Fate/Victory Order    作:青眼

5 / 20
 どうも皆さん!少し遅れましたが、明けましておめでとうございます!こちらの他にも、番外編的な物を書いてみましたので、そちらもお読みなって下さると嬉しいです!!
 それでは、本編をどうぞ!!


マスターの資格

 宝具。又の名をノウブルファンタズム。英霊(サーヴァント)である以上必ず存在し、自身の証明とも言える物。それが使えないと言ったマシュに、クー・フーリンとエミヤが溜め息を漏らす。それを見たマシュが目に見えて落ち込む。

 

「仕方ないわよ。宝具っていうのはサーヴァントにとって必殺技みたいな物なんでしょう?なら、亜種英霊(デミ・サーヴァント)化したばかりのマシュができるはずないわ」

[所長の言う通りだ。きっかけさえあれば必ずマシュにだって]

「ああ?んなもんできて当たり前だろうが」

 

 落ち込んだマシュを励まそうとするオルガマリーとロマニだが、空気を読めないクー・フーリンに一刀両断される。その後、頭を掻きながら当然のように言う。

 

「いいか?宝具ってのは英霊(サーヴァント)が存在するなら絶対に使える物(・・・・・・・)だ。嬢ちゃんが真っ当な英霊だろうが亜種英霊だろうが、サーヴァントになっている時点(・・・・・・・・・・・・・・)使えて当然なんだよ。単に、嬢ちゃんが自分の力の使い方を知らねぇだけだ。その内使えるようになるだろうさ」

「といっても、こちらとしては今すぐにでも戦力を増強したい。ならば、できることは一つ。場数を踏む事だな」

「おうよ。つーわけで所長さん。ちぃ~っと背中借りるぜ?」

 

 クー・フーリンがオルガマリーの背中にささっとルーン文字を刻む。一体何をしたのかと所長が聞くと同時に、ロマニから通信が入る。

 

[ちょ、狭間君たちに向かって大量のエネミー反応!!もの凄い勢いでそっちに向かってるんだけど何かあった!?]

「絶対クー・フーリンのせいよね!!一体何をしたの!!」

「ん?いや、ちょっと厄寄せのルーンを使っただけだぜ?どっちにしろ、嬢ちゃんたちは実戦経験が足りてねぇ。なら、セイバーのとこに行く前にちょっとした訓練をするだけだ。なぁに、安心しな。死ぬレベルじゃなかったらルーン魔術で治してやるからよ」

「それ治療は治療でも荒良治だろ!?」

 

 狭間の突っ込みを笑って流すクー・フーリンを見ながらも、俺は何か使える物は無いかと道場内を見渡す。すると、エミヤがこちらに向かって何かを投げ渡してくる。

 

「これを使うといい。私が投影した刀だ。これならば、竜牙兵程度の戦闘でも耐えられるだろう」

「………え~~っと、聞き間違えかな?それって俺に戦えって言ってる様に聞こえるんだが……」

「その通りだが?戦いの心得が無いマスターと共に戦うつもりはないのでね。少しばかり、マスターに相応しいか試させてもらおう。ああ、ブーディカは手を出すなよ。これは、彼の戦いだからな」

 

 腰に手を伸ばしていたブーディカさんを止めるように言うと、少し悩みながらも渋々、剣の柄から手を放した。

 

「ちょっと!まさか本気でマスターに戦わせる気!?下手をしたら死んでしまうかもしれないのよ!?」

「当然だ。それにな。普通の聖杯戦争なら真っ先に狙われるのはマスターだ。サーヴァントを相手にしても、令呪を使える程度の自衛ができなければ参加する資格すらない。これは、あくまでも戦争(・・)なのだからな」

 

 冷たくそういうエミヤにたじろぐオルガマリー。まぁ、相手が英霊なのから仕方ないのだが、もう少し粘ってもらいたかった。……………まぁ、どちらにしても、自分もやらないと前に進めないのは事実。決意を固め、渡された刀を一気に引き抜く。銀色の鈍い光が俺の顔を映す。

 

「関係ないですよ。どちらにしろ、俺の力を見せなくちゃいけないんだ。なら…………やるしかないだろ!!」

 

 刀を構えると同時に魔術回路を起動させる。あふれ出る魔力を足と腕に回し、一気に加速してスケルトンの群れに切りかかる。

 

「行、く、ぞオラァァ!!」

 

 今までに感じたことのない速さを出している自分に恐怖しつつ、それをできる限り無視して正面にいたスケルトンを一体破壊する。その勢いを殺すことなく走り続け、次いで二体、三体と破壊する。そこまでして、ようやくスケルトン達は俺を敵対者だと理解したらしく、俺を追い回してくる。

 

「ただそう簡単に捕まるかってんだ!!」

 

 俺とて闇雲に走り回っていたのではない。武家屋敷という場所を戦場にしている以上、屋敷の果てには壁がある。魔力をより足に集中させ、一気に跳躍して瓦の上に立ち、刀を納刀。そして足に力を込めてスケルトンの群れに直進。

 

「喰らいやがれ………!!」

 

 スケルトンとぶつかる前に刀を振りぬく。刀が黒い線となって横に並んでいたスケルトンを切り裂き、上半身と下半身が分かれた物から順に消滅していく。そこまでやった後で俺はふと考えた。

 

(あれ…………どうして俺、こんなに戦い慣れ(・・・・)してるんだ?)

 

 考えればそうなのだ。俺がこの世界にやって来たのはほんの数時間前。二、三日ほどエミヤ達に訓練をしてもらってからなら理解できるが、余りにも変だ。

 

(……まぁいいか。戦い慣れていることに越した事はないんだし)

 

 後でゆっくりと考えることにすると決め、正面から襲い掛かるスケルトンに集中しようとした時、上から巨大な盾が降ってくる。

 

「おわぁ!?」

 

 慌ててバックステップで距離を取る。直後、降ってきた盾で起こった衝撃波が周りのスケルトンの動きを抑え込む。同時にその体が拳一つで砕け散る。

 

「黒鋼先輩!!先に出るのはやめてください!!先輩は生身の人間なんですから、私が討ち漏らしたエネミーを」

「悪い悪い。んじゃ次だ!!」

「先輩!?」

 

 マシュが投げた大盾を握りしめるのを見届けたと同時に、俺は前に足を踏み込む。信じられないと言いたげに声をかけるマシュには悪いが、正直に言うと、今の自分がどこまでやれるのか、俺の感じた違和感が何なのかを確かめる為にも戦い続けなくてはいけない。故に、静止を振り切ってでも戦わなくてはならないのだ。

 エミヤから渡された刀を一層力強く握りしめながら、俺は声を上げながらスケルトンに突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が彼女以外に契約を結んだ少年。黒鋼研砥を見て私は目を疑った。最初はスケルトンを三体でも倒せば御の字だと思っていたから、より一層驚いている。確かに、私は彼に自分が投影した摸造刀を渡したが、それでも振るうのに結構な筋力が必要だ。

 異常なのは筋力だけではない。彼が無意識に行っている魔術の行使だ。彼が最初に呼び出したブーディカと呼ばれたサーヴァントに聞いたが、彼は今日初めて自分に魔術回路があると知り、それを起動させたらしい。本数は三十と少しだと聞いたが、それにしても異常だ。知らず知らずの内に強化の魔術を使い、自身の身体能力を強化している。動きもどこか戦い慣れしている。とても数時間前まで戦闘経験が無かったとは思えん。

 

「………ロマニ。残っているスケルトンの数は?」

[………正直、信じられないけど残り一桁だよ。マシュの方が撃墜数が多いけど、黒鋼君も凄いよ]

「まさか、あいつがここまでやるたぁな。こいつは、少し勝機が見えてきたか?」

 

 呑気にそんなことを言っているクー・フーリンに少し呆れながら、私は再び彼の動きを見る。剣を持ったスケルトンと鍔迫り合いになっているが、足を一歩引きながら力と刀を逸らし、後ろに回って刀を一閃。退治したスケルトンが消えるのを見届けて、次の敵に接近する。

「…戦闘能力は十分。なら、次は――――――」

 

 独り言の様に呟くと同時に、私は自然な流れで黒弓と()を投影した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そらぁ!」

 

 正面と戦っていたスケルトンを破壊し、荒くなってきている息を意識しながら周りを見る。どうやら、今マシュが戦っているスケルトンで最後らしい。戦闘が終わることに安堵し、知らないうちに溜まっていた疲れが噴き出す。足がマラソンで全力疾走した様に重く、腕は何回も連続で試合をした後の如く痛い。

 

「――――っあ。はぁはぁはぁ、少し、はしゃぎ、すぎ、たか」

 

 荒くなっている息を抑えようと深呼吸をしようとしたその瞬間、背中が冷水をぶっかけられたように寒くなった。

 

「―――――っ!?」

 

 咄嗟に足へと力を込めてその場を離れる。直後、先ほど休んでいた所に先端が尖った何かが突き刺さる。切っ先から持ち手までが非常に細い歪な形をしたもの。旗から見ればそれは、とても歪な形をした弓矢に見える。

 

「ーーっ、あんの野郎…………!」

 

 こんな芸当ができる奴は、この場に一人しかいない。矢が飛んできた方を見ると、見るからに赤い光弾がこちらに迫ってきた。

 

「くっそ、手加減なしかよ!?」

 

悪態を吐きながらも、疲労困憊な自分の体に活を入れて逃走を開始する。何とか初撃と二撃目を避けるも、続けざまに放たれる光弾に嫌気がさす。明らかな弱いものいじめだ。英霊としての矜持を持ち合わせていないのか、あの赤い弓兵は。

 

「やべ逃げ場がーーー」

 

 こちらに向かってくる矢を正確に弾くなんていう人間離れしたことをできるはずもなく、さっきとは違って闇雲に逃げ回ったつけだろう。正面には大きな蔵が、後ろからは赤い光弾()が迫っていた。このままなにも考えずに蔵に突入しても良いが、どのみち次に放たれる矢で終わりだろう。ならば、取れる選択肢は一つしかない。

 

 

 前に出ていた左足を軸にして横に思いっきり飛ぶ。それと同時に左腕に刻まれた三つの入れ墨、縦に一本、中央に交差いた二本の赤い剣の紋様。令呪を睨み付ける。

 

「一角目の令呪を持って命ずるーーー」

 

 令呪。それは自分の使役する英霊(サーヴァント)に対する三回きりの絶対命令権。これを使って未だに(マスター)を攻撃してくる馬鹿(エミヤ)を拘束するという選択肢もあるにはある。だが、それでは意味がない(・・・・・・・・・)。今、奴が何を思って俺を攻撃しているのか、その真意を完全に理解できるほどの余裕は俺には無い。だが、これだけは分かる。

 まだ出会って一時間も関わってない自分達だが、少なくとも、俺の憧れた彼が何の意味も無しにこんなことをするはずが無いということだ。光弾が俺の頬を掠る。焼けるような痛みが走るも、それを圧し殺して告げる。

 

「今すぐに、この場に来い!ブーディカ!!」

 

 中央の赤い剣の紋様が音と立てながら消滅する。同時に、新たに放たれた光弾()が俺の頭上に迫る。足を止めてしまった以上、俺にはもう抵抗する手段はない。間に合うと信じているが、物凄い勢いでこちらに向かってくる明確な()を恐れ、目を閉じてしまう。

ーーだが、赤い光弾が俺の体を穿つことは無かった。何故なら。

 

「ーーーはぁ!」

 

 何故なら、俺に向かってきた矢を、彼女がその手にもつ剣で正確に弾いたのだから。

 夕暮れのような緋色の髪に、少し露出の多い戦闘服を着た、俺の相棒(サーヴァント)が。

 

「良い判断だったよ研砥。やっぱり、君は優秀なマスターだ。あとは、お姉さんに任せなさい!」

 

 その左手には小さな盾を、右手には約束されざる勝利の剣を携え、ブーディカは毅然とした態度で俺の前に現れた。

 

 

 

 




 ふぅ、何とかここまで書き上がりました。次のエミヤ戦までしかストックがないので、そろそろやばいです。ついでにセンター試験も近いです。
 誤字・脱字がありましたらご報告の程、よろしくお願いします!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。