魔法科高校の電脳少女   作:零崎妖識

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「じゃあ、ちょっと喋ろうか。僕の非凡でいて妙なとこ」


お久しぶりです。


風紀委員会業務会議

生徒会室で、達也は先日聞いた説明をもう一度聞いていた。ただし、今度はエネからではなく摩利と真由美から。

 

「ふむ、あまり驚かないのだな。もしかして、エネから聞いていたのかい?」

「はい。映像も見させていただきました。放課後に巡回ですか?」

「ああ。授業が終わり次第、本部に来てくれ」

 

期待している、と摩利に言われ、達也はため息をついた。が、もう訂正は諦めていた。深雪やエネが期待した目で達也を見つめているからだ。

 

『頑張ってくださいね、ご主人!』

「……無理しない程度にする」

 

達也の受難の日々は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

午後の授業が終わり、エリカとクラブを一緒に見て回ると約束した後、達也はエネを連れて風紀委員会本部へ向かった。

 

「何故お前がここにいる!」

 

そして、会いたくもない相手と再会する。

 

「それがわからない時点で、お前の頭は至極残念なのだろうな」

 

森崎のセリフに、無意識に挑発でセリフを返す達也。エネは胸ポケットから、赤くなっている森崎の顔を録画している。

 

「やかましいぞ、新入り。この集まりは風紀委員会の業務会議だ。ならばこの場にいるのは風紀委員だけだとわかるだろう。今回はお前たちの紹介も兼ねているから、さっさと座れ」

「申し訳ありません!」

 

森崎はまだ、摩利に対する緊張と恐怖が消え去っていないようで、先ほどとは一転して顔色は青くなっていた。

 

「さて、全員揃ったな。

そのまま聞いてくれ。

今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやって来た。

風紀委員会にとっては新年度最初の山場となる。

この中には去年、調子に乗って大騒ぎした者も、それを鎮めようとして更に騒ぎを大きくしてくれた者もいるが──ちゃんと聞け、鋼太郎。お前が去年、騒ぎを大きくしたんだろうが──今年こそは、処分者を出さずとも済むように、気を引き締めて当たってもらいたい。

いいか、くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすような真似はするなよ。ただでさえ、血の気の多い奴らが集まってるんだ」

 

風紀委員会が起こした騒ぎが毎年、一件は必ずあるそうだ。トラブル巻き込まれ体質の自覚がある達也は、同じ轍は踏むまい、と自らを戒め、エネがいる限り無駄かもしれないと諦めた。

 

「今年は幸い、卒業生分の補充が間に合った。

紹介しよう。立て」

 

達也と森崎が立ち上がる。両者の表情には随分と温度差があった。

森崎は緊張を隠そうともせず、逆にそれを熱意の表れとした感を出して直立不動。

逆に、達也は落ち着いた面持ちで、肩の力を抜きすぎているような風情。

上下関係に厳しい者には森崎の方が好ましいだろうし、実力主義の者には達也の方が頼もしく見えるだろう。

 

「一-Aの森崎駿と一-Eの司波達也だ。

今日から早速、パトロールに加わってもらう。新入りであっても例外なく、各自単独での巡回だ」

 

達也のクラス名を聞いて、周りからざわめきが起こる。本当に役に立つのか、と。

摩利がほんの少しだけ、ニヤリと笑う。それは、彼女が笑ったことに気がついた、一人の少女への合図だった。つまり、『お前の存在を知らしめてやれ』との合図。

 

『そこの森崎駿とやらよりも、ご主人の方がよっぽど強いですよー!ほら、委員長さんと会長さんが証明してくれますよ!どうせなら、私がその証拠をお見せしましょうか!?』

 

委員会室に、先ほどとは違うざわめきが起こる。視線は達也の胸ポケット、そこから覗いているケータイに集まっていた。

 

「では、もう一人の新入りを紹介しよう。司波のケータイの中にいる高性能AI、エネだ」

『どうもー!スーパー電脳プリティガールエネちゃんでーすっ!ご主人こと司波達也と共にお世話になりますからよろしくお願いしますねっ!』

 

その時の、事前に彼女のことを知らなかった風紀委員たちの心の中は一つになった。『凄くテンションの高いこれは一体何なんだ』と。

そしてもう一つ。これは、一部の男子──つまり、部屋の中にいるほとんどの人間──が思ったことだが、ケータイの画面の中でキャピキャピしている青い少女にではなく、そのケータイを持つ少年に対しての思いだ。『何でこんな冴えない男が、美少女にご主人と呼ばれているのか』と言う、モテない男たちの、心からの叫びだった。


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