フランドールの日記   作:Yuupon

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現代四月編END『フランの日常』

 

 

 

 四月十八日

 

 

 香霖堂に顔を出した。

 久々のバイトだ。デバイスの発売以降霖之助さんはポツポツと新商品を出してはそこそこ売り捌いているらしい。

 リアラさんの力を借りて人里までの道の整備も行ったみたいだし、そのためか店内に入ると何人かのお客様が商品を見て回っていた。

 というわけで今日の私は売り子なのです。

 迷ってる人に声をかけてオススメを教えたり、似合いそうなものを選んでいくと結構な割合で買ってくれた。

 あとは臨時でデバイスの講師もやったよ。まだ四ヶ月程しか経ってないのに結構空を飛んだり弾幕に慣れた人も多いみたいだった。

 ……いや、それを言ったらナナシ君とかもうデバイス無しで自由に飛び回って弾幕を放ったり、専用の魔法器まで持って魔理沙みたいにレーザービーム放ったりもしてるけど……うん、あれは例外。

 実際の指導に加えて霖之助さんとデモンストレーションしたりと結構盛り上がったんじゃないかな。

 ……というか霖之助さん普通に強かった。いや、真面目に。戦闘は得意じゃないとか言ってたけどかなり強かった。美しさって観点で言えばそりゃあ微妙と言わざるを得ないけど、なんていうか陰湿な弾幕が多いのよね。撃たれると嫌な場所狙って的確に撃ち込んでくる。勝つための弾幕っていうのかな。うまいこと集中力を切らそうと立ち回られたよ。

 そのせいで物凄い動いた……疲れたぁ。でも逆に霖之助さんは全然動かず避けてたなぁ。指導だから見せる弾幕にした私のせいでもあるんだけどもうちょっと優しくしてほしい。

 ……お陰で恥かいたよ。

 ……そりゃあ途中からヒートアップして限界まで動いた私も悪いけどさ。教える側が体力切れで地面に倒れこんでハァハァいってたら駄目でしょ? 汗びっしょりだし。

 終わってからリアラさんがタオルとポカリくれた。優しさが心に染みる。で、霖之助さんはリアラさんに「ねぇ霖之助、大人気ないと思わないの? 今回の弾幕ごっこは見せるものなんですから勝つ戦略じゃなくて美しさに注力してくださいっ!」って怒られてた。本人は「いや、すまない。正直そんなギリギリな素振りに見えなくてね」と言ってたけど本当リアラさんの言う通りだよ。

 でも最後の方は私も本気だったのになぁ……。魔理沙に聞いた話だと草薙の剣とか扱ってるって聞いたしもしかして凄い実力者だったり? 少なからず荒事が苦手っていうのは大嘘だけど。

 

 

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「霖之助さんの実力かぁ……私もいまいち分からないわね。危険度が高い無縁塚に定期的に訪れるって聞くし実力者ではあると思うけど……」

「どうなんでしょうね。一応、紫さんとも昔から親交があるとは聞きましたけど」

「……霊夢さんの巫女服も代々香霖堂が仕立てているって話ですよね。それと……ふむ。霖之助さんは博麗神社に祀られる神をご存知らしい? それは本当ですか霊夢さん」

「ナチュラルに心を読むわね……、まぁ本当よ。私自身どんな神様が祀られてるかは知らないから霖之助さんが知ってるのが気になるのよね」

「少なからず幻想郷の重要なところに関わっているのは間違いないわね。私個人とすれば男の売る商品は面白いから好きよ? あぁいうヤツは稀だしね」

 

 

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 四月十九日

 

 

 この前の件もあってお礼を言うために博麗神社に行くと何故か沢山の人が集まってた。

 偶々皆が来る日が重なったらしい。人数にして四十人くらい。

 自然と宴会が始まってた。私も空間からお酒を出して振る舞ったよ。

 それからふと宴会を眺めると色んな方面でお酒を酌み交わす人々の姿が見えた。

 

「っかぁー! いやぁ酒は美味い」

「魔理沙さん、それおじさんっぽいですよ?」

「そうそう。仮にも女の子が呑んだ後にかぁーっはないでしょうに」

 

 お酒を呑み談笑する魔理沙、早苗さん、アリスさん。

 

「お化けだぞー!」

「ぎゃあああっ!!? お化けっ!? ゆ、幽々子様後ろに下がってください私がいますぐ駆逐っううううっ!?」

「あらあら、妖夢〜落ち着きなさい。剣を振り回すと危ないわよ」

「……妖夢のお化け嫌いは直っておらなんだか。子供にこうも驚くのは問題かのう……?」

 

 小傘ちゃんに脅かされてビビりまくる妖夢さんとそれを宥める幽々子さん。その後ろから呆れた顔の妖忌さん。

 

「よぉナナシの坊主! この前は地底で世話になった。よく暴走した核装置を吹っ飛ばしてくれたねぇ! うし、今日は私の奢りだ、存分に呑め呑めっ!!」

「一気ですか!? おぐぼぼぼっ!! 死ぬっ! 死にますって勇儀さん!」

「おうおうナナシじゃないか。こっちの酒もどうだい。酒虫ってやつを使った鬼の酒なんだけどねぇ」

「ごぶふうっ!? 口ん中に突っ込まないでください萃香さん! 息が……ゲホッゲホッ! 何これ度が強っ!」

「あーナナシだー! おーいナナシーっ!」

「わっ、お空!? おい抱き着くな! お前加減を知らないんだから! ってやめろやめろ! 体がミシミシいってる! これヤバイ音! 明らかにヤバイ音だからーッ!!」

「……まったく、お空は」

「まぁまぁさとり様。核暴走を止めた時にお空はあいつを気に入ったみたいですし良いじゃないですか」

 

 勇儀さんと萃香さんに絡まれるナナシ君。

 で、お酒を呑まされまくってるナナシ君に抱き着くお空さんとそれを後ろから眺めるさとりさんとお燐さん。

 

「あたい必殺技考えた! 敵の手足を凍らせて動けなくして氷の弾丸を撃ち込むの! 名前は『フリーズ&デス』! 早速くらえー!」

「ちょっ!? チルノちゃんそれ危ない! 絶対駄目だよそんなの! 人間なら死んじゃうよそれ」

「そーなのかー」

「うふふふ……それなら私も一つ考えたよ。散々皆が私のことをGって言うからさ、いっそ『ゴキの狂獄』って名前のスペルで沢山のホタルをぶつける技なんだけど」

「リグルもどうしたの!? なんか顔が死んでるよ!? あとそのスペルは生み出しちゃいけない!」

「あー、ごめんあたいの狂気に当てられたかもしれなーい♪」

 

 皆の前で新作のスペルカードを見せるチルノちゃんとそれを止める大ちゃん。あとはルーミアちゃんとなんか黒い面を見せてるリグルとそれに突っ込むみすちー。それからてへっ♪と可愛く小首を傾げるクラピちゃん。

 他にも端の方で参拝客らしい里人が何人か縮こまるようにお酒を呑んでた。でも案外酔ってくると妖怪人間関係なく楽しそうに話していて、見ていて嬉しくなったよ。

 私自身もあちこちで話してきたけど、皆でこうやってワイワイ騒ぐのってすごーく楽しいよね!

 

 

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「あったわねー。人数集まるとすぐこれなのが悩ましいわ」

「まぁまぁ。楽しいし良いんじゃないですか霊夢さん」

「……というかあの忌々しい野郎が地底で暴走した核装置を何とかしてる……とか書いてあるけど」

「……私から説明すると、友達の妹で迷子になった女の子を探しに行くと地底に連れ去られる姿を見て、来たと言っていましたね。で、その子を誘拐したグループは地底の妖怪に恨みがあったようで適合者らしいその女の子を鍵にして核暴走を起こそうとしていたみたいです。少し前から地底の妖怪が襲撃されたりもしててその方面で私達は調べていたんですけど……どうやら同じグループで。それで私達より先に犯人の位置に気付いた彼が爆発する直前に敵を打ち倒し、女の子を助ける為にその体に刻まれた魔法陣を読み解き、核暴走を止めました」

「……なるほど」

「何だろう、あいつこの短期間でどれだけの事件に巻き込まれてんのよ。私より多いわよこれ」

 

 呆れたように霊夢がそう言った。

 

 

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 四月二十日

 

 

 今日は暇な一日だった。

 いつもより早く起きちゃったから体を起こす名目で朝風呂に入ったけど気持ち良かったなぁ。

 で、それから朝食作り。お掃除、洗濯と。もうメイドも大分板についてきたね。咲夜からも一流を認めてくれたし。とはいえ咲夜を見る限り真の一流のメイドまではまだ遠いと思うけどさ。

 ……あとは、そうだなぁ。

 あ、そうそう。お屋敷でお姉様に呼び止められて変なことを聞かれた。

 

「――ねぇ、フラン、これからも一緒に居てくれる?」

 

 お姉様との久しぶりの会話だ。ちょっと嬉しくなった。

 で、質問に対する答えだけど色々考えたのよ。「結婚するまで」とか「自立する時が来たら」とか「就職したら」とか。

 でも声色的に求められてる答えがそんな感じじゃなかったんだよね。

 なのでこう答えました。

 

「――お姉様がそう思い続けてくれる限りは」

 

 うん、こんなもんじゃないかな。少なからずお姉様が癇癪起こして「フランなんか出て行けーッ!!」ってならない限りは一緒だと思うよ。

 あーでもちょっとなりそうで怖いかも。前に癇癪起こした時は咲夜を追い出そうとしてたし。

 でもまぁ正直今のところ紅魔館を離れようなんて思ってはないよ。

 

 

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 ページを読み終えて、霊夢が「あっ」と声を上げた。

 

「……これ、昨日の日付ね」

「……癇癪って、本当に私が一人空回りしてるわね。なんかもう恥ずかしさが振り切れちゃって恥ずかしいとすら感じないのは何故かしら……」

「でも良かったじゃないですか。紅魔館を離れようとか思ってないみたいで」

「……そうですよレミリアさん。ウチなんて妹が、こいしが年がら年中どこに居るか分からない状況がザラですし」

「……同情するわ」

 

 溜息を吐いてさとりが言うとレミリアが反応する。

 それから。

 話が一段落したところで一同は日記をテーブルに置いた。

 

 

 

 




 


 次回、最終回。



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