フランドールの日記   作:Yuupon

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書き終えてから、次回は東方キャラをもっと書こうと思った(小並感)


ナナシの日記8

 

 

 

 

 十一月七日

 

 

 人里でメイドさんに会った。

 うん、メイドさんだ。名前は十六夜咲夜さん。

 美鈴さんに聞いたことある名前だったから分かったんだけど紅魔館のメイド長らしい。

 きっかけは昨日のことだ。いつものように森の中で妖怪相手に愉快な殺し(ジャレ)合いをしてたんだが、その時に会ったんだよ。

 ……血塗れの咲夜さんがな!

 なお、その手には血の入った袋が。

 妖怪に襲われて死んだ外来人のものらしい。スカーレット姉妹が飲む為の血を確保する為に作業してたのだとか。

 ……ま、まぁ本人が殺して解体したわけじゃないし、セーフ?

 でもそんなショッキングな出会いをしたせいか、それを絶対に人に話すな、という口止めがてら人里に誘われたのだ。

 

 何されるか分かんなかったけど案外大丈夫なもんだな。

 普通に食事して、甘味屋さんまわってのデート。だけど口止めはしっかりされた。

 あと流石と思うところもあったな。あの紅霧異変を起こした側だけあってかなりのナイフ技術があるようだ。ふとした時に突き付けるナイフが決まって急所だし、時間も止めれるらしい。

 ザ・ワールド! とか言ってた。その直後はそりゃあもうビビった。思わず、あ、ありのまま起こった事を話すぜ! 『俺はメイドさんにナイフを向けられたかと思ったらそのナイフがいきなり増えた』な……なにを言ってるかわからねーと思うが俺もなにをされたのか分からなかったって言うくらいにはビビった。

 多分スタンド能力だろう。人里のトニオさんもそんなこと言ってたし。

 あとスカーレットの事も聞かれたな。寺子屋ではどうですか、とか。知ってる限りは答えたけど、あんまり親しくしてるわけじゃないからよく分からん。今度声掛けるか。

 

 

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 十一月十二日

 

 

 人里で料理対決が行われた。

 咲夜さんに聞いたけどどうやらスカーレットも出るらしい。あと映姫様が審査員で参加するとか言ってた。

 せっかくの料理対決。しかも女の子の手料理ともなれば俺が行かない理由はない。ヒャッハー女の子の料理ダァーッ! といざ参戦すると、なんか映姫様に呼ばれた。

 何かと思ったら叱られた。

 やれ、煩悩が多いだの。やれ、怪我をし過ぎだの。やれ、死に体とはいえ簡単に三途の川を渡ってくるな、そして一回渡ったなら現世に戻るな、だの。

 それらを一通り謝って、ついでに審査員ということで次々運ばれてくる参加者の料理を食べたりしてたら、うん。

 幻想郷って酒好きが多いからか酒も多くてさ、なんか映姫様が酔った。

 

「だいたいれす! あにゃたはいつもいつも!」

「誰だ酔わせたの!? 映姫様しっかり! 顔真っ赤なってますから! それに呂律も……! あと酔ってまで説教魔なんですかっ!?」

「……ひっく、何度言っても効果にゃい……うえぇ……」

「しかも泣き魔ぁっ!? あ、いや違うんです周りの人! 俺は泣かしてない! 俺は無実だから!」

 

 終始そんな感じでロクに自由行動出来なかった。

 とにかく周りの目が痛かったです、まる。

 

 ちなみに優勝者は咲夜さんだった。おめでとうございます。

 

 

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 十一月十五日

 

 

 ヤバい、これはヤバい。

 危険な魔獣がうじゃうじゃいる危険な世界に俺はいる。

 どうやら魔界というらしい。

 ……事の発端はスカーレットの姿を見たことだ。普段と違って青い服にリボンという、不思議の国のアリスみたいな服装だった。

 ともかく姿を見てさ、ふとこの前、声掛けるかーなんて書いたこと思い出して後を追いかけたら……アリスさんだっけ? あの人と一緒に博麗神社の近くにある洞穴から変なゲートに飛び込んで行ったんだよ。

 気になってついて行こうと思って、スカーレット達と同じように合言葉らしい言葉を口にしてみたんだ。

 それが間違いだった。あぁ、真面目にそう思う。だって想像出来るかよ。『アバカム』って言ったらいきなり扉が開いて、そこから変な腕が複数出てきて引き摺り込んでくるなんて。

 ……で、それで目を覚ましたら見知らぬ人の家だった。

 魅魔さんだったかな。本人曰く悪霊らしい。俺を助けてくれるような人が悪霊なわけないでしょうって言ったら笑われた。

 

 で、なにがあったか尋ねてみるとどうやら俺は魔界の化け物に魅入られて引き摺り込まれたのだとか。そういえば気を失う寸前に「あなた……怠惰デスね?」とか言われた気がしないでもなかった俺はそれを信じて。

 で、お世話になりましたと挨拶をして帰ろうとしたんだ。

 それからは苦難の連続だった。なぜかというと魅魔さんの家が森の中にあったんだ。で、森は人の生存の難しい毒気のある魔力が充満し、危険極まりない魔獣がゴロゴロ存在する場所であった、と。

 普通に死にかけたわ。妖怪より余程危険だっつーの! 何あれ。二撃食らったらオワタ式ってどんな攻撃力だよ! こっちの攻撃は効かないし!

 お陰で片腕もってかれた。左手の肩の付け根からバッサリ。自分で止血はしたけどやっぱかなり不味いらしい。別に永遠亭に行けば腕がなくなろうが足が無くなろうが治してもらえるけど、死んだら本当に終わりだからな……。

 これが最後の日記とかにならないようにしないと……。

 というか腕無くなった割に冷静すぎるな、俺。精神力以前に俺、本当に人間かよ。怖くなってきた。

 

 

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 十一月十六日

 

 

 ……俺、人間やめたかもしれん。

 片腕が無くなって、魔獣を避けて洞窟に逃げ込んで。

 で、朝起きたら無くなったはずの腕が生えてた。

 ……………………………。

 

 いや、怖いわ! なんだよ生えてたって! おかしいだろ!

 なに、俺知らない間に永琳さんに不死手術されてたの!? 蓬莱の薬を打ち込まれてたの!?

 ……ともあれ生きてることは喜ぶべきか。とりあえず腹が減ったので何か食べ物を探そうと思う。そこらに美味しそうな木の実生えてるし。帰るのも重要だがまずは生き残る為に頑張らなきゃな。

 

 

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 十一月十七日

 

 

 か、んがえてみりゃ当たり前の話だった。

 ここは森だ。それこそ魔法の森なんて目じゃないくらい濃密な魔力のこもる、人間が生き残れない環境だ。

 そんなところで育つ木の実なんて……食えるわけがない!

 体が、動かん。

 かろうじて指先は動いても、起き上がれない。

 体から力が無くなったみたいに……、ちくしょう。

 俺、死ぬのか? このまま一人で動けないまま朽ち果てるのか……?

 い、やだ。そんなの、そんなのいやだ!

 生きる、俺は生きるぞ……!

 

 

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 十一月十八日

 

 

 の、みもの。めが、かすむ。

 

 

 

 

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 十一月十九日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 十一月二十日

 

 

 

 

 

 

 

 

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 十一月二十一日

 

 

 目が覚めたら見知らぬお屋敷にいた。

 どうやら助けられたらしい。神綺という人の家だった。

「大丈夫?」って聞かれたけど正直、まだ混乱してる。

 今回ばかりは明確に死んだって思ったのに……なんで生きてるんだ、俺?

 

 

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 十一月二十二日

 

 

 ようやく体が動かせるほどに回復した。

 四日、五日絶食。ほぼ飲まず食わずでよく生きてたものだ。

 帰りは神綺さんがなんとかしてくれると言っていた。

 生きて幻想郷に戻れる。

 嬉しいけど、腑に落ちない。俺はなんで生きてるんだろう?

 

 

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 十一月二十三日

 

 

 永遠亭に行って事と次第を話すと、永琳さんのお陰で生き残れたことが分かった。

 具体的に言うと俺の霊力を回復やエネルギーに変換するように体を弄ってくれていたらしい。元々の不幸体質を考慮して、だいぶん前にやってくれたそうだ。

 というかそのお陰で今まで生き残れてたのか! 逆に合点がいったわ! ともあれ不死になったとかじゃないのは安心したぜ。

 長生きし過ぎてもいい事無いしなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 




 

「一言」
ハーメルンでもなんか新作書こうか思案中。(ノルマ未達成)

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