実はもう次作を書き始めてたり……(東方じゃないけど)
三月六日
聖白蓮さんが来た。いや、本当なんでだろう。
とりあえずお茶を淹れて話を聞いてみると私に相談すると物事が解決するという話を聞いたらしい。誰だそんなデマ流したの。
ともかくお話を聞いてみると人里に困った集団が居るんだとか。「夜露四苦」とか「喧嘩上等」とか言っててさ、頭をリーゼントとかにしてるらしい。聖さんも頼まれて説得を試みたらしいけどどうも言っている言葉が分からなくてほとほと困ってるんだそうだ。
「でも彼らも仏教徒なんです。真夜中に
「聖さん、多分それ
ともかくその後もお話ししているとなんか聖さんは急に立ち上がってこう言った。
「……うーん、まずは頭ごなしに否定するより彼らを理解すべきかもしれません。まずは私も体験してみようと思います!
いやだからそれ祈祷じゃない。あっ、行ってしまった。
……うん、このまま放置するのもあれだし。私も何か対策を考えようかな。でも暴走族とかヤンキーの対処法なんて知らないんだけど……。
そうだなぁ、やっぱり人生経験豊富そうな人に聞いてみよう。
というわけで電話してみた。ブッダさんに。
「こんにちはお久しぶりですブッダさん。フランです」
「お久しぶりですね。どうかしましたか?」
「実は……」
問題を話してみたらブッダさんはそうですね、と言ってからこんなアドバイスをくれた。
『私の知り合いに極道の方が居るんですが、その方に聞いてみたところヤンキーになるような子は基本心が満たされていない事が多いそうです。原因は一概には言えませんが、ともかく解決策としてはまず彼らのことを知ることですね。説法はともかく説教はこちら側の主観だけでして良いものではありません。ましてフランさんのお話を聞く限りでは強制的にヤンキーであることをやめさせようとはしないんですよね? ならば話すことです。人間、言葉が一番のコミュニケーションですから』と。
途中からちょっと電話が光り輝いて頭の中にスゥッと話が入ってきたけど……流石大人の人は違うなぁ。
私なんかより説明が上手だよ。憧れるなぁ。
話す、話すかぁ。よし、やってみよう。
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「ヤンキーの説得ですか……」
「妙に嫌そうな顔してるわね、早苗」
「……実は、外の世界に居た頃。まだ未熟な時にそんな見た目の方々に路地裏に連れ込まれた事がありまして……それ以来ちょっと」
「……災難ですね。大丈夫だったんですか?」
「はい……、同級生の男の子が助けてくれて」
「ほうほう。それはそれで気になる話ね?」
「いぇっ!? べ、別に何もありませんでしたよ? ナンパされた時に助けてもらったり、あとは一緒に買い物をしたくらいで……」
「青春ってやつね! 私聞いたことあるわ!」
「そ、そんな相手では……その、ありませんから。とっ、ともかく次のページに行きますよ!?」
「「「ニヤニヤ」」」
「声に出して言わないでください!」
突っ込まれて恥ずかしかったのかプシュ〜と顔を真っ赤にする早苗はちょっと怒った様子で次のページをめくったのだった。
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三月七日
とりあえず今日起こったことを書いていこうか。
今日はヤンキーの人達に会った。
リーゼントだったよ。皆タバコとか吸ってた。話しかけてみたら「あんだよ?」って荒っぽく言われたけど、どうしてヤンキーをやってるのか聞いてみたら舌打ちされた。あとガキは帰れって言われた。
根本的に心が荒んでいるらしい。初対面相手にそんな口調で話しかける時点で色々アレだと思う。せめて子供扱いなら別に良いんだけどさ……で、暫くすると私を見て何かピンときた人がいてさ。
「ってかこの子アイドルのフランちゃんか?」
「おいおいアイドル様が路地裏に来ていいのかYO」
「ヤっちゃいなよ! Youヤっちゃいなよぉ!」
うん、テンションの上がり方がちょっと気持ち悪い。
とりあえずやるって何を? パラリラパラリラってやつ?
とか思ってたら腕を掴まれた。それから万歳の形で固定されて服に手が掛けられる。
セクハラかな? そして首を傾げていたその時だ。
「おい、お前らソイツから離れろ!」
叫び声と同時に弾幕が降ってきた。誰よ、危ないなぁ。
防いだけどさ。それから犯人を見たらなんか犯人が弾幕を止めた私を見て唖然としてた。
というかナナシ君だった。何してんの?
「……いや、フラン。お前なんで防いでんの? 今の俺が格好良くヤンキー叩きのめしてお前を助けるイベントじゃないの?」
「何言ってんの? 私は最近人里で迷惑してるヤンキーの人達が居るって聞いてお説教しにきただけで何もされてないけど……」
「……マジで?」
「うん」
寧ろヤンキーなんかにやられると思う?
仮にも吸血鬼よ、私。それに簡単には死なないよ?
助けも不要だし。あ、でもナナシ君弾幕上手くなってたね。とか思ってたらヤンキーの人達が叫んだ。
「テメェどこのシマのモンじゃい!」
「ブォンブォンブォンブォン!! ブロロロ!」
「パラリラパラリラ! パラリラパラリラ!」
「シマって極道か! つか口でバイク音とかの真似すんじゃねぇよ! セルフ音とか悲し過ぎるだろ! いや身体を張ったボケかっ!? だとしてもお笑いにもならねぇからっ!! むしろ本気でそれで相手を威圧出来ると思ってねーよなぁっ!?」
「「「あんコラァ!」」」
「うるっせぇなコラァ!」
なんか気付いたらナナシ君がヤンキー相手に口喧嘩始めてる。
駄目だよ喧嘩は。というかやるなら説教してよ。ヤンキーの説教。
「いや説教ってなんで!? 俺関係無いよねっ!? 確かに弾幕撃ったけどアレはカウントされないだろ!? だってぱっと見明らか事案だったし!」
「「「説教しろコラァ!!」」」
「いやヤンキーのお前らがそれ望むのかよっ!? お前ら本当はヤンキーじゃないだろ! つか刺青ハゲとリーゼントと金髪が説教しろって迫ってくるのなんか怖えよ!」
ズズい! と近付いてくるノリの良いヤンキーにナナシ君が引く。
でもハァ、と溜息を吐いて説教を始めてくれた。
「……あの、一つ聞いていいですか? なんでヤンキー始めたのとか、そのあたり教えてください」
「俺らよぉ! 仕事が疲れたのよ! 全く楽しくもねーこと押し付けやがって! 今時畑仕事なんて……食料自給率四〇〇%の幻想郷で畑仕事なんてやっても儲からねーと言っても親父は話を聞きやしねぇ! 商人になろうとしても邪魔されるしよぉ! クソが、思い出すだけでも腹が立つぜ!」
「……それで、ヤンキーに?」
「おうとも!」
「…………こう言っちゃなんだけど、バカ?」
「あんコラァ! テメェ下手に出てりゃあ舐めたこと言いやがってこのクソガキ!」
「落ち着けよ兄ちゃん。ガキ相手にキレんなみっともねー」
ふぅん、意外に度胸あるのね。全然恐怖をおくびにも出さずナナシ君が口を開いた。
瞬間。
「とりあえず言わせてもらうとだぁ! 親に自分の進路を認められなかったからヤンキーになった? そんなこと話してアンタ恥ずかしくねーのかよ!」
「ッ!?」
空気が変わった。
腹の底から叫んだであろう声がビリビリと空間に響く。それからナナシ君は静かに問いかける。
「……アンタ商人になるのが夢なのか?」
「……まぁ、な。自分の店をもてりゃ嬉しいとは思うぜ」
「ならなんでそうしない?」
「ハァ? ンなの親父が認めねぇからに……!」
「違ぇよ。本当になりたい夢だってんならなんでそれを目指さないかって聞いてんだ! 認める認められるの話じゃねえ! 本当にやりたい事ってのは誰かに認められることじゃない! 自分から挑んで、進んでいくものじゃねーのか?」
「テメェ何都合の良いこと言ってやがる?」
「都合の良いことじゃねぇ! その気になれば出来る筈なんだよ! お前がもし本気なら、自分から丁稚奉公するなり手段はあった筈だ! 店持ち商人の前で地面に頭を擦り付けて頼む筈だ! それが出来てないってことはアンタの夢は口だけだったってことじゃねーのか!」
そんな感じに説教してた。どうやら熱くなると周りが見えなくなるタイプらしい。でもストレートにザクザク話していくと段々険悪になっていくもので、なんか最終的に殴り合いになりそうになってさ。
最後にはそのふざけた幻想を、とか言いながらナナシ君も殴りかかってたから「暴力はダメ!」って言って私が止めた。それから二人とも軽く殴ってやると「暴力はダメって言った本人が殴ったよ今!?」とナナシ君に突っ込まれてイラっときたのでもう一度小突いておいた。
というかナナシ君もナナシ君で失礼だよ。あんなんでも年上なんだから敬ってあげなよ。
「もう怒ったんだから! 二人とも正座ね」
「は?」
「正座しなよ。ゴッ倒すよ?」
私がお願いするとブルブル震えながら二人とも正座してくれた。それから私の説教が終わったあとに急に仲良くなってたけどどうしてだろうね?
ちなみにそれらが終わってから三人とも迷惑行為はやめてくれると誓ってくれた。白蓮さんからも感謝されたよ。
なんにせよこれで一件落着だね。
ブッダさんありがとう、アドバイスが役に立ちました!
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「こんなの説教じゃない……」
「フランちゃんもやりますねー……でも純真さが消えてきたような」
「……子供は成長するものですから。それに彼女は特に精神的に成長する要素が多過ぎて……」
「というか絶対ブッダのアドバイス無視してるわよね!? 明らかに違う雰囲気よこれ!」
ドン引き、呆れ、ツッコミ。
いずれにせよ言葉にしづらい感情を抱いた四人だった。