五月十五日
今日はパチュリーと一緒に魔法の特訓をした。
やっぱり魔法に関しては私より彼女の方が詳しい。とりあえず今日の議題なんだけど『吸血鬼の弱点を無くす』魔法の考案で固まった。
以前私が外に出る時に『影魔法』を掛けていることは書いたよね。吸血鬼=日光に弱いってくらい知られてるし、まぁその為の魔法なんだけど。今回は他の弱点を無くす為の魔法だ。
とりあえず分かりやすくする為にザッと一般的に知られている吸血鬼の弱点を書いてみようか。
・日光
・聖なる炎
・にんにく
・十字架
・流水
・銀製の武器
他にも鏡に映らないとか、招かれないと家に入れないとかデマも混じっているけど大まかにはこんな感じかな。大体このあたりは魔術に携わったことがある人なら誰でも知ってると思う。
で、この中から既に克服する手段があったり、殆ど弱点にならないものを消すとこうなる↓
・流水
・銀製の武器
その理由を説明しようか。
まず日光は影魔法で防止出来るでしょ? 聖なる炎は、まあ私も炎操れるし焼かれはしないし浄化もされない。にんにくはデマ。餃子とかも好きよ、普通に。で、十字架は怯ませるくらいの効果しかないしといった具合だ。
ただどうしても流水と銀製の武器はマズイ。特に銀製の武器ね。正直、銀ナイフで刺されただけで場所によっては致命傷になり得るし。
で、今回の議題はその銀製の武器についてだった。
とはいえそんな事が簡単に解決出来るならとっくの昔に吸血鬼は銀製の武器という弱点を克服しているわけで、話は難航した。
「……もういっそ、攻撃を全部反射したり無効化出来ればなぁ」
平行線となって、ついポロリとそんな言葉が零れる。
するとパチュリーが「それよ!」と声を上げた。
「霊夢の使う『夢想天生』あれが常に使えたらーーって流石に厳しいか」
いや夢想天生ってアレだよね。博麗の秘術。言うほど魔法って万能じゃないし、無効化の術式は浮かばないよ。
そもそも話が進まないから吐き捨てるように言ったわけだしね。それに反射だってそんな上手い話があるわけ…………、あっ!!
「何か浮かんだの? フラン」
うん! すっごいこと思いついた! 反射なら再現出来るかもしれない。
勿論、前提として行っておくけど純粋な反射なんて無理だよ。それこそそんなのチートだし、魔法はそんなに万能じゃない。
私が思いついたのはもっと科学的な方向だ。
「反射するんじゃなくて、外部からの衝撃――その
つまるところ『ベクトル変換』ってやつだ。以前、魔法式の構築の為に外の世界から輸入したと言っていた科学の資料を読んだが、似たような理論があった気がする。
なんて資料だっけ……確か『第一位の能力理論』って論文。
もし出来たならそれこそ影魔法すら必要無くなるぞ。太陽光を反射、流水を反射、攻撃を反射、それだけで全てが事足りる。
それを話すとパチュリーも乗り気のようだった。『力の向き』を操れれば他の魔法理論にも大きく活かせるとのこと。
よーし、これから頑張るぞー!
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「……第一位?」
「どうしたの早苗。そんな頭を抱えて」
「
「……私、早苗の言ってることが時々分からないんだけど」
「それはともかく
「そう? なんか中二病みたいな響きがするけど……」
「……まあ禁書では厨二キャラですからね。白髪赤目に小文字の『ァィゥェォ』がカタカナ表記で、あと『ン』もでしたか。いや、あれ本当に学園都市の資料じゃないですよね? まさか平行世界からも物が幻想入りしてくるんですか?」
「……本当に早苗の言ってることの意味が分からないんだけど」
ともかく一同は次のページをめくる。
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五月十六日
朝起きたら何故か、咲夜の膝枕で寝ていた。
おかしいな。私、布団で寝たはずなんだけど……。
あ、もしかして夜トイレに起きた時に寝ぼけて咲夜に抱きついたりとかしちゃったのかな?
にしても咲夜の寝顔見たのは初めてだった。うん、思えば本当にそう。一回も見たことないや。
とっても幸せそうに寝ていたので「疲れてるだろうし」と起こさずに今日の家事をやっておくことを思い付いた。
めーりんにはそれを理由に修行を断って。
早速、昨日のうちに咲夜と仕込みした朝食を用意し、それから食器の片付け、掃除と洗濯と頑張ってやった。
……すっごい疲れた。咲夜、これ毎日やってるんだよね。凄いや。
で、あらかた片付いてそろそろ昼食を作ろうかという時間帯に咲夜が慌てた様子で起きてきた。
「あら、おはよ」
「い、妹様! お早うございます、もしかして家事をやって下さったのですか?」
「うん。すっごい幸せそうに寝てたから起こせなくて」
「申し訳……いえ。ありがとうございます、妹様」
そう言うと咲夜が笑顔でお礼を言ってくれた。
うん、良いことしたあとは超良い気分だよ。それに咲夜も「すみませんでした」って言う前に「ありがとう」って切り替えてくれたのは良かったよ。こういうのは謝られるよりありがとうって言われた方が嬉しいもんね!
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「良い子ですねー……」
「そうねー……」
「そりゃあ私の妹だもの、当然よ!」
「姉はこんなに高飛車なのにねー……」
「本当にそれですよねー……まあ可愛らしいですけど」
「おいそこぉッ! これ以上私の悪口はやめてもらおうか! 紅魔の王を馬鹿にしてると痛い目みるわよ!」
「……そういうとこを直せっつってんのに」
「……まあまあ霊夢さん。子供のうちですし大人になれば自然と淑女な振る舞いをしますよ、きっと」
「それ堂々と本人の前で言うことなのかしら? あとそれ以上言ったら風評被害と名誉毀損で叩き出すわよアンタら……」
ジト目のレミリアはやがてハァ、と溜息を吐いて次のページをめくる。
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五月十七日
寺子屋だ。今日も臨時教師が来た。
銀髪の天然パーマな男の先生だ。どうやら今日は慧音先生が休みのようで代わりに来たらしい。
「え゛ー、という訳でね。銀魂高校から臨時で来ましたぁー。一日担任の坂田銀八でぇーっす。全員ーー居るか、仮に居なくても居たってことにしてだ……とりあえず今日一日なんで適当によろしく頼む。あとお前ら、俺のことは気軽に銀八様って呼びなさい」
「いや、銀八先生、様付けは気軽に呼ぶ名前じゃないと思います!」
「あ? うっセーよお前。学校じゃなぁ、教師は生徒より偉いんだよ。ンな細かいことを一々突っ込んでたら社会に出てからあの、なんだ……上司にウザがられてリストラされるぞお前」
「いや今明らかに考えましたよね!? 『あの、なんだ』ってところで考えてましたよね!?」
「あぁうっセーな。えっと出席番号○○番は休みっと」
「それ僕の番号ですよね!? 何虚偽記載してんですか!? なんか勝手に休み扱いされてんですけど!!」
「あー、という訳で授業を始める。まータイタニック号に乗った気分で任せとけ」
「オイテメェ無視すんな! あとその船沈むからあああっ!! あぁもうどっからツッコミを入れたら良いんですかアンターーッ!!」
「あぁ、うるさいからお前廊下立っとけ。あぁうっぜえやつが居たせいで授業が五分も遅れちまった。とりあえずお前ら教科書の十ページを開けー」
「いやアンタが手に持ってんの教科書じゃなくて週刊誌!! 『少年ジャンプ』ってやる気あんのかーーーーッ!!」
「うるさい不良、全くこれだから最近の若者は。三回目は言わねぇから廊下立っとけ」
「不良はアンタだろうがこの不良教師ィ! つかさっきから思ってたけど横暴すぎでしょアンタぁッ!? むしろアンタが廊下に立っとけよ!? つかそんなのでよく教師が務まりますね!」
「うるっせえッ! 俺こそさっきから思ってたが一々細けーんだよお前ッ! なに、神経質なの? 心優しい俺だからこれまでの発言見逃してやったけどそろそろ怒るよ? 怒ったら怖い銀八先生の本気を見せてやろうかアアン!!?」
なんかとっても面白い先生だった。
授業はあまり進まなかったけど道徳だったし良いよね? にしてもツッコミ入れてた人が不憫でならない。授業態度×ってされてた。
思えば慧音先生の授業と違って誰も寝て無かったなぁ。
…………慧音先生に合掌。
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「慧音先生ェ……」
「……そんなことより。今度は銀魂ですかそうですか。私、今ハッキリ分かりましたよ」
「……唐突に何が分かったのよ」
「この幻想郷に常識に囚われてはいけないということです! もう認めます! この世界には外の世界の漫画とかのキャラも現れるんですね!」
「……レミリアレミリア。なんか早苗が壊れたんだけど」
「霊夢霊夢、丁度私も思っていたところよ。多分触れない方が良いと思うけど」
「同感ね。じゃあ次のページ行きましょうか」
なんか妙な事を口走り始めた早苗を放置し、霊夢とレミリアの二人は次のページをめくる。
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五月十八日
今日の修行は私の能力についてをやった。
ほら私の能力って『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』なんだけど、今までは単純に物を壊したことしかなかったわけよ。
力加減とかも殆どした事ないから改めて調べてみようという話になったのだ。
で、やってみて幾つか分かった。例えば同じ物を壊すにしてもなんだけど、
・弱い力で握ると徐々にヒビが入り、砕ける。
・普通に握ると物が耐えることなくバキーン、と壊れる。
・強く握ると爆発四散。
こんな具合に差があった。
で、もう一つ実験をした。
ほら、幻想郷においての能力って自己申告制なのよ。私の場合は単純に物を破壊する力を持ってたからそう書いたんだけど、もっと応用力が効くんじゃないかって思ったの。
概念を破壊するとか事実を破壊するとかさ。
この二つを簡単に説明しようか。
例えば、普通の人間は空を飛べないよね。
その概念を破壊したら普通の人間が空を飛べるのが当たり前になるのよ。
つまるところもしこれが出来たらただ物を破壊するだけの私の力に『常識』を『非常識』に『非常識』を『常識』にひっくり返す力という新しい部分を見出せるって訳。
それともう一個の事実を破壊の方なんだけど。
例えば私が大怪我をしたとするよね。
じゃあその大怪我した事実を破壊したら怪我は無くなる筈だよね。
つまるところもしこれが出来たら私の力には『物事を無かったこと』にする力もあるってことになる。
これら二つをめーりんと実験してみることになったんだ。
まあ望み薄だけどね。
だって普通に考えてそこまで出来たら危険過ぎるし。それこそ『概念を破壊し、事実を無かった事に出来る』なんて地底に封印されちゃうよ。
って、アレ。出来た――――(以下、文をかき消すように黒鉛筆で塗り潰されている)
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「……ねぇ、早苗。私疲れてるのかな? なんか幻想郷存亡に関わりそうな事実を見たような気がするんだけど」
「き、気のせい……と言いたいですけど事実を認めましょう。げ、現実逃避は駄目です霊夢さん! ……某、めだかボックスの安心院なじみばりにチートな気はしますけど!!」
「……フランが、妹が……? 私を超えて……えっ? なによ、それ。そんなのズルい! ズルいズルいズルい!!」
「あぁ! なんかレミリアさんが幼児退行してるし!」
「ねぇ、早苗。私、フランが異変起こした時解決する自信無いんだけど……」
「大丈夫ですって! あの子は異変なんか起こしませんし! それにルールは弾幕ごっこですから!」
「あは、あはは……あはははは!!」
「ちょっと!? レミリアさん、大丈夫ですか!? とりあえずその狂ったような笑い声やめてください!」
カオス化した空間を早苗が鎮静するのにその後一〇分掛かったという。
今回出てきたネタ
・一方通行(とある魔術の禁書目録より)
・坂田銀八(銀魂のスピンオフ小説、三年Z組銀八先生! より)
・タイタニック号(映画。豪華客船タイタニックが沈む話)
・少年ジャンプ(こち亀終わったなぁ……)
・そんなオカルトあり得ません!(略してSOA、咲-Saki-より原村和のセリフ)
・いいセンスだ(ネタルギアソリッドより)
・安心院なじみ(めだかボックスより。7932兆1354億4152万3222個の異常性と、4925兆9165億2611万0643個の過負荷、合わせて1京2858兆0519億6763万3865個のスキルを持っている。チートキャラも真っ青なチートキャラ。チートキャラの話が出た時によく対比で出される)
・大嘘憑き(オールフィクションと読む。一言で言えばありとあらゆるものを『無かった』ことにする能力。ただし『無いものは消せない』上記と同じくめだかボックスの球磨川禊の持つ過負荷)
とりあえず他作品ネタ多過ぎたし次回はもうちょっと落ち着く予定。
なお、次回以降は(ry