八月二十一日
今日からまた寺子屋が始まる。
宿題は終わっているし久々の寺子屋で私のテンションも上々だ。
で、寺子屋に行くと学期始めの挨拶が行われた。
「校長の話だオラァ!」
「あの、生徒を威圧しないでくださいね? さて皆さん。長い夏休み、楽しめましたか? ……ちなみに私は休みがありませんでした」
髪の残りが少なくなって来た校長先生がそんなことを話していた。
休みがなかったという下りで、笑いを誘われて多くの生徒が笑っていたけど、
「最近暑いですね。ところで熱中症というものがあります。熱中症は命の危険もある危険な症状なのですが――」
ここからが長かった。
八月二十一日といえばまだ夏だよ。
暑い中長い時間校長先生のお話。
……熱中症の話をしている間に生徒が十人単位で倒れてた。
バタバタと。多分顔が赤いので熱中症だと思う。
校長先生が慧音先生に頭突きされて空を舞った。
自業自得……というかそうも言ってられない。大丈夫かな、定年超えて働いてる先生なのに。
……授業は中止になった。
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「開幕からアウトじゃないですか!」
「十人単位で熱中症って……熱中症の話をするくらいならさっさと話を切り上げなさいよ」
「……同感です。生徒が倒れては元も子もないですし」
「まぁ校長の話は長いってよく聞くし、今更どうとも思わないわ」
「あと今気付いたんですが六十歳以上の老人に慧音先生の頭突き!? 慧音さん頭突きしたんですか!?」
「……空を舞った。あっ……」
「オーケー死んでないから! 話はそこまでにしましょうか!」
話を広げようとした早苗にストップをかけ霊夢が次のページをめくる。
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八月二十二日
国語の宿題を見せ合いっこすることになった。
ルーミアちゃんの答えがなんかおかしかった。
問.表現技法をまとめて下さい。それぞれ以下の解答欄に記入。
題材は自由で構いません。
まずは私の書いたやつからいくよ。
・表現技法(
・
・倒置法……喰らうがいいわ、最強の体術を。
・比喩法……ぎゃおー。(私は)怪獣だぞー。
・反語法……楽しい夜になりそうね。(いやならないわけがない)
・省略法……バシュゴォ。
で、これがルーミアちゃんのやつ。
・表現技法(天空の城のラピュタのムスカ大佐)
・
・倒置法……見せてあげよう。ラピュタの雷を。
・比喩法……見ろ。人がゴミのようだ。
・反語法……最高のショーだと思わんかね。(いや思わないわけがない)
・省略法……目がぁ。目がぁ。
提出したら二人揃って先生に怒られた。
ルーミアちゃんはともかく私は何でだ。
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「いや問題しかないじゃないですか!」
「それにルーミアとか言う奴のはともかくフランのは所々間違ってる気がするんだけど……」
「慧音が怒りそうな答えで笑うわ」
「……というか答えがふざけてますよね。二人とも」
「フランちゃんのはともかくルーミアちゃんのは絶対大人版のルーミアさんですよね、これ書いたの」
「だろうね」
「……使い方が間違ってないあたり腹立たしいでしょうね、先生としては」
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八月二十三日
新学期明けは三日連続授業だ。
つまり今日も寺子屋。今日はテストをやった。国語の小テストだ。
問い①
使い方が正しい方に丸をしなさい。
・「犬が(ワンワン)(ニャーニャー)吠えている。」
これはワンワンだね。間違いない、ニャーニャーは猫だもん。
橙ちゃんがニャーニャー鳴いてるの聞いたことないけど。
……うん、多分ワンワンの筈だ。多分。
・「カレーは(食べ物)(飲み物)である。」
……これどっちだ。普通に考えたら食べ物だけど、インドとかのあたりだとカレーは飲み物って言われてるって聞いた覚えがある。
……難しくない? これ。
とりあえず飲み物に丸つけた。
・新幹線より速い(飛行機)(おじいさん)
おじいさん凄ええええっ!
なんで選択肢におじいさんいるの!? というか飛行機も新幹線も見たことないから速度分からない!
多分普通の人よりは飛行機も新幹線も速いと思うけど。なんか無性におじいさんが選びたくて仕方ない。
おじいさんに丸した。
・(中途半端な優しさ)(見せかけの友情)なんかいらない。
いやどっちだよ! どっちも意味として通じるよ!
両方に丸するしかないじゃんこんなの!
だって合ってるもん! ねぇ?
試験はそれで終わり。
あと遅刻した人がいた。なんかアンケート書いてたよ。
・遅刻の理由
(おばあちゃんを助けてた。)
・今後遅刻しない為にどうするか。
(おばあちゃんを助けない。)
…………うん。そこは助けよう、ねっ?
遅刻していいから助けよう、うん。
それとテストは一日中あったけど配ってもらった日程表がなんかおかしかった。
本日の日程
8時30分〜9時30分 国語(60分200点)
9時40分〜10時40分 算数(60分200点)
10時50分〜11時30分 歴史(40分100点)
11時30分〜12時30分 昼食(60分200点)
12時40分〜1時20分 理科(40分100点)
昼食摂れば200点くれるらしい。なんて楽なんだろう。
それとテスト終わってからミスティアちゃんが嘆いてた。
なんでか聞いて見たら何も言わずにこんな用紙を見せられた。
問い。
・六人全員を円形のテーブルに座らせる方法は何通りありますか?
(テーブルより椅子に座らせた方がいいと思います。)
・一番多くの都道府県と面しているのは何処ですか?
(海)
・次の文を過去の文にしなさい。
I live in Tokyo.
(I live in Edo.)
・次の文を日本語に直しなさい
Cross (殺す)
うん、次はちゃんと勉強しようね。
涙の滝を流すミスティアちゃんの肩を叩いて私はそう言った。
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「この寺子屋問題有りすぎじゃないですか?」
「…………、酷いわね」
「……ですね」
「……これは何とも言い難いわね」
「というかツッコミどころが多過ぎて逆にどこも突っ込めないのよ!」
……ツッコミ放棄。
四人の取った手段はそれであった。
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八月二十四日
今日は休みだ。
めーりんと修行して、それから妖忌さんのところに改めて修行をお願いしに行った。
……なんか前の日の書き方が色々アレだったせいでこうやって普通に書くのに違和感を感じる私だよ。
ともかく改めてお願いすると「迷いは晴れたようですな」と妖忌さんも何か私から悟ってくれたのか修行を許可してくれた。
よーし! また明後日から剣の修行だ!
気合い入れて頑張るよ!
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「なんか前日と違って読みやすく感じます」
「というかこれが普通でしょ!」
「……反応しづらいボケの応酬はNGというやつですね」
「これはこれで突っ込みどころ少な過ぎてアレだけどね」
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八月二十五日
今日は寺子屋。
久々に聖徳太子先生が来た。
「今日は私と仏教の関連についてお話ししましょうか」
前回はまともに授業すら出来なかったのでさすがに今回は真面目らしい。ヘッドフォンみたいなのを付けてる時点で真面目と言っていいのか分からないけどそれは置いておこう。
「仏教を日本――倭国に伝えたのは私こと聖徳太子です。当時、私は『
うん、真面目だね。というか初めて知ったよ。
そこそこ知ってるつもりだったけど言い伝えたとかその辺りは抜けてるや。
「太子先生、宗派は何処なの? 真言宗?」
「宗派ですか? いえ、私は特にありません。その理由は宗派という概念が日本で生まれたのが、私が表舞台で生きていた飛鳥時代より後の奈良時代なんです。それ以前はお寺は特定の宗派に属していませんので、私もその中に入ります」
ただ、と太子先生は続ける。
「聖徳太子――つまり私を開祖とする『聖徳宗』というものが1950年代に出来たそうです。もしかしたらその中に入るかな?」
あとはもう一つ説明をしましょうか、と真面目系先生こと太子先生はスチャッと伊達メガネを装備する。
「浄土真宗は皆さん知ってますか? 親鸞が開祖なのですが、あそこにも私は関わりがあります」
そう言って太子先生は黒板になにやら書き込む。
内容はこんな感じだった。
親鸞がある時、聖徳太子を祀る京の六角堂に100日篭りました。
深夜、彼がウトウトしていると聖徳太子が夢に現れたそうです。
彼は親鸞に対しこう言いました。
「貴方は女性を欲するか? もし欲するなら、私が美女となって相手をしよう」と。
これは女犯の夢告と言われますが、多分真実は私が女性だったと知る人物が寝ている親鸞の耳元で悪戯で「聖徳太子が女」だと呟いたのでしょう。
とはいえ親鸞はそれを信じ込んでしまい、煩悩の強い人でも救われると考えるようになってしまいました。
……歴史ってわからないね。割と本気で。
浄土真宗の生まれた理由悪戯なの? あと多分って書いてあるけど教師として良いの!?
あと他にも聖徳太子さんは復活するまでお金を持ったことないとか面白い話をいっぱいしてくれた。
前回はまるで授業になってなかったからか、今回はとても太子先生は上機嫌で帰っていった。よかったね。
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「……勉強ですね」
「勉強ね」
「つまらないわね」
「……私は真面目で良いと思いますけど」
上から早苗、霊夢、レミリア、さとりの言葉である。
概ねさとり以外不満な顔を浮かべているあたり、もっと別のことを期待していたのだろう。
ちゃっちゃと次のページ行くわよー、と霊夢が声がけすると全員が頷いた。