魔法科高校の電脳少女   作:零崎妖識

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だけど信じる、君だから


調整

CADは杖や魔法書、呪符と比べて全体的に優れた点が多い。しかし、基本的に均一化されているために使用者に合わないこともある。そして、こまめなメンテナンスも必要となる。

調整にはそれなりに高価な機材が必要であり、専門店やサービスショップで点検を受けるのが一般的だ。

だが、達也の自宅には、ある事情から最新鋭の調整装置(エネによりチューニング済み)が備わっていた。

 

 

夕食後、作業室では達也が自分のCADを調整し、エネがとある術式のデバッグをしていたが、深雪がCADの調整を頼んできた。

「設定が合ってないのか?」

『システムを少し変えてみますね。効率と質が均一状態のを質を重視する傾向に』

「滅相もございません!お兄様とエネの調整は、いつも完璧です」

深雪のCADのフルメンテナンスは三日前に行ったばかりで、急な理由があるとしか思えない。そう、達也とエネは考えていた。

「実は、起動式の入れ替えをお願いしたいと思いまして……」

「なんだ、そういうことか」

『わっかりました!どの系統の追加ですか!?』

汎用型CADに登録できる起動式は一度に九十九本。最新鋭機を更にチューンアップし、それをエネが最適化させた怪物CADでもそれは変わらない。

深雪は定数項目を減らし融通性を高めた起動式を登録している。深雪には、九十九という制限数は少なすぎる。

エネは、CADの起動式は使わずに、記憶している起動式を使うために、どのCADの中にいようとも記憶している全ての魔法が使える。深雪は、そんなエネを羨ましく感じていた。

「拘束系の術式を……対人戦闘のバリエーションを増やしたいのです」

『なるほど、部分減速では発動に時間がかかりすぎるから、相手を最速で無力化できる術式が欲しいということですか。では、こちらの術式などどうでしょうか!もしくは同系統の術式を整理するなどですね。こんな風に』

エネの言葉と同時に、幾つかの項目が画面に現れる。達也はその中の一つを指差し、

「よし、こんな風に整理しよう。本当は、もう一つCADを持つ方がいいんだけど」

と言った。

 

 

深雪がガウンを脱ぎ、達也は測定を済ませようとする。達也の目には、深雪の姿は測定対象としか映らず、深雪が、ひいてはエネが求める感情を達也は持たなかった。

 

 

達也が深雪に話しかけ、計測が終わる。深雪から目をそらし、エネがまとめた測定結果を達也は見ていた。

「お兄様、ずるいです……」

「深雪っ?」

達也にしなだれかかった深雪は、達也に言う。なぜ、貴方はそんなにも平静でいられるのかと。

とっさに、エネに助けを求めようとする達也。しかしエネは、苦笑いで『自業自得です』と言っていた。

ああ、エネはこういう奴だった、と達也が後悔するも遅い。

「おしおきです!」

いつのまにか深雪が握っていたCADから震動波が放たれる。達也はなす術もなく、それを受けることとなり、痙攣を起こしながら椅子から転がり落ちた。

 

 

【自己修復術式、オートスタート】

【コア・エイドス・データ、バックアップよりリロード】

【魔法式ロード-完了。自己修復-完了】

一瞬もせずに、彼の意識は戻る。それは、エネでも解読できない彼本来の魔法。彼を覗き込む二つの顔を前に、達也は笑っていた。




エネがデバッグしていた術式→三話で出てきた『ProblemⅡ』
数ヶ月後、この術式は完成し、社会が大きく揺らぐことになる。

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