三月十日
なんか異世界転移した。
ここどこだろう。空を見上げると地球が見えるってことは月かな? そういえば前にブッダさんとイエスさんに連れてきてもらったことあるけど……というかなんか戦争の真っ只中なんだけどどうしたんだろう。
銃器の音がうるさい。バンバンドンドンと打ち合いになってるし、というか私の体も打たれまくってるんだけど。
吸血鬼に鉛玉は効かないとはいえ痛いからやめてほしい。あとそこ、バケモノめ! とか言わないで。
とりあえず、なんか原住民がウサ耳だし多分月で間違いないと思う。
ここに来た原因は多分八雲紫説が濃厚かな。寝ている時に妖力を感じて目を開けたら一瞬、沢山の目玉が見えた気がするし。
……でもなんのためだろう。
とりあえず今は全力で
で、とりあえずウサギは捕まえた。
けど、
「くっ、殺せ! どうせ私の事を犯すつもりだろう! エロ同人みたいに!」
「……犯すって何?」
「……知らない、だと!? 貴様それでも異界の野蛮な民か! 聞く話によれば下界の民は月の民を欲望のままに陵辱するのだろう!? さぁやれ! くっ、なんて非道で鬼畜な奴らなんだ! あぁ、豊姫様、依姫様! 下界の民に乱暴されて欲望のままに貫かれてしまう私をお許しください!」
「いや、乱暴なんてしないよ? なんなら(レーヴァテインで)貫かないと誓うけど」
「嘘を吐くな! お前は異界の野蛮な民なのだろう!? 焦らすな、じゃない! あぁもう私の覚悟は出来た! 触手でも蟲でも持ってこい!」
「そんな生き物持ってないよ!?」
「焦らしプレイならやめてくれ! もう我慢出来ない! あぁ……早く、早くうううう!!」
「ひぃっ!!」
いきなり服を脱いで近寄って来たので丁重に閉じ込めておいた。
待遇はそうだね、三食お昼寝&デザート付き、労働不要、空間内のみ遊び自由って感じかな。でも外には出さない。怖いよあの人。
私の方が強いんだけど……なんていうか身の危険を感じる。最後のニタァってした笑みで近づいてきた時、身の毛がよだつ思いだった。
うぅ……月って怖いところだなぁ。
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「……月? えっ?」
「あのスキマババァ! フランを月なんかに……! あんな危険な場所に……!?」
「まずいですよ! というか月って霊夢さん達が負けた場所ですよね!? ……でもフランちゃんなら」
「……というか月の人に穢れは無いとか言ってましたけど明らかにこのウサギさん汚れてませんか……?」
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三月十一日
とりあえず化けて侵入しようとしたらバレた。
なんか穢れとか言われた。どうしようか、これ。そんなに汚いのかな私の体? 空間作ってちゃんとお風呂入ってるのに。
とりあえず神様モードになれば穢れは無くなるかな?
で、やってみたら総攻撃を食らいました。なんでや。
怪我は基本的に直前の出来事を破壊すれば無かったことになるから良いんだけどそろそろお姉様がバシュゴォした依姫さんって人がくるんじゃない?
物凄い剣の達人とか聞くけど……ついでにありとあらゆる神様を降ろせるって聞いたけど。
本気でやっても勝てるか分からないんだよね。周りに被害は出したくないから式をばら撒いて殲滅戦とかも出来ないし。
一対一でも月人って不死だから能力が効くと思えないし。
いざとなれば何もない世界に逃げ込むけどさ。
いや、いっそ向こうが来る前にこっちから出向いてみようかな。
そもそもの話、私と月人が対立する必要は無いしさ。正直に全部八雲紫のせいですって言って帰してもらおうか。
うん、それが良いね。
駄目なら弾幕ごっこでも殺し合いでもして認めてもらう他はないか。
……それか
確か月の神のツクヨミさんって素戔嗚さんのお兄さんだよね。
そうしてみようか? と思って携帯を出すと、
『プルルルル、現在電波の届かないところに』
あ、圏外だ。
しまったなぁ。テレパシー……も距離があり過ぎて届かないか。そもそも幻想郷内程度ならともかく地球上から位置もわからない相手を見つけ出すのは厳しそう。
……じゃあ気付いてもらうとか? 派手に技を出すとか神格全開にするとかすれば気付いてくれるかな?
でもそれやったら月との全面戦争が起こりかねないよね。
それこそ大惨事だよ。大惨事大戦だよ。(第三次だけに)
うーん、ひとまず明日、月の都に行ってみようかな。
ちなみに捕らえたウサギさんだけど、
「あぁ、ん! じ、焦らしプレイだなんて……こんな、こんなぁっ! 汚なき民の癖にぃ……!」
とかやけに色っぽく言いながらクネクネしてた。
何してるんだろう。もしかして頭の病気? 治療してあげたいけど流石にそんな技術ないしなぁ……。
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「何が始まるんですか?」
「大惨事大戦だ」
「……何をボケてるんですか、霊夢さん早苗さん」
「全面戦争……? 月と……?」
「……あぁもうレミリアさんはレミリアさんでトラウマ蘇ってるし!」
ツッコミは疲れます、と少し辟易したさとりだった。
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三月十二日
なんやかんや戦ってしまった……。
依姫さんと豊姫さん。何よあのチート! フェムトファイバーの組紐とかいう限りなく連続した縄とやらで縛ろうとしてくるし。不浄なものを縛るとか、酷くない?
私そこまで不潔じゃないんだからね! あとなんでも神様降ろすのもずるい! ゲームで例えるなら100ダメージくらいずつ与えていくゲームにいきなり別のゲームキャラが来て10000ダメージ与えるみたいなイメージ?
こっちも怒ったよ。さすがに。
二体一とかそれ以前に私何もしてないのに目の敵にしてくるし!
まぁ私も応戦したけどさ。神格全開にして、月ごと持っていけるレベルの本気のレーヴァテインを極限まで針のように細くして貫いたり、異空間にウサギ達を叩き落として閉じ込めたり。
まぁ全員ちゃんと無傷で帰したけど……。あんなに怒る事ないじゃん! 話も聞いてくれないなんてあり得ないよ!
というか今更だけど途中から意識が無いんだよね……。
丸く収まってることを考えると変なことはしてないと思うけど……。
……大丈夫だよね!
最後は仲良くなってお姉ちゃんみたいに接してくれたし、やたら焦った顔のツクヨミさんも仲裁に入ってくれたから後腐れもないし。
ウサギたちも解放したし。私も幻想郷に帰してもらえたし。
……うん、何も問題無いね!
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「そんなわけないでしょ!」
読み終えた瞬間、スキマが開いてひょっこり顔を覗かせた八雲紫が叫んだ。なんというか物凄い胃の痛そうな顔で、シクシク涙を流していた。
「……去年は彼女、フランのせいで冬眠出来なくてふとウトウトしてしまった隙に月に落としちゃって、それで気付いたら第三次大戦が始まったとか藍に聞かされて、挙句の果てには全ての黒幕にされたのよ!? 酷くない!? ねぇ酷くない!? しかも笑顔で迫ってきた依姫と豊姫の二人に話を聞いたらいきなりフランが狂気的になって死のイメージを感じたとか言ってたし! 和平に応じた時も『次は殺すよ?』と言ってきてリアリティがあったとか二人とも笑顔で詰め寄ってきたし……あの二人が月から私の元に来る時の私の心労がどれほどなのか分かる!? 軽く精神壊れそうよ!」
「いや、元はと言えば月に落としたアンタのせいじゃない……」
「夢だと思ったのよ! 夢ならあの子に恨みを晴らしてやれるとついやっちゃったの! 出来心だったの!」
「……うわぁ」
「それ言ってる時点で私は貴女の味方したくないんだけど……。妹のことだし」
シクシク泣く紫は味方が居ないと悟ったか暫く愚痴を吐くと消えていった。
後に残されるなんとも言えない空気の中、とりあえず霊夢が口を開く。
「……次のページに行きましょうか。うん」
「「「…………(コクリ)」」」
無言の賛成で一同は次のページをめくったのだった。