歌詞とかはテキトーです。
しかもワンフレーズです。
十月七日
久々にバンドメンバーが集まった。
本番まであと三日、『紅の幽霊楽団』再始動だね!
と言ってもやることは変わらない。魔理沙が考えたという曲や登場の順番、それから音合わせなどを行うだけだ。
それにあれから私も何もせずいたわけじゃない。日記には書いてないけど音楽も真面目にやってるし、何なら本番でピアノを弾けるくらいにはなってるはずだ。
ともかく私はボーカルだから声出しだね。叫ぶというよりはやっぱり音程重視で、なおかつ声が出れば重畳ってとこかな?
「レッツ、ミュージックスタートだぜ!」
今回は魔理沙もボーカル参加するという。それで歌声を聴いてみたけど思いの外上手かった。何というか綺麗な歌声というよりは盛り上がる曲ってレベルが半端じゃなかった。
「星の果てまでぶっ放せ♪ マスター、スパァークッ!!」
曲の中に所々観客が合いの手を返す部分も入っていたので上手く嵌れば盛り上がること間違い無しだろう。何より魔理沙ってスペルカードとかがド派手だからさ。
あとは衣装かな。
「フランちゃんの衣装はこちらですね、どうぞ」
衣装班の人曰く今月末にハロウィンがあるから、それをテーマにしたらしい。なんか魔理沙の服を全体的にオレンジ色にした感じの衣装をもらった。なんでも魔法少女スタイルだとか。私の羽根を収納出来るように構造されていたので、はたから見たら人間に思われそうだね。
でも半袖だし、ちょっとスカート短いから少し冷えるや。
「お、衣装か! 衣装班に一任してたけど私のはなんだ?」
「魔理沙さんはこっちです」
「へぇーどれどれって、なんだこれ? 羽根?」
「YES。折角なんで魔理沙さんの衣装は吸血鬼をイメージしました。羽根はレミリアさん仕様ですけどね」
吸血鬼かぁ。あっ、もしかしてあれかな? 私と魔理沙の役割をお互い交換してみた感じ?
「その通りです。こういう趣向も良いかなって」
衣装班の青年はコクリと頷く。この人は珍しく罪袋じゃないんだよね。というかこの人、大分前に濡れたらスケる衣装を作って間違えて送りつけてきた人なんだけど今じゃ普通にメンバー入りしてて衣装を一任されている。確かに性癖だけを除けば技術は凄いしなぁ。測ってもいないのにピッタリのサイズの服を用意してくるし。本人に聞いてみると、
「これを言うと女性に嫌われるのですが、実は僕は見ただけでスリーサイズが分かる能力を持ってまして……」
そんな能力あったんだ。確かに女性の実力者が多い幻想郷じゃ嫌われそうな力だね。
「ただ、これに関しては妖怪の賢者様にも釘を刺されていまして悪用するつもりはありませんから。精々嫁に同じ衣装を着せる程度です」
それはそれでそんな家庭の話をしないでほしいけどね。私、そういう知識はお姉様とパチュリーが出来るだけ塞いでるのか疎いんだよね。そのせいで下手に話を広げられるとすぐ顔が真っ赤になっちゃうし。なんというか
ともかく衣装を着てみたけど相変わらずピッタリ。着心地も良い。変態さんだけどやっぱり腕の良い人なんだよね。
あとそうそう。
こころさんも駆け付けてくれたよ。
「ふらん、今風のダンスを覚えてきたよ」
「今風のダンス?」
「うん、アイドルの踊りかた。やっぱりアイドルは可愛さ重視でナンボだから激しいダンスは要らない。それとオタ芸っていって観客が踊る事もあるみたい。勉強になった」
満面の笑みのこころさんの似顔絵が書かれた面を付けてこころさんが言う。
ふうん。そういえばネットでアイドルとか見てなかったなぁ。今度見とかないと。
「まずは可愛さアピール。笑顔の練習」
「あ、はーい」
「じゃああざといけどニコッ♡ってやって」
「ニコ?」
「笑顔。こんな感じに――ニコッ♡、はい」
「え、あ……ニコッ♪」
「違う。ニコッ♪じゃなくてニコッ♡」
「どこに違いがあるの!?」
厳しいところまで相変わらずらしい。ともかく再始動も嬉しかったけどそれより何より皆の顔が久々に見れて嬉しかったなぁ。
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「こういうのって皆でやってる感じがして良いですよね」
「そうね。ほのぼのしてて良いわ」
「霊夢達がこうやって皆で何かやる時は大抵異変解決だものね」
「アンタも起こした側でしょうが、レミリア」
「……この場合私も異変の首謀者側に入るのでしょうか?」
「さとりさんは入らないと思いますけど……いやでもどうだろう。霊夢さんに撃墜されたなら入る、かなぁ?」
「言っておくけど早苗、アンタもよ。博麗神社をぶっ壊そうとした事は忘れてないわ」
「いや、だってあれは霊夢さんが掃除をサボってたのが悪いんじゃないですか! ちゃんと掃除がしてあれば使われてる神社だって分かったんですし! てっきり荒れ果てていたのでとうの昔に滅んだと思って空き家を放置しておくと危ないと思ったから私は行動に起こそうとしただけで――」
「いかなる理由があろうと敗者に語る口はないわ。幻想郷は勝者至上のルールよ」
「酷いです! 横暴です! 誤解だって分かってから散々謝ったじゃないですか!」
「ハッ、そんなのでチャラになるわけないじゃない。謝る前に何か出すもんあるでしょうが」
「霊夢霊夢、そこまでにしときなさい。およそ博麗の巫女がして良い顔じゃなくなってるわよ?」
「……というか普通に悪どいです霊夢さん。あと親指と中指をくっつけて暗にお金を寄越せとジェスチャーしないで下さい、それでも巫女ですか貴女」
「ったく、仕方ないわね」
不満げに霊夢は呟いて次のページをめくる。
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十月八日
準備二日目。
幽霊楽団の三人との音合わせ。
「見ない間に歌声が進化しているな」
「フラン、流石だねー」
「よっし、私達も気合入れるよ!」
上からルナサさん、メルランさん、リリカさんの言葉だ。褒められると素直に嬉しいね。
私からすれば三人とも相変わらず楽器演奏上手いなぁと思うけど。
三人に負けないよう私も頑張らないとね!
ちなみにだけど三人もそれぞれ衣装が用意されている。
ハロウィン仕様という事でカボチャ柄のミニシルクハットを斜めかぶったり、猫耳を付けたり、包帯を巻き付けたり。三人とも楽しそうだ。
ちなみにルナサさんが大人風ミニシルクハットスタイルで、メルランさんが包帯女? それでリリカさんが猫耳だった。
「ほら見てみて! 包帯巻いてみた!」
「メルラン、その巻き方ミイラ男じゃなくて中二病……」
ルナサさんが突っ込んでたけどまぁ、巻き方は別に良いんじゃない? 全身に巻くより可愛いし。
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「楽しそうね」
「そうですねー」
「ハロウィンかぁ……私、ハロウィンイベント参加した事ないわね」
「え、霊夢さん無いんですか?」
「えぇ、いつも通りに過ごしてるわ」
「あ、じゃあ最近は人里でも仮装やってますし参加してみてはどうでしょう? 私も去年やりましたよ」
「……ちなみに何の役を?」
「それは……その、サキュバス……ですけど」
「「「…………、」」」
その後、三人の視線の先が二つの山に向けられた上で「……あぁ」と納得されたことは言うまでもない。
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十月九日
準備万端!
一足早く現地入りするとのことで地底に行くことになった。
でも思ったより大所帯だね。
特に罪袋さん達とかうちって人間のスタッフさんも多いから地底に降りるのは大変だった。
早苗さん達にお願いして核融合施設につながるエレベーターを借りて地下に行って、それから神奈子さん経由で地底の主さんに迎えに来てもらえることに。ここまでで数時間掛かったよ。
「……初めまして、古明地さとりと申します」
それで、来てくれた地底の主さんは思ったより可愛らしい人だった。私と同じくらいの見た目じゃないかな? こいしさんに似ていたので尋ねてみるとどうやら妹らしい。世間って狭いね。
というかこのさとりさんも聞き覚えあるなぁ。
と思ってたら思い出した。これも少し前のツイッターの時だ。
こいし@元世界一位
「お姉ちゃんのコスプレ撮れた〜」
さとり
「え!? こ、こいしいつの間に!?」
火焔猫燐
「さとりさま、本棚にさとりんという名前の人が描いてるR18の同人誌があったんですが」
さとり
「お燐、そのツイートを今すぐ消しなさい!」
おくぅおくぅ!
「さとりさまの部屋で謎のノート発見しました!」
さとり
「や、やめて! お願いそれだけはやめて!」
おくぅおくぅ!
「うpしまーす!」
さとり
「お空、お願い! 何でもするから!!」
多分これだよね。思い浮かべているとさとりさんが顔を真っ赤にして手で隠していた。
「あの、どうしました?」
「その……私は覚なので考えていることが読めまして、その時に過去の恥ずかしい話がまさか出てくるとは思ってなくて」
あぁ……かわいそうに。バッチシそのコスプレ画像まで見ちゃったからなあ。可愛かったけど、本人にとってはそりゃあ黒歴史だよね。
「と、ともかくこれから地霊殿に案内します。今日はごゆっくり当家でお休み下さい」
とか思ってるとコ、コホンと誤魔化すように恥ずかしそうな顔でさとりさんが話題転換して地霊殿に連れて行ってくれた。
うん、そうなんだよね。今日私達は地霊殿に泊まることになっていたんだ。単に人数が多くて収容出来るのがそこしかなかったんだけどさ。
ともかくお世話になりまーす。
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「ここでさとりさんに繋がってくるんですね」
「はい、初めて会ったのはこの時です」
「というかアンタ、前も話題にはしなかったけど好きなの? コスプレとか同人誌とか」
「……あ、えっと……その、はい」
「まぁ趣味なんて人それぞれよ、ねっ?」
「そうですよさとりさん」
「……いや、逆にそんなこと言われた方が傷付くんですけど」
レミリアと早苗がフォローを入れるが、まるで効果無しであった。
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十月十日
今日は待ちに待ったライブ当日!
昨日は地味に地霊殿の人達と宴をして楽しんだんだけど、それはともかくだ。
まずはルールを書いておこうか。
今回私達が参加するライブ、地底ライブ大戦なんだけど、審査員が居て、一位のバンドを決定するらしい。
つまり参加するからには目指せ優勝! というわけだ。
今日のライブには地底のアイドルことヤマメさんも居るし気合入れないとね! まぁ一番は楽しむことだけどさ。
観客は地底に住む妖怪達が多かったけど、それでも人間も見かけるあたり物好きっているんだね。
それでその本題のライブだけど。
「行くぜ! まずは一発マスタースパーク!」
最初は魔理沙からだ。演奏の流れは、まず盛り上げ特化の魔理沙が出て一曲目を歌い会場の雰囲気をハイにし、その後二曲目で私が登場して歌う。それが終われば軽くトークして、デュエット曲を一つ。その後私が二曲歌い、魔理沙が締める。こんな流れだ。
で、やってみたけど上手くいった。
魔理沙はキチンと盛り上げてたし、私も上手く出来たんじゃないかなと思う。
トークは少し不安だけど概ね予定通りだったし、観客の皆もかなりテンション上がってた。
「皆さん、どうも! 紅の幽霊楽団です!」
「「「「イエエエエエエ!!」」」」
うん。三姉妹の演奏も見事だったし、踊りもピシって嵌った。私の歌にもミスはなく、完璧だね。
魔理沙が吸血鬼の格好で私が魔法少女っていうのも受けてたし。
で、私たちの出番が終わってから全チーム見たけどヤマメさんも凄かったよ。
歌いなれてたね。ファンも多かったみたいで殆どの人が彼女の曲を知ってるみたいだった。
ともかく最終のチームが終わって審査員の協議が始まる。
そしてーー、
「地底バンド大戦、優勝は紅の幽霊楽団です!」
もらったよ。もらっちゃったよ!
一位だ、やったー!!
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「おおおお」
「一位って凄いじゃない」
「……ちなみに私も審査員でしたが、凄かったですよ。動きが素人のそれではなく周りとレベルが違いました。弾幕による演技も素晴らしかったですし」
「へぇ、ともかく次があったら見に行くわ。妹の晴れ姿、見たいし……」
「……はい! その時はレミリアさんもご招待しますね」
頷いてさとりはレミリアに笑いかける。
それから一同は次のページをめくったのだった。