フランドールの日記   作:Yuupon

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九月編
九月編1『姉妹と祭り』


 

 

 

 九月一日

 

 

 今日は里の夏祭りの日だ。

 朝から多くの人達が準備してた。里の大通りには所狭しと屋台が並んでいてそれが博麗神社まで続いているらしい。

 端的にいうと一キロ以上の距離にズラリと屋台が並ぶわけだ。

 ともかく今日は皆でお祭りに行くみたい。お姉様に私に、咲夜とパチュリーとこあくま、それにめーりん。うん、全員で出掛けるのは本当に珍しいや。

 お祭りでは多くの人で賑わっていた。知り合いも店を出してたよ。河童達がそれぞれ新作の道具を使って売ってたり、魔理沙が魔法道具を売ってたり。あとは小鈴さんも出張貸出って見出しを付けて本をいっぱい載せたリヤカーを引いてた。

 私も久々にお姉様と一緒に遊べて楽しかったなぁ。

 こころさんのお面屋さんでお姉様が狐のお面買ってさ、私はカエルのお面を買ったんだ。側頭部に付けるとファッションみたいで可愛いね! って話して。

 それから日記で書いてないけど前に命蓮寺に行った時に会った入道使いの一輪さんがやってたわたあめ屋さんでわたあめ買ってもらって二人で食べた。

 甘くてふわふわで口の中に入れると溶けてしまうけど美味しかったよ。二人で分け合って食べたからすぐ無くなっちゃったけど。

 それから射的をやって。お姉様が一個も落とせなくて「……きょ、今日は調子が悪いみたいね」って声を震わせてるのをみて楽しかった。

 咲夜もめーりんも笑顔で私たちを見てた。こあは外に出て疲れたらしいパチュリーを見ながら右往左往してたけどそれでも雰囲気を楽しんでたみたい。

 あとね。

 霊夢さんと早苗さんに会った、なんか知らない人と一緒だった。桃色の髪で頭の両サイドにシニョンを付けてる女の人。右手を包帯で巻いてたから多分怪我か前に早苗さんから聞いた重度の中二病患者ってやつだと思う。右腕全体を覆ってたから多分後者の中二病と思われる。

 でも挨拶して話をしてみると普通の人だった。名前は茨木華扇(いばらぎかせん)さんと言うらしい。仙人なんだってさ。珍しいよね、鬼の人が仙人やってるなんて。

 というか鬼だからシニョンを付けてたんだね。まぁ人里だし変に思われないように配慮してるのかなぁ? 私とかお姉様とかは何もしてないけどやっぱり普通はそうなんだろうなぁ。

 実は最初に見た時頭に三箇所破壊出来る部位があったからビックリしたよ。よく見たらツノだったけど。

 まぁその華扇さんはともかく、霊夢さんと早苗さんもお祭りに来たらしい。特に霊夢さんは協賛で祭りに参加しているとか。今はちょっと休憩がてら別の人に神社を任せて出て来てるらしい。

「せっかくのお祭りだから楽しまないと損です!」って早苗さんに引っ張られたんだって。霊夢さんは「ったく商売上がったりよね」って言って溜息吐いてたけど嫌そうじゃなかった。

 軽く話して二人とは別れたよ。

 あと、その時に咲夜達とも一旦別れた。姉妹水入らずで過ごさせようってめーりんが提案したらしい。なんかごめんね? 気を遣わせて。

 

 閑話休題(それはともかく)

 お姉様と一緒に行動することになった私だけど、まずは一緒に買ってもらったお好み焼きを分けっこして食べてから金魚すくいをすることにした。

 お姉様がさ、不器用な上にやたら大きなやつをすくいたがって一匹取るのに四回もやってた。私も三匹すくって、金魚袋に入れてもらう途中に金魚すくい屋さんのおじさんがこんな話をしてくれた。

 

「おう嬢ちゃん達。紅魔の吸血鬼だろ? 大層お金持ちって聞くじゃねぇか。もし出来るなら水槽の中に金を入れてうちの金魚を飼ってみな。金魚ってなぁ名前の通り、水に溶け出した金を体内に取り込むことでそれはそれは美しい金色の鱗を身に纏うらしい。おっちゃんは金が無くて普通に育てちまったから今、お嬢ちゃんらが持ってる金魚は赤いけど、しばらく日がたてば金色になると思うぜ」

 

 水槽の中に金を入れて飼うと金色の鱗を持つらしい。

 初めて知ったよ。帰ってからお姉様と一緒に水槽を用意して金も入れたけどどうなるか楽しみだ。

 で、それはそうとまだお祭りの話は終わらないよ。

 

「あら、あれは何かしら?」

 

 金魚屋さんを後にして次はどこに行こうとあたりをうろついていた私達は、途中で人だかりを見つけたんだ。

 子供達が沢山集まっててさ。ちょっと飛んで前の人達の頭の上から見てみるとアリスさんが居た。

 人形劇をやっていたらしい。

 今日の演目は桃太郎だ。とは言っても原作のじゃなくて所々改変されてた。そういえば初めて知ったけど桃太郎って八月の物語なんだってね。今九月だけどまぁそれは良いか。

 内容は以下の感じだった。

 

 

 昔々あるところに。

 

 妖忌「良い朝じゃなぁ」

 

 ――おじいさんと。

 

 幽々子「そうねぇ。朝日が綺麗」

 

 ――おばあさんが居ました。

 

 妖忌「さて……今日も芝刈りに行くとするかな」

 

 おじいさんは山へ芝刈りに。

 

 幽々子「あらー、じゃあ私は洗濯に行こうかしら」

 

 おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 すると――

 

 幽々子「?」

 

 川の上流から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。

 

 幽々子「桃おおおおッ!!」

 

 腹ペコだったおばあさんはその大きな桃へ飛びかかり――、

 

 幽々子「ハグハグムシャムシャ! バガベギボギィ!!」

 

 一心不乱に齧り付きました。

 桃の中から何やら「やめっ!? ぎゃぁあ!!」という悲鳴が聞こえた気もしますがおばあさんは気にもしません。

 すると――、

 

 妖夢「ごふ……おっふ……」

 

 なんと桃の中から可愛らしい女の子が出てきました。

 おばあさんに噛まれ、だくだくと頭から血を流しています。

 

 妖夢「……うっ……うう……」

 幽々子「あら大変! 早く桃を食べてから手当てしてあげないと」

 妖夢「う………げほっ……」

 

 おばあさんは急いで桃を食べ始めました。その間にも女の子は血を流して衰弱していきますがまずは桃を食べることを優先します。

 結果、女の子はおばあさんに喰い殺され掛けましたが辛うじて半命を取りとめました。

 そして数年後。妖夢=桃太郎と名付けられた女の子はおじいさんとおばあさんの元で立派な剣士に成長しました。

 

「〜〜〜〜っ!」

 

 お姉様も笑い過ぎて悶えてた。

 確か導入はこんな感じだったよ。

 このあと、おばあさんが桃太郎に渡すきびだんごを全部食べちゃってておじいさんがそっと隠し持ってたきびだんごを渡したり。

 仲間のくだりではサルが、

 魔理沙「きびだんごはいらないからキノコをくれ」

 ってきびだんごを突っぱねたり。

 キジが、

 霊夢「人にものを頼む時はもぐもぐ、この中に入れるパクパク、モンがあるでしょうが、ゴクン」

 ってきびだんごを完食した上で賽銭箱を持ってきてお金を要求したり。

 イヌが、

 咲夜「生地のコネ方がまだまだね。噛み心地も良くないわ」

 って出されたきびだんごにケチつけたりして思わず笑ってしまった。

 お姉様も笑ってて楽しそうだった。

 アリスさんの演目が終わってからは皆で拍手したよ。

 (なお、この物語はフィクションです。実在の人とは関係ありませんってテロップもちゃんと入ってた)

 

 それからまた祭り会場を歩いていたけど、ふとお姉様が「博麗神社に行くわよ」と言って博麗神社に行くことになった。

 神社に行くとそこそこ人が行き交っているようで、屋台もいくつか出ていた。

 いつの間にか霊夢さんも帰ってたのか忙しそうに働いている。

 と思ったら目ざとく私達を見つけて何やら手に持っている物を見せてきた。

 

「あっ、金ヅル……じゃなかった! レミリア、アンタ良かったらお守り買わない?」

「待って! 今、私のこと金ヅルって言わなかった霊夢!?」

「言ってない☆」

 

 凄い笑顔だった。その勢いに気圧されたのかお姉様もそれ以上追求をやめていた。

 

「で、これよこれ! 金運恋愛学業厄除けの御守り! アンタ買わない?」

「そんなに効果あるの?」

「勿論♪ これを持つだけで金の回りが良くなり、恋愛や学業も捗る御守りよ! それに博麗の巫女が入れた厄除けの力もあるわ! 世界に一つだけのスーパーな御守りなの! ……でもね、凄い物だけどその分値段が高くて誰も買わないのよ。あぁ、何処かに高貴で富とカリスマに溢れた人は居ないかなって思った時にアンタを見かけたから声をかけたの」

「そ、そう? ふ……ふふ、私レベルになると見るだけでカリスマが溢れているように見えるものね」

 

 お姉様の満更でもない姿に霊夢さんは揉み手しながら笑顔で御守りを見せる。

 

「それで買わない? このスーパーな御守り」

「いくらなの?」

「たったの十万ポッキリよ」

「十ッ……」

 

 ちなみに幻想郷の通貨を現代に換算すると約、百万円である。

 

「……少し――」

「私、前からレミリアって凄いって思ってたのよ!」

 

 ――高くないかしら、とお姉様が言う前に霊夢さんが遮って大きな声で言った。

 

「紅魔館っていう巨大な館の主にしてあのツェペシュの末裔という高貴な血筋! それに幼い姿形から溢れ出るカリスマ」

「ふふん! そうそう! 霊夢もよく分かってるじゃない!」

「いや。お姉様お姉様、これ詐欺よ?」

 

 私が声をかけるけどお姉様は聞いちゃくれない。

 

「そんなアンタならこんな御守り買うなんてはした金で済むわよね?」

「当たり前よ! この私を誰だと思ってるの?」

 

 ふふんと自慢げなお姉様。あ、これ騙されたな。

 と思ったらさっきの華扇さんがなんかこっちに来た。

 

「どう? レミリア、買う?」

「えぇ! たかが十万、安い買い物だもの!」

「きゃーかっこいい! カリスマが溢れてて惚れちゃいそう!」

 

 あ、なんかお姉様を囃し立てる霊夢さんの後ろに華扇さんがスタンバッた。

 そして、

 

「こんの……」

 

 小さな声で呟いたあと、

 

「ばかものーーーーっっ!!」

 

 華扇さんの怒号が神社に響き渡った。

 流石仙人。霊夢さんもビビってた。でもそれだけじゃ怒りは収まらなかったらしい。華扇さんがさらに声をあげる。

 

「なんですかあの詐欺のような商法! それに最近、貴方は俗気にまみれすぎているわ!」

「ひっ……か、華扇!?」

「そりゃ人間だから多少の欲は必要でしょうけど、仮にも貴方は神に仕える巫女よ!? 今回のは流石に目に余るわ!」

「べ、別に商売くらい良いじゃない」

「よくありません! 手口が汚過ぎます! そもそも貴方のそういった堕落した性格が参拝客を減らしているのですよ!」

「でも相手が納得してるなら問題は……」

「話をそらさない! また修行したいんですか!?」

「うっ……わ、悪かったわよ」

 

 完全勝利だった。

 良かった、うん。というかお姉様も酷いけど霊夢さんも酷いよ。

 そういえば華扇さんにお礼言いそびれちゃったなぁ。

 今度お礼言わないと。

 何にしても今日は楽しかったなぁ……。

 

 

 #####

 

 読み終わってまずやることは一つだった。

 

「……霊夢さん?」

「…………、」

 

 早苗が尋ねると霊夢は素知らぬ顔でそっぽを向く。

 

「え? あれ詐欺だったの?」

「……いや、気付いてなかったんですかレミリアさん」

「だ、だって霊夢の言うことだし」

 

 レミリアとさとりの問答を見て早苗は再度問いかけた。

 

「霊夢さん?」

「……その、悪かったわよ」

 

 もう無理と思ったのか霊夢がレミリアに頭を下げた。

 完全勝利だった。

 

(……いや、何に勝ったのかは分からないけど)

 

 でもこれで後腐れ無くなったし良いか、とちょっとお節介な早苗は納得する。

 そして一行は次のページをめくるのだった――――。

 

 

 

 




 


 久々に一日で一話使った。
 書き終わってからそういやお姉様、被害に遭う時以外はあんま出てないなぁと気付いたので多分、もう少し出番増えます。

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