フランドールの日記   作:Yuupon

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十一月編3『バリアジャケットなんて(ry』

 

 

 

 十一月七日

 

 

 事故に対する備え。

 難問だよね。杖型のデバイスだからなぁ……。しかも量産型で尚且つ売って利益を出すことが前提だとすると中に内蔵出来る魔法陣にも限りがある。

 大体、自転車とかと同じくらいの値段を想定してるけど……難しいね。

 それに事故を防ぐにしてもどう防ぐかも問題だよね。

 飛行中の霊力切れで落下した場合。相手の弾幕をモロに受けた場合。

 それらの怪我を都合よく無くす……。バリアーとか?

 バリアーと聞くと前にパチュリーと考えてた反射とかを思い出すけどあんなもん実用化出来る気がしないし値段が張ること間違いなしだ。

 そして。

 ……うんうん唸りながら私は考えました。

 デバイスは魔道具だ。なら私より魔法に詳しい人に聞こう、と。

 で、

「これ、どうにか出来ないかな?」

「うーん……デバイスならバリアジャケットで良いんじゃないかしら?」

「え?」

「だってリリなのでしょ?」

 大図書館の本の虫ことパチュリーに相談してみたけど話が噛み合わなかった。

 リリなのって何? 詳しく話を聞こうと思ったけど「これからちょっと友達と新作同人作るからまた今度ね」と行ってしまった。

 パチュリー、お姉様以外の友達居たんだね。

 

 で、パチュリーが言ってたバリアジャケットについて小悪魔に聞くと「リリなの……あまり詳しくありませんが、魔法少女がレーザー放って全てを蹴散らす話と聞いた覚えがあります。で、バリアジャケットは戦闘の時に相手の魔法を受けても死なない程度にダメージを抑える、いわば防具だったかなぁ……」という返事がもらえた。

 防具かぁ。

 確かに杖って魔法少女って感じがするかも。でも商品的に男の人にも売るからなぁ……。

「あのー妹様」

 腕を組んで考えていると小悪魔が何やら声をかけて来た。

 何? と聞き返すと彼女は言う。

「えっと……杖にテレポートの魔法を入れておけば良いんじゃないでしょうか? 発動条件は強い衝撃を感知した時にすれば落下時でもレーザーに呑み込まれた場合でも対応出来ますし」

 それに一度テレポートが発動した杖に、人を雇って有料でテレポートの魔法をまた充填するサービスを行えば継続的に商売を続けられますし、と彼女は言う。

「目から(たい)だよこあ!」

「いや、(うろこ)ですよね? 目から鯛が出て来たら怖いですよ?」

 なんにせよナイスアイデアだよ!

 それなら魔法分のコスト回収は出来るし、魔法のスタッフもアテがある。魔理沙やアリスさん、それに描写してないけど香霖堂でよくよく本を読んでいる妖怪のお姉さんも教えればいけそうだね。特に妖怪のお姉さんは香霖堂でよく見かけるから、やってくれそう。

 あと事業にするならまたレミィたんみたいに人形を作っても良いかもしれない。コストはほぼゼロで有能な人材が作れるし。

「すばら、すばらだね。夢が膨らむよ」

 それに森近さんもかなりの実力者だからテレポートとかすぐに出来そうだよね? 

 早速明日香霖堂に行かないと!

 

 

 #####

 

 

「課金みたいね」

「むしろパンク修理みたいなものでしょう。車で事故を起こしたあとにエアバッグをまた収納するみたいなものです」

「……ただ結構格安でやってくれますから稼ぎ方が汚いというようにはあまり言われてませんよね。転移先は本人の指定した場所に登録出来ますし。情報管理もパソコンで行なっているので間違いもありませんし」

「というかパチェ、同人誌作ってるとか言ってるけどどういうことよ? 知らないわよ私」

「……え、ご存知無かったのですか? えっとあぁそうですか。パチェも私と同じく友達が少ないぼっちだと思ってた、と。あと同人に関してはR18は作ってないのでご安心下さい」

「理解が早いけど別にぼっちだと自覚してるわけじゃないからね! あとなんでアンタがパチェの同人を知ってるのよ!?」

「……だって、同じサークルメンバーですし。それにパッチェさんは絵も文章もお上手で、私がプロットを書いて彼女が絵を担当……なんて事もありますね」

「まさかのサークルメンバー!? え、しかもパッチェさんってあだ名まであるの?」

「……いえ、同人ネームです。ネットネームみたいなものですよ」

「説明ありがとう、でも申し訳ないんだけど私、そのネットがどういうものかもまだ理解してないから!」

「……超大雑把に言うと便宜的なネーミングです」

「……なるほど」

 

 超噛み砕いた説明でようやく納得したらしいレミリアは、つまりパッチェっていうのはパチェの同人ネームなのね? と考える。

 

「その通りです。ちなみに私はさとりんという名前で活動しています」

「……うん、分かったわ。分かったからもう良いわ」

 

 丁寧に説明してくるさとりに流石にどうでも良いと思い始めて来たレミリアはたじたじである。

 だが、その様子も心を読んで理解したのかさとりは一旦それ以上の会話をやめ、次のページをめくるのだった。

 

 

 #####

 

 

 十一月八日

 

 

 香霖堂に行った。

 けど森近さんは留守だった。タイミング悪いね。

 仕方なく予定を変更して、ちょっと前々からの疑問を解消する為にアリスさんの家に行くことにした。

 疑問っていうのは勿論、レミィたんのことだ。

 アリスさんに聞きたいのは一つ。

「で、人形に魂が宿ることってあるんですか?」

「もうそれ人形じゃなくて付喪神じゃないの?」

「おうっ、マジですか?」

 ストレートにバッサリ言われた。

 え、あ、そうなんだ。付喪神なんだ? 人形じゃなくて? へー、そう。ふーん?

「というか付喪神を生み出したことの方が私にとっては驚きよ。貴女、いつの間に神格を得たの?」

「神格なんて得てませんよ? そもそも私ただの吸血鬼だし」

「ただの吸血鬼は太陽の下を堂々と歩いたり、流水の中を悠々と泳いだりしないと思うのだけど?」

「いや、あれ魔法ですから。素で行ったら普通に瀕死になりますよ」

「でも、この前橙ちゃんの家に行ったって聞いたけどその時にエム×ゼロの魔法を使ったって聞いたわ。あの魔法は自分が発動している魔法すらも打ち消すから、その間太陽に照らされた筈なのに話を聞く限りノーダメージなのはどう説明付けるの?」

「……えっ?」

 えっ、あれ? あっ、確かにそうだ。

 あの魔法は自分の周りに円状の魔法無効化空間を作るもの。だからこそその間私が普段使っている影魔法は打ち消されている。

 ……なんで私無傷なんだろう?

 そういえば最近早苗さんもやたら私に触れて目が死ぬんだよなぁ。「また神格化が進んでる……」とか呟いてたし。

 えっ、私知らない間に種族を乗り越えちゃった?

「ど、どどどうしようアリスさん!」

「落ち着きなさい。というか気付いて無かったのねこの子。変なところで天然なのかしら?」

「で、でも神様だなんていきなり言われても……」

 オロオロしているとアリスさんが溜息を吐く。

「…………はぁ、仕方ないわね。暫く帰郷するつもりは無かったけど、もし神格化をどうにかしたいならアテがないわけじゃないわよ?」

「何とか出来るんですか!?」

「えぇ。私の故郷でなら、可能かもしれないって程度だけど。そうね……一週間後は空いてる?」

 一週間後といえば十一月十五日だよね。

「空いてます!」

「じゃあその日から五日くらい時間を作れるかしら?」

「多分大丈夫です」

「なら、その日の朝に私の家に来て頂戴。私の……故郷に連れてってあげるわ」

 なんか最初の予定とは違っているけど神様になるって吸血鬼としては問題だからこれは仕方ないと思う。

 というかいつの間に神格化したの私!? ……うぅ、なんか怖い。

 

 

 

 

 #####

 

 

「……数学の授業を建前にってわけじゃないですけど、なんか見ない間に益々フランちゃんの神格化が進んでたんですよね。レベルとしたら現人神レベルなんですけど与えられた力が半端じゃなくって……多分月に聖人二人と大量の不浄を抱えつつ行ったことが神話にでもなって跳ね上がったんだと思われますが、正直どうしようかと思ってた時期ですね、この頃は」

「そんなにヤバかったの?」

「はい。諏訪子様や神奈子様が本人達に会って話をつけるかという段階まで悩んでいましたね」

「……それは、まぁ相当ですね」

「というかその、アリスって人の故郷って何処なの?」

「確か……魔界だったかな?」

「魔界ねぇ……中々良い名前、じゃなくて危険そうな場所だけど」

「ともかく先を読みましょ、先」

 

 魔界というフレーズに少しそそられるレミリアだが、すぐにその雰囲気を消散させると代わりに不安そうな顔をする。

 が、霊夢が気にせず次のページをめくるのだった。

 

 

 

 




 


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