フランドールの日記   作:Yuupon

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五月編4『神降臨』

 

 

 

 五月十一日

 

 

 今日の寺子屋の休み時間にメディスンちゃんと喋って幽香さんのところでお茶会しよ、と話になった。

 学校で遊ぶ約束するのって初めてだよね? よね?

 えへへ、ちょっと嬉しい私なのだ。

 それで寺子屋が終わってから余ってた素材で柏餅を作って幽香さんのところにいった。

 メディスンちゃんから話は聞いてたみたいで広々と見える向日葵畑の一角にパラソルとテーブルが用意されていた。

 柏餅を渡すと「手作り? 凄いわね」と言われた。努力が認められたような気がして嬉しい。

 程なくしてメディスンちゃんがやって来たので三人で紅茶と柏餅を食べながら話をした。

 二人とも花の知識凄いね。私、全然ついていけなかったよ。育ててる向日葵もまだまだ成長途中だしね。

 あ、そうそう。帰る時に幽香さんから肥料をもらった。向日葵、元気に育つと良いなぁ。

 

 

 #####

 

 

「相手が花好きだと優しくするのかしら、幽香のヤツ」

「いやいや。普通にしていれば攻撃とかしないですって。私もよく肥料をもらったり花の世話についてご教授願いに行くんですけど、普通の人ですよ?」

「……そうなのかもね」

「……いや、何を言うの霊夢。アイツは花の妖怪の皮を被った悪魔よ? 申告されてる能力だって絶対花を操る能力なんかよりパンチで人を殺す程度の能力って言った方が分かりやすいやつよ?」

「そんな態度だからボコボコにされたんでしょうに。アンタも良い加減自制ってモンを覚えなさいよ。何百年も生きてるんだから」

「たかが転んで花を薙ぎ倒しただけで殺されかけた私が言うのよ? あやうく魔理沙の比じゃないマスタースパークを受けて太陽光の下に灰に変えられるところだったわ」

「……あの、レミリアさん。言ってることカリスマじゃないって気付いてます?」

「あ」

「……気付いてなかったんですね」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 三人は黙り込んだ。

 やがて誰ともなしに次のページを開く。

 

 #####

 

 

 五月十二日

 

 

 今日は修行だ。

 で、前に超能力の勉強をしていることは書いたよね?

 やっと一つ覚えました。テレパシーを。

 キッカケは咲夜だ。ほら、咲夜ってどこに居ても名前を呼んだら現れるのよ。それこそ数十キロ以上離れた場所にいても次の瞬間には現れる。

 それを思い出した私はどうやって名前を呼ぶ声を聞いてるの? と尋ねたわけだ。すると「メイドの嗜みですよ」とニコリと笑顔と一緒に返されたんだ。

 で、コツを聞いてみたら「いつでもどこでも、頭の中にその対象の人を思い浮かべていることです」と言われた。

 試しにお姉様を思い浮かべてやってみたけど勿論、最初は上手くいかなかったんだよね。

 ただ、何度も繰り返しているうちに何か幻聴のようなものが聞こえてきた。「闇の炎に抱かれて消えろ!」とか「それが世界の選択か……」とかお姉様のボイスで。

 あとは「くっ、私の中に封印されし邪竜が目覚めしまう!」とか「死にたくなければ私から離れることね」とか様々。

 もしかして出来た!? って思って今度はこっちから意思疎通を図ろうと思って試しに『ほう、我の存在に気付いたか――気付かれたなら仕方無し。三日後、貴様の体を頂くとしよう。貴様の命はそれまでだ』とお姉様が喜びそうなセリフを言ってみたら「うわあああ!!」っていうお姉様の悲鳴が聞こえた。

 失敗した? 何か悪いこと起きたの? そう思ってお姉様の部屋に行くと半泣きのお姉様に抱きつかれた。

「フラン、私の中の邪竜を壊して!」って泣きながら言われたけどお姉様どうしたのよ。「あと三日で私の中に巣食う邪竜が私の命を奪うと言ったの!」って……あ、成功してたのね、良かった。

 

 ……って、え? まさか信じたの? あんなセリフを? え? 信じた上でヘタレてんの? 以前はもっとカリスマ無かった? 精神年齢下がったの?

 …………えぇー。そりゃないよお姉様。というか誰だよこんなになるまでお姉様を虐めた上に放置してたの。

 あぁ先日の八雲紫ね、そういや泣かされてたからなぁ。

 ……とりあえず今度お姉様もめーりんの修行に混ぜさせるか。いくらなんでも豆腐メンタル過ぎるし。せめて虚勢でもカリスマ張って欲しいから。

 

 

 #####

 

 

「……なによ?」

「いや……だって、こんなもん何も言えないわよ」

「ですよね、いくらなんでもそりゃないですよレミリアさん。今時、子供でもそんなに取り乱しませんよ?」

「うぐ! そ、その時は精神的に参ってたの! ほら、私って特別な存在だから邪竜が居ても仕方ないと思っただけ――そう、そうなの!」

「……中二病かぁ。大変ですよね、そういえば私の高校の転校生も似た病気でしたよ? 最初の挨拶が、『ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい』ですからねー。神様はダメですかー? って聞いたら『神様なんているわけないでしょ』って言われちゃいましたけど」

「……ともかく次を読むわよ」

 

 ボソリと呟き霊夢は次のページをめくる。

 

 

 五月十三日

 

 

 今日も寺子屋ー。

 今日は特別講師の人が二人来た。仏教とキリスト教に詳しい人みたい。

「どうも、ブッダと申します」

「僕はイエスです。よろしく」

「彼らは今日、幻想郷を見に来たそうでな。話してみてかなり徳の積まれた方々だったので個人的にお願いして来ていただいた」

 

 ……あれ?

 そういえば授業を受けてた時は違和感無かったけど、改めて文字で書いたら「ブッダ」と「イエス」って……。

 あれれー、おかしいぞー?

 思い出そうとすると何故か顔が靄に掛かったみたいに思い出せない。

 え、いや本物――なわけがないよね。うん。微妙に思い出したけどなんか文字がプリントされたTシャツ着てたし。本物なわけがないか。

 

 で、午後から守矢神社に行った。

 前に諏訪子ちゃんから遊びにおいでって言われてたからだ。で、行ってみるとブッダさんとイエスさんがいた。

 こんにちは、と挨拶すると二人は私を見て、

 

「あ、ブッダ。さっき寺子屋で会った子じゃない?」

「そうだねイエス。こんにちは。さっき振りだね」

 

 と反応。

 それから早苗さんのとこで外の世界の話とかあと宗教の話とか聞いた。何故か分からないけどブッダさんとイエスさんの説法を聞いてると浄化されるような感じがするんだよね。特にイエスさん。

 キリスト教って普通に聞いたり読んだりすると頭が痛くなるものだけど不思議とそうはならなかった。寧ろ――悪魔であることを浄化されるような――……いや。やめておこう。

 あと早苗さん達のところもそうだけど二人共外の世界に住んでいるということで話をしてみると色々興味深い話が聞けた。

 

「いやー、炊飯器とかは凄いですよね。アレがあるとご飯を炊くのに便利で便利で」

「娯楽も多いですよね。インターネットとかはよくやってます。最近だとオンラインゲームもよくプレイしますよ」

「へぇ。あのイエス・■■■■がねぇ。にしてもビックリしたよ、いきなり来るものだからてっきり幻想入りしたかと思ってしまった。外の世界で何が起きてるのかとビックリしたよ」

「はは、それはすみません」

 

 途中、何度か雑音が響いて聞こえない部分もあったけどそんな話をしていた。

 というか八坂神奈子さんと会うのも初めてだったよね。守矢神社の三柱の一角の、御柱をたくさん持ってる人。

 

「オンラインゲームなら私もやってます! デーモンハンターってやつ」

「フランさんもですか? 奇遇ですね、僕もやってるんですよ。あ、そうだ。ここで会うのも何かの縁でしょうしフレンドになりませんか?」

「いいですよ! 始めたばかりなんでまだまだ弱いですけど……」

「大丈夫です、これでもギルドを運営したりしていますから。ちなみに僕は「いえっさ」という名前でやってるんですけど」

「えっ、もしかして聖人ギルドの? あの、私「妹様」です」

「えっ? 本当ですか!」

 

 まさかの「いえっさ」さんだった。

 凄い偶然! 意図せずオフ会みたいになったけど凄いいい人だったと思う。名前が「イエス」っていうのは若干引っかかるけど、まぁ人の数は多いしそんな人もいるのだろう。

 それから皆でゲームをやった。人生ゲームだ。楽しかったなぁ。

 イエスさん達とはまた今度ゲームで会いましょー、と約束して別れた。

 

 #####

 

「」

「れ、霊夢さん! なんかレミリアさんが真っ白になってるんですけど!?」

「巫女の勘が働かない――ってことは……いえ。レミリアは置いておきましょう。この話をあまり突っ込み過ぎるのは良くない気がする。勘じゃないけど、そんな気がするから」

「わ、分かりました! えっと次のページ!」

 

 #####

 

 

 五月十四日

 

 

 今日はチルノちゃんと大ちゃん達と遊んだ。

 妖精仲間を連れてきててリリーちゃんと、サニーちゃん、スターちゃん、ルナちゃん、クラピちゃんと友達になった。

 とりあえずそれぞれのことを簡単に書いておこう。

 

 リリーちゃんは春を告げる妖精らしい。真っ白い服を着た子で、「春ですよー」が口癖のようだ。

 サニーちゃんはいたずらっ子な女の子だ。決断力があり、時折覗く八重歯が可愛らしい。

 スターちゃんは料理が得意な女の子だ。捕らえどころのない性格で悪く言えば天然な気がする。

 ルナちゃんは栗みたいな口をした女の子だ。あと鈍くさい。ただ性格はクールだった。

 クラピちゃんは妖精という概念が壊れそうなぐらい弾幕ごっこに長けた女の子だ。きゃははと笑う癖があって狂気的にも見える。なんか既視感。

 

 個性豊かなメンバーだった。

 皆でなにしよう、と話して悪戯をすることに。

 とはいっても誰かが損をする悪戯は駄目なので、人が喜ぶ悪戯をすることにした。

 で、人が喜ぶ悪戯なんだけど。色々考えた結果、霧の湖までの新たな道を作ってみることにした。

 どういうことかというと、実は人里から霧の湖まではかなり遠いから普通の人は来にくいんだよ。そこで最短を通る道を一日で作って驚かせよう、とのこと。

 勿論、土地関係とかは先に調べる必要があるけどね。

 まぁいわゆる草刈りだ。私がレーヴァテインで一気に雑草を焼き尽くし――チルノちゃんが消火。また、作業がバレるのを避けるためにサニーちゃんが日光を上手い具合に屈折し、スターちゃんが生き物を察知する力で索敵をし、ルナちゃんが音を消す力でステルス状態を作った。

 で、出来た道にリリーちゃんが春の力で道の横に花を咲かせて、最後にクラピちゃんが人を狂わせて道に誘導し、そこで能力を解く。

 そしてそこには「新しい道です、自由に使ってください」と、行き先の書かれた立て札が。

  我ながら完璧な作戦だ。やってみたら成功したし。

 人々の驚く姿に鼻高々だった。皆、一仕事やり切った感覚に心を震わせた。

 ……今思えば無断でやったのアウトかなぁ? 

 

 

 #####

 

 

「……何とも言い難いけど、これこいつらの仕業だったのか」

「あの、これって悪戯のレベル超えてますよね?」

「道を作る――良い方向に向かったのは良かったけど、確かにやり過ぎかもね。妖精どもは軽く注意入れとくとして、レミリア。あとでフランにも説教しときなさいよ」

「――――ハッ! え、えぇ! 分かったわ!」

「……話聞いてました? レミリアさん」

「あ、当たり前でしょ!」

 

(……本当かなー?)

 

 とりあえず日記読み終わってから色々世話焼いてあげよう。

 あんまりだし、と密かに決意する早苗であった。

 

 

 




 今回出てきたネタ
・パンチで人を殺す程度の能力(それでも違和感は無い、うん)
・レミリア、中二病(中二病な上にちょろくて信じ込みやすいです)
・ただの人間には興味ありません(涼宮ハルヒの憂鬱より)
・ブッダ、イエス(聖☆おにいさんより。ブッダとイエス幻想郷に行く、の動画見てたなぁ……)
・あれれーおかしいぞー?(名探偵コナンより)

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