そういえばハーメルンでも昨日から新連載始めました。
幼女戦記のなんで東方は関係無いですが、、、
十二月五日
不幸だ。
森の中で鍛錬してたら妖怪の首が降ってきやがった!
後で話を聞くと人里で商品紹介をしていて、そのうち『たけこぷたぁ』なる商品を説明している時に、妖怪を使って空を飛ぶところを見せようとしていたらしいがどうやら失敗して胴体と首が千切れたらしい。
それで首だけになって飛んでたのが木に引っかかって首が落下し、俺の頭上に落ちたと。
気分は最悪だくそったれ。お陰で血生臭いし鉄臭い!
ついでにホラーだ! 新たな妖怪かと思ったわ! ……あとそれからそうだな。
その商品説明だけど、スカーレットも商品紹介をしていたらしい。
どうやら『デバイス』なる、弾幕ごっこが出来るようになる機械らしい。俺自身何度も魔力や霊力を操ろうとして、失敗してるから酷く気になった。
十日に発売らしい。少し高いが、今まで貯めたお年玉を使えば買える値段だ。ちょっと調べて買う事も検討してみるか……。
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十二月六日
咲夜さんに会った。
買い物途中で、荷物を持ってたので代わりに持って買い物した。
やっぱり美人だよなぁ。いかにも有能そうだし。
家事も炊事も戦闘も出来るメイド、か。
俺も全部ある程度はこなせているつもりだけどやっぱ本職には全然勝てねー。
というか有能過ぎるんだよ!
人里での所作を。知り合いに挨拶して、軽く世間話して好感度を荒稼ぎする姿を見て思ったよ。
メイドって凄い(うん、真面目に)。
でも今度教えてもらえないか聞いてみたらオッケー貰えた。
よーしせっかく教えてもらうんだし気合い入れて頑張るぜ!
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十二月七日
……助けてくれ。
現在、俺の周りに大妖怪が一杯いる。
八雲紫を筆頭とした各幻想郷勢力の長達が会議をしているんだ!
で……何故か俺もその会議に座らせられている。怖い。マジ怖い。
きっかけは朝、青娥さんにお呼ばれしたことだ。
今日付き合ってもらえる? 曲がりなりにも美人さんから誘われて俺も嬉しくてさ、それを受けたんだ。
そしたら……これだ。
「皆様御機嫌よう、八雲紫ですわ。今日はお日柄もよく」
「長ったらしい御託は要らんからさっさと本題に入りな。うちは早苗のご飯が待ってるからね」
幻想郷の賢者である八雲紫の挨拶を妖怪の山にある守谷神社の八坂神奈子が遮る。そのあと紅魔館の……ヒマワリの種を食べてたレミリアさんがちょっと発言して、人里の慧音さんとか聖白蓮さん、聖徳太子さんらが答弁。
どうやら年末の会議らしい。言わずもがな幻想郷のお偉いさん達の会話である。
で、なんで俺は……何故か青娥さんを膝の上に乗せて座ってるんだろう。
俺の上に座ってる本人はニコニコ顔だけどアバンで既に空気が重い。というか何を企んでるんだこの人。
いやまぁ、膝に感じるむっちりとした柔らかな感触は幸せであるけれども!
……だが、助けてくれ、俺の胃が死にそうだ。
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十二月八日
昨日は酷い目に遭った。
で、今日は気持ちを落ち着かせるつもりもあって魔力とか霊力を扱うことに時間を掛けてみたよ。
……まずは魔力回路を作って、それを外に出して……。
暴発。うん、知ってた。痛い。体の中でなんかが爆発した感覚がする。例えるならコーラとメントス一緒に食べた時みたいな。
それを繰り返すこと三回。
現在永遠亭で寝てる。馬鹿なの? って永琳さんに言われて俺自身そう思った。
何をやっているんだか……。
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十二月十二日
退院した。
だけど鈴仙さんに一日付き纏われた。やれ「あなたは普段から体を大事にしていません!」だの「もっと自分を大切にしてください!」だの。
いや、正論なんだけどね。俺の場合そう思ってもどうにも怪我するからなぁ。
昔から不幸だし、やることなすこと失敗して辛うじて生を拾って生き延びてきたもんだから半分諦めてる節がある。
まぁその辺り俺の弱いところなんだろうけどな。
てゐにも「もっとさー、周りをちゃんと見なよ」って怒られたし……ともかくしっかりしないとな。
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十二月十七日
紅魔館に行った。
咲夜さんに家事のコツとか聞いてきたよ。
さすが本職だよな。正直勉強になった。なんでも出来るし、あの人、完璧超人ってやつなのかもしれない。
料理も負けたしなぁ……。
……そもそも舌が肥えてないせいで完全に味わいきれないのも悔しい。味の見分けとかがちょっと曖昧でなぁ……。
そう話したら咲夜さんからアドバイスを貰った。
「次に食事をされた時に料理を言葉で表現しながら食べてみてはどうでしょう。孤独のグルメごっこです」
孤独のグルメ……? ま、まぁともかくやってみよう。
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十二月十八日
昨日言われたとおりやってみよう。
腹が減った。
昼食、俺は人里を歩き丁度よく入れる店がないか探していた。
「……気分は肉、だな」
肉は血となり筋肉になる。普段から怪我をする身としては是非食したいところだ。特に最近は精神的に辛いことも多い。そういう時は美味しいものを食べて忘れるのが一番だろう。
「……お、ここは」
そうやってふと視界に留まったのは人里の路地に店を構える奥まった定食であった。店構えも綺麗過ぎず汚過ぎず、昔からこの場所にあって地元に愛されてきたような、そんな建物だった。
「日替わりがあるのか。店前にメニューがあるのは有難い」
呟いてメニューをチラリと眺めてみる。今日の日替わりは生姜焼き定食。それにご飯と味噌汁が付いてくるらしい。中々食欲をそそるラインナップである。
「……よし、ここにするか」
ともかく一先ずは入店しよう。
暖簾を潜り店に入ると「いらっしゃいませー!」という女将さんの元気な声が聞こえてきた。店内は明るく、冬の寒さを和らげるように店の端にある店用暖炉に火をつけてじんわりと温かさを与えてくる。
席に着くとすぐに水とおしぼりを持った店員がやって来た。
「ご注文がお決まりの頃、伺いますねー」
「あぁ、はい」
急かすことなくメニュー表を渡してくるのも悪くない。昼時という事で客足も少なくなく、俺一人ににかまけていられないのもあるだろうが――ともかく曖昧に返事をして俺は早速メニュー表を開いた。
「……さて、どれにしようか」
メニュー表を眺めてほう、と感心する。定食や丼が豊富で、麺類も有りそれでいてサイドメニューの品数も悪くない。
ふむ、と俺はメニュー表の金額を眺めた。なにしろ子供の身だ。お小遣いを使うからには出来るだけ安く、それでいて美味く量の多いものが食べたい。
「うーん、やっぱお得なのは定食だよな」
呟いて俺はふと店内に貼られるメニューを眺める。今日の小鉢は山菜と芋煮、か。
「悩ましい……うん?」
そうこうしているうちに他の客が頼んだらしい食事が運ばれてくる。それはラーメンだった。肉厚で脂の乗ったチャーシュー、黄金に輝くスープとその中で存在感を放つ麺。そこにネギとナルトがトッピングされている。かなりのサイズだった。
「うん、これだ」
ピーンときた。値段を見ると安い。お手頃価格だった。これなら自分も満足出来るに違いない。
ただ、欲を言うならいま少し肉が欲しいところだが。
「……餃子にしよう」
とあるラーメンチェーン店のせいか。ラーメンといえば餃子が食べたくなってきた。ラーメンの分定食より値段も抑えられたのでサイドメニューを頼んでも問題なかろう。
決まりだ。店員に声をかけて注文を行い、十数分。
待望の食事が運ばれてきた。
「こちら、チャーシューラーメンと餃子になります。熱いのでお気を付け下さい」
そんな店員の声を聞いて俺は箸を割った。綺麗に二等分する。よく、箸を折ると失敗して片方が不恰好になったりするので気分が良い。
「……いただきます」
日本人らしく手を合わせ、俺は手元を見やる。
まずはスープだ。ラーメン用のレンゲを引っ掴み、俺はそのラーメンのスープをひと匙すくう。キラキラと輝く黄金のスープと、湧き上がる湯気はいかにも食欲をそそる。
スープを先に飲むのはラーメンを食べる時の俺なりの流儀でもあった。美味いラーメンはスープが違うという持論である。
(……さて、一口)
レンゲを口元にやり、口内に流し込むと濃厚なスープの味が口全体に広がっていった。寒い外を歩き、冷えた体を丸ごと温めていくような錯覚。いや、錯覚ではない。スープを飲み込むと、確かに暖かな液体が体全体を温めていくのを感じた。
はふぅ、と息を吐いて思わず声を漏らす。
「……美味い」
お次は麺だ。チャーシューと絡めて麺を啜る。
そして一度、二度。口の中で咀嚼すると表現し得ない、『食べている』感覚が俺を支配した。口の中に広がる肉汁。それに絶妙に絡み合う麺。ラーメンにしては少し太麺なのが特徴だが、それが肉厚なチャーシューとまたよく合う。
それから餃子も食べる。少し油っこい。が、美味い。何個も食べていれば飽きる味だが、そこは工夫の仕方で変わる。麺とともに食べる、はたまたチャーシューと、ナルトと。バリエーションを変えればいいのだ。
ズズー、とラーメンを啜り、チャーシューを貪り食い、スープを飲み、餃子を頬張る。
そして全てを食べ終えたら最後にスープを飲み干すのだ。
大概ラーメン店のスープは塩分が濃く、飲み干すのは良くないだとか世の中では言われている。実際確かに塩分が濃い場合も多い。食品添加物と呼ばれるものも使われている。だが実際それを飲んだところで健康被害が起こるか聞けば、それは無いとも言われている。
(……少なからず俺は全部飲み干す派だ)
さて、目の前のスープを見る。まだ暖かく、これからまた冬の外に出るとなればかなり体を温めてくれることだろう。
両手で器を持ち、俺は口をつける。そしてスープを飲んだ。じんわりと全身が温かく、額に汗すら浮かぶ。
チャーシューの肉汁を吸ったスープは最初の時とはまた違う味わいがあった。あぁ、これだよ。美味いラーメンを食べた時はこの感覚がするんだ。
そして、器を空にした俺は手を合わせて、言う。
「……ご馳走様でした」
ラーメンと餃子を完食。ともに空になった器を置き、代金を払った俺はまた冬の人里へ繰り出していく。
美味かった、そんな言葉を残して。