三月二十七日
妖怪の山に赴いた。
宴会をするからって、諏訪子ちゃんに誘われたんだ。
で、山に行くと妖怪の山に住む妖怪達が沢山集まってた。
中でも天魔って人の周りに一杯。気の良いお爺ちゃん天狗で見知らぬ妖怪の私にも良くしてくれた。
「おうおう、めんこいのぅ! これお主ら気をきかんか。こちらのお嬢さんにもお酒をお持ちせい! 儂の醸造庫にある良い酒をな!」
他の子供天狗達と一緒に膝の上に座らせてくれてさ。サラッと一緒に座ってる諏訪子ちゃんと一緒にお酒を酌み交わしたよ。
やっぱり二人とも長生きしてるだけあってとても経験豊富なようだった。
それで二人から昔話を聞いたよ。諏訪大戦とか、天狗の早駆けとか。
「ガハハ気分がええわい! おいそこの大天狗、酒樽を持ってこい! 儂が真の一気飲みっちゅうもんをみせちゃる!」
途中、天魔さんが酒樽のお酒を丸々一気飲みしたりしてた。凄かったなぁ……。お酒が美味しかったからかテンションが上がってたからか、私もやります! と言ったら凄い周りに止められたけどね。
「あー? わりゃしに出来ないってかぁ……? うー、やってやりゅ!」
ジト目で睨みつけてから呑んでやりましたよ。ゴク、ゴク……ゴク、ゴク……おえぇ……。
でも途中から限界がきて、仕方なく異空間に繋げて残りを飲み干した。拍手もらえたけどお腹の中がタプタプだし、意識が朦朧としてたと思う。
「ほりゃ! 飲めたもん! 馬鹿にしたら怒りゅんだかりゃ……」
「アハハ、フランも大分酔ってんねー……っとと、私もそうとぉ……酔ってるみたい……。視界がクラクラする……」
「あやややや!? お二人とも飲みすぎないで下さいね!? 片付けとか私に任されるんですから!」
「あー? 文さーん、が七人?」
「もう既に幻覚症状見えてらっしゃる!?」
やたら突っ込まれた覚えがある。でも正直うるさかった。頭に響くからやめてほしい。
「おい諏訪子、アンタも飲み過ぎたら早苗にどやされるよ?」
「えへへー、神奈子ぉ! はれ? 神奈子がおばさんに見える?」
「誰がおばさんだコラァ!! 酒の席でも許さないわよ!」
「きゃー♪ おばさんこわーい! きゃはは! フランちゃん、あのおばさんこわーい!」
「んー? 諏訪子ちゃんを怖がりゃせるなりゃわらしが相手らぁ!」
「……呂律が回ってないなこりゃあ」
諏訪子ちゃんを抱き締めて、親の仇でも見るような目で宣言すると神奈子さんは呆れた顔をしていたような気がする。曖昧だけど。
天魔さんも孫を見るような目で私達を見ててお酒で真っ赤に染まった顔でニコニコしてた。
で、そんな宴の席も終わって帰り道。
「じゃー、また今度ー♪」
「おいおい大丈夫かい? 何なら泊まっていったらどうだい?」
「明日朝ごはん作るかりゃー! 大丈夫!」
神奈子さんが泊まっていかないか、って聞いてくれたけど私は帰ることにしたんだよね、確か。
酔っ払ってたけど帰るくらいなら大丈夫そうだったし。周りの天狗の人達が「幼女が酔っ払ってる姿ってどうしてこう犯罪的なんだろう」って話をしていたのが気になるけどそれはともかく、半分既に夢うつつの私はじゃあこうしよう、と考えを変える事が出来なかったみたいだ。
で、人里までふらふらしながら帰ってきてその頃には夜の寒さでちょっと酔いが冷めてきたんだよ。でも体はあったかくてぽわぽわーってしてた。半分寝たのは継続でね。
で、そうして歩いてたら見知った背中を見つけたんだ。
最後にその人に後ろから抱きついたところで、
「っ!? 誰だ……ってフラン? おま、酒臭っ! っておい、しっかり――――」
「えへへー、……zz」
酔いでクラっときたのかそれ以降の記憶が無い。
紅魔館にいるってことは多分自分の足で帰ってきたんだと思うけど……うん。
ともかくそんな一日でした。
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「これってやっぱり……?」
「……それ以上何も言うことはないわ。ヤツには、送り届けてくれたことには感謝してあげる。でもそれ以上はなにもないわ」
「ほぉほぉ、酔ったフランちゃんが安心して抱き付いて寝ちゃうくらいには好感度が上がってると」
「……まぁ、そういう見方もできますよね」
「」
「レミリア、何も言うなと言ったそばから破られたのがショックなのは分かるけど戻ってきなさい?」
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三月二十八日
朝起きるとお姉様が不機嫌だった。
こういう時のお姉様は下手に触れるべからず。放置するに限る。お昼の後にちょっと気合い入れてお菓子を出してあげれば大抵機嫌良くなるし、その辺りはメイド達の暗黙の了解だ。
だから例えお姉様が何かを期待した目でこっちをチラチラと見てきても反応しちゃいけない。放置、徹底的に放置だ。
咲夜にも対応させちゃ駄目。前に癇癪起こして咲夜をクビにしようとしたことあるみたいだし。
と、そんなお姉様はともかくだよ。
ようやく崩壊した紅魔館のガーデニングスペースが完全復活しました!
いやぁ、長かったね。土を開墾することから始めて、片っ端から埋まってる紅魔館の残骸を取り除いて、そしてまた耕す。
良質な土まで戻すのが大変な作業だったよ。
で、そのあとは花屋で集めた種や、幽香さんからもらった種を蒔いて、霧の湖から水を汲んできて栄養満点の水を撒く。
その作業の間に湖に住んでる、わかさぎ姫って人とも仲良くなった。というか一時期湖の表面が凍ってさ、その時に凍り付いて動けなくなったわかさぎ姫さんを助けたのがキッカケなんだけど。
「前日に…….紅白の巫女に釣られてご飯にされかけて……特大寿司よ! って叫ばれて私怖くって……それで潜ったまま一日を過ごしたらこんなことに……」
なんか不幸体質なのかもしれない。
まぁそんなわかさぎ姫さんとのお話も含めて、ようやく。
ようやくだよ! 完成した時にはめーりんと喜びを分かち合った。
やりましたね! やったね! ってそれぞれ言い合ってさ。
ともかくこれで春にはまた花々が咲き乱れてくれるはずだ。
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「花火の件からようやくかぁ、感慨深いですね」
「というかなんでレミリアは不機嫌だったのよ?」
「……多分、昨日フランさんを家まで送った方が原因かと」
「あっ(察し)」
「あぁもうレミリア・スカーレットが命じる、その話はやめなさい!」
ちょっと琴線に触れたのか不機嫌なレミリアなのだった。