十月五日
ちょっと、今日の話は起こったことをそのまま書こうと思う。
その時思ったことも含めてね。そうしないと後から読み返した時分かりづらいから。
――今日の朝、人里を歩いていると太子さんに会った。
時々授業に来てくれる聖徳太子さん。横には従者……かな? 見知らぬ女性が二人。
挨拶するとどうも二人の名前は物部布都さんと屠自古さんというらしい。
うーん、なんか聞き覚えあるな。何処でだろう? 確か、そうだ。iPhoneのツイッターを調べている時に二人の名前が出て来たような……あっ。
瞬間、私の頭の中にフラッシュバックする記憶があった。
文々。新聞
「【速報】命蓮寺また燃える」
村紗水蜜
「派手にやるじゃねぇか!」
布都
「ち、違う! 今回は我ではないぞ!」
屠自古
「お前さぁ……もう庇えないよ」
布都
「本当に違うもん! お願い信じて!」
星@毘沙門天の化身
「私……お鍋の火消しましたっけ?」
うん、これだ。間違いない。
多分この布都さんと屠自古さん……だよね?
聞いてみると「おぉ、知っておったのか」と布都さんが頷いたので間違い無さそうだった。
ともかくだよ。それからしばらく話していると太子さん……本名は
で、行ったんだけど広い。見たことない景色が広がっててついついあたりを見ながら歩いているとふと気付いた時には既に太子さん達とはぐれてしまっていた。
困った。どうしようかと考えていると「んあー? 見たことない顔だぞー」とキョンシー……かな? 頭にお札を付けた子が話しかけて来た。
「……あなたは?」
「私は
「私はフラン、フランドール・スカーレットです」
「そっかー、もしかしてフランは
「青娥?」
「おお、私の主人だぞー。セーガー! お客さん!」
聞き慣れない名前に首をかしげると何を勘違いしたのか芳香さんは大声で青娥なる人を呼んだ。
すると横の壁に円形の穴が開いたかと思うと中から
「全くもう。芳香ちゃん? 私はセガじゃなくて
女の人はとても美人な人だった。私の精一杯の文章力で彼女の容姿について触れてみようか。
「やあ初めまして」と片手を上げた彼女を見てまず飛び込んで来たのはその深い碧眼の瞳だ。何処までも透き通った目。まるで起こる事象全てを見透かしているかのような――透き通った狂気を内包して見えるが如く、しかして自然な瞳。
次に視界に飛び込んで来たのは彼女の髪だ。燃えるような
自然な笑みを張り付けてにこやかに話しかけてくる様子は当然だが自然で、それでいて人の良さそうな美人さんに見えた。
邪悪とかそういうものもない。仙人、そうだ。華扇さんとはまるでベクトルが違うけれど彼女は仙人のようだった。滲み出る妖美な笑みが見てる側の心をくすぐる。
「初めまして、フランドールです。実は太子さんにお招き頂いたのですが迷子になってしまって……」
「私は
「あ、そうですか。すみません助かります」
色々思うところはあったけどひとまず私は青娥さんと普通に接することにした。
彼女を見た瞬間、一瞬だけれど狂気に似た何かを感じ取った気がしたけど気のせいだと判断したのだ。ほんの一瞬のことだし、後から見直しても纏う空気や言葉、顔に違和感はなかったし。
疲れてるのかな? 私がそう思った時だった。
「それにしても貴女、面白いわね」
「!?」
耳元で呟かれた言葉に私の意識が集中する。
聞こえたのは魅力的な声。どうやら彼女はほんの数瞬の間に私のすぐ背後に迫っていたらしい。その細い指で頰から顎までのラインをサラリと撫でられた。
思わずビクッとなって反射的に睨み付けると青娥さんはクスクス笑う。
「うん♪ そんなストレートに反応してくれると思わなかったわ。気まぐれのつもりだったけど思いの外、ううん。ともかくフランさん、今後ともよろしくね〜♡」
名刺を渡された。ニコニコと笑顔で渡されるとどうも断れず受け取ると、「あ」と彼女は付け足すように言う。
「そうそう、私のことはお姉ちゃんって呼んでも良いからね?」
…………なんだ、この人。
早苗さんにも言われるセリフだけど意味が違う気がするのは気のせいかな。
ともかくこの後無事に神子さん達と合流出来た。
なんかやたら心配されたけどなんでかな?
私は別に何にもされてないのに、不思議だね。
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「青娥か……」
「あの人ですか……」
「……地獄から地上に出たとは大分前に聞きましたが、神霊廟に居たのですか」
「どうも胡散臭いわね。八雲とは別のベクトルで」
「というか青娥と会ってたのね。しかも目を付けられてるみたいだし、今後の内容が気になるわ」
呟いて、霊夢は次のページをめくる。
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十月六日
今日は球技大会だ。
寺子屋でクラス別にチームを組んでドッジボール。とは言っても妖怪クラスは実質二クラスだから一試合で終わりなんだよね。
でも妖怪クラスって試合が長引くのよ。
「ボールは友達、怖くない!」
「一〇〇マイル……見ててくれ、おとさん」
「先生……バスケが、したいです……」
「避けられない方が悪いよね」
色々突っ込み所のある会話はさておいて。
ほら普通に考えると女子より男子の方がドッジボールって強いわけじゃん? 弾幕ごっこがあるから女子に分があるって考え方もあるけど、実際あれって名目は女の子の遊びだから。
妖怪の男子はもっと苛烈な弾幕ごっこを仲間内でやったり、半ば殺し合いに近いこともしてるみたいなのでやっぱり球速とかは勝てないかなぁって思う。
まぁ私の場合種族的な力でかなり有利だけど、それでもなぁ。
「悔いの無い一球を投げ込んで来い! 例えそれがラストボールになったとしても、俺達は今日のお前の球を一生忘れねぇ!」
男子が叫んでるけど言い過ぎだからね? まぁその場のノリだろうけどさ。
「俺は勝つぞ。楽しくても負けちゃなんにもならないんだ!」
「ボールを受ける時取れないなら弾いて上に上げろ! 後は俺達がなんとかする!」
「中学のことなんか知らねぇ。俺は何処にだって飛ぶ。どんなボールだって打つ。だから――俺にトス、持ってこい!」
いや、打ったら駄目だよ。上に挙げた人も打った人も両方アウトだよ。と、そんなこんなで男子主導で物凄い豪速球が飛び交った。
チルノちゃんとかあの辺りは本気で真正面からやりあってたけど、サニーちゃん達は意外と賢かったよ。光を屈折することでボールの位置を分からなくさせて当てるとか結構有効手だと思う。
物の目が見える私にとっては無意味だけど。
ただ個人的には意外と羽が当たらないように気をつけるという意味じゃ気を遣った。
最終的に私が三妖精に当てて勝った。いぇい!
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「結構楽しんでるのね」
「というかクラスメイトが大概濃いわよね」
「ドッジボール。懐かしいですね、そういえば私。ドッジボールで当てられたこと一度もないんですよ!」
「……それ絶対奇跡起こってますよね?」
「まぁ……そうかもしれませんけど」
「能力のほぼ無い外でそれってただのズルじゃないの?」
「わ、私の預かり知らぬところで無意識に発生するんだから仕方ないじゃないですか!」
プンスカと早苗は怒り、次のページをめくる――――。