九月六日
今日は諏訪子ちゃんのところに行った。
守矢神社で会って、色々お話ししたよ。
諏訪子って洩矢様なんだよね。最初はてっきりカエルの神様かなって思ってたけど、呪いの神様。
やっぱり見た目の割に話し方が達観してる。私は相手によって意識して言葉遣いを変えてるけど諏訪子ちゃんが相手の時は困るなぁ。
友達だから敬語じゃないけど、それでも真面目な時は真面目にしたいよね。
あ、そうそう。話を戻そうか。
諏訪子ちゃんと遊んだり話をしたりしたけど、その中で弾幕ごっこもやった。
やっぱり神様というだけあって強いね。私もかなり本気でやったけど負けちゃったよ。大分避ける訓練はしてたのになぁ……、私の能力は弾幕ごっこに向かなくて諏訪子ちゃんの能力は弾幕ごっこに有効活用出来るとはいえそれでも悔しい。
でもかなり追い詰めることは出来たみたいだ。
「はぁ、はぁ……なにかなその力。フランは本当に吸血鬼だよね?」
結構荒い息吐いてたし。運動不足かな? たかが二時間くらいフルで動いただけなのにね。
にしてもやっぱり強いなぁ。次回は気とか使ったり、剣で真空波を放つことも取り入れてみようかな。
まだ余力は残してそうだし今度遊ぶ時が楽しみだよ。
と、そうだ。ともかく受け答えしないとね。
「うん、吸血鬼だよ。純度100パーセント間違いなく」
「……フラン、ちょっと落ち着いて聞いて欲しいんだけど」
なんだろう、急に諏訪子ちゃんは真面目な顔で私を見る。
私が次の言葉を待っていると彼女はこう言った。
「あんた……僅かだけど神格が宿りかけてるよ?」
「え?」
神格? 神格ってアレだよね。
神様の力とかそういうやつだよね?
「あぁ、そうだけど神様ってレベルじゃないけど僅かに神の力があるような……そんな感じがしたんだよ」
え? なんで神格宿ったし? 割と真面目に分かんない。
私、宗教と全く関係無いんだけど。いや待てよ。最近外の世界じゃありとあらゆることが簡略化されてるって聞くし、もしかして神様になる条件も仏教とかキリスト教について詳しくなるだけでなれるとかそんなことになってたりする?
「えっと、どんな神様の力を感じるの?」
「うーん……多分信じ難いけど、イエス・キリストのような……そういえばフランと彼は同じゲームをやってたとか――いや、やっぱり気のせいか。そんな筈がないもの、数百年前より吸血鬼とキリスト教は敵対してるしね。変なことを言った、忘れてほしい」
私も耄碌してきてるのかなー、と諏訪子ちゃんが言う。でも目が据わっていたので多分何か思い当たることでもあったのかもしれない。
いやでもまたイエス・キリスト? 森近さんが言うには私のパソコンが付喪神化したのもその人だよね。
イエス・キリストと接点なんて無いのに。変な話だなぁ。
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「本当よね! もしフランにイエス・キリストと接点なんてあったらそれこそ紅魔館で会議モノよ! 変な言いがかりつけないで欲しいわ!」
大げさにレミリアが言う。声を荒げているので多少なりとも思い感じるところがあるらしい。
その彼女から隠れるようにボソッと霊夢は早苗に尋ねた。
「……ってレミリアは言ってるけど、早苗。実情はどうなのよ?」
「……実は以前守矢神社にシッダールタとキリストが来まして、その時にフランさんも会ってます。あとフランさんは気付いてませんが、ゲームでイエスさんのギルドに加入しているとか。パソコンの付喪神化も恐らくそれが原因かと。神の力を纏ったのは『イエスさん→付喪神パソコン→フランさん』という構図で力が流れたのではないでしょうか?」
「……では洩矢様がそれをフランさんに告げなかったのは何故でしょうか、早苗さん?」
「……イエスさんとフランさんの両方に気を遣ったのでしょう。フランさんももう直接イエスさんと会うことはないでしょうし、それなら変なことを言って騒ぎ立てるより時の流れに任せてその身体に纏った神力が消えるまで待ってしまえと判断したのだと思います」
「……なるほどね。何にせよこれ、レミリアに言えないわね」
三人は小声で呟きあってレミリアを見る。
レミリアはプンプンした様子で怒っていた。
「まったくもう! 失礼しちゃうわ!」
その様子を見て三人は呟く。
「…………、言えませんね」
「…………そうですね」
「……そうね」
上から早苗、さとり、霊夢の言であった。
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九月七日
お姉様がご乱心だ。
変な生き物を沢山連れて来た。ホフゴブリンというらしい。
なんか気持ち悪いし怖いんだけど。
でも話してみると気の良い人達だった。最近、外の世界で座敷童が必要になったとかで人里の家から座敷童が消えてしまったらしくその代わりに連れてこられたそうだけど見た目が怖くて退治して欲しいという依頼が博麗の巫女の元にまでくるようになって、で当の座敷童も帰って来ちゃったことで居場所がなくなったらしい。
それでお姉様がホフゴブリン達を紅魔館で住まわせると言った。
かなり手先は器用みたいで掃除も丁寧にしている。
けどメイドの先輩としてはまだ甘いと言わざるを得ないね! 丁寧にしているけど仕事に求められるのはいかに丁寧に、いかに早く、いかに正しく行うかだ。それぞれの掃除の仕方がまるでなっちゃいない!
とりあえず目についたツッコミをしよう。
なんで床拭いた後に天井とか照明のゴミを落とすの!?
意味ないじゃん!? で、また床を拭くって二度手間じゃん!?
それから汚れが取れないからってたわしで擦るな! 床が傷付くから! あと妖精メイド! 何水入れたバケツぶちまけてるんだよ!! あ、こら! 放置して逃げるな!
それと大浴場組! カビキラーやったあとすぐに流すな! それ意味無いから! カビキラーとかは十分単位で放置しないと意味無いから!
他にも多数。ツッコミで疲れたよ。
というか咲夜と二人で回した方が早いよこれ。
でもちゃんと指導すれば使えるようになるのもまた事実。特にホフゴブリン達は意外に文句言わずちゃんと仕事してくれるし。
思ったより良い拾い物……なのかな?
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「あー、あったあった。一日中フランの声が聞こえたのよ。全部これは違うそれは違うって感じだったけど、懐かしいわねぇ」
「へぇ。それはそれは……」
「というか内容は結構普通ですね、前は真鍮製のがどうたらこうたらって感じだったのに」
「……最初ですから本当に普通の掃除だったんでしょう」
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九月八日
寺子屋だ。
「よし、じゃあ授業を始めるぞー」
でも慧音先生はお休み。ちょっと迷いの竹林に行ってるらしい。
なので今日はあの男の先生と……、
「皆さんこんにちは。前回は色々とすみませんでした」
久々に鈴仙さんが来た。
……耳が取れて、クラス全員狂気……うっ、頭が。
と、ちょっと嫌なことを思い出してしまうけど今回は真面目にやるらしいので多分大丈夫だろう。
「今回は鈴仙先生による保健の授業だ。じゃあ鈴仙さん、よろしくお願いします」
「はい。お任せください!」
ピョンっと小さく跳ねて鈴仙さんが敬礼する。
さてさて保健体育か。何やるんだろう?
と、思っていると鈴仙さんが背負っていたバッグからプリントの束を取り出した。
「今日はですね。皆さんにちょっとした小テストを作ってきました!」
テストか。それなら前回みたいにならないね。
早速配られたテストを解いていく。
で、全部解いてから皆の答えを見て回ることになった。でも、一人酷い答えの人が居たよ。
例えば。
問、幼児は2〜3才になると三語文を話すようになります。その例を示しなさい。
解答、(ババァ、金、貸せ)
なにその子供!? その子の将来を考えると悲しくて涙すら出てくるよ! 私には子供いないけど。
ちなみに私の答えは(おねえちゃんと、つみきで、あそんだ)だ。シンプルだけどこれで良いと思う。というか三歳児で言葉遣い悪過ぎるよ!?
じゃあ次に行こうか。
問、出産時に母体のお腹を切って子供を取り出すことを何と言いますか?
解答、(切腹)
おいいいいいい!! それ死ぬから! 子供ごと死ぬから! というか病院で切腹って医者が「介錯つかまつりまする!」みたいに言うと思ってんのこの人!? ちなみに答えは(帝王切開)だけど切腹って書く理由が分からない!
そして次だ。
問、なぜ、皆さんは洋服を着るのですか?
解答、(防御力を上げるため)
ゲームか! というかこの人本気で防御力上がると思って洋服着てんの!? 普通に寒さを防ぐためだよ! 人間は進化の過程で全身の毛を大きく失ったから冬場とかは服着たり防寒しないと寒さで死ぬの! なんだよこのボケの応酬!? 解答ふざけてるのかなこの人!?
……次にいこうか。
問、悪いことをしたときにアナタは何をしなければいけませんか?
解答、(土下座する。靴を舐める)
なんで子供のうちにそんな処世術を覚えてるの!? 今まで生きてきた中で何があったの!? というか靴舐めは普通に相手も不快感あるからっ! 普通にあやまろうよ! 子供のうちはただそれだけでいいんだよ!!
……いいかげんツッコミ疲れてきたけど次いくよ。
問、腕から出血した場合は腋を、足から出血した場合は太ももを強くしめます。では頭から血が出た場合はどこをしめますか?
解答、(首)
死ぬから! 別の意味で死ぬから! 具体的には息出来なくて死ぬから! なにこの人!? この人、万が一頭から血を流してる人を見つけたとき迷いなく首しめにいくんだよね!? 怖いよ! 無自覚系殺人犯だよ!
問、今この問は何問目?
解答、(六問目)
とうとう問題の方がボケだした!? いや問題がボケちゃ駄目でしょ! 私も解いてるとき思ったけども!
問、あなたの目の前で人が倒れました。あなたがまずすべきことはなんですか?
解答、(応援する)
応援してる暇があって安否確認しなよ!? 息してるかとか思い浮かばなかったの!? というか応援するなよ! 倒れている人を応援する構図ってどう考えても犯罪的だよ!
……はぁ、はぁ。
ともかく疲れた。授業でこれだけ疲れたのは久しぶりかもしれない。
鈴仙さんも普通に授業出来て安心したのか最後は嬉しそうに帰って行った。
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「……まぁ、楽しそうで良いんじゃない?」
「投げやり!? というか他に感想はないのかしら!?」
「だって……ねぇ?」
「そうですねー……」
「……話の中だけでツッコミが終わってますし、ねぇ」
各々呟いて、一同は次のページをめくる。