フランドールの日記   作:Yuupon

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十月編7『流行病』

 

 

 

 十月十八日

 

 

 最近ますます秋めいてきた。

 で、思ったけど秋って食欲の秋とか読書の秋とか運動の秋とか言うじゃん。

 でも私って運動とか食欲の秋は満喫してても最近読書はあんまりしてないからやることにしました。

 折角なので買ってきたよ。

 お姉様の書いた「全世界ナイトメア」。『こんなに月が紅いから……本気で殺すわよ?』永遠に紅い幼き月が放つダークファンタジー巨編!

 ……帯からして地雷臭するけどまぁ読む。

 漆黒の闇。夜に生きる者を除き不可視の夜。

 新月なる真の暗闇の中、その運命を背負いし少女は迷いのない動きでその紅い館を歩いていた。

「……」

 館には彼女の靴音だけが響いていた。カツ……カツ……と革靴(ローファ)の音が館内を反響する。

 そして如何ばかりの時間が経過しただろうか。

 目的の部屋に辿り着いた彼女は初めてその深淵のように深く美しき声を発した。

「私を呼んだのは……貴方?」

 

 』

 

 あれ? 意外に読める?

 いや、所々痛いワード入ってるけどさ。ついでに話もよく分からないし面白みも今の所ないけど。

 ともかく読み進める。けど、

 

 『

 

「クッ……ハハッ。そうか、世界は私を求めていたのだな!」

「嗚呼。其ノ通リ哉。汝ハ吸血王ノ遣イ也」

 

 それは天上なる世界との邂逅。少女が其の一端に届きし一幕。

 嗚呼、私は運命に定められし者だったのだ。それを理解する。

 深淵の契約は今満たされた! 嗚呼、始まりの空也。そして原初が動き出す!

 

 』

 

 あっ、駄目だ。なんか覚醒シーンあたりでいきなり文章が理解不能になった。

 というかこの本途端に読む気失せたんだけど。とりあえずこれどうしてくれよう。

 ……うーん。これ以上この本を読んでも時間の無駄な気がしてならないし、とりあえずパチュリーの本棚にコソッと混ぜとこ。

 

 

 #####

 

 

「……………、」

「で、レミリア。妹にボロクソに言われた感想は?」

「霊夢さん、酷なこと言わないであげてください!?」

「……というかフランさんもフランさんで酷いですね、これ」

 

 

 #####

 

 

 十月十九日

 

 今日は朝から妙だ。

 なんというか変なことが起こる。

 まず朝起きて扉を開けて外に出たら、何もないのに躓いて誰かにぶつかった。

 

「うわっ」

「きゃあ!」

 

 勢いよく転けると顔に柔らかい感触。起き上がると咲夜が倒れていた。どうやらちょうど部屋の前を通りがかっていたらしい。で、ちょうど私は昨夜の胸に顔をうずめる態勢で倒れていた。

 何にせよ珍しいよね。普段の咲夜なら時間を止めて軽く受け止めてくれるのに。まぁともかく謝ってその場は別れたんだ。

 それから朝食。広間に行くとお姉様が居たのでおはよう、と声をかけると「うー……うん?」と寝ぼけていたのかお姉様はぽやーっとした顔で私を見てきた。

 で、その寝ぼけ顔を見て私はちょっとした悪戯心で飛びついてやろうって思ったんだ。

 で、やろうとしたらその瞬間足を釣ってまた転けた。勿論お姉様を巻き込んで。

「痛たた……ん?」

 で、起き上がろうとしたら白いパンツが見えた。後から気付いたけどどうやら私はお姉様のスカートの中に頭から突っ込む形で転けていたらしい。通常そんな転けかたあり得ないわけでそこら一体の物理法則がぶっ壊れてたわけだけど、ともかくその場も謝ってその場を後にした。

 それからだった。何故か分からないけどちょっとエッチなシーンばかり目撃してしまうのだ。

 風呂掃除をしようと扉を開けると素っ裸の妖精メイドがいたり、寺子屋に行けば偶々ぶつかったルーミアさんの服の内側に頭を突っ込んでいつのまにか谷間に顔を挟まれていた。

「やん♪」

「ルーミアさん、すみません」

 ……明らかにおかしいよね、これ。明らかに何かの力が私に働いてるよね?

 それで破壊しようにも破壊する対象が皆目見当も付かず永遠亭に行ったのよ。

 で、判明しました。

「うーん、これは突発性ハレンチ症候群ね」

 何その頭悪そうな病名。とりあえずどんな病気なのか聞いてみると、意図せずラッキースケベを起こせる病気らしい。

 

「別名、ToLOVEる病やリトさん病とも呼ばれているわ。リトさん……外に同じ病気に関わった男性がいてね、彼はそのせいで今はトラブルを起こした女性達と懇ろになって社会的に逃げられなくなってるそうよ」

 

 でも私の場合はまだ初期らしいので良かったと言っていた。このまま進行して酷くなると逆に私が異性の人にラッキースケベされる側になるんだとか。

 うん、即行治しました。すぐに気付いて良かったよ。

 でも一つ疑問があるよね。そう、なんでこんな病気に罹ったのかだよ。

 ちょっと調べてみると、どうやら昨日私が読んだお姉様の本があるよね。あれをパチュリーの部屋に置いたんだけど、その置いた場所が悪かったみたい。

 魔道書と魔道書の間に挟まれたところに置いてたみたいで、なんか奇跡的に二つの魔道書にパスを繋いで本を読んだ相手にそんな病気を掛けるようになってた。

 つまりお姉様の本の呪いだったんだよ。

 ……ちょっと腹が立ったのでレーヴァテインで燃やし尽くしておいた。

 

 

 #####

 

 

「いや、燃やすなああああっっ!!」

「いや、燃やすわよ」

「燃やさないにしろ捨てますね。それか売ります」

「……まぁ合わない本は即売却ですよね。それに今回の場合は危険な効果まで付いてますし」

「でも私の本は悪くないじゃない! 不条理よ!」

 

 うがー! と怒るレミリアだった。

 

 #####

 

 

 十月二十日

 

 

 やっぱり季節の変わり目って皆病気になりやすいのかな?

 人里で短期間に物凄い勢いで一つの病気が蔓延し始めたらしい。

 なんでもその病気に罹ると『M』←こんな感じに眉毛が繋がって、なんか駄目人間になるみたい。

 直ぐに永遠亭が対策のポスターを出してた。

 『病名:両津勘吉病

 ・体がギャグになる。例え妖怪に噛み殺されようと耐えきる強靭な肉体となり、理不尽な行動に出ることも多々ある。

 ・負けず嫌いだが努力はせず、ズルやイカサマをするが勝ちを譲らないとピストルを抜くので重役だと思って接しよう。

 ・傷口から感染する。ちなみにそのまま万が一死んだ場合、天国も地獄も受け入れてくれないので地上へ強制送還される。

 ※弱点は部長。病を解くためには『両津の馬鹿は何処だ!?』や『ばっかも〜ん!!』と説教しよう。ただし感染リスク有り』

 

 だってさ、怖っ。

 でも怖いもの見たさに人里に行ってみるととんでも無いことになってた。

「授業なんてかったりぃなぁ……。オイ、適当にやってくれ」

 寺子屋で慧音先生が寝転がって酒を呑みながらそんなことを言っている。あり得ない。

 他にも、

「……奇跡ってすげぇな。競馬に麻雀に大儲けだぜ。うはは、これでワシは大金持ちだ!」

 札束を抱えて早苗さんがゲスな顔をしていた。なんだこれ!?

 それからもしばらく付近を飛び回っていると、霊夢さんに出会った。

「……何これ。異変レベルじゃない」

「あ、霊夢さん! 霊夢さんは感染してないんですか!?」

「んー? あぁフランか、私は感染してないわよ。つかこれ……ダル。放置しようかしら」

「……やっぱ感染してません?」

「してないわよ。さっきちょっと噛み付かれたけど」

「やっぱり感染してる!?」

 

 傷口から感染するんだよね。

 アウトじゃん!? でも言葉遣いとかは普通なんだよね。

 どういうことか色々考えて一つの結論に辿り着いた。

 あ、そっか。最初から駄目人間なら通じな(以下、血の跡)

 

 

 異変ハ無事二解決サレタヨー。

 ヤッパリ霊夢サンッテ凄イ人ダヨネー。

 

 

 #####

 

「血の跡って何したんですか霊夢さん!?」

「私は何もしてないわよ?」

「うわすっごい笑顔で否定した!?」

 

 輝く笑顔で否定する霊夢だが明らかに日記の終わりがおかしいので早苗はさとりの方を向――――

 

「さとりさん、霊夢さんの心を読んでみてくださ――」

「……読んだらフランと同じ末路を辿るけどいいの?」

 

 ――――けなかった。

 流石にお札を突き付けられては何にも出来なかった。

 

「ぎゃーっ!? ちょ、ちょっとお札向けないでくださいよ!」

「……すみません、私にはちょっと心読めませんね」

「さとりさんも普通に引いた!?」

「ともかくこの話は解決したの。おっけー?」

 

 ものっそい笑顔で重圧を放つ博麗の巫女に三人はしぶしぶ頷いた!

 

 

 #####

 

 

 十月二十一日

 

 

 なんでだろう。昨日の途中から記憶がないや。

 とりあえず朝起きると昨日の病気は終息したらしい。霊夢さんが何とかしたんだって。

 れ……れいむさん? うっ、頭が。

 とりあえず今日はゆっくり過ごした。

 何故か昨日のことを思い出すたびに頭が痛むんだよね。

 本当になんでだろ?

 

 

 #####

 

「ふふっ……」

「「「………………」」」

 

(絶対霊夢さんが何かしたのに! 何かしたのに怖くて何も聞けない……っ!!)

 

 前ページに引き続き、ツッコミすら許されない早苗達はただ黙り込んだまま次のページをめくった――――!

 

 

 

 


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