Fate/Victory Order    作:青眼

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大変長らくお待たせいたしました! ガチャ報告ばかりでなく、こちらの更新もしますよ~! そしてぇ! 今日は待ちに待ったEXシリーズ最新作、EXTELLA Linkの発売日! 必ず買いに行くぞ~~! (尻尾を)抱きしめ(てモフり)たいなぁ、玉藻の前!!



P.S!! 最近沖田さんがとても好きになりましたマル。


フランスの異変

「………なあ、シアリムさん。俺が今、何を言いたいか分かるか?」

 

 アトラス院からレイシフトを行ってから既に数分。フランスへのレイシフトは無事に終わった。一面に広がる草原に、澄み切った青空。何故か空に描かれた光帯の存在に目を奪われたが、尋常ではない熱量だということしか分からなかったので置いておく。そんなことよりも、目下の一大事に通信先の最高責任者(シアリム)に尋ねることにした。しかし、向こうからは聞き苦しい言い訳ばかりが流れてくるので、仕方がないからもう一度言い直すことにした。

 

「なんで…………なんで、初めからこんなことになってるんだよ!? レイシフトした直後に、俺の傍にいるのがブーディカさんしかいないって、どんな事故だっ!?」

『い、いやぁ。本当に申し訳ないけど、こっちで何らかのトラブルがですね……』

『少なくとも、昨日までシステム面のチェックは終わらせてから問題ないと思ったんですけどね。けどまあ、やっぱり師匠だからミスをしちゃいましたか……』

『いや、私(イコール)失敗の権化みたいなこと言うのやめてくれない!?』

 

 情けない声で叫ぶシアリムに対し呆れた溜め息が返される。その一つで自分の評価を知ってしまった彼女は寂しそうに通信を切る。どうやら結構堪えたようで、当分は顔を見せないかもしれないと何となく察する。

 

 

 

 

 

 ここでとりあえず現状の再確認をする。黒鋼達、カルデアを支援するアトラス院のマスターとサーヴァントは、発見された特異点である1431年のフランスへと霊子移動(レイシフト)を行った。システム自体はちゃんと起動し、目的地への時間移動に成功した。しかし――――

 

「いざこっちに来てみればエミヤと静謐はどこか別の場所に飛ばされていて、唯一傍にいたのがブーディカさんだけと。現状、敵対勢力は発見できないから安心して欲しいって言われたけど、味方が揃っていない状態でどう安心しろと……」

「あ、あははは……こりゃあ、最初から前途多難だなぁ」

『笑って済ませれる範囲を超えているとは思うがね……。まあ、別に問題はあるまい』

「自分は安全なところいるからって、凄い他人事ですね!?」

 

 呑気にパイプ煙草を吸うホームズにツッコミを加えるも、本人は素知らぬ顔でプリントに目を通すのを見て、もう少しこっちのことも考えてはもらえないだろうかと真剣に悩み始める。だが、このままじっとしていたら何も起こりはしない。あまりしたくはないが、自分から行動する必要がある。とにかく、地理に関して彼らは門外漢だ。なので、ここは一つオペレーターの指示を仰ぐことになる。

 

「藤丸さん、とりあえずエミヤと静謐の現在地とか分かったりする?」

『ごめんなさい。さっきからサーチをしてるんだけど、有効範囲内に反応が無いみたい。ただ、こっちに二人の姿がない以上レイシフトが成功しているのは確かだから、根気よく探すしかないね』

「そっか……とりあえず、このまま草原でぼーっとしてるのもあれだ。近くの町とかに行って情報を集めようと思うんだけど、それでいいかな?」

『了解。それじゃ、近くの町までナビゲートするね!』

 

 藤丸が張り切るように声を明るくすると、近くにホログラムの板が出現する。これはどうやら極小のカーナビみたいなものみたいらしく、進行方向に向かって矢印が示されている。分かりやすい仕様になっていることに感謝しつつ、とりあえず前に進むことにした。

 

「よし、それじゃあ行こうか。ブーディカさん」

「うん。あ、でもいいこと考えたら、それでもいいかな?」

 

 目的地まで歩こうとしたが、そんな黒鋼をブーディカが何かを思いついたように手を叩いた。何のことだと疑問に思いながら、次に行ったことに嬉しいような悲しいような表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよぅし! 『リヨン』の街に到着! 今日は馬車代わりに使ってごめんね?」

 

 後ろに丸く纏めた赤い髪をたなびかせながら、ブーディカは優しく馬の頭を優しく撫でる。撫でられた方は問題ないと言わんばかりに一度声を上げ、ゆっくりとその身と繋がれた手綱。それから戦車(・・)の姿が消える。ぶっちゃけた話、さっきまでいた草原から一番近い村まで数十キロも遠かった。なので、一気に移動するために彼女の戦車を使ったのだが。これは本当に使って良かったのかと思わざるを得ない。宝具というのはそのサーヴァントの在り方そのものと言っても過言ではない代物。それをたかが移動の為に使うというのは、さすがに申し訳なさが顔を出す。

 

「その……なんか手間をかけさせてすいません」

「別にそこまで気にしなくてもいいと私は思うけどなぁ。それに、使っていないとあの子たちも退屈しちゃうしね」

 

 自分のことを気にしてくれたのが嬉しかったのか。ブーディカはさっきの馬と同じように優しく自分の頭を撫でる。それが少しからず照れてしまった黒鋼は逃げるように後ろに下がる。それを見てまた苦笑する彼女ではあったが、何かに気付いたかのように正面に向いた。

 

「ん、どうかしましたか?」

「あ~いや、別にそういうわけじゃないんだけど。……急に来た私達を向こうの人たちが受け入れてくれるのかなって」

「あ、それなら大丈夫です。そっちは俺に任せてください」

 

 村の近くで降りて、そこから歩くこと数分。とりあえず近場にあった『リヨン』という町に向かった二人だが。当然のように村の入り口には兵士が立ちはだかっていた。こちらの理由を説明しても理解してもらえるとは思ってはいないし、だからといってこのまますごすご引き下がるわけにもいかない。なので、ここからは少し齧っただけの魔術や錬金術の出番である。

 

「すいませーん。ちょっとお話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

「あん? ガキが一体何のようだい。というか、どこの国の者だお前ら。赤い髪の女や、黒髪のガキなんて見たことなんざ聞いたことないぞ」

「いやまあ、そこは見逃してください。それより、ちょっと大切な話があるんですよ」

 

 二人組で入り口の警護をしていた兵士二人に近づく。彼らがこちらの気を取られている内に懐から小さい小瓶を取り出し、それを二人の前に翳す。当然、何かをしてこようとした黒鋼に驚いた二人ではあった。だが、小瓶から発する色の付いた煙を嗅いだ途端。力が抜けたように両手をだらんと下ろして無抵抗な状態になる。

 

「………ふぅ。催眠の暗示が上手くいって助かった。正直、こうでもしないとまともに情報収集できないからな」

「それはそうだけど、これって大丈夫なの? 後遺症とか残ったりしない?」

「まともな魔術師・錬金術師ならまず道具なんていらないですよ。俺はまだ半人前にすらなってないド三流術士なんで、こうやって小道具とか必要なんです。シアリムさんがこういったものを作っててくれて助かった……」

 

 魔力殺しのローブを作ったり、今回の様に簡易の暗示効果を持つお香を作ったりと。アトラス支部の支部長であるシアリムはかなりの道具作成能力を持っている。勿論、キャスタークラスが持つ本当の『道具作成』スキルとまではいかないが。それでも、日常生活で必要とする以上の道具を作っている。時々、変態的な発想に至り。その実験に付き合わされて大変だと藤丸に愚痴られたのは記憶に新しい。

 

「さて、そんなことを言い合ってる場合じゃなかった。まずは、この時代における情報集からだなっと。おーい。こちらの声は聞こえてますかー?」

 

 勝手に暗示しておいて勝手だとは思ったが、とりあえず今の時代でおかしな点がないか。催眠状態に入った二人の兵士に今の内に尋ねておく。結果、かなり有意義な情報を得ることができた。まず、この時代における重大な歴史の変更点が一つ。それは、既に処刑されたはずのジャンヌ・ダルクが復活したこと。同時に、彼女は超常の力を用いてフランスを攻撃し、人の形をした化け物を従えているとも。加えて、フランスには竜が跋扈するようになり、それもまたジャンヌ・ダルクの下僕らしい。

 

『ジャンヌ・ダルクの復活……まず間違いなく、これがこのフランスにおける歴史改変の原因の一つだろうね』

「言われるまでもないですね。それにしても、ドラゴンなんてものがフランスで飛び回るはずもなし、これも異変の一つだよな?」

『よし、これからはもう少しサーチの範囲を広げてみるよ。何かヒットしたら伝え――――ゑ?』

 

 周囲の正確な情報を求めて捜索範囲を狭めていたが、これから先に飛んでくる敵がいるというのであればその範囲を広げるべきだと、シアリムが捜索範囲の拡大を早速行った。そして、何とも言えない。というより、信じられないものを見てしまったかのような反応がインカム越しに聞こえてくる。とてつもなく嫌な予感がしたが、溜め息を零しながら本人に尋ねる。

 

「………一応聞くんですが、今のは何に対する反応だったんですか。まさかとは思いますが、既にドラゴンがこっちに迫ってるとかそういうのじゃないですよね?」

「ごめん、多分だけどその予想は的中だ! 高速でリヨンの街に接近する敵影五つを感知! 今すぐ退避するか迎撃するか選んで欲しい! 接敵まであと四十秒弱!」

 

 本当に嫌な予感が的中したことに黒鋼は頭を抱えずにはいられない。一応の戦闘訓練はエミヤとこなしているとはいえ、竜種との戦闘は未経験だ。スケルトンや竜牙兵程度なら負けるつもりはないが、凶暴な獣のそれを遥かに上回る竜が相手となると間違いなく死ぬだろう。ブーディカというサーヴァントがいるから問題は無いかもしれないが、ここで無駄に時間を消費することはしたくない。

 ―――だが、そうなるとこのリヨンの街が犠牲になってしまう。ここに住む多くの人間を見殺しにしてまで目的を優先するほど、黒鋼は自身のことを人でなしではないと思っている。

 

「―――迎撃しよう。ブーディカさん、悪いけど相手を頼めるかな?」

「任せて。こと守りに関して、私はそこらのサーヴァントに負けるつもりはないよ! 研砥は町の人たちの非難を!」

「分かってる。絶対に死なないでくださいね!」

 

 黒鋼は町の人たちを。唯一ドラゴンと対抗できるブーディカはドラゴンの迎撃を。それぞれが各々に課せられた使命の下に行動する―――

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

とりあえず、暗示にかかったままの兵士たち二人を使ってドラゴンがここに襲い掛かってくるということを知らしめる。町の中を呑気に歩いていた住民たちは当然パニックを起こすが、彼ら安全に家に誘導させながら、逃げ遅れたりパニックのあまり動けない人がいないか捜索する。

 

「シアリムさん! もう町の外には、俺たち以外の住民は外に出てないよな!?」

『ああ、それは問題ない。こっちでもモニタリングしてるけど、ブーディカの方も問題なさそうだ。着々と一体ずつ敵を蹴散らしているよ。流石は勝利の女王だね!』

 

 五体もドラゴンがいると思っていたが、どうやら通常のサーヴァントでも倒せるようなランクの低いドラゴン。というより、それの下位互換であるワイバーンだったらしい。それなら安心だと思った直後、突如としてアラート音が耳元で騒ぎ出した。

 

『師匠! ブーディカさんが敵対している地点から真逆の方向より、リヨンに向かって飛来する敵影を新たに感知しました! 数は三、魔力パターンから同じワイバーンだと推定します! 接敵まで約三十秒!』

『見た感じ、さっきの五体は囮か! マズイ、黒鋼君! 今すぐその町から逃げるんだ! サーヴァントを連れていない君じゃ太刀打ちできない!』

「でも、そんなことしたら町の人たちが!」

 

 今ここで2人にかかっている暗示を解除すればパニックを起こすのは必至。ならばと、二人に掛けた暗示の圧を少しだけ強める。あまりしたくはないことだが、そうすることによって脳にかけて意識を更に朦朧とさせる。その直後、二人の頭を顎から殴り付けて強引に意識を失わせ、近くにあった路地裏に寝かせる。ここならば狭いしワイバーンが襲ってくることもないだろう。彼らを巻き込まないようにしながら、今度は自分とサーヴァントを繋ぐパスを強く意識して、ブーディカと念話を開始する。

 

(ブーディカさん! 多分聞こえてたと思うけど、こっちに新しくワイバーンが現れた! あと何分でこっちに来れそう!?)

(早くて三分ってところかな! それまで、頑張って逃げて!)

(無茶なオーダーだけど全力でこなして見せます!!)

 

 魔術回路を励起させ、発生した魔力を全て身体強化に回す。三角飛びの要領で路地裏から一気に屋根へと駆け上がり、自分に迫ってくるワイバーンの姿を確認する。正直な話、この時点で黒鋼は足が竦みそうだった。赤みがかったいかにも丈夫そうな鱗に、自分という餌を見つけて吼える凶悪な姿。何より、自分より一回りも二回りも巨大なくせして早く動くその姿が何より恐ろしい――――!

 

「っ、藤丸さん! ナビゲートよろしくお願いしますっ!」

『お任せください! 全力で貴方からワイバーンを逃がしてみせます!』

 

 インカム越しに下される指示に的確に従いながら、全力疾走を繰り返す。屋根の上を魔力でブーストした足が駆け抜ける。一歩踏み出すたびに屋根が凹むが、気にする余裕はこちらには無い。屋根を降りてから街中を疾走し、外壁の近くにまで逃走する。正直、住民たちに被害を及ばさずに逃走するとなると逃げる場所は限られてくる。加えて、自分に迫るワイバーンの数は三体。一体だけでもしんどいのに、それが三つ同時ともなると、想像以上に体力が削られていくことに苦い笑みを浮かべるしかない。

 

(研砥! 今こっちは片付いた! 全速力で向かうからあと数十秒がんばって!)

(死にたくないから頑張るけど結構しんどい! 早く来て! マジで死にそうワイバーン怖い!!)

『黒鋼さん! そのまま外壁付近を走り回って……っ!? いけません! いますぐ受け身を取れるようにしてください! ワイバーンが――――』

 

 こちらに彼女が来てくれる。そのことに安堵した直後、突然発生した突風が黒鋼の体を吹き飛ばす。疑問に思う暇もなく彼の体は投げられた野球ボールの如く勢いよく飛ばされ、近くにあった柵に激突し、そのまま町の外へと放り出された。何が起こったのかさっぱり分からなかったが、感じた限り思いっきり風に当てられた気がした。ふと、黒鋼の頭の中にはゲームでよくワイバーンがしていた突風攻撃を思い返したが、こんなにも強烈な風を叩きつけられるとは想定してなかった。体の節々が悲鳴を上げていたが、今すぐに逃げろと頭の中では警鐘を鳴らしていた。そして、数秒後にそれは現実のものとなる。

 

「グォォォォォォォ!!」

「クソったれ、容赦無し、かよ………!」

 

 足が止まった黒鋼(エサ)を見逃すはずがなく、我先にと三体のワイバーンが彼へと迫る。咄嗟に令呪を使うことを思いついたが、その前にあの恐ろしい顎に噛み千切られてしまう未来が幻視した。頼れるものは自分と、共に用意した道具のみ。ならば、エミヤ(師匠)の教え通り、生きることを考えて行動するしかない――――!

 

「こんな、ところで……死んで、たまるか――――!!」

 

 先ほどよりも更に魔術回路から生まれる魔力の量を増やす。強引に増やしたことで激痛が体に染み渡るが、絶望的な状況下にいても死にたくないと強く願うことがアドレナリンを分泌させているのか。そこまでの痛みを感じなかったのは幸いした。さっきまでよりもより魔力を行き渡らせることで、瞬間的にだがより強靭な肉体を得た黒鋼は、四つん這い(・・・・・)の状態でワイバーンたちの総攻撃からギリギリ回避する。

 

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 四つん這いからクラウチングスタートの体制に入り、脚力に物を言わせて強引に疾走する。体に負担をかけてばかりだが、こうでもしないと逃げきれない現状に嫌気がさしてくる。距離的には数秒のマージンは作っておいたが、それもいつまで持つのか。早くも絶体絶命な状況に舌打ちをしていると、インカムから新たな声が聞こえた。

 

『黒鋼さん! 前方から高速で接近する未確認の反応を感知しました! 内在する魔力量からして、恐らくサーヴァント! しかもそれが二つです!』

「二つぅ!? ちょ、こんな時にサーヴァントが二人も襲ってくるのか!? ブーディカさんはどうなってる!」

(今そっちに向かってる! もう姿も見えた、私が抱えるから準備して!)

 

 念話越しに伝わるブーディカの焦っている声に黒鋼は応じ、こちらに飛んでくる戦車の姿を確認する。両手で握るべき手綱の片方を外し、こちらに向けて手を伸ばす彼女の姿を見て黒鋼は安堵の溜め息を漏らす。その後、彼女の筋力値と自分の脚力を全力に用いて戦車の中に飛び乗り、そのまま再び飛行する。依然としてワイバーンはこちらに迫ってきているものの、宝具であるこの戦車に追いつくほどの者ではない。逃げようと思えばこのまま逃げれるが、町を見捨てるつもりはない彼らは反転してワイバーンへと突っ込む体制を取る。こちらに迫る謎のサーヴァント二組の存在も考慮するならあまり時間をかけてはいられない。宝具を使ってでも速攻で倒す必要があると判断し、その指示を下す。

 

「行くよ研砥! しっかり掴まっててね!」

「了解です! 宝具も使っても構わないから存分にやっちゃって――――」

 

 

 

 

 

「―――いや、その必要は無い。敵対するものが竜ならば、それは俺の領分だ。手出しは無用――――!!」

 

 

 

 

 

 

 ブーディカがワイバーンの群れに突撃しようとした瞬間、低く優しい男の声が周囲に響き渡る。誰のものだと辺りを見渡しているうちに、三体いたワイバーンの一体の首が綺麗に斬り落とされていた。まさかの出来事に驚きを隠せない黒鋼とブーディカだが、その二人を置き去りにして目にもとまらぬ速さで二体目のワイバーンも一瞬で斬殺される。この時、流石に分が悪いと判断したのか。最後に残ったワイバーンが翼を進路を反転、この場から離脱しようと試みる。だが、その無様な姿を見逃さず白い何かに乗った何かがワイバーンへと突撃してその命を奪い去る。

 

「えぇ………………?」

「うそぉ………………?」

 

 これから戦うぞと気合を入れ直していた二人としては、目の前で獲物を取られて不完全燃焼と言わざるを得ない。いや、町の住人に被害が出ていないのであればそれにこしたことはないのだが、それとは別に何かやるせない気持ちが溢れてくる。どうしたものかと悩んでいると、白い何か―――巨大な鳥のような生き物―――に乗った少女がこちらに近づいてきていた。

 

「やぁやぁ! さっきは大丈夫だった? ちょっとギリギリかなって思ってたんだけど間に合って良かったよ! あ、勝手にやって来ていきなりワイバーンを倒しちゃってごめんね!」

「え、あ、いや。別に問題は無いんだが………えと、貴方はサーヴァント、でいいん……だよな?」

「勿論! 我こそはこのフランスになんか知らない内に呼ばれてたサーヴァントの一人! あ、さっきワイバーンを二体倒したのも僕と同じなんだよね。え~と、そっちの赤い髪の君はサーヴァントで、君はそのマスターってことでいいのかな?」

 

 マシンガントークと言うべき言葉の弾幕を張られながらも、とりあえず今の自分でも答えられることに黒鋼は一つずつ答えていく。それを聞いて満足した少女は満面の笑みを浮かべながら喜びを表現する。

 

「やっほい! やっと事情通な人と出会えたぞ! やっぱり僕はラッキーボーイ! だって幸運値A+だからね!」

「うん? 女の子……だよね? その恰好というか、声というか。え、もしかして男の子なの!?」

「あ~……そっか、まだ自己紹介もまだだった! ちょっと待ってね、今口上思い出すから……」

「口上って、思い出す物なのか」

 

 星の数ほどいるサーヴァントといえど、ここまで変なサーヴァントはそうはいないだろう。というか、そもそも言動とか容姿が完全に僕っ娘のそれなのにもかかわらず男と主張するのは些か無理があると思う二人ではあったが、何かを閃いたように手を叩いた彼(?)は口上を述べる。

 

「やぁやぁ我こそは! シャルルマーニュ十二勇士が一人、英雄アストルフォ! 満月が出る夜以外は理性蒸発中のライダーのサーヴァントさ☆ これからよろしくね!」

 

 決まった、と言わんばかりに可愛らしくピースとウィンクを決めるアストルフォと名乗ったサーヴァント。それに対し黒鋼は、そこらの女の子より可愛らしいのに実は男だったなんて事件が実際に起こるのか、と半ば思考を放棄するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ライダー、遅いな。俺はいつまで待てばいいのだろうか………」

 

 

 

 

 

 若干忘れ去られている大剣を背に背負った男の声が聞こえた気がしたが、まあ。それはまた別の話だ。

 

 

 

 




アストルフォ「というわけで、フランス篇初の戦闘&サーヴァントとの遭遇だよ! 改めまして、ここでも自己紹介! 『Fate/Apocrypha』で黒の陣営にライダーのクラスで参戦したアストルフォだよ! え~え~。本当は作者がコメントをかくところではありましたが~。若干腱鞘炎みたいな症状が出たせいで、僕が代行することになっちゃいました~。皆様のご理解、ご協力をお願いいたします~~。
それから、これは作者からの書置きなんだけど『今回から二次創作ということもあり、多かれ少なかれ本編には登場しなかったサーヴァントを多数導入する試みをしています。反対意見が多ければ最悪書き直しも覚悟しておりますので、容赦ないコメントをお願いします』だってさ! 別に問題なんてないよね? だって僕が出たら頼りなるもん! 弱いけど!(ドヤァ)
さてと、今回はここまで! 誤字脱字等の指摘、感想はいつでも待ってるよ~~!
それじゃ、また次回で会おうね!」





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