魔法科高校の電脳少女   作:零崎妖識

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そんな世界が終わった後の、目の覚めるような話をしよう


アブノーマルエンカウント

携帯端末ーーいわゆるスマートフォンに、イヤホンを接続し、片耳につける。こうすることで、『声』が外に漏れることはない。

別の端末を取り出し、少年は書籍サイトへとアクセスした。彼の耳元では、相変わらずエネが喋りまくっている。

『いやー暇ですねご主人。あれ?私をほっといて読書ですか?つれないですねーちょっとはお喋りに付き合ってくれてもいいんじゃないですか?』

だが、少ししてエネが黙る。近くを通った生徒が、二科生のことを侮辱するような発言をしたのだ。

『……ご主人、後でこの学校のネットワークに接続させてください。あいつらを特定してクラッキングして晒します』

「お前なら痕跡を残さずにできるだろうが、やるなよ、エネ」

『分かってますよ。ただ、ご主人が侮辱されるのが嫌なだけですから』

その言葉を聞いた少年は、微笑んで書籍データへ意識を向けた。

 

 

『ご主人!開場の時間ですよ!ほら、さっさと行きましょう!』

少年が端末から顔を上げる。そのまま立ち上がろうとした時、頭上から声が聞こえた。

「新入生ですね?開場の時間ですよ」

そこにいたのは、平均と比べれば小さめの少女。腕には幅広のブレスレットーーCAD(術式補助演算機)。学校では事務室に預ける義務があり、常時携行が許されているのは生徒会か部活連合幹部、風紀委員会などの一部の委員会のみ。

「ありがとうございます。すぐに行きます」

彼は卑屈さは持ち合わせていない。しかし、劣等感が無いわけではないので、優等生と積極的に関わり合いになりたいとは思っていない。

『それフラグですかフラグですよね!?』

少女にはバレなかったようだが、少年の顔がほんの少し引き攣った。

「感心ですね、スクリーン型ですか」

フラグだったようだ。好奇心いっぱいの、無邪気で純粋な目が、少年を見つめていた。

「当校では、仮想型端末の持込を認めていません。ですが残念なことに、仮想型を使用する生徒が大勢います。

でもあなたは、入学前からスクリーン型を使っているんですね」

「仮想型は読書に不向きですので」

それに、仮想型だとエネが鬱陶しい、と心の中で付け足しておく。エネは役に立つし、信頼もしている相手だが、いつもうるさく、悪戯好き。話し相手として、これ以上なく優秀で、これ以上なく面倒なのだ。

「動画ではなく読書ですか。ますます珍しいです。私も映像資料より書籍資料が好きな方だから、何だか嬉しいわね」

段々と上級生の少女の口調と言葉遣いが砕けたものになってきている。人懐っこい性格らしい。

『リスみたいですねー。いや、あざとさからトイプードルとかポメラニアンですかね?』

「そう言えば、なんで片耳だけイヤホンをしているのですか?音楽を聴くなら両耳の方が良いと思うけど?」

「両耳にイヤホンをしてたら、時間を逃すかもしれなかったので」

「そうですか。あっ、申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさ、と読みます。

よろしくね」

『おや、会長さんでしたか。それに数字付き(ナンバーズ)、しかも七草とは。ご主人って悪運がありますよね。実家と同じくらい力を持つ家と初日に出会うとは』

日本において、優れた能力を持つ家は、苗字に数字が入っている。七草家は、その中でも上位二十八家に入る家であり、最有力とされている二家の一つ。もう一つが少年の実家なのだが、それについては、またいつか。

「俺、いえ、自分は、司波達也です」

「司波達也くん……そう、あなたが、あの司波くんね……」

この人もか、と、達也は頭を抱えたくなった。なんで自分の成績を知ってるやつが多いんだ。

少し話して、達也はその場を離れた。時間がなくなってしまう。真由美から逃げるように、達也は講堂へと向かった。




この小説を投稿した後で、SAO世界にエネを入れる話も思いついてしまった。さすがに書かないけど。

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