フランドールの日記   作:Yuupon

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三月編END『ありふれた日常』

 

 

 

 三月二十九日

 

 

 この日記を書き始めてからあと少しで一年だ。

 我ながらよく毎日書けてるもんだと思うよ。途中で飽きて放置なんて可能性も書き始めの頃は想定してたしね。まぁ一ヶ月くらい書いた頃には段々習慣付いて毎日書く事が苦じゃ無くなったし、むしろ毎日書くのが楽しくなったんだけどさ。

 で、それはともかく。

 もう少しで日記を書き始めてから一年じゃない? だから私のこの日記を読み返してみたんだけど意外に読むのに時間かかるね、これ。

 ……いや、まぁ何もない世界で読んだけどさ。思考加速で速読して。何度も何度も。でもなんかあの世界での記憶は私の中でも嫌なカテゴリーに配置されるみたいで、ちょっとずつ忘れてるから自分で書いた文字だけど意外と楽しめたよ。

 所々表現下手だなぁ、とか思ったりするところもあるけどね。

 と、今日の事だった。

 今日は一日何もなかった。起きて咲夜と朝ご飯を作って、それからめーりんと修行。組手も大分勝てるようになってきたよ。メイド技術もかなり身に付いてきたと思う。

 メイド服も着慣れてきたしね……あとめーりんとの修行の過程で猫耳メイド服も。描写してないけど毎回付けてるんだよ、あれ。お陰で体が重いし力も出ない。その上神格も封じてるからどんだけ封印してるんだよって話だよ。

 でもそれでもたったの一年でめーりんと単純な組手なら互角レベルまで成長出来たと思えばどれだけ効果あるんだよっ! って感想しか出ないね。

 体力も付いたし、今ならお姉様相手でも勝てると思う。

 お姉様が勝てなかった月の人とも互角にやりあえたしね! 今度はお互いフィールドを気にしなくて良い場所で戦いたいものだ……あ、そうだ、今度龍神ちゃんに頼んで何もない世界に連れてきてもらおっと。

 と、そんな予定も立てつつな日だったよ。

 午後からは久しぶりにパソコンを弄ったかな。皆でボス戦をやったよ。ぐーやさん、☆サナ☆さん、天使さん、もこうさん。皆リア友でもある。輝夜さんに早苗さん天子さんに妹紅さんだ。輝夜さんと妹紅さんはネット内でもお互い喧嘩腰で好きあらばお互いをPK(プレイヤーキル)(プレイヤーを殺す事)しようとするけど。

 そんなくらいかな。あとはLINEしたり。ツイッターとかも始めたけどまだ良くわかんないんだよね。あんまり呟いてないのにフォローばかり増えててなんか申し訳ない。ツイートしても書店で販売してる弾幕ごっこの本の宣伝とかだしね……。あ、でも偶に弾幕の実演動画を撮って載せたりもする。勿論姿は映さないけどね。

 『フラン先生の弾幕ごっこLesson1-弾幕を撃ってみよう-』。

 うん、意外に反響ある。「声可愛い」とか書かれてるのが地味に嬉しい。まぁそんな感じだ。

 

 あとは日向ぼっこしたくらいかな。今日やったのは。

 吸血鬼の弱点である太陽だけど、ちゃんと魔法でガードしておけば日向ぼっこも可能なのだ。ハンドクリームも塗ってるし。気温もまだ少し肌寒いけどそれでも大分マシになったしね。

 紅魔館の屋根で大の字に寝転がって目を瞑るとサーっ、という風が当たって気持ち良いんだ。

 そんな感じの一日でした!

 

 

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「今更ですけど何もない日が珍しいって凄いですよね、フランちゃん。普通ならもっと何もない日が多いのに。むしろ何もないのが日常なのに」

「いや風祝、思い出なんて案外思い返してみると何かあるものよ。何をしたとか、何を食べたとか」

「えーと、私は昨日朝起きて白湯を飲んで、それから掃除して、魔理沙が来てお話しして、お昼にご飯とお味噌汁を飲んで、午後はお茶して針妙丸に米粒(エサ)をやって、お茶して、終わりね。大体一年の半分はこんな感じかしら」

「……霊夢さん、朝食と夕ご飯は?」

「…………」

「「「…………」」」

「……あの、今度守矢神社に来ませんか? ある程度なら融通しますから」

「……本気でヤバイ時は頼むわ。博麗の巫女が飢え死にとか笑い話にもならないし」

「れ、霊夢! 紅魔館でも良いわよ?」

「……勿論、地霊殿も歓迎します」

「ありがと。もしそんな時があったらよろしくね?」

 

 

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 三月三十日

 

 

 今日は久々に香霖堂に顔を出してみた。

 デバイス販売も一息ついて、霖之助さんが店番してたよ。

「やぁフラン。久しぶりだね」

「久しぶりですね、フラン?」

「お久しぶりです霖之助さん、リアラさん」

 二人に挨拶してから私が居ない間の近況について聞いてみた。

 とりあえずデバイス事業はこれ以上ないほど順調らしい。売上も上々で、付属品として販売した機器も売れてるんだとか。

 そこから発展して『初めて魔道書-霧雨魔理沙著』とかそれのアリスさんバージョンとかパチュリーバージョンも販売して利益が上がってるみたい。

 それと香霖堂セレクション、と銘打った『魔法の箒シリーズ』と私達をモチーフにしたキャラクター魔法グッズの入ったお菓子と。

 いくつか失敗もあるけどトータルで見れば超黒字らしい。

 最近だと忙しかった仕事もある程度片付いてきてかなり悠々自適な生活を送れているみたいだ。霖之助さん、意外と一人だと私生活がざっくばらんでテキトーなんだけどリアラさんがキッチリ財布の紐を縛って家事をして三食規則正しい生活を送らせているらしい。

「居候させて貰ってますから、これくらいは」と本人が言ってたけど普通に奥さんみたいだよ。仲も悪くないし、きゃー!

 良いなぁ、大人な恋愛憧れちゃうなぁ。

 私もいつかこういう人が出来れば良いなぁ。

 

 ……今はまだパッと浮かぶ相手は居ないけどね。

 ほんのちょっぴり気になる相手はいるけど、その気持ちが本物か分からないから内緒なのです!

 間違ってたら恥ずかしいもん!

 

 

 #####

 

 

「ほう、気になる相手……誰でしょうねー? さっぱり分からないですねー?」

「ほんとーねー。誰かしら、さっぱり分からないわー」

「……棒読みにも程がありますよ霊夢さん早苗さん」

「……チッ、何となく予想は付いてるけど答えを確かめる術が無い以上半殺しには出来ないわね」

「……で、こっちはこっちで物騒ですね!? 半殺しとか簡単に言わないで下さい!」

 

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 三月三十一日

 

 

 今日はめーりんが身体測定をしてくれた。

 一年でどれだけ成長したのか見てくれるのだ。

 結果だけどさ。

 身長は伸びてた。しかも去年と比べて二センチも!

 バストサイズも……一個上がった。やった! まぁ元がAAA……いや、やめよう。これも立派な成長だ。これから私は数百、数千年かけてナイスバディになるんだから!

 ……で、一つ問題があります。体重が増えてました。ほんの少し。

 

「なんで!? ダイエットの為にあれだけ運動したのに!?」

「多分ですけど脂肪が燃焼して筋肉になったのでは? もしくはバストが増えた分か、身長の分か。大丈夫です妹様、十分痩せてる数字ですから!」

「でも体重減ってないじゃん! うう、ううう!」

 

 悲しい。ちょっとくらい減ってたって良いじゃん!

 なんで増えるのよ……不条理だよこんなの!

 まぁまぁって慰められたけど……悲しい。

 怒りのあまり全力疾走して人里に行ってやけ食いした。

 ……お団子を五本食べたところで咲夜に止められたけど。

 それで咲夜曰くさ、

 

「妹様は成長期なんです。まだ子供のうちは体重が減るほうがおかしいのですよ? それにこの数字は平均的な吸血鬼よりも低い数です。妹様はそのままの妹様で良いのですよ。健やかに成長してくれること、それだけが願いですから」

 

 と言われてしまった。

 むぅ、ずるい! そんなこと言われたらもう何も言えないじゃん!

 でも……。

 ……分かったよ。私、まずは大人のレディーになる!

 当初の目標の、本に出てくるお姫様とかヒロインみたいな綺麗な女の子になる。

 ちなみにお姉様は去年と変わらなかったらしい。やった! と思わず喜んでしまったのは内緒。

 

 

 #####

 

 

「お姉様ェ……」

「ぐ、黙りなさい! 今はフランの成長についてコメントするところでしょ!」

 

 真っ先に呆れた顔でレミリアを見つめた霊夢に対し、レミリアは引きつった顔で反論する。

 

「そうですよ霊夢さん。でもレミリアさんも夜起きて朝寝るっていう生活してるのも悪いんですよ? 成長したいなら早寝早起き、基本です!」

「いや私吸血鬼なのよ!? 私から言わせて貰えば夜寝朝起きは昼夜逆転なのよそれ!?」

 

 続いて早苗の発言に突っ込んだところで、レミリアはふと何も言わないまま何故か腕組みをしているさとりを見る。

 

「……んー……」

「どうしたのよ?」

「いえ、その今更なんですけど――」

 

 ちょっと躊躇ったように、逡巡して彼女は尋ねた。

 

「――フランさんの日記を読み始めたキッカケって、心を読む限りレミリアさんが『フランさんによる下克上を恐れた』ことがキッカケなんですよね? 正直ここまでの内容にレミリアさんが危惧する内容なんてこれっぽっちも入ってないんですけど……なんでレミリアさんはフランさんに下克上をされるなんて思ったんですか?」

「……それは、いや、話しておくべきかしらね」

 

 尋ねられたレミリアは少し悩んで、やがて頷いた。

 

「分かったわ、その理由を話す。私がフランを疑うようになった決定的な日。四月一日の事について――――」

 

 そして彼女の口から全ての切っ掛けが語られ始めた――――。

 

 

 

 

 




次回は閑話です。




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