五月十九日
今日は保健体育の授業で特別講師の人が来た。
永遠亭ってところの人らしい。鈴仙・優曇華院・イナバさん。
明るい紫の長髪に赤い目、大きなウサ耳、そしてブレザー姿に中々どうしてすばらなおもち……と、最近『透視』を覚えた私の目にはそう見えたけど実際はブレザーの上から和装の行商人のような服装と菅笠を被って隠していた。もしかしたら妖怪であることを隠すようにと人里と契約でもしているのかもしれない。
にしても中々凄い属性だね。折角綺麗なんだから普通に姿見せたら良いのに。絶対人気でるよ? 里の男の人に。
で、今日の授業内容なんだけど。
目の前で人が倒れた時の対処法とか、大怪我した人を見つけた時の対応を教えてくれた。
倒れている人を見つけた時は、口元にティッシュを当てたり手をかざして呼吸を確認するらしい。呼吸をしていなければ強く心臓マッサージ、そしてあとは人工呼吸が必要だとか。
私は、うん。昨日……いや何がとは言わないけど生き返らせることが出来るけどさ。多分。
で、実際やってみたら「あ、とっても良い感じですよ」と褒められた。
……にしても永遠亭か。
何か病気とか掛かったり……はしても何とか出来るけど、場所は覚えておこうかな。迷いの竹林ってところにあるって話だし今度行ってみよう。
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「迷いの竹林……あぁ、迷子になりそうね」
「同感ね。永夜異変の時、咲夜を従えていたにも関わらず大分時間を食ってしまったし……」
「え? そんなに迷うものなんですか? 私、何回も永遠亭行ってますけど一度も迷ったことないんですけど……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……本当、奇跡って万能よね」
「本当にね、嫌味に聞こえるわ。この無自覚奇跡ピーマン」
「ピーマン!? その例えは酷くないですかレミリアさん!」
両手を大きく広げて早苗は反論する。わーわー言いながら体を動かすたび、その豊満な胸がむにゅりと形を変えた。
「………………」
「……ハッ、言葉だけじゃなくて。本当憎たらしい姿見してるわ。この駄肉」
「駄肉!? えっ、そんな太ってます? 最近ちょっとお腹まわり気になってたところなんですけど? えっ、見て分かるくらいヤバイですか?」
「……もっと上の話よ。アンタのデカい脂肪の塊」
「脂肪の塊……? あっ、成る程。胸の話でしたきゃあっ!!」
「この胸だ! この胸が悪いんだ! どうしたらそんだけ育つのか教えなさい!!」
「い、いや! ちょっと揉みしだかないで下さい! 別に特別なことなんてしてませんから! それに胸が大きいって無駄に肩こるしそんな良いわけじゃ……」
「それは私に喧嘩を売っているのね? 妹のフランに負けているこの私に……ククッ、良い度胸だ。その喧嘩買ってやる」
「喧嘩なんて売ってませんよ!? と、とにかく次読みましょう!? ほらほら、レミリアさんはまだ将来性ありますから!」
「早苗、その言い方だと私には無いって聞こえるんだけど」
「れ、霊夢さんも大丈夫ですよ! だって気にするほど小さくないじゃないですか! あぁもうこの話してたらキリがない! 次に行きますよ次っ!!」
胸を揉んでくる二人を振り払い、早苗は次のページをめくる。
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五月二十日
今日は人里で人形劇をやっていた。
時折、魔法の森に住む人形遣いがこうやって人里で人形劇を見せてくれるらしい。
どうせだしと私も見てみた。
今回の演目は『シンデレラ』である。アリス・マーガトロイドさんってお姉さんが可愛い人形を何体も操って演目をやっていた。
多分魔法の一種だよね。そういえば前に魔理沙から聞いた覚えがあるなぁ。「魔法の森には私以外にもアリスって魔法使いがいるぜ」って。
にしてもアリスさん、凄い綺麗な人だったなぁ。
まるで西洋人形みたいに整った顔立ちをしていた。ウェーブのかかった金髪で、演目を行っているときはより一層その姿が輝いてみえた。
それにシンデレラもすっごく面白かったよ!
終わった後も里の子供達とかが、わぁってアリスさんの方に駆け寄ってたしその後ろから人里の男の人達が「アリスちゃーん!」とか「今日も演目凄かったぞー!」とか「可愛かったぞー!」とか「俺と結婚してくれー!」とか言ってた。
容姿も良いし皆から好かれてるって感じなのかな。ちなみに「結婚してくれー!」って叫んでた人は他の里人にボコスカ殴られてた。
折角だし、と私も話してみると「貴女、もしかしてフランさん?」と逆に尋ねられた。
どうやら魔理沙から私のことを聞いていたらしい。あとパチュリーからも。
……パチュリーってお姉様以外にも友達いたんだね。
それで色々話してたらなんか私のことを気に入ってくれたのか「今度、うちに遊びに来ない?」と誘われた。
うん、是非! もっと人形見てみたいし!
それにアリスさんは大人のお姉さんって感じで見ていて勉強になる。遊びに行く日が楽しみだ!
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「そういえばアリスってインドアに見えるけど凄いアウトドアよね」
「そうですよね。それに面倒見の良い方ですし。妖怪の山に引っ越したばかりの頃に一度神社に来て下さって、こちらの世界について幾つか教えてくれました」
「……そういえばパチェも、魔理沙に本を貸すようになる前からアリスにだけは貸借りをしてたわね」
「あちこちとの関係も良好ですし、人としても参考になる方ですし、これほどまでに人里でも受け入れられている。よくよく考えれば凄い人なんですよね」
「私もあいつは嫌いじゃないわ。嘘つかないから」
「今のフランちゃんが人里で受け入れられたりしているのももしかしたら彼女と出会ったのが理由だったりするかもしれませんね。そう思ったらちょっと私、ワクワクしてきました!」
むふー、と早苗は目の中を星型にすると楽しげな声をあげながら次のページをめくる。
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五月二十一日
今日は寺子屋。
最近は臨時教師が多かったけど今日は普通に慧音先生の授業だ。
皆が寝る唯一の授業、うん。
まぁその理由は慧音先生以外、個性豊かな先生しか居ないせいなんだろうけど。
例えば英語の革ジャン先生は、
「
って言いながら教室に入ってきて。
「
って叫びながら荒い文字を黒板に書くし。
国語のドラゴン先生は、
「ホーワタァァーーアァァァアーーホワタァッ!! ……はい、ここテストに出まーす」
ってやたら武闘家みたいに叫びながら意味不明言語を黒板に書くし。
算数の激安先生は、
「イチキュッパのビデオデッキが二割引! ボーナス一括払いで五%オフ! 今ならポイント還元が一三%ついて、さて、いくら!!」
ってやたら商品の値段にこだわるし。
と、そんな具合にまともな先生が居ないのだ。
最近、もう一人まともだった古典の昼メロ先生が寿退社しちゃったし。
いや、あの時はビックリしたよ。
「ーー芭蕉の句には、」
って読んでた時にいきなり扉がガタンと開き、机を蹴り飛ばして男の人が現れたんだから。
「さだこ!」
「今更何よ!!」
「……俺が悪かった!」
「馬鹿ッ、寂しかったぁ……!!」
正直なにを見せられてるのかと思ったよ。
こういう風に迎えに来てくれる人がいるってのはちょっぴり羨ましかった。将来はこんな人を見つけたいなぁ。まぁそれは置いといてこれがキッカケで寿退社。
そんなわけでそのギャグ空間に慣れてしまった生徒達は真面目な慧音先生の授業では大半が寝てしまう有様。
……今更だけどこの寺子屋大丈夫かな。
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「どう考えても駄目じゃない……」
「え、授業参観とかじゃ普通に授業してたって咲夜が言ってたのに?」
「…………」
「ちょ、ちょっと早苗? 黙ってないでこれ本当なの? アンタ臨時教師だし知ってるでしょ」
「……わ、私は何も知りません。はい、本当に!」
「凄く反応が怪しいけれど?」
「これは別の意味での汗です! ちょっと、外の世界で見覚えあったっていうか。まさかそんなのまで幻想入りしてると思ってなくて……頭の整理が追いついてないだけなんです!」
「……ということは今は居ないの?」
「はい、普通の先生方ですよ?」
「……にしたってこんな教師、フランの成長に悪影響があったら」
「あの、レミリアさん。後々の為に変なこと言わない方が良いですよ。色々と、まだ日記内に出てませんけど私、レミリアさんが寺子屋でやらかしたことを知ってるんですからね」
「はうっ!? い、言わないで! フランが書いてないかもしれないから!」
「……何やらかしたのよ?」
「それは後のお楽しみに取っておきましょう。さ、次のページです」
呟いて、早苗はペラリと次のページを開く。
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五月二十二日
今日は土曜日!
寺子屋も休みの日! なんだけど『年に一度の運動会』で寺子屋に行くことになった。
そういえば五月なんだね、運動会シーズン。
勿論だけど人間と妖怪では部門が分かれていて、妖怪は二チームに分けられた。
赤と白の二組ね。妖怪クラスは二つあって、チルノちゃん達と私が赤。白はサニーちゃん達のクラスだった。
運動の内容は普通のもので、百メートル走とかそんな感じ。ただ私の場合一瞬で駆け抜けてしまうので、途中に落ちている紙をひろって中に書いているものを持ってくる『借り物競争』に出場することになった。
で、スタートと同時にダッシュで紙を取ると内容は『ピンクの服を着た人』だった。チラリと見ると先生の一人がピンクの服を着ていたので本来はそっちを連れてくるのを想定していたのだと思う。
ただ、都合の良いことに私の場合はピンク色の服を着たピンク大好きお姉様が居るのだ。
すぐに紅魔館にあるお姉様の気を見つけて瞬間移動すると、何故か修行中に私が着ている猫耳メイド服(ピンク色バージョン)を着て、鏡の前でポージングするお姉様を発見した。
「こ、これ可愛いかな? にゃー! ってふきゃあっ!!? ふ、フラン!? 運動会はどうしたの!?」
「話は後! 一緒に来て!」
「ま、待って! 私、こんな服装じゃーーーー」
なんか言ってたけど競争だから聞いちゃいられない。
すぐに瞬間移動し直して一位でゴールした。
いきなり人の目があるところに連れて来られてビックリしたのかなんかゴールした後にお姉様が泣いてた。
すぐに咲夜が服装をいつものに改めてたけど……。
なんかゴメンね、お姉様。
ちなみに赤組は優勝しました。
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「にゃー、ですか。可愛いですね」
「そうね可愛いわね、にゃー」
「二人して嬉々として私を弄るのはやめなさい!! は、恥ずかしいのよ? わ、私の汚点だわ!」
「良いじゃない。密かに見てて羨ましかったんでしょ? 猫耳のフリフリメイド服」
「そうですよ、可愛いですもんね猫ちゃん。だからフランちゃんの運動会で誰も居なくなるタイミングを見計らってこっそりと猫耳メイド服着たって不思議じゃないですよ」
「い、言い方に悪意があるわ! そんな分かったように言わないで!! う、うううう!! うーーーーっ!!」
その後もしばらくの間、ニヤニヤと二人がレミリアを弄ったのは言うまでもない。
今回出てきたネタ
・個性豊かな先生(ファンタCMより)
自重してネタが少なくなっても内容が濃い模様。
あと感想とか誤字報告とか有難うございます。