ありがとうございます。
四月十五日
今日も今日とて修行なり。
やあ皆大好きフランちゃんだよ☆
……私は日記に何を書いているのだろうか。
とりあえず今日の午前はマラソンだった。あの猫耳メイド服を装着し走る走る! ゼーゼーハーハー! いや疲れるよ、本当に。
ってか今更だけど水泳も地味に体力削られるし。日付見なよ、今四月だよ? 寒いし冗談じゃなく体力が削られるのよ。終わったあとはレーヴァテインで温まるくらい寒い。ほんと修行中のお坊さんじゃないんだから……。
まぁめーりんもやってるから文句も言い辛いけど。
で、それはともかくだよ!
今日の午後さ、久々にパチュリーの大図書館に顔を出したら……。
「じゃあ借りてくぜ」
十数冊の本を風呂敷に包んで逃げていく泥棒を見つけたの! 白黒の服で……なんていうか魔理沙みたいな服だった。口調も何処となく似てるけど、魔理沙がそんな事するはずないし別人だと思う。
地面を見るとパチュリーが「むきゅう……」って気絶しててこあさんがあわあわしていた。
取り返さなきゃ! って思って追いかけようとしたら泥棒がレーザー撃ってくるしパチュリー達を守らなきゃで結局逃げられてしまった。うぅ、悔しい。顔すら見れなかった。
でも流石にキュッとしてドカーンはやり過ぎ扱いされてお姉様に地下行きを言い渡されるかもしれないしどうするのが正解だったんだろう?
明日咲夜に聞いてみよう。
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「魔理沙ね……パチェも毎度毎度可哀想に」
「見た感じでパリッ、分かるのにパリッ、魔理沙じゃないって断定するってパリッ、あの子将来変なやつに騙されないでしょうねゴクン」
新しく淹れ直された紅茶を飲み、クッキーを食べと優雅な二人である。…………特に霊夢が。
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四月十六日
寒い寒い寒い。
今日は温度がいつもより低くて水が冷たかった。めーりんは「気を全身に浸透すれば大丈夫です」とか言ってたけど私、まだ気を使えないから! 何となく気の力っぽいのは感じれるようになってきたけど自由に動かせるほどじゃないのよ! ……多分、これからもっと頑張れば気を使えるようになれそうだけどね。
私だってただ辛い修行を続けてたいわけじゃないし、実はめーりんの動きはよく見てたよ。気の流れもね。でもやっぱり難しいや、しばらくやってきて、ただ教わるだけじゃなくて自分から技を盗まなきゃならないことには気付いたけど、やっぱり厳しいよ。
めーりんの修行。弟子の意欲が湧かない限り、永遠に気を身に付けることが出来ないって考えるとスパルタだなぁって思う。でも師匠としては凄いのかもしれない。弟子の自発的行動を待つって精神的にキツそうだし。
午前はそんな感じだった。で、午後だよ。
「ねぇ、咲夜ー。大図書館に泥棒が現れたんだけど……」
「ふむ、妹様。その泥棒とは白黒の服を着た方ではありませんでしたか?」
「凄い! なんで分かったの?」
本当になんで分かったんだろう。流石メイドだよね! 実は最近咲夜も大分異常だと思ってる私なのだ。
だってそうでしょ? 名前呼んだだけで次の瞬間には「はい」って隣にいるんだもん。家事も本気出した時は掃除をしていると思ったら私達が丁度紅茶が飲みたくなるタイミングで飲みたい銘柄の紅茶を望まれる前に出してくるし、お姉様と博麗神社に行った時も名前呼んだら現れたし。一流のメイドって凄いよね。
憧れの目で咲夜を見ていると彼女は小さく頷いて、
「……なるほど。妹様、もしかしてその泥棒とはこちらの方ではありませんでしたか?」
「うわっ!?
直後、虚空から黒白の服を着た人が床に落ちた。
ドンガラガッシャン! そんな音を立てて風呂敷から何冊かの本が零れ落ちる――寸前に咲夜がまとめてキャッチする。
「時間停止?」
「えぇ、してその不届き者はこの方で間違いありませんか?」
「う、痛ってぇ。何処だよここ……紅魔館? アレどうなって」
コレ、と指差された人の荷物を見る限り間違いなく黒だろう。私が頷くと、泥棒さんが頭をさすりながら立ち上がり――辺りを見回してそう言った。
その声を聞いてあれっ? って私は小首を傾げる。聞き覚えのある声だったのだ。
思わず目をパチクリして改めて泥棒さん(仮)を見つめる。ブロンドのかかった金髪に、白黒の魔法使い風の服装の女の子――いやこれはもしかして。
そう思うと同時、咲夜がナイフ片手に泥棒さん(仮)に声をかける。
「こんにちは、魔理沙。で、貴女昨日パチュリー様の大図書館に来なかった?」
「うおっ、咲夜か! なんで私をここに連れてきたんだ!」
それは紛れもなく魔理沙だった。
急に連れてこられたことに納得がいってないのか酷く立腹した様子で咲夜に問い質している。が、今回は咲夜は一味も二味も違うようだった。
ヒュッ。
そんな風切り音を立てて魔理沙の頬をナイフが通り過ぎる。僅かに掠った傷口から一筋の紅い液体が流れた。
「…………ッ!?」
「質問に答えなさい。貴女、昨日パチュリー様の大図書館に来たわね?」
「ど、どうしたんだよいきなり」
真剣モードだった。いや、殺気すら混じっていたように思う。戸惑う魔理沙に対し咲夜は次のナイフを構える。
だけどこれ以上は見てられない。慌てて魔理沙の前に飛び出して私は両手を広げる。
「駄目だよ咲夜! 魔理沙が犯人だって決まったわけじゃないのにこんなこと――――」
「失礼ですが、妹様。『その本』は彼女の家にあったものです」
はぁ!? えっ? なんで!?
ともかく訳が分からなかった私だけど、このまま咲夜に任せるわけにはいかない。
……咲夜と魔理沙の殺し合いなんかみたくないし。
「とにかく私がなんとかするから!」
苦し紛れにそう言って魔理沙を引っ張って行く。
行く場所は私の部屋だ。さっきの咲夜はいつもと違って怖かった。問い質すにしてもあんなやり方は駄目だと思う。
そもそも魔理沙は犯人じゃないのに! ……多分。
で、部屋に戻って魔理沙から証言を聞くとこんな感じだった。
「私、実はよく弾幕ごっこがてらパチュリーの大図書館に本を借りに来るんだよ。昨日もそれで来て……」
それを聞いてビックリすると同時に申し訳ない気持ちになった。
だって、泥棒が現れたって騒いだのは私だったからだ。
勘違いだったのにありもしない泥棒を捏造してしまった。慌てて謝ったよ。「ごめんなさい」って。私のせいで咲夜が勘違いして魔理沙を連れて来たんだって。
……私のせいで危うく二人が殺しあうかもしれなかったこともちゃんと説明した。
話しているうちに、本当に酷いことをしてしまったんだって思いが溢れてきて涙がボロボロ零れた。
それからはよく覚えてない。ずっと泣きながら謝る私を魔理沙が辛そうな顔で宥めてくれていたのは僅かに覚えている。次に私が目を覚ます頃にはもう魔理沙は帰っていて、タオルケットが掛けてあった。
きっと魔理沙が帰る前に掛けて行ってくれたんだろう。
追記
翌日、魔理沙がパチュリーに本を返しに来たらしい。
パチュリーが凄くビックリしてた。よくは知らないけど結構な量だったのは分かった。こあさんが忙しそうに働いてたし。
あとは魔理沙とパチュリーがすっごく長い時間話をしていた。内容は知らないけどこれからも二人の間で本の貸し借りは続ける事にしたらしい。……良かった。
魔理沙から伝言もあった。
「フラン、お前の姿見て目が覚めた。ゴメンな……そしてありがとう。これからもよろしく頼むぜ」
だって。ゴメンな、っていうのはよく分からないけど魔理沙が何か思い直してくれたのなら良かったと思う。
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「そういえば……この日から魔理沙が本をちゃんと返すようになったってパチェが言ってたわね」
「真実は……まぁ知るだけ野暮か」
まぁ咲夜の行動もちょっとやり過ぎだけどね。
咲夜は私達に過保護なのよ。特にフランには。
そんなことを言い合い二人のお茶会は続く。
「……フラン、良い子ね」
「そうね。お姉様と違って本当に素直で良い子よ」
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四月十七日。
最近、午前の修行効果かようやく気の力が分かってきた。というかまだ感覚も掴みかけなんだけどやってみたら使えてみたってのが正しいのかな?
簡単に言うと。両手を合わせて「はーっ!!」ってやってみたら何かが出た。赤い光線みたいな何かだ。妖力でも魔力でも無かったから多分これが『気』なんだと思う。
ボガン! って放たれた光線は意外と威力が高かった。まさか出るなんて思ってなかったもんで、紅魔館を囲む煉瓦造りの垣根に向けて撃っちゃったんだけど普通に貫いたからね。
お陰で今日の修行はその修復になっちゃったよ。封印に猫耳メイド服羽織っての修復作業はなかなかに疲れた。足腰と腕が痛い。
で、その日の午後。
昼ご飯を食べ終わる頃には全回復していた私は咲夜の元に行った。
ちょっと気になってたんだ。魔理沙の件で彼女の過激な部分を見ちゃったし、無理やりその場を預かったことで嫌われてないかなって。
で、私が行くと咲夜は少し驚いたような顔をしていたけどとても優しい顔をして迎えてくれた。良かった、怒ってないみたい。
「咲夜、あの時はゴメンなさい」
あの時は魔理沙の味方をしたけど私は咲夜も大好きだよ! そう言ったら咲夜は赤いものを噴き出して倒れてしまった――ように見えたけど一瞬視界がブレて元通りになる。
あれ? 錯覚かな、それとも時間停止? いや、錯覚だよね。
「妹様……いえ、こちらこそ出過ぎた真似をお許し下さい」
うん。じゃあこれで仲直り!
嬉しくてギュッと抱き着く。なんか咲夜はプルプルしていた。顔は見えなかったけどなんだったんだろ? 咲夜は凄い忠誠心を持ってるからもしかして喜んでくれてたのかな?
それなら嬉しいなぁ。
でも、結局咲夜が魔理沙にナイフを向けた理由はよく分からないんだよね。泥棒だからって言えばそれまでだけど知らない人じゃないのに。
それに全部勘違いで私が悪かったわけだから、危うく咲夜は何も悪くない人を傷付けるところだったって考えると……うん。これ以上考えるとまた泣きそうだしやめよう。魔理沙も許してくれたし。勿論、全部忘れてなんてことは許されないからこの罪はしっかり背負っていこう。
次は二度とこんなことがないようにーー教訓としてね。
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「血を噴き出すって咲夜……」
呟いて、レミリアは首を横に振る。
それよりも先に言うべきことがあったからだ。
「…………ねぇ、霊夢」
「大丈夫、言わなくても分かってるから」
頭が痛そうに二人は顔を見合わせる。
そして一言。
「「(フラン)それこそ全部勘違いよ」」
それからクッキーを一枚取り、霊夢が言う。
「……素直過ぎるって損ね。前向きなのは良いことだけど感受性が高過ぎるわ。つかこの子天然入ってるわよ」
「……お互いを仲良くさせようとしているあたり良い子なんだろうけど……。ナチュラルに勘違いしているあたり天然というかポンコツというか……」
レミリアもそれに同調した。我が妹ながら……とか何とかボヤいている。その様子を一目見て霊夢は呟いた。
「まぁ可愛いモンだけどね。どちらにせよレミリア、アンタほどじゃないわ」
「ハッ、この私がポンコツ? 何を言っているのよ霊夢」
「………………、」
「えっ? 何で黙るの? えっ?」
「……可哀想に」
「何が!? 私の何が可哀想なの!? ちょっと何か言いなさい霊夢ーーっ!!」
霊夢の行動に不安を煽られたレミリアはガックンガックンと霊夢の肩を掴んで揺さぶり始める。
(……コイツ弄ると面白いわね)
ちょっとボケるだけでツッコミを入れてくれるカリスマ吸血鬼を見て、ちょっぴり嗜虐心が湧く霊夢であった。
今回出てきたネタ
・本泥棒魔理沙(二次創作ネタ)
・むきゅ(二次創作ネタ、パチュリーの口癖)
・一流のメイド(人外です)
・気の光線(かめはめ波)
・血を噴き出す(十六夜咲夜 二次創作ネタ)