フランドールの日記   作:Yuupon

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六月編7『世界の真理』

 

 

 

 六月二十四日

 

 妖忌さんに剣の修行をお願いした翌日。

 やりました。早速やりましたよ。

 なんだろうね。妖忌さんは技を盗むものと考えているらしい。めーりんと同じ考え方なんだけど、安易に教わろうとすると叱ってきたから結構苛烈かも?

 でも私的にそのスタイルは嫌いじゃないよ。寧ろ恩があるからって普段のスタンス外した教え方されてもって話だしね。

 にしてもやっぱりというかなんというか、流石凄腕だった。

 妖忌さんが修めているのは『魂魄流剣術』らしい。彼曰く、『雨を斬るには三〇年、空気を斬るのに五〇年、時を斬るのに二百年。そうしてようやく見えるのが魂魄流の真髄(なり)』だそう。

 語ってるところ悪いけど流石にそこまで教わろうと思ってないよ。

 ちょっとでも剣に慣れたらなーって感じだから。本気で魂魄流の舎弟に入って修行しようと思ってないから。

 とりあえず修行内容をさらっと書いておこうかな。

 まぁ一言で言うと一度貴女の技量を知るべく、お手合わせ願いたいってのが最初だった。本気で来いって話だったので前に私のパワーがやたら増幅したあの名前不明の剣も持ってきた。

 で、やったらなんか驚いてた……ちょっとフォーオブアカインド(四人に分身)して、同時にレーヴァテイン(ラグナロクの炎剣)で薙ぎ払っただけなのに。

 まぁ防がれたけどね。「無刀風迅!!」とか叫んだ瞬間に私の剣が全て空ぶった。

 さっすがぁ♪ そうこなくちゃ面白くない。

 小手調べで倒しちゃったらツマラナイしね。にしてもこの剣。魔力の通りが良いなぁ。業物なのは分かるけどもしかしたら有名な剣だったりして。

 なんにせよ森近さんには感謝だね。

 

 

 #####

 

 

「あの、フォーオブアカインドとレーヴァテインって両方スペルカードですよね。普通に同時にスペルカード出したらいけないってルール破ってませんか?」

「修行だからセーフじゃない? 殺し合いじゃないし。それに修行に文句は付けられないわ」

「で、でもサラッと書いてあることがかなり恐ろしい事なんですけどーーねぇレミリアさんはどうですか?」

「落ち着きなさい守谷の風祝。今更よ」

「いや、一番認めちゃいけない人が今更って言っちゃ駄目でしょう!? 妹ちゃんですよ!?」

「……幻想郷は全てを受け入れるのよ、それはそれは残酷な事なの」

「返答に困ったらとりあえずそれ言ってませんか!? つか万能返事にしないで下さい!!」

「あぁもううっさいわね! 細かい事をグチグチグチグチ! ぶっ飛ばすわよ!?」

「何故ぇっ!? 何故そんなに不機嫌なんです!? この数分の間に何があったんですか!?」

「嫉妬してるんでしょ。自分よりリアルが充実してて尚且つ自分より明らかに成長している事実を一つずつ突き付けられて」

「残酷な事をサラッと言うのやめてくれないかしら? というか負けてないから! まだ負けてないから!」

「いや、どこに負けてない要素が残ってるんですか?」

「……むむむ」

「何がむむむですか!?」

 

 駄目だ……(レミリアは)考える事を放棄している! ……考える事が、怖いんだ! なんとなく、早苗はそう理解した。

 

 #####

 

 

 六月二十五日

 

 

 剣って難しい。とりあえず素振りとかやってみてる。

 普段ならともかく特訓用の封印モードだと真っ直ぐ振るのって意外に難しいのよね。いや、別に重いとかじゃなくてさ。

 吸血鬼ってありとあらゆる感覚が鋭敏なんだよ。戦闘面においてね。だからこそ初めてやる事でも戦闘関連なら一度で出来てしまうくらい要領が良いんだ。

 だからこそそれを封印されると辛いのよ。良くも悪くも感覚が人間レベルまで落ちるから。でもこうやって身に付けないと種族の力で出来ちゃうから仕方なく封印してるわけ。

 それと妖忌さんと封印状態でも戦ったけどダメダメだったよ。

 どう斬りつけても弾かれて首元とかの弱点に剣を突きつけられる。受け流しって言うのかな。本来、剣と剣のぶつかり合いって刃の損傷が大きいから殆ど無いけどわざわざ受け止めて上手く受け流してた。というかきょうび剣道以外で剣を振るうなんて中々無いけどね。

 とりあえず片っ端から見たものを吸収して真似していくか。あと、罪袋さん達からもらった剣技の案も試してみよう。

 面白そうなの色々あるし。

 えっと、『九頭龍閃(くずりゅうせん)』とか『天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)』とか。

 あとは『火産霊神(カグヅチ)』? それからジャンル違いだと『アバンストラッシュ』とか『スターバーストストリーム』とか『煉獄鬼斬り』とか。

 かなり無茶の入った動きも多かったけどやってみよう。

 にしても罪袋さん達ってよくこんな案出てくるよね。発想力が天才だと思う。

 

 #####

 

「フランちゃーん、それ全部パクリですよー?」

「パクリ? 外の世界にあったの?」

「はい、全部漫画とラノベですね。アニメ化もしてますけど」

「……ねえ、私怖い事に気付いたんだけど」

 

 その時、レミリアが声を上げた。

 二人がそちらを向くと、彼女は言う。

 

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「「……………………、」」

 

 二人は黙り込んだ。

 いや、仕方ない話だ。そんなギャグのお約束のような部分に真面目に突っ込んでくるヤツが居るなんて想像もしていない。

 というか普通はご都合主義なフィルターかなんかで三人が気づくはずのない事実である。

 えっ? 何か地雷踏んだ? 一人知らないレミリアは目をパチクリとさせた。

 

「あーあ……知ってはならない事を知ったわね。アンタ」

「えっ? どうしたの霊夢?」

「本当ですね。知っちゃったなら仕方ないですよね」

「えっ? えっ、何よ?」

 

 訳の分からないレミリアを他所に巫女二人はゆらりと怪しく立ち上がった。心なしか瞳の虹彩ーー詰まる所ハイライトが消えている気がする。いきなり妙な行動を取り出した二人にレミリアは困惑を隠せないまま自衛をしようとするが、それは腕を押さえられて叶わなかった。

 

「知ってる? 世界の真理を知ったヤツは消されるのよ」

「ゲームオーバーですレミリアさん。また来世お会いしましょう」

「ゲームオーバーって何よ!? というか世界の真理って……罪袋が世界の真理なわけあるかぁ!! 単に矛盾を突きつけた事が世界の真理にしたって初耳だから! というか離しなさいよ! ってええい、なんだこの馬鹿力! 吸血鬼の私が動かせない……えっ、嘘、ちょっと待って!」

「待たない。夢想――」

「ま、待って! 私に出来ることはお願いなんでもするからーー!」

 

 封印! という前にレミリアのなんでもする発言に二人の動きが止まった。

 

「ん?」「今」「なんでもするって」「言いましたよね?」

「す、するわよ! ……なんでも。その謎のコンビネーションはともかく!」

「ですって霊夢さん」

「どうしてやろうかしらね早苗」

「何よその楽しそうな顔! と、ともかく離しなさいよ!」

「んー……そうですね。じゃあ日記が読み終わるまでは私達を叩き出さないと誓って下さい。それで離しますから」

「わ、分かったわよ! 私――レミリア・スカーレットはこの日記を読み終えるまで貴女達二人を叩き出さないわ――――」

 

「じゃあ茶番は終わりにしましょうか霊夢さん」

「そうね。そろそろ尺無いし」

「――って何サラッと語らせたまま日記に戻ろうとしてるのよ!? 幾ら何でも酷いんじゃない!? それと茶番!? さっきまでの消される云々は全部茶番なの!!?」

「当たり前でしょ、馬鹿なの?」

「そんな話があるわけないじゃないですか、馬鹿ですか?」

「くーーーこ、殺すッッ!! 私を脅した罪を今精算させてやるっ!! 好き勝手遊んだ挙句馬鹿? なんて言われてこのレミリア・スカーレットが黙っていると思ったら大間違いよ!!」

「はいはい、愚痴は読みながら聞きますから次のページ行きますよ」

「………………、グスン」

 

 結局スルーされた上に有耶無耶にされたレミリアは不貞腐れた。

 

 #####

 

 六月二十六日

 

 ダンスに歌に剣に寺子屋に。

 よく考えたら超ハードスケジュールだよね。めーりんの修行が一時的にとはいえ無くなって良かったよ。

 最近じゃ寝る前にちょこちょこやってたゲームも眠くて中々難しいし、咲夜のお手伝いもあまり出来てない。

 うーん……色々教われて楽しいけど拘束され過ぎても困るよね。

 贅沢な悩みなのかなぁ?

 とりあえず全部全力で取り組んで、って体力的に出来ても精神的にはキツイし。

 まぁ自分が望んだ結果だから仕方ないかー。とりあえずライブが終わればまた自由時間が出来るかな。

 それまでは頑張ろう。

 あ、そうそう。ここまでの流れも考えて、今日のところは報告を書こう。

 前に幽香さんにもらった向日葵は順調に育ってるよ。八月の半ばには花を咲かせると思う。めーりんからもお褒めの言葉はもらった。

 メイド技術はかなり身に付いてきた。前に一度、家事を全部やった日があったけど意外にアレで自信が付いたんだよね。

 まだまだ咲夜には及ばないけど及第点くらいの働きは出来ると思う。

 友達関係は良好だ。日記には書いてないけど一時間くらい遊んだりとかしてるし。

 

 そんなところかな。

 じゃ寝よっと。おやすみなさーい。

 

 #####

 

 

「時間の拘束か……確かに大変ですよね。バンドやってると」

「………………、」

「やったこと無いから分からないけど、大変なの?」

「そりゃそうですよ。音合わせとかしてるとどうしても気になる部分が出たりして、それを修正したりしてるといつの間にか夜になってたりもザラです。本番前なんて特に緊張してヤバイですし」

 

「………………、」

「……そうなの――で、レミリア? そんな黙りこくらないでよ、うん。ほら拗ねないでってば! さっきのは私達の悪ノリだったから」

「そ、そうですよ! 私達が悪かったんですからいつも通り話をして下さい。気まずい空気は嫌なんですよぅ!」

「……ハァ、本当に反省してるの?」

「そりゃもう!」「はい!」

「……本当かしら?」

「当たり前でしょ」「はい!」

「…………分かったわよ。ネタをネタと理解出来なかった私も悪かったし……おあいこにしとく」

「それでこそレミリア!」「よっ、日本一!」

 

「……やっぱ喧嘩売ってないアンタら?」

「そんなわけ」「ないじゃないですかー!」

 

「今確信したわ。この二人は私に喧嘩売ってるって!」

 

 決めた、日記を読み終わったらちょっと本気で叩き潰す。

 そう決意したレミリアだった。

 

 

 

 

 




 今回出てきたネタ
・むむむ(横山三国志より)
・駄目だ……考えることを(進撃の巨人よりアルミンの台詞)
・九頭龍閃、天翔龍閃、火産霊神(るろうに剣心より)
・アバンストラッシュ(ダイの大冒険より)
・スターバーストストリーム(ソードアート・オンラインより)
・煉獄鬼斬り(ワンピースより)
・今、何でもするって、言ったよね?(ニコニコの淫夢語録)


 多分次回で六月編終わります。


 

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