フランドールの日記   作:Yuupon

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 五月編スタートじゃい!


 


五月編
五月編1『転入生の挨拶は地獄』


 

 

 

 東風谷早苗の加入というイベントを挟み、三人は改めてフランの日記を覗き込んだ。

 

「じゃあ小休止も挟んだしそろそろ次を読む?」

「いや、霊夢さん。そもそもいつから始まってるんですか? その日記」

「ん、あぁ。去年の四月からよ。ちょうど早苗が来たのがその四月を読み終わったとこ」

「成る程。了解しました!」

「……どうでもいいけど始めるわよ。まったく、そもそも霊夢にだって妹の日記を読ませたくないんだけどね」

 

 ぶつくさと。巫女二人の会話が途切れる瞬間を狙って呟いたレミリアは五月のページを開く――――。

 

 

 

 五月一日

 

 

 今日から五月だ。なんだかんだ日記も一月続いたお陰で習慣付いてきたような気がする。

 で、そんなことはともかくだ。今日、なんかめーりんから『教科書』を渡された。前に五月から寺子屋に入るとか言ってたけどどうやら本気だったようだ。

 寺子屋があるのは人里。そこの上白沢慧音(かみしらさわけいね)って人が教師をしているらしい。

 寺子屋は週に三回で、月水金の午前中だけあるとか。私は妖怪の子供達が通うクラスに入るらしいが、人間の子供も同じ寺子屋内にいるので力の出し方には気を付けなくてはならない。まぁ最悪封印すればいいけど。

 っていうか明日が月曜日だよね。挨拶とかどうしよう。うう……今から凄い緊張する……!

 

 

 

 #####

 

「寺子屋ですかぁ。慧音先生の所には私もたまに行きますよ。というか臨時教師もやってます」

「え? アンタ教師やってたの?」

「はい! これでも外の世界で高度教育を受けていますし教科書も持ってきていますから。それに私なら人間でも妖怪でも問題無く対応出来ますし」

「……人は見かけによらないわね」

 

 霊夢が呟くとレミリアが頭をもたげて言う。

 

「……本当にね。まさか窓ガラスを破って侵入する人間がフランの教師だなんて」

「竜巻に巻き込まれたんだから仕方ないじゃないですか! しかも若干罪悪感をもってる私的にその言葉は大ダメージですよ! というか教師は真面目にやってます!」

「そういえば、一時期子供達の間で幻想郷では常識に囚われてはいけないのですねって言葉が流行ったって……」

「………………」

「………………」

「………………」

「……続き、読んでいい?」

「いや、スルーしないで下さいよ! なんですかその可哀想な人を見る目! どうせなら『やっぱり駄目じゃないか!』ってツッコミ入れてくださいよ! じゃなきゃボケられないんですよ空気的にィッ!!」

「うん、そうね。その話は今度慧音と詳しくするから……」

「それ完全に私が教師解雇される感じですよね!? いや、本当にちょっとネタとして言ってみただけですから!! 真顔でそんなこと言ってませんから!」

「――――強く生きろよ?」

「何が!? あとその『可哀想だけどこれから捌かれる運命なのね』みたいな顔しないでください! ドナドナ歌いますよ!?」

「……あの、そろそろ良いかしら? 続きを読みたいのだけど」

 

 流石に長くなってきたのでレミリアが割って入ると、尚も早苗は心配そうな顔で言う。

 

「え、あ……あの? 本当に慧音先生に話したりとかしないですよね?」

「…………」

「……え、いやその沈黙怖いんですけど」

「……あーもうはいはい。分かったわよ、冗談だからサッサと次いきましょ。これ以上待たせるとレミリアがキレるから」

「いや、私をダシにしているけれどそこまで短気ではないわよ?」

 

 何はともあれ一行は次のページをめくる。

 

 #####

 

 

 五月二日

 

 

 うわあああ。やっちゃったーー!!

 妖怪クラスだけじゃなくて人間クラスにも挨拶したんだけど、完全に失敗した気がする。

 一人対一人なら対話できる私も、大人数の前で平静を装うことは出来なくて、顔も真っ赤になってた。

 恥ずかしくて下向いちゃったし、昨日考えた挨拶もカミカミだったし。幸い、妖怪クラスの子には友達が多いからなんとかなりそうだけど人間クラスの方は悲惨だよ……。

 なんかやたら見られたし、やっちゃったー……。

 始まって初日だけどなんかもう寺子屋に行きたくない……。

 

 

 #####

 

「挨拶ねえ……普通に出来そうなものだけど」

「いや、意外にこういうのってあるあるなんですよ。ほら、人間関係って最初が肝心ですからフランちゃんのような転校生、というか転入生にとってはとても緊張すると思います」

「対人関係……まあ日記からは想像し辛いけどフランは元々地下に引きこもっていたから……仕方ないのかもしれないけど」

「コミュ障っていうんだっけ? 人と話すの苦手って。なんにせよ私には分からない感覚ね」

「ま、まぁフランちゃんの容姿を考えれば挨拶が失敗しても大丈夫でしょう。友達も居るって書いてありましたし」

「そりゃあ私の妹だもの。今じゃ里でファンクラブが出来ているくらいよ……私にはないのに」

「あの子は種族関係なく接するから人気あるのよね……もし宗教でも起こしたら、下手すれば私のとこと早苗のとこより人気でるんじゃない?」

 

 #####

 

 

 五月三日

 

 

 未だ昨日のショックが抜けきれてないフランです。

 いや、うん。自分でもビックリなんだよ。あんなに上がり症だと思わなかった。それこそコミュニケーショントレーニングをするべきかもしれないと思う。

 なんでだろうね、人前で猫耳メイド服晒せるのにいざ喋ろうとしたら声が出ないって。

 今日、偶々紅魔館に遊びに来てた魔理沙に聞いてみると「それ治せそうなやつに何人か心当たりあるけど会うか?」との返答が返ってきた。

 うん、情けないけどお願いしたい。

 

「じゃあ今度一緒にソイツのとこ行くか。ソイツで駄目なら別のやつにもアテあるしこの魔理沙様に任せとけ!」

 

 ――本当に頼りにしてるからよろしくお願いします!

 ……にしても魔理沙と何処かに行くのも初めてだよね。治療目的とはいえ友達と遊びに行くの初めてだし、楽しみだなぁ。

 

 

 #####

 

 

「コミュ障を治す……か」

「そういえば魔理沙さんってコミュ力凄いですよね。前にご一緒した時は沢山の人が魔理沙さんに挨拶してました」

「……なら人を頼らなくとも魔理沙が治せばいいんじゃないかしら、と私は思うのだけれど」

「いやレミリアさん。それは難しいと思いますよ?」

「何故かしら?」

「だってフランちゃんは既に魔理沙さんと友達じゃないですか。コミュ障といったって友達相手には起こりませんよ。それよりなら初対面の人と話をさせた方が治りやすいと思います」

「……(汗)。ふむ、一理あるわね」

「いや、普通に早苗の方が正論だからね? 認めとけば良いのに誤魔化した分だけアンタのカリスマ落ちてるからね?」

「ふ、ふん! 愚民の意見など私は聞かないわ!」

「誰が愚民よ。博麗の巫女を愚民呼ばわりとは偉くなったわねぇ?」

「あー、あー!! 喧嘩腰にならない! ほらっ、次のページを読みますよ!」

 

 慌てたように言って早苗はページをめくった。

 

 #####

 

 

 五月四日

 

 

 そういえば最近『こいのぼり』をよく見る。明日が子供の日だからか。

 ってそれはともかくだよ! 今日は二回目の寺子屋だった。

 登校中もやけに人の注目を浴びた気がするけど無視無視! 今日頑張って失敗した分を取り戻すのだ!

 そんな気持ちで参加した、ついでに前回触れなかった授業なんだけど。

 

「――というわけだ。じゃあこの問題が分かる子はいるか?」

「はい!」

「はい、チルノ」

「分かんない!」

「よーし、手は答えが分かった時だけあげような?」

「はい!」

「zzZ」

「zzZ」

「zzZ」

 

 うん、酷いね。いや、色んな意味で。

 起きている子が少数だったよ。そして起きている子は問題児が目立ってたよ。

 問題内容は大して難しくはない。あらゆる魔法学を読み漁った私は当然ながら計算なども出来るわけでハッキリ言って算数とかは大したレベルではない。多少小難しい教え方をしていようと知っているので理解出来る。

 というか最近はめーりんが修行と称して勉強を教えてくれてたし、大体の範囲はカバーしきれていたわけだ。

 むしろ有り余るレベルで。勉強になったと思うのは歴史の授業だけだった。やけに堅苦しいものだけど少なからず私にとってはそれくらいの方が楽しかったよ。

 と、そうだ。先生について書くのを忘れてた。

 私の担任の先生――上白沢慧音(かみしらさわけいね)先生というんだけど、初対面の時はビックリしたね。身長は低いけどすばらなおもちをお持ちだった。

 得意授業は歴史。うん、すばら! 

 それに周りからも思ったより変な目で見られてないしなんとかなりそうだ。まぁ魔理沙レベルのコミュ力は身につけたいからどちらにせよそのアテの人物には会いに行くけどね?

 

 

 #####

 

「そうなんですよね。フランちゃん頭が良いので私が個人授業することもあるんですよ。内容も中学生超えて今高校の理系レベルやってます……私もある程度頭良い自負はあったのですが最近は厳しいですね。流石に大学の専門レベルまでは指導出来ませんし……」

「中学? 高校?」

「あぁ、中学と高校は外の世界の寺子屋のようなものです。外の世界の子供達は小学校、中学校、高校、大学と進学するんですよ。で、その中で高校レベルというと大体社会で使う一般常識レベルを理解した程度――理系だとその中でも頭が良い部類と言われます。まあ、文系でも頭が良い人はいますし例外もありますけど」

「……ちなみに聞きたいのだけれど、貴女の目から見てフランはどんな感じかしら?」

「いや、凄いと思いますよ? 今やってるのがネットから印刷した京都大学の入試問題なんですけど普通に解けるようになってますし。入試レベルでいったら東大より上とも言われてる学校ですし、正直教えてる私も手探りな感じです。これでもバイトで塾の講師はやっていたんですが……流石にここまで来るとキツイですね。幸い、『奇跡』の力で答えは頭に浮かぶのですが」

「いや、その京都大学ってとこの学力がどのくらいなのよ」

「日本全国でもトップレベルです。入試レベルを言えばナンバーワンかも……ってくらいかな?」

「……凄いわね。どう思うのお姉様としては」

「さ、流石私の妹ね」

「……声が震えてるわよ?」

「う、うるさい黙れ」

 

(……これは完全に妹さんの方が知識はある気がしますねー。なんか奇跡がそう言ってます)

 

 今度こっそりレミリアさんに勉強教えに来ようかな? とちょっと考えてしまう早苗だった。

 

 






今回出てきたネタ
・早苗さん頭良い説(幻想郷内で勉強って意味じゃありだと思う)
・強く生きろよ(Re:ゼロから始める異世界生活より)
・可哀想だけどこれから捌かれる運命なのね(養豚場の豚を見る目)
・ドナドナ(歌。詳しくはググれ)
・愚民(ダンガンロンパ、十神白夜より)
・すばら! おもち(咲-Saki-より)
・京大の入試(AAネタより)詳しくは↓

よく分かる入試

東大「一見簡単だろう?でも案外君達分かってないんだなー、これが」
一橋「マニアックだけどおまえ等なら出来るだろ」
早稲田「教科書の細かいところまでちゃんと読んでるかな?」
慶應「取るべきところだけしっかり得点しなさい」
筑波「基本が出来てるかな?」
京大「死ね」

ちなみに現実で本当にどうかというのは知らない模様。
 

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