお姉様超えは間違いなしだね。

 

 あと今日は午後に妖怪の山に行った。

 大分期間空いちゃったけど、パソコンの使い方を教えてもらうためだ。

 妖怪の山の川沿いに歩いていると途中、山に住む白狼天狗(はくろうてんぐ)に襲われたので気を当てて気絶させておいた。

 で、渓流付近で河城(かわしろ)にとりさん、っていう青髪で緑色の帽子をかぶった河童さんに出会った。最初は光学迷彩? ってのをかけてたみたいで姿が見えなかったけど私の能力、『ありとあらゆるモノを破壊する程度の能力』で何処に居るかはお見通しである。

 すっごい怯えられたけどパソコンを見せると途端に元気になった。あと彼女はとても説明が上手かったので私も使い方を理解した。

 彼女の工房も見たけど凄かったよ。機材だらけで。ジーって見てたら「気になるの?」って言われて、頷いたら「じゃあ今度教えてあげよっか?」って提案してくれた。

 是非お願いしよう。機械類も弄れるようになりたいし!

 最後には盟友って呼んでくれるくらい仲良くなれたし、充実した一日だったなぁ。

 

 

 

 

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「……この段々魔改造されていく感じ」

「いや、ちょっと待ちなさいよ。戦闘力が数百倍って美鈴そんなに強かったの!? というかそんな技があるなら真っ先に主たる私に教えなさいよ!」

 

 各々感想は違うが特にレミリアはお怒りのようだった。ハァ、と溜息ついて霊夢は言葉を発する。

 

「だってさ、咲夜。そこんとこどうなの?」

「実は門番も一度提案したみたいだけど厳し過ぎて一日目でやめたって……」

「そんな技があるって言えばやめなかったわよ!」

「……ま、忍耐力ない奴には無理だったってことでしょうね」

「……もう霊夢追い返そうかしら」

 

 ポンポンと頭を叩かれるレミリアはボソリと呟いた。

 

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 四月二十三日

 

 

 今日はチルノちゃん達と遊んだ。

 メンバーはチルノちゃん、大ちゃん、リグルちゃん、ルーミアちゃん、ミスティアちゃん、橙ちゃん、あと私だ。

 とりあえず新顔をサラリと書いておこう。

 

 リグルちゃんは蛍の妖怪だ。緑色の髪でボーイッシュな見た目をしている。ゴキブリという言葉が嫌いらしい。

 ルーミアちゃんは宵闇の妖怪だ。同じ濃い黄色の髪なのが私の中で好印象。黒っぽい服を着ていて口ぐせは「そーなのかー」。

 ミスティアちゃんは夜雀の妖怪だ。ピンク髪で、歌が得意らしい。屋台を開いていて彼女が焼くヤツメウナギは大層評判だとか。今度買いに行こう。

 あと前回書き忘れてた橙ちゃん。

 橙ちゃんは猫又の妖怪だ。多分私達の中で一番しっかりしてるのもこの子じゃないかな? 見た目も精神年齢も多分私より幼いけど、同じ式の八雲藍さんのような立派に式になれるよう日夜努力しているらしい。素直に凄いって思う。

 あとここにいる皆は寺子屋にも通ってるんだって。人里の寺子屋も二種類あって一つは人間が通うものともう一つは私達みたいな妖怪が通うものに分かれているらしい。多分同じクラスだよーってことだった。

 

 皆で弾幕鬼ごっこをした。鬼が弾幕を放って、当たったらその人が鬼になる。そんなルールだ。単純だけど思ったより楽しかった。皆かなり本気でやってたみたいで最初は『normal(ノーマル)』だったのに最後の方は『lunatic(ルナティック)』くらいの勢いになってた。

 ……まぁ、普通にやればまず被弾しないから封印と猫耳メイド服付けてやったけど意外に被弾するものだね。最近上手く行き過ぎてたけど修行頑張らないと!

 

 

 

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「子供の仕事は遊ぶこととはよく言ったものね」

「……そうね。友達も出来たようで姉として嬉しいわ」

「アンタ、実はちょっと羨ましく思ってない?」

「ハッ、流石に子供扱いしすぎよ霊夢。例え幼児退行しようとも私は紅魔館の当主よ――そんなものとうの昔に置いてきたわ」

 

 そこで一呼吸おいてレミリアは言う。

 

「――だから気にすることじゃないわ。割り切った話だから」

「――――そう。で、本音は?」

「ちょっとだけ羨まし……ハッ!?」

「今度混ぜてもらうよう頼んどいてあげるわ。ちょっとくらい遊んだって今更アンタの地位は揺らがないわよ」

「う……うー!!」

「はいはいハメやがって、って顔しないの。それに変にシリアスやったりカリスマ発揮するくらいならやっぱアンタはそんな風にしてる方が良いわ」

 

(……つかアンタが真面目ぶると妙にやりにくいのよ)

 

 ポンポンと子供のようにあやしにかかる霊夢はそう思った。

 そして次のページをめくる――――。






今回出てきたネタ
・赤ペンチェック(赤ペン先生)
・グングニルが人里へ(レミリアのグングニルで幻想郷がヤバイ、より)
・藍様は巨乳(おもち、二次創作ネタ)
・怒りのパワーで目覚める変身(DBよりスーパーサイヤ人)
・normal(ノーマル).llunatic(ルナティック)(東方project本編の難易度設定)

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