フランドールの日記   作:Yuupon

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 日付が……進まん。
 やりたいネタは浮かんでるのに一日が長くなるせいで書けないのがもどかしいです。


 


十月編4『ギャンブラー』

 

 

 

 十月十一日

 

 

 ライブが終わった翌日。

 なんか魔理沙が来て「出かけるぞ」と私を人里のはずれに引っ張っていった。

 何処に行くのかな? と思っていると着いたのは……競馬場?

 どういうことかよく分からないまま魔理沙を見ると、

「フラン、賭けるぞ」

 と魔理沙は言った。

 いや待ってよ。言い換えてちょ待てよ。それはともかく競馬で賭け事? 駄目だよそういうの! 咲夜とお姉様に知られたら怒られちゃうし、そういう賭け事って良くないことじゃないの? というか競馬で稼ぎたいなら私じゃなくてお姉様とか早苗さんを連れて行きなよ。

「いや、それは私も考えたぜ。でもあいつら賭け事好かないからさ。まぁ早苗は無理やり連れてけばやれるっちゃやれるが、最近少しやらせ過ぎて出禁くらっちまった」

 もう既にやったんかい! というかお姉様はやっぱり無理だったんだね。まぁお姉様だしね。

 でもだからって私を連れてくるのもどうかと思うの。

 しかし、

「まぁまぁ。騙されたと思ってやってみろって」

「もう、仕方ないなぁ……」

 魔理沙に言われて渋々私は頷く。馬なんてよく分からないんだけどなぁ。とりあえず魔理沙から走る馬のリストと人気順が載ってる紙を見せてもらって、それからパドックのあたりまで行って見てみることに。

 今日のレースはGⅡってやつだった。

「本物のお馬さんだ!」

「ん? フランは馬を見るのが初めてなのか?」

「うーん、そうかも。仮に見たことあったとしても五百年くらい前になるし殆ど初めてだよ」

「ふーん、そうか。で、どいつに賭けるのは決めたか? 私は決めたぜ。何てったってGⅠ馬が参戦してるからな」

 GⅠ? 何の違いがあるのか分からないけど多分、上のランクの馬って事だよね。レートをみると……1.1倍? どうやらこの馬が勝つと掛け金の1.1倍が貰えるらしい。それだけ皆この馬に賭けてるんだね。

 

(うーん……)

 

 皆はともかく私はニワカで、馬なんて全く分からないからなぁ。1.1というのはほぼ勝てるという意味だけど、多分私の将来でも一回きり(予定)の競馬なんてただの遊びだし、賭け事で十中八九勝確の馬に賭けるなんて面白くない。

 本来はそもそも賭け事なんていけないことだけど、どうせやるならギャンブルしてみたいし……。

 とか思って考えていると少し見覚えのある白髪の人に会った。

「アンタは……あぁ、雀荘以来だな」

 顎と鼻と肩幅が妙に広い白髪の人。やっぱ賭け事なら雑食で色々やるんだね。

「……もうアンタは賭ける馬を決めたのかい?」

「普通に考えれば一位は決まってますが、それに賭けるのは面白くないと思って悩んでたんですよ」

「へぇ面白くない……か」

 よく分からない返事に私がオロオロしていると白髪の人は言う。

「……面白い……狂気の沙汰ほど面白い……! 不合理こそ博打……それが博打の本質、博打の快感……不合理に身を委ねることこそギャンブル……。良いね、嬢ちゃん。ますます気に入った」

 

 それから「じゃあな、幸運を」と言い残して男の人は帰っていってしまった。

 うーん……なんか勘違いされてない? 私ギャンブラーじゃないんだけど……。でもただ賭けるのは面白くないのは事実。

 そうだね、

 

「どうせ外すなら、強く賭けて外そう……!」

 

 そう決めた私は早速一番人気が無い馬に一万円を投入。レートは171倍だ。なんかバイトして稼いだお金をこんなことに使ってることに物悲しさを感じる私だけど、まぁやってしまおう。

 私の中のギャンブラーな部分が叫んでいるんだ。これは当たるってね。

 

「おう、フランも買ったか。ってそれ一番不人気のやつじゃねーか……あ、もしかして競馬表の見方が分からなかったとか?」

「いや違うよ魔理沙。どうせ遊びのつもりで来たからせめて本気でやろうと思っただけ。勝利というのはリスクと引き換えに手にするものなんだよ?」

 

 そうしてレーススタート。序盤から、私が選んだ馬は『逃げ』で飛ばし目に走り、集団のトップを走っていた。

 逆に魔理沙の選んだ馬は『追込』を選択したのか集団の後ろをついていく。

 そして四コーナーを曲がり先頭は私の選んだ馬! 後続馬が一気に襲いかかるがスピードは衰えない。

 が、残り二百メートルを切ったところで後方にいた人気一位の馬が一気にギアを上げて来た。三馬身ほどあったリードもみるみる迫り、あっという間に中間馬を追い越してしまうーーが、その途中位置取りを誤った。

 馬と馬の間に入り前に行きにくくなっている。が、それでも一位の馬は強引に突破していく。

 残り百メートル! 後続との差は二馬身。他の馬もさらにギアを上げ差が縮まる!

「さ、差せ!」

 気がつくと競馬場の人々が馬券を握りしめ叫んでいた。

「……差せ!」「……差せ!」

 残り五十メートル! ようやく一位の馬が間を抜け出し、二位まで躍り出る。リードは一馬身。が、ここで私の選んだ馬が最後の力を振り絞りラストスパートを掛ける!

「さ、差せ!」「……差せ!」「差せ!」「差せ!」

 馬券を握りしめた人々が必死の形相で叫んだ。前評判は一位間違いなしの馬だ。払い戻しが少ないからこそ皆大金を賭けていたのだろう。一部の人々の目には恐怖と汗が滲んでいた。

「さ、差してくれ! 頼む!」

 横を見ると魔理沙もたまらず叫んでいた。一位の馬はギアを上げる、が……途中で無駄に体力を使ったせいか思うように足が上がらない。

 しかしそれでもトップスピードの違いがあり、徐々に差は縮まる。一馬身からさらに僅かな距離へ。

 あと一メートル! あと八〇センチ! あと五〇センチ!

 あと三〇センチ!

 そして、そしてそしてそして!

 

 二頭の馬がほぼ同時にゴールへと飛び込んだ。ついで実況の声が会場に響き渡るーーーー!

 

 

「……い、今ゴールしました! 一着は○○! か、勝ったのは○○です! これには会場もどよめいています!」

 

 来たよ……ヌルリと。

 って、ハッ。私は何を? というかレースは……あれ?

 しょ……勝負に勝っちゃった。え、本当に?

 えーと、一万円賭けたから171倍で、171万円!? す、凄い……けどちょっと大金で怖いかも。

 

「ふ、フラン……その馬券」

 

 呆然としていると魔理沙が私に声をかけて来た。

「ビギナーズラックってやつか……? 凄ぇな、お前」

「私もまさか当たると思わなくて呆然としてたよ」

 ともかくビックリだ。

 馬券販売所で交換してもらうと171万円を貰えた。現金で。

 ……すぐに異空間にしまった。持ってるの怖いからね。

 あと勝ったからなんだけど、妙に倍プッシュしたくなったのは何故だろう。当たったせいで博打にハマりそうになってるのかな。危ない危ない、しばらくこういうことは控えないといけないね。

 ……ともかくこのお金どうしようか。

 ねぇ咲夜、どうしたら良いと思う?

 

 『稼ぎ方はともかく、妹様の稼いだお金が元ですから私は何も言いません。ただ今後は使い方に気を付けて運用為されますよう』

 

 

 #####

 

 

「咲夜のコメントまで入ってるわね」

「というか競馬……魔理沙さんによくやらされましたよ。でも私が賭けると魔理沙さん以外の全ての人も同じ馬に賭けるから賭け事にならないんですよね。実際勝っちゃいますし、馬」

「ここまでくると早苗の奇跡って何でもありね。『さすがおにいさま』になぞらえて『さすがさなえさん』、略して『さすさな』という言葉を作るわ」

「そんな二つ名いらないです」

「……それよりフランさんがギャンブラーなんですけど」

「それが問題よね! というかそれを問題提起するのが遅いわ! 姉として色々物申したいんだけど!!」

「賭博黙示録フランちゃん、かな?」

「フラン-Furan-も捨てがたいですね」

「……いや、重要なのはもっと別にあると思うんですけど。そもそも賭博に強い女の子って、フランさんが目指す可愛い女の子として有りなんですか?」

「「知らないわ」」

「知りませんね」

 

(……ダメだこの人達早く何とかしないと)

 

 割と真剣にそう思ったさとりであった。

 

 

 #####

 

 

 十月十二日

 

 

 昨日は競馬なんてやらされちゃったよ。

 で、なんだかんだ小金持ちになったわけだけど、どうしようかな。無駄に使うのは良くないしどうせなら社会勉強の一環として事業でも興してみる?

 森近さんと協賛で。

 とはいっても何か作るにしてもこの程度の資金じゃ足りないから実質私の体一つでの働きになるんだよね。

 となると建築系? とはいえ建築図なんて書けないし読めないし、耐震性に優れた設計なんて読み解けない。

 うーん、困った。

 まぁそんなすぐにお金を使わなくても良いよね。それに競馬場でのお金って何故か外の世界のお金だから使い道も難しいし。

 というわけで何もせずいつも通り、今日も今日とて森近さんのところでバイトだよ。

「麻雀に競馬……僕は魔理沙を何処でこんなおっさん趣味にしてしまったのか……やっぱり家出が原因? ううむ……先先先代の霧雨のおやっさんに面目が立たないよ」

 昨日の話をするとなんか森近さんがやたら落ち込んでた。

 それと今度魔理沙に軽く諭すとか呟いてたけど大変そうだね。

 

 

 #####

 

 

「確か霖之助さんはかつて霧雨商店で働いていたのよね」

「霧雨商店って魔理沙さんのご実家ですよね。そうなんですか?」

「えぇ。そこで商人としてのノウハウを得たらしいわ」

「……こう言葉に並べてみると色々将来が心配になるわね」

「……それに巻き込まれて才能を見せてるフランさんも心配ですけどね」

 

 呟いてさとりは思う。

 

(……というか、白髪の人出過ぎじゃないですか?)

 

 口には出さないけど。

 ともかく彼女は次のページをめくるのだった――――。

 

 

 

 


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