五月二十三日
日曜日だ。
運動会の代休で月曜日も休みなので二日間は修行と自由になるね。
で、今日は久々にパソコンを弄ってみた。
デーモンハンターをやろうかな、とも思ったけど今日はパスして別のゲームをやった。
PSO2ってゲーム。これもオンラインゲームなんだけど無料だったからダウンロード。
まぁ最初はよく分からなかったけど、何とかチュートリアルを終えたところで『天使』さんって人と『ぐーや』さんって人に「その装備、始めたばかり? 良かったらレクチャーしようか」とパーティに誘ってもらえた。
デーモンハンターの時もそうだったけどパソコンやってる人って皆親切なんだね。
しばらくストーリーとかを進めて「良かったら」とチームに誘ってもらえた。
『幻想兵団』って名前のチーム。チームマスターが『☆サナ☆』さんって人で、『天使』さんと『ぐーや』さんはマネージャーだった。
うん、午後いっぱいやってたけど楽しかったよ。
デーモンハンターもだけど、寝る前にちょっとずつ進めていこうと思う。
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「………………☆サナ☆」
「いや、何を呟いてんのよ早苗」
「な、なんでもありませんよ、はい」
「?」
ちょっと反応のおかしかった早苗を見て霊夢が尋ねるとちょっと狼狽したが何もないと彼女は否定する。
よく分からなかった霊夢だが、ひとまず感想を述べることにした。
「ともかく、おんらいんげーむってやつは面白そうだし私もやってみたいわね」
「……あ、じゃあ今度やりますか? 家に機材ありますし」
「そうね。良かったらやらせて?」
「あ、ズルいっ……じゃなくて。フッ、今度私も遊びに行かせてもらうわ。オンラインゲームに私の興味もそそられたもの」
「勿論、大歓迎ですよ」
そんなこんなで話をまとめて三人は次のページを開く――。
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五月二十四日
やっと、めーりんから拳法を教えてもらえることになった。
右手の拳を突き出して放つ渾身の右ストレート。左手の拳から放たれるジャブ。
……あれ、今書いてて思ったけどこれボクシングじゃない?
いや、ボクシングじゃないか。
やってる時は「さぁ、どっからでもかかってきてください」って言われてやる気満々で殴りかかってたけどこれ、喧嘩のやり方だよね。
「ドララララッッ!!」とか「オラオラオラァッ!!」とか「無駄無駄ァッ!!」とか「
……これスカーレット家の娘としてどうなの? というかそれ以前に女の子として、淑女としてどうなの?
なんか修行が迷走してる気がする。特に最近の私のインフレ感も相まって。
……そういえば『無駄無駄ァッ!!』って叫ぶめーりんの背中から龍みたいなのが出てたんだけどアレってなんだったんだろ?
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「美鈴さん、スタンド使いだったんですか!?」
「……スタンドが何か知らないけれど何の話よ」
「ジョジョですよ! ジョジョ! レミリアさん知らないんですかーーって知らないのが当たり前でした、すみません、ちょっとテンション上がっちゃって私ったら……」
ハッ、と気付いた早苗は顔をほんのり赤らめると慌てて弁明する。
すると霊夢がボソリとこんなことを呟いた。
「……そういえば咲夜の元ネタってそこなのよね」
「えっ? いや、元ネタって何の話ですか霊夢さん?」
「ちょっと一次元上の話よ、気にしないで」
「は、はぁ……にしてもこの幻想郷にはスタンドまであるんですね! 今度美鈴さんに教えてもらおうかなぁ」
「……いや、そこの風祝はともかく霊夢は待ちなさいよ。元ネタって何かしら? 咲夜は生きてそこに存在しているのよ? その物言いは私の従者に対して失礼じゃない?」
「アンタも把握してない感じね、まーー良いわ。本人に聞けば分かるし今度聞いてみたら?」
「???」
よく分かっていないレミリアだがとりあえず矛は納めることにしたらしい、曖昧な顔で次のページをめくる。
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五月二十五日
寺子屋だ。今日は音楽の授業があった。
音符の読み方とか、あと楽譜の読み方を習った。それからピアノのドレミファソラシドの場所も。
そういえば私の家にもピアノはあるのよね。しかも五つも。
グランドピアノが二台とアップライトピアノが三台だったかな。
そのうち楽器を弾けるようにもなりたいし誰かに頼もうか……。
咲夜なら弾けるかなぁ?
今度聞いてみよう。
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「ピアノ五台ですか、凄いですね!」
「フフ、ツェペシュの末裔たるスカーレット家だもの。この程度当然よ」
「いや、アンタ持ってるだけで弾けないでしょうに」
「あぅ! わ、私を
「いや、弾けないわよ。だって持ってないもの」
「く、ククッ! 同じ穴の
「ちなみに早苗はどうなの?」
「私ですか? ちょっとなら弾けますよ? 実は高校の時に軽音部に所属してまして『放課後ティータイム』ってバンドなんですけどピアノパートではないとはいえある程度は弄ってたので」
「ふぅん、じゃあそんな早苗からして五台のピアノを腐らせておくってどう思う?」
「そうですねーー勿体ないので売ってみたらどうでしょうか? ほら、CMでよく『ピアノ売ってちょうだい♪』ってタケモトピアノがやってましたし」
「早苗早苗、楽器を放置されてるって聞いて軽く怒ってるのは理解したけど幻想郷にCMは無いわよ?」
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五月二十六日
突然ですが皆さん。
幻想郷の戦いのルールの名前を読み上げて下さい。
――そうだよ! 弾幕ごっこだよ!!
一回よく見て欲しい。『弾幕』ごっこなんだよ。
直訳すると弾幕を放って勝ち負けを決めるごっこ遊びだよ!
それがなんで私はこんな拳で語るバトル漫画みたいに修行してるの?
そもそもの拳法だって太極拳みたいにゆったり体を動かしたりーーと体操程度のものを想定していたのにどうしてこうなったの?
というか戦闘ルールが『弾幕ごっこ』なんだから修行って言ったら弾幕の修行じゃない? もしくは私は『レーヴァテイン』って剣を使うからってことで剣術の修行じゃない?
それをめーりんに尋ねてみたら「未熟ーー未熟未熟未熟! だから妹様は甘いのです!」と言われた。
……うー。無手の戦いについてだけはめーりんが怖いよぉ。
まぁ確かに結果は出ているから文句つける方がおかしいのは分かってるんだけどさ……にしたって今思えば畑を耕すのを素手でやったとか頭おかしい気がするの。
私がおかしいのかなぁ?
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「レミリア。実際のところどうなのよ美鈴ってこんなキャラなの?」
「――実は美鈴は弾幕ごっこは大したこと無いけれどこと拳の戦いにおいては鬼とも張りあえるからその関連に関しては妥協しないしさせないのよね……困ったことに」
「そうなんですか、生粋の武闘家ってやつなんでしょうね。私的にはアリだと思いますけど」
「……数少ない困った点だわ」
「……というかこれ読んで今更ながら、あの子のこれまでの修行が幻想郷に似つかわしくないことに気づいたんだけど」
「霊夢さん、それは博麗の巫女として良いんですか……?」
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五月二十七日
今日も寺子屋だ。
今日は家庭科の授業が印象的だった。
そう、料理――今や私の得意分野である。日記には書いてないけどアレから毎日のように咲夜と一緒に夕飯作りをしているのだ。
周りの子に比べればある程度上手い方だと思う。
クラス関係なくということだったのでサニーちゃん達を誘って一緒に作った。カレーライスを。
寺子屋には一部の物が八雲紫によって外から取り寄せられているらしくて、カレー粉もその一つだった。
かなり美味しく出来たよ。咲夜様様だね! 出来た料理を慧音先生にも持っていくととても喜んでくれて「美味しいぞ」と言ってくれた。
あとちょっと作り過ぎたので人間クラスにもおすそ分けしに行くと、ブワッて男子が群がってきた。
「フランちゃんの手料理だ!」とか言ってたけどなんだろ? もしかして私って料理上手そうに見えたのかな? 咲夜のメイド修行の成果出た? だったら嬉しいな!
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「家庭科……私もあったなぁ。あとフランちゃんの様子が若干勘違い入ってますけどこれはいいんですかね?」
「良いでしょ。妹が寺子屋で人気みたいで良かったじゃない、お姉様」
「ククッ、そうね。流石私の妹よ。私と同じカリスマ――人を魅入らせる力の片鱗が見えている」
「あの、霊夢さん。確かにレミリアさんにも人を魅入らせる力を持ってますけどそれってカリスマじゃなくて……」
「駄目よ早苗、言わないであげて」
「そ、そうですよね。分かりました」
(……ポロっと口から出かけましたけど実はカリスマブレイクが可愛いって点では魔性というか人を魅入らせる力がありますよねーーって言わなくてよかったです)
……まぁその事実を突きつけた時の反応を見たくないといえば嘘になりますが――とちょっぴり小悪魔な早苗はそう思った。
今回出てきたネタ
・PSO2(日本で初めて売れたとされるオンラインゲームPSOの続編。読みはファンタシスターオンラインツー。最近だとビートまりおさんが作ったヨーコソ・アークスって曲を小林幸子さん(ラスボス)が歌ったのが話題になってた)
・ドララララ!! オラオラァッ!! 無駄無駄ァッ! URYYY!(ジョジョの奇妙な冒険より、叫び声。その中でもDIOという敵は咲夜さんの能力の元ネタとされる)
・スタンド使い(ジョジョより。ジョジョはスタンドと呼ばれる化身みたいなので戦う)
・放課後ティータイム(けいおん! より、主人公達のバンド名)
・タケモトピアノ(あのCM放送曲によってはまだやってる。なんか頭に残るメロディーだと個人的に思う)
・突然ですがーーからの文体(Re:ゼロから始める異世界生活の予告より一部引用)
・未熟ーー未熟未熟未熟!(機動武闘伝Gガンダムより、マスターアジア)
多分、次回で五月編終了します。