ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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テストが終わり、色々な楽しみと年末が間近に迫り、めっちゃ急いで執筆してる146です。

今回は前書き少な目で。あと今回は2万字超えたので覚悟のほどを。
もうこれ山門がラスボスでいいんじゃないかな……

今回も「ここすき」お願いします!好きな文をクリックorスライド!


第58話 Hの審判/されど天使は地獄で嗤う

一年前。彼がまだ東京に居ない頃。

竜騎士が誕生したのは、静岡の沼津だった。

 

 

「これが…俺の力…!」

 

 

突如として辺境の田舎に出現した半鳥半獣のドーパント。立ち向かった少年、瞬樹の前に現れた「X」と名乗る人物は、彼に槍型の変身ドライバーを与えた。

 

ドライバーを受け取り、メモリに選ばれた瞬樹は仮面ライダーに変身。見事にドーパントを撃破してみせたのだった。

 

 

「お前を選んだのは『D』のメモリ…信仰を司る意思か。まさか竜の記憶を宿すなんてな」

 

 

そう語る「X」は素顔を一切見せないような目隠しとマスクをしており、服も大きめのものを着ていて、総じて不気味な出で立ちをしている。性別は男のように見えるが、体のラインが見えにくく断定はできない。

 

 

「名付けるなら…ドラゴン。仮面ライダードラゴン…というのはどうだ?」

 

「いや、俺は……エデンだ。エデンがいい」

 

「エデン?うん、センスが分からないな」

 

「エデンは楽園。天使が住む楽園だ!俺はその名前を掲げ、楽園と天使を守護する騎士になった…いや、竜騎士だ!俺は竜騎士シュバルツ、仮面ライダーエデン!」

 

「旧約聖書のエデンの園には天使は住んでいないと思うが…」

 

 

その日から彼は竜騎士になった。

 

 

 

「…夢……?」

 

 

地獄に変貌した路地裏で浅い眠りから目覚めたのは、現在の彼。

その手に握られるのは無色のメモリと、ただ重いだけの槍。

 

あの日からずっと勘違いしていた。いや、ずっと前からそうだったに違いない。

 

全部が砕けた衝撃でようやく目覚めた。

とても長く、残酷で、滑稽な―――悪夢だった。

 

 

______

 

 

 

「天気はどうだ、にこ」

 

「昨日と同じで地獄の一丁目日和ね。

針とか降るかもだから、洗濯物は干さない方がいいわよ」

 

「冗談言える程度に元気かと思ったけど、馬鹿頭にしちゃ凝った皮肉だな。やっぱりどっかおかしいか」

 

「うるさいわね!この私の大人な返答のどこバカなのよ!」

 

「よし元気だな」

 

 

9月7日 本当なら音ノ木坂の文化祭が終わった頃だ。しかし、世界がこんな状況ではそれも不可能というもの。

 

宗教団体「ノアの天秤」の山門ことエンジェル・ドーパントの策略により、世界が地獄に作り替えられた。

 

 

「ここもいつまで安全か…分かんねぇな」

 

 

アラシは岩肌のような壁に触れ、気色の悪い内装をグルリと見渡す。無間地獄の影響は建物にも及び、気付けば匠も驚きのビフォーアフター。こんな場所、安全と言う方が無理がある。

 

山門が初めてテレビに映ってから丁度48時間ほど経った。そして、報道によると無間地獄は日本列島を覆いつくし、中国にまで届こうとしているという。

 

その後の山門の足取りは掴めず、アラシ達は完全に手詰まり。早い話「詰み」。状況は最悪だった。

 

 

「永斗、今の状況どうなってる」

 

「見に行った方が早いと思うよ、なんなら僕がガイドしようか。

えーただいま渋谷、右手に見えますのはスクランブル交差点に現れた等活地獄。面白半分で見に来たアンポンタンや自殺志願者が武器を取り、互いを殺し合っております。ですがご安心、死んでもすぐに生き返るため彼らは永遠に苦しみ続けるだけで済むのでございます」

 

「悪趣味な解説はやめてください!」

 

「僕なりの工夫だよ、これなら怖がり海未ちゃんも平気かなーと…うんゴメン、冗談だからビンタは勘弁して」

 

 

もう外を出歩くだけでも危険な状況であるため、アラシたちは探偵事務所に籠城状態。ただし、それも瞬樹を除いての話。

 

瞬樹は山門に洗脳され、敵についた。しかしダブルとの戦闘で変身能力を失ってしまっている。仮にも裏切ったとはいえ、心配になるのは自然だろう。

 

 

「やっぱり行こう!瞬樹くんを探しに行かないと!」

 

 

そう声を上げたのは花陽だった。

花陽は一昨日からこんな様子だ。そこに希が疑問を投じる。

 

 

「えらいアグレッシブやね、花陽ちゃん。なんかあった?」

 

「え…いや、なんでもないよ!?ただ…瞬樹くんは大事な友達だから。私も大事な人の助けになりたい…今はそれだけ考えてる……かな?」

 

「かよちゃんの意外な一面だね。初対面はもじもじ眼鏡っ娘って感じだったのに。あの時は確か海未ちゃんが鏡見て『みんなありがと~』…って……あー何でもないですスイマセン」

 

 

海未に睨まれ、永斗が閉口する。今日はなんだか永斗の口数が多い。『完全に詰みな状況』だからこそ、せめて空気を軽くしようとしているのだろうか。ことごとく裏目に出ている気がするが。

 

 

「…そうだな、瞬樹を放置したままってワケにはいかねぇ。洗脳されてるってなら、殴ればなんか情報出すかもだしな」

 

「乱暴…しないであげてね…?」

 

「冗談だよ花陽。そんじゃ、俺が探しに行ってくる。お前ら永斗と留守番を…」

 

 

アラシが外に出ようとしたとき、座り込んだ彼女たちの中で誰かが手を挙げた。弱々しく、それでも高く挙げられた腕は、凛のものだった。

 

 

「凛も…外に出たい。さっちーを探して、話をしたい…!」

 

 

凛の言葉を受け、アラシは永斗に目を合わせる。永斗も少し曇った表情をアラシに返した。

 

凛はヘル・ドーパントの変身者である灰垣珊瑚を説得したいと言っている。だが、無間地獄には無数にヘルが存在し、どれが本体かは分からない。

 

 

「凛…灰垣は……」

 

「わかってる…わかってるよ。さっちーはあの時死んじゃって、心もどこにあるか分からないって。でもね…かよちんと同じなの。さっちーは凛の大事な友達だから…苦しんでるさっちーを助けてあげたい。ちゃんと…仲直りしたい…」

 

 

合理的に視れば、危険性しかない行動だ。

しかし、凛の思いを無下にはできない。それに、この詰んだ状況を打開するためには諦めないだけじゃ不十分。奇跡にすがる形でも、「何か」をしなければいけない。

 

 

「分かった。永斗、凛について行ってやれ。留守番組には今からメモリを渡す。あと何かあったらすぐ連絡しろ」

 

 

天使討伐のための一歩目。

竜騎士の奪還と、地獄の鍵探しが始まった。

 

ただ一筋の希望を求めて。

 

 

________

 

 

 

地獄を創ったのは人間の願望と想像力。

この地獄もそれは同じで、仕組んだのも管理するのも、踊らされるのも人間だ。

 

 

「よくぞお集まりくださいました。万命平等の心を受け取った、我らが新たな同士たちよ」

 

 

仮面を着けた女性が、大衆の前で頭を下げた。

彼女は佐向里梨。ノアの天秤の教主、山門の側近。目の前にいる彼らは、先日の「奇跡」で山門に感化された、新たな信者たちだ。

 

佐向は山門から受け取った仮面に触れる。

彼曰く「君は表情が険しい。信者たちを怖がらせてはいけない」だそうだ。形はどうあれ、敬愛する山門が自分を思って与えてくれた品。この期待に応えなければいけない。

 

 

「あの女…宮間景がいない今、山門様の寵愛を受けるのは私だ」

 

 

宮間景。口を開けば生態系、自然科学と煩い羽虫のような女。先走った挙句サプリを使ったのに警察に捕まった間抜けの能無し。その癖に山門に気に入られている、目障りな女。

 

信者たちに聞こえないように怒りを呟くと、佐向は大きなアタッシュケースを開けて見せた。

 

 

_______

 

 

 

凛の護衛で同行した永斗。妙に熱い足場の丘を登り地獄を一望して、この一言を吐いた。

 

 

「うわー、生で見るとこりゃ酷い」

 

 

ガジェットで映像は見ていたが、実際に歩くと変貌具合もよく分かる。建物も道路も地獄風にフォルムチェンジされ、地形まで変わっている。しっかり道を覚えないと迷子になってしまいそうだ。

 

 

「凛ちゃんはあんま見ない方がいいよ。こっからでも二・三個地獄が見えて人が襲われまくってるから」

 

「…大丈夫だよ。でも、死んじゃったりはしないんだよね?さっきすぐに元に戻るって言ってたし…?」

 

「…うーん。不死身ルーキーの意見だけど、そうでもなさそうかな。多分普通の人の心は死に耐えられない。だから何十回何百回も死んでれば、慣れるより先に心が消える」

 

 

検索によると、ヘルの無間地獄は仮想空間の類。今こうして見えている空間も、元の地形を基にはしているが全くの別物。そうやって「生き返り」が再現されている。つまり、意識が世界を構築していると言っていい。

 

そんな空間で意識が完全に死ねば、肉体は形を保てず崩壊し、再生は不可能になるだろう。

 

 

(もう死者が出ててもおかしくない…犠牲は免れないか)

 

 

口には出さない。永斗は焦りと怒りを飲み込み、丘から見えるあるポイントを指さした。

 

 

「あそこにヘルがいる。ヘルメモリの仕組みがイマイチ分かってないけど、多分本体はそう遠くには行ってない…と思う。行ってみよう」

 

「…うん…!」

 

 

 

 

のろのろと彷徨うヘル。分身か本体かも分からず、本体だとしても灰垣珊瑚の意識があるかも分からない。ヘルの無間地獄はイレギュラーであり、地球の本棚からも情報が読み取りづらいのだ。

 

それでも凛は言葉を紡ぐ。珊瑚に聞こえていると信じて。

 

 

「さっちー!」

 

 

ヘルの脚は止まらない。首をこちらにも向けない。

構わない。凛は続ける。

 

 

「さっちー…ごめんね。あのとき、嘘ついて」

 

 

珊瑚が言っていた、凛の『嘘』。先日の地下闘技場の件を内緒にしていたことだ。

 

 

「心配させたくなかったんだ…でも、さっちーがもうメモリを持ってて、あんなに悩んでたなんて…気付けなかった。友達、失格だよね…?ごめんね……」

 

 

永斗は凛の言葉が今回ばかりは分からない。

永斗は珊瑚が大嫌いだ。凛に非など全くない、あっちが勝手に暴走しただけ。凛は彼女を突き放す権利がある。それでも、あの珊瑚を「悩んでた」で済ませて謝罪までする凛が理解できない。

 

「優しすぎる」。何度目かのその感想を、無粋だと永斗は飲み込んだ。

 

 

「でもね、凛はさっちーのことずっと友達だと思ってるよ!順番なんかつけられない…永斗くんも真姫ちゃんもかよちんもさっちーも…瞬樹くんも。みんなで仲良しになれたらいいな…って、思っちゃだめかな…?」

 

 

反応を示さないヘルに向けた、凛の言葉。それは永斗の心にも刺さった。

しかし、心とは別に背後に刺さる、鉄の視線。

 

 

「凛ちゃん伏せて!」

 

 

無気力に動くヘルを、鮮烈な発砲音と痛覚を覚えるような着弾音が貫く。

地獄の一角で化け物に殺意と銃口を向けていた男たち。立ち振る舞いから、彼らが一般人であることは理解できた。

 

 

「早いな…!もう武器が民衆に流れて…って凛ちゃん!?」

 

 

永斗が止める間も無く、凛は躊躇いなくヘルの前に立ちふさがった。

 

 

「なんだお前、邪魔するな!あと何発か撃ち込めば、そのバケモン殺せるんだ!」

 

「やめて!さっちーを…撃たないで!」

 

「何言ってんだ…?そうかお前ら異教徒だな。救済の邪魔をするなら、ここで死ね!」

 

 

そんなやり取りを放置するはずもなく、永斗はファングメモリで男たちの拳銃を発砲前に弾き飛ばす。所詮は一般人、ファングだけで事足りる程度で助かった。

 

 

「さすが僕の半身」

 

「永斗くんより強いにゃ」

 

「うーん正論。さてと、どうせこいつら山門の信者で口割らないだろうし、適当に安全な場所探して気絶させとけば…」

 

 

起き上がった男たちは拳銃を拾いに行くわけでも無く、懐をまさぐり出した。

永斗の冷や汗が頬を伝う。まさかとは思っていたが、彼らが持っているのは―――ガイアメモリ。

 

 

「やけに発砲に躊躇無いとは思ったけど…なるほど、頭イってたかー」

 

「万命平等の理想の元に、異教徒の汚れた命にも死の救済を!」

 

 

どこからメモリが流れたのか知らないが、メモリは分かるだけでもドッグ、アイスエイジ、ダーツ、ヌエ…割と高ランクなメモリも散見される。この大群をファングメモリだけで対処とはいかず、跳ね飛ばされた後に永斗の手元にとんぼ返りしてきた。

 

 

「あーもう僕の半身役立たず!」

 

 

こうなったら変身しかない。今すぐアラシに連絡を取り、ドライバーを…

そう思った矢先、連絡よりも先にドライバーが出現し、永斗はこの危機的状況を悟った。

 

 

(おい永斗!説明は後、早く変身だ!)

 

「…アラシ。今の状況当てよう、一般人がドーパントになって襲ってきてるでしょ。しかも大量」

 

(永斗まさかお前らも…)

 

「そのまさかです…!」

 

 

終わった。

とりあえず永斗は、凛を連れて一目散に逃げだした。

 

すぐ後ろでドーパントたちの攻撃がドンパチしている。これは非常にマズい。

 

 

「アラシ何したの!?いややっぱいい、どうせ地獄のバケモノ倒してたら信者に噛みつかれたんでしょ!?」

 

(その通りだよ相棒!人助けのつもりが最悪だクソ!お前死なないだろ変身権寄越せ!)

 

「凛ちゃんいるんだから無理!アラシならパパっと逃げれるでしょ!それかジョーカーメモリでぶん殴れば万事解決!ほら早くして!」

 

(こんだけ数いて無理に決まってんだろ!バイクは反対方向だし振り切る前に被弾してお陀仏だ!)

 

「んんんん…土下座で許してくれ…ないね。もう殺す気だよ宗教怖い!」

 

「ごめん永斗くん…凛がこんなワガママ言ったせいで…」

 

「ほらー凛ちゃんが変に気を使って落ち込んじゃったよ!どうしてくれんのアラシ!」

 

(知るかボケ!とにかく今は事務所に全速力で走れ!!)

 

 

アラシと永斗が落ち合えば解決だが、そうも行かなそうなのが現実。

永斗は死なないが息もスタミナも切れる。酸欠になって頭も回らない永斗は、凛のお荷物でしかない。

 

こんな状況で神に祈りたいが、神と聞くとあの山門の顔面がチラつく。それでも永斗は祈った。これからクリスマスにはお誕生日をちゃんと祝うので、今だけ助けてくださいと。

 

 

結果として、その願いは叶った。

 

 

「世界は変わっても君らは変わんないっスね。ヤンチャやってて安心っス」

 

 

白衣を纏った影が、進撃するドーパントたちに突入。

そこを通り抜けて現れたのは白色の、神経線維のドーパント。

 

 

「なんだ貴様…ッ…!?体が…動かない…!?」

 

「はいはーい、診察するんで動かないでくださーい。悪いのは体?内臓?それとも残念な頭っスか?じっくり診察したげるんで…動くと痛いっスよ?」

 

 

凛が声を上げる。忘れる訳も無い、凛にとってはトラウマだったこのドーパント態は…

 

 

「ハイド…岸戸先生にゃ!」

 

「ははっ…僕、今年のクリスマスはプレゼントいらないや……」

 

 

______

 

 

永斗達を助けたハイド。メモリが一般人に流れたことにいち早く気付き、憤怒が動いたのだ。そして、それはアラシの場合も例外では無かった。

 

 

「お前らは……!」

 

 

生身のアラシを追っていたドーパントを、一瞬で蹴散らしたのは二人組。

かつてダブルと戦いを繰り広げた、憤怒の最強コンビ。

 

 

「失望させないでもらおう。諦めないと啖呵を切ったのは何処の子供だったか?」

 

「ねーねー仮面ライダーの黒い方!アタシのこと覚えてる?」

 

「別に会いたくもなかったが忘れるわけねぇだろ…

ラピッド、ルーズレス…!」

 

 

コードネーム「ラピッド」、ヴァイパー・ドーパント。

コードネーム「ルーズレス」、ティラコスミルス・ドーパント。

 

戦線を離脱していたはずの二人が戻ってきた。組織の戦力増強は冷や汗ものだが、今この瞬間に限ってはアラシにとって吉報だ。

 

 

「まだいるな…5、いや7体か。獅子丸土成との戦いでリハビリには十分かと思っていたが、やはり少し感覚が鈍っているようだ」

 

「えっ、シシマルとやったの!?いーなー、アタシも呼んでよ!」

 

「女子供をあんな場所に誘うか。それより無駄口は終わりだ、任務の確認に入る。変化した世界の調査、事態の鎮静化、持ち出されたメモリの回収。この任務は憤怒の地位を上げる好機だ、抜かりなく行くぞ」

 

「わっかんないけど、つまり全員ぶっ倒せばいいんだよね!」

 

「…分かった、それでいい」

 

 

立ち上がるドーパントたち、更に増援もやって来る。

囲まれた二体の獣は、冷酷な闘気と共に牙を剥いた。

 

 

 

_______

 

 

 

アラシ達が出かけた直後のこと。

残された8人とて、何もしないのは体が疼く。とにかく考えている最中だった。

 

 

「アラシって…奇跡とか信じないタイプよね?」

 

 

絵里がそんなことを口に出した。

皆は少し考えて同調の頷きを見せる。彼は脳筋ではあるが、考え無しの男ではない。

 

 

「それ言ったら永斗君もそうやない?なんかー…適当な振りして頭でっかちというか…二人ともリアリストっていうんかな?」

 

「そうなのよ希。だから見落としてる、というか…計算に入れてない部分があると思うの。例えば私たちのオリジンメモリの事とか」

 

「それだよ!私たちが新しいメモリを出せばいいんだよ!」

 

 

穂乃果が立ち上がってついでに腕も挙げた。

彼女は適合者だが、まだメモリを発現させていない。同様なのは他にも凛、花陽、真姫、希がそう。

 

オリジンメモリが発現したことで切り抜けたピンチは多い。今回もそれを起こせばいいのだ。

 

 

「よーし!そうと決まればメモリを出そう!

海未ちゃん、ことりちゃん!二人はどうやってメモリを出したの!?」

 

「そ…そんな急に言われても…あの時はアラシの言葉を聞いて、こう…胸の奥が熱くなったというか…アラシの心と繋がった…?と言うべきでしょうか。不思議な感覚でした…」

 

「私も…同じかな。守りたい、って強く思ったら…頭がふわーっって…ぎゅいーん…?わかんないけど何かが外からも中からも来てる…ってのは感じた…かな?」

 

 

穂乃果の目線がにこと絵里にも向く。

絵里は激しく首を横に振っているが、無理もない。彼女は知らぬうちにメモリを持っていたのだ。

 

一方でにこは…

 

 

「にこにー最強!無敵!って思ったら出たわ!

って何よその反応!?」

 

 

全く参考にならなかった。

実際『R』は自尊を司っているので間違いではないのだが。

 

 

「興味深い話してるね~もっと聞かせてくれる?」

 

 

進行しない話し合いに割って入った、突然の訪問者。

こんな状況で有り得ないほど軽い声は、前に一度衝撃を残して消えて行った人物のものだ。

 

カメラを持って変質した壁に寄りかかっていたのは、嘉神留人。

 

 

「嘉神先輩!」

 

「お、先輩って呼んでくれるの穂乃果ちゃん!嬉しいねぇ、アラシってば敬語も使ってくれなくてさー。それで、そのアラシが居ないタイミングを見計らって来たわけだけど…」

 

 

思わず警戒の意思を表す8人。

なにせ、彼はアラシと知り合いだったり仲が最悪だったり、全く得体が知れない。

 

その展開は予想していたようで、嘉神は笑いながら8人にある写真を見せた。

そこに映っていたのは、瞬樹の姿。地獄の背景からついさっきのものと断定できる。

 

 

「瞬樹くん!これどこで…!」

 

「おっとここから先は有料だよ。アラシが居たら取引にならないけど、君らになら可能だと思ってね」

 

「取引…こんな状況で足元見るなんて最低ね」

 

「真姫ちゃんだっけ?分かってないのはそっち。俺は救世主の立場、こんな状況だから逃す手は無いんだよ。さぁ決断しようね、俺が出すのは彼の居場所とそこまでの安全な道。君らには俺と取引契約をしてもらいたい」

 

「契約内容は…?」

 

 

仮にも部長。にこが嘉神の話に片足を乗せた。

今は何より瞬樹を保護するのが先決だ。

 

 

「俺はこれからも必要な情報をあげる。逆に俺が欲しい情報をその度にくれればそれでいい。それと、この契約はここにいる俺たち以外には内緒。そんで、今回情報を伝えるのは一人だけだ。契約書は無いけど、まさか人に夢を与えるアイドルが反故になんてしないでしょ?」

 

「…分かったわ。瞬樹の居場所を教えなさい」

 

「毎度アリぃー。さ、誰が俺と一緒に行く?」

 

 

勝手なのは承知だが、仕方無い。

話し合いの雰囲気になる中、真っ先に手を挙げたのは

 

 

「私が…行きたい!」

 

 

力強く声を上げた、花陽だった。

 

 

 

_______

 

 

 

こうして、花陽が嘉神の案内を受けることになった。

この無間地獄は地形も大きく変わっているため、既存の地図が役に立たない。彼はその地形を調べていく内に現時点では怪物も人もほぼ居ない「安全地帯」があることに気付いたらしい。

 

そこを上手く通っていくと瞬樹が滞在している場所に到着する、との事だ。

彼の言っていることは本当で、バイクで派手に道を進んでいても襲われる様子が無い。

 

 

「…嘉神先輩は…アラシくんとお知り合い…なんですか?」

 

「お、おしゃべり希望?いーね、折角だ。

でもそれは違うよね。俺は情報を与えた、俺の話題に花陽ちゃんが答える形でどうよ。独占インタビューってことで」

 

「わ…わかりました」

 

「よーしじゃ早速。ズバリ!今のこの世界、どう思う?」

 

 

いきなり答えにくい質問だ。無間地獄の原因には珊瑚がいるのだから。

でも、花陽は答えた。

 

 

「私は…嫌です。みんなの優しさとか、そういうの全部無くしちゃったみたいで。嫌なところだけが見える世界…そんな風に思います」

 

「いい答えだ。でも分かってるっしょ、これもまた人間。これもまた世界。苦しいから得体のしれないものを信じて思考放棄。安直な死や生を望む。他の人間のことも自分のことも、なーんにも知らない癖に全知を気取って自己完結だよ。まぁ、ひとしきり笑ったよね」

 

「嘉神先輩は…あの天使を信じてないんですか?」

 

「もちろん。俺はまだ、この目であの天使の『腹』を見てない。百聞は一見するまで虚像に過ぎない…俺が尊敬する人の言葉だよ。あんな眩しいだけの光に目を焼かれるなんて、御免過ぎるね。

 

だから俺は君らに協力するよ?この世界、『まだ』滅びてもらうわけにはいかない」

 

 

その言葉が妙に気になるが、そうこうしているうちに到着したようだ。

 

 

「この先にいると思うよ。流石にこの地獄を移動するほど馬鹿じゃないと思うし」

 

「ありがとうございました…!」

 

「帰るときは声かけてねー」

 

 

バイクから降り、花陽は嘉神が指さす方向に駆け出した。

 

また変わった風景だ。遠くは炎が燃え上がっているが、その反対方向には氷山が見える。その影響かここら近辺は寒くも熱くもない、比較的快適な場所になっている。身を隠すにはうってつけだろう。

 

かつてビルだったと思しき岩の柱の間を抜け、恐らく路地裏だった場所に足を踏み入れた。

 

すると、いた。槍を足元に手放した瞬樹が、そこに座り込んでいた。

 

 

「瞬樹くん!良かった…無事だったんだね」

 

「花陽…!?なんでここが…」

 

 

安心が処理しきれなかったのか、思わず抱きついてしまった花陽。瞬樹が一瞬でオーバーヒートした。やはり彼女は、昨日から行動が感情的だ。

 

 

「は…花陽…!!??」

 

「あっ!ごめん…びっくりさせちゃって」

 

「あぁ…うん。すごく驚いた。死ぬかと思った。

………それで、俺を探しに来たのか?」

 

「そうだよ。みんな心配してるから、一緒に帰ろう?」

 

 

心配している。その一言は、瞬樹にとってもはや苦言に等しい。

瞬樹だって分かっている。一体どの面下げて心配されろと言うのか。

 

 

「俺は…裏切り者だ。アラシから聞いただろ」

 

「うん…聞いたよ。

でも瞬樹くんは、世界を救おうって自分なりに頑張ってたんでしょ?それなら…」

「やめて!」

 

 

花陽の言葉を遮った瞬樹は、少し違って見えた。

年相応の、いやもっと幼くすら見える泣きそうな顔、震えた声、口調。分かっていたつもりだったが、これが本当の津島瞬樹なのだ。

 

 

「俺は騎士なんかじゃないよ。メモリも俺を見放したし、もう俺は何も出来ない。違う…最初から何も出来なかったのに粋がってたんだ。俺はただの…痛い中二病だ」

 

 

この瞬樹は、信じる全部が挫かれた残骸。

同じなのかもしれない。自信が欠片も無かった、μ'sに入る前の花陽と。

 

あの時は真姫と凛に背中を押された。あんな強引になんて、自分にはできない。

 

何ができる。そうじゃない、何がしたい。

この少年に、何をしてあげたい。

 

 

「聞かせて…瞬樹くんのこと」

 

「え…?」

 

「竜騎士とか…天使とか…瞬樹くんが好きなもの。昔の話。知りたいな」

 

 

踏み込みたい。希望が見えないんじゃない、見ようとしなかっただけ。誰かを助けたいのなら、その深く深くまで踏み込んでそこにある希望を、抱きしめて、見せてあげなければいけない。

 

 

「何も面白くなんて無い…そんな話になる」

 

「そんなことないよ。友達のことを知るのに…嬉しくないわけないんだから」

 

 

今日に限って、花陽は嫌に真っ直ぐに瞬樹を見る。

この目が好きだ。彼女が好きだ。だって思い出した、これは良く知った…天使の眼だ。

 

 

 

 

 

 

津島瞬樹は静岡の沼津の少年だった。

何もない場所だった。そこに生まれた彼もまた、何も無くて、平凡だった。もし彼だけの話なら、話はこの数行で終わっていただろう。

 

でも違う。彼には妹が一人いた。

少し年が離れた妹。彼女が幼稚園に入ったころ、彼女はこんなことを言い出した。

 

 

「自分は天使、いつか羽が生えて天に還る」と。

 

 

多分、家に置いてあった漫画か何かに影響されたのだろう。幼い頃は自分が特別で、物語の主人公に自分を重ねるのも変わった話じゃない。

 

だが、その時小学生だった瞬樹は、そんな妹が凄いと感じた。

瞬樹は運動はできたから友達はいた。それだけだった。それを失いたくなかったから、「特別になりたい」なんて言う勇気は無かった。

 

それでも妹は天使を名乗り続け、幼稚園でバカにされてもそれを止めなかった。

そう、瞬樹が最初に憧れたのは騎士じゃない。妹だった。彼女のように生きたかった。そんな時に目に入ったのが、騎士が主人公の漫画だった。

 

 

「俺、強くなる。善子が天使なら、俺は天使を守る…騎士になる!」

 

 

何かになりたい。憧れが近くにいて、少年の心はその願望を抑えきれない。

瞬樹は信じる心だけは誰より強かった。漫画の主人公が掲げていた「騎士道」を信じ、本当に騎士になろうとしていた。

 

友達には笑われ、離れて行った。

だから更に騎士に没頭した。体を鍛え、親に無理を言って格闘技の習い事もした。

それでたまたま才能があって、瞬樹はその道が正しいと思うようになった。

 

 

「そんなの何も変わっちゃいない。騎士に成れるわけがない。友達に依存していた時と同じ、無になるのが怖くて騎士に縋っているだけだ」

今の瞬樹は、そう断じる。

 

 

習い事で結果は残った。親に褒められた。

小学校になった妹をいじめる上級生を懲らしめた。妹には尊敬された。

 

中学生になっても騎士を名乗った。強さだけを求めて、それ以外を怠った。

誰も寄り付かなかったが、良かった。騎士道を理解するのは天使である妹と、親だけだ。

 

 

「身内に褒められて正当化してるだけだ。お前は得意なこと以外から目を背けてた。お前は不良と何も変わらない」

今の瞬樹は、そう嫌悪する。

 

 

瞬樹は高校生になって、妹は小学校中学年に。

どちらもまだ騎士と天使を名乗っていた。

 

 

「気付けよ。善子はいつまでも友達が出来ないし、お母さんは周りから白い目で見られてる。全部お前のせいだろ」

今の瞬樹は、そう後悔する。

 

 

ある日ドーパントが出現した。グリフォンのドーパントだった。

己を過信していた瞬樹は無謀にも立ち向かい、叩きのめされた。それでも諦めずに家族を守ろうとした。そしたらメモリが現れ、通りがかった人物がドライバーをくれた。

 

 

「そこで終わればよかったんだ。そのせいで俺は、俺を勘違いしたままここまで来てしまった」

今の瞬樹は、そう恨む。

 

 

そして仮面ライダーエデンとして戦い続け、今。

負けを重ね、仲間を裏切り、得た力を失った。遅すぎた中二病の卒業だ。

 

 

騎士道を失った瞬樹に何が残った?

騎士に依存していたから友達は居ない。勉強はできない。未来に向けて何もしていない。ただ妹と親に迷惑をかけた挙句、世界滅亡の片棒を担いだとんでもない餓鬼だ。

 

 

何も無いから逃げ続け、辿り着いたのは正真正銘の「無」。

所詮は地べたで槍を振り回すだけの騎士。天使が住む空の上には、届くはずもなかったんだ。

 

 

 

 

 

「俺は強さが欲しかった…それしかなかったから。それを否定されれば何も無くなるって、怖かったから。それで全部見失って、珊瑚を殺した。花陽は…俺を恨んだっていいんだ」

 

「…恨まないよ。珊瑚ちゃんは助けられる。凛ちゃんも頑張ってるよ。

それに…瞬樹くんは何も無くなんてない。ただの強がりでも、瞬樹くんに助けられて、瞬樹くんが大好きな人だってたくさんいる。だから…一緒に帰ろう?みんな瞬樹くんを待ってるよ」

 

「帰れないんだ…分かってる、こうなったのは全部山門が仕組んだんだって。あの時のアラシの言葉が全部正しいって……でも!動こうとすると頭が拒むんだ…!きっとまた山門を視れば、俺はあいつの言う事を聞く…」

 

「……わかった。でも…私もみんなも瞬樹くんにいて欲しいのは本当だから…全部終わったあとでいい、帰ってきてね。竜騎士じゃなくても、私たちは瞬樹くんを待ってるから」

 

 

遠くで嘉神が花陽に合図を出す。どうやら、アラシ達が事務所に戻ってきたようだ。花陽は瞬樹のことが気になりながらも、小さく手を振ってそこを後にした。

 

 

「…分からない。俺を待ってるって…なんなの…?」

 

 

つまらない男の話をしたはずだった。罵られて当然だと思ってたのに、なんでそれを受け入れるのか。瞬樹の手に残った、力を失った『D』のメモリ。こいつは何を見て瞬樹を選んだのか。

 

 

「誰か教えてくれ…みんな、俺の何を知ってるんだよ……」

 

 

 

________

 

 

 

「憤怒の奴らが現れた?」

 

「はい山門様、信者に配ったメモリも彼らによって奪取されつつあります」

 

 

佐向は山門にそう報告する。あの大量のメモリは、例の地下闘技場に残っていたのを山門が回収したもの。もしくは『強欲』との取引などで、長い時間をかけて山門が手に入れたものだ。それを無駄にしたのは失態でしかない。

 

しかし、山門は笑って答える。

 

 

「予想通りです。七幹部のゼロが不在である以上、彼らを咎める者も居ないのだから」

 

「しかし…憤怒には『奴ら』がいます。それでは計画が……」

 

「そいつから山門守んのが我らの仕事だろ?我が同士よ」

「我らは山門様の剣にして盾なのだ。忘れてはいまいな」

 

「ヒデリ、カゲリ…この新参風情が…!」

 

 

ヒデリとカゲリの二人もそこに合流。同じく、山門にアラシ達がまだ動いていることを報告する。

 

 

「まだ諦めないとは…僕に手は出せないとはいえ、このまま信者を痛めつけるのを黙っているわけにはいかない。彼らの信仰心は脆い、手を打たなければ…」

 

「しかし、奴らがいる以上、山門様が出るのは危険です」

 

「僕も信者を導くため忙しいんだ。もうじき地獄が世界を包み込む、やるべき事は山のようさ。そうだな……手が足りないのなら、刑務所にいる景くんを呼び戻すか…」

 

「ッ…!?いえ、私たちで十分です。彼女の手など借りず、奴らを殲滅してみせます」

 

「あぁ、やはり君は素晴らしいよ」

 

 

あと十体やそこらのヘルを倒せば無間地獄が完成する。死者数も飛躍し、それに感化された者たちが狂気に走る。そこに山門が手を回してメモリや武器を振りまき、エンジェルの能力を使えば…世界を掌握したも同然だ。

 

 

「さて…あとは()()()()()()()()()……ですね」

 

 

 

_______

 

 

 

「おいこら花陽!お前一人でどこに…まぁいい。とにかく入れ」

 

 

嘉神の事を話せない手前、アラシに怒鳴られると思っていた花陽。

半分は当たりだったが、何やら予想外の反応で拍子抜けする。しかし、事務所にいた人物を見て拍子抜けどころか腰を抜かした。

 

 

「えぇっ!?この人たちって…」

 

「おひさっスねー」

「邪魔をしている」

 

「あんま深く考えるな花陽。いいから座れ」

 

 

憤怒のハイドとラピッドが気楽にそう返すが、花陽の方は気楽になれる心境ではない。しかし話が進まないため、アラシは動揺している花陽を座らせた。

 

 

「俺と永斗、それぞれコイツらにばったり会って助けられた」

 

「そーいう事っス。てなわけで今回も利害一致、協力するのはどうっスか?」

 

「またか……正直お前らとの協力は肝が冷えるが、んなこと言ってらんねぇな。でも山門を潰す手はあるのかよ。見たところ戦力も半端だが、後でファーストも来るのか?」

 

「いやいや、そこの元怠惰くんなら分かると思うっスけど、下手に戦力つぎ込むとエンジェルに洗脳されて危ない。アサルトやファーストなんてバケモノ、敵に回ると手に負えないっスからね…今回は待機っス」

 

 

そんな会議から花陽がふと目を離すと、横の絵里たちの中にもう一人混ざっていることに気付く。写真で見たことがある、憤怒のエージェントの女性、ルーズレスだ。

 

 

「キミ、『L』のメモリの子だよね!アタシのこと覚えてる?あ、そうだラピッドから聞いたよ!このピアス、キミのなんだよね!気に入ってるよありがとー!」

 

「えっ…あぁ…どうも…ははは…」

 

 

絵里が凄い絡まれてる。しかも前に襲われた相手に。絵里の心境を考えると、自然と同情する。

 

 

「で、言っておくが俺たちは山門に何も出来ねぇ。瞬樹は見つからねぇ。どうするつもりだ?」

 

「足手まといの癖に偉そうっスね…まぁジブンらも考え無しの人選じゃないっス」

 

「その通りだ、組織の不始末は我々の仕事。

簡潔に結論から言おう、俺はエンジェルを殺せる」

 

 

ラピッドの一言に、アラシと永斗が立ち上がる。特に永斗の方は頭を抑えて喜びの顔を見せた。その真意を理解したようだ。

 

 

「そうか…!ヴァイパーの強化触覚とピット器官!エンジェルの能力のタネは光と言葉、つまりそのどちらも遮断が可能なら…エンジェルを完封できる!」

 

「そういう事だ。俺は視覚と聴覚を完全に消しながらでも戦闘ができる。肌に伝わる振動と熱源反応さえあれば、あの程度の敵を屠るのは造作もない」

 

「いや待て。それならあの修道服コンビはどうする。奴らはラピッドを襲うはずだ」

 

「そうっスね、今日は派手にやったっスから明日にでもジブンらを潰しに来るはずっス」

「いいや、それでいい。こっから先はただの詰将棋だ」

 

 

ハイドと永斗、両陣営の参謀の脳内には、既に勝利までの道筋が見えている。それを確認し合うように、彼らは互いの策をぶつける。

 

 

「山門はヴァイパーメモリの危険性を知ってるはず。彼の性質上、絶対にラピッドの前には現れない」

 

「確実に潰したがるはずっス。つまり現れるのはヒデリとカゲリのコンビか、サクリファイスの里梨ちゃん。まぁ実力から考えてヒデカゲの方っスね」

 

「それか僕らの誰かを内密に洗脳しようとするか…狙うならハイドだね。対策あるよね?」

 

「もちっス。ジブンはナーブ、神経のドーパントっスよ?ジブン自身の脳神経なんて自由自在、洗脳してもされはしないっス」

 

「つまり修道服ブラザーズをラピッドにぶつける間、山門は現れない。μ'sのみんなを洗脳しに来るのも…今の計画段階から奴は仕事で手一杯のはずだ。そっちを放り出すほどの旨味は無いと思う。そもそもハイドが守ればいいし」

 

「ジブンはエンジェルを倒せるか微妙っスけど…まぁ洗脳されないカードが二枚ある時点で超有利っス。それにあっちはラピッドを殺せる気だと思うっスけど、こっちにはルーズレスもいる」

 

「あぁ?お前ら二人であのコンビに勝てるのか?」

 

「馬鹿にすると痛い目見るっスよアラシ君。この二人は憤怒最強のコンビ、コンビなら坊ちゃんより強いっス」

 

 

話を聞いていたルーズレスがピースサインで答える。思い返せば雷獣事件の時は、それぞれ単独戦闘に終始していた。というより、ルーズレスが一人で瞬樹に突っかかっていっていた。

 

 

「てことはラピッドを襲いに来たアイツらは返り討ちに出来る。山門が来ればラピッドが倒す。他の刺客や細々した一般ドーパントは俺たちが請け負う…ハイドが穂乃果たちを守る」

 

「そう、だから詰将棋。少しずつ敵戦力を削いでいって、最後に洗脳されないハイドとラピッドを山門にぶつけて僕らの勝ちだ」

 

 

終わりを悟って諦めない以外の選択肢が無かったこの地獄に、ようやく光明が見え始めた。アラシは悔しさ半分だが、小さくガッツポーズを決める。これでようやく、あの天使を叩き墜とせる。

 

 

「最後の問題はヘルだね…こればっかりは既存の方法じゃどうしようもない。山門を倒した後、僕が何とか撃破法を……」

 

 

ラピッドの腕が永斗の言葉を中断させた。

彼は変身せずとも多少の能力を使える。ヴァイパーの索敵能力が、この場所に近づく存在を捉えた。

 

 

「悠長な思考だったのは我々か。

構えろ、来るぞ!」

 

 

壁と天井を派手に壊して出現した影が、直線的にラピッドを狙う。

が、ルーズレスが一瞬で反応。生身のままだが、凄まじい勢いの蹴りが侵入者を弾いた。

 

 

「邪魔をすんなよ憤怒、すげぇイラつく…って神さんも言ってるぜ」

「一体何の真似か憤怒、我らは暴食がために力を振るう者。邪魔をされる筋合いは無い」

 

 

予想通り突入してきたのはカゲリとヒデリ。

二人は既にドーパント態に変身しており、その一挙手一投足が事務所だったものを破壊する。

 

 

「何の問題も無い、予定が早まっただけだ。ハイドは奴らと逃げろ、ここは俺とルーズレスが…」

 

 

そう指示するラピッド。だが、彼の指示を飲まない者が二人いた。

ドライバーを装着した、アラシと永斗だ。

 

 

「…何のつもりだ」

 

「わざわざこいつらが奇襲をかけて来た理由を考えたんだ。山門の思考を辿るに、彼がここで焦る理由は一つもない。一つも無いけど…僕らが知らない『何か』がある。ラピッドをここで釘付けにされるのは、山門の思う壺だと思う」

 

「だから、奴らにとっちゃ死に札の俺たちが請け負う。今だけはお前が俺たちの切り札だ、次の刺客が来る前に先に行け!」

 

「貴様らがこの二人に勝てるのか?」

 

「さっきの問答そのまま返すぜ。お前らなんかより、俺たちが最強コンビだ!」

 

 

ラピッドは面白く無さそうに笑うと、ルーズレスと共にハイドたちを追った。永斗の読み通り、それを良しとしないリベンジャー、アベンジャーだったが、二人は即座に変身し、その妨害を妨害する。

 

 

《ファングジョーカー!!》

 

『俺たちだって、このまま役立たずのまま終われねぇんだよ!』

 

「片腹痛いぜ、思い上がったなぁ無能探偵どもが」

 

「あぁ神よ…彼らの罪を裁く権利を、どうか我らに!」

 

「違うね。人の心を弄び、命を踏みにじった報いを受けるのは君たちだ」

 

 

復讐者の刃と報復者の剣。

相対するは、希望を繋がんとする白亜の牙。

 

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!!』」

 

 

_______

 

 

 

「でー…これ逃げるってどこに!?ていうかなんで逃げてんのよ!」

 

「考えないでとにかく走るっスよにこちゃん!来たのがあのコンビだけって事は有り得ないから…」

 

 

事務所から全速力で離れるハイドたちの前から迫りくる、まるで津波のような威圧感の大群。というのも、数はそれほどでも無いのだが全員がドーパントなのだ。

 

そして、その先頭に立つのは一人の女性。佐向里梨。

 

 

「やっぱ来るっスよねぇ…」

 

「返答は聞かない。山門様の御心のままに、適合者以外は抹殺する」

 

《サクリファイス!》

 

 

佐向はローブを脱ぎ捨て、左袖の破けた部分から二の腕にメモリを挿入。

包帯が体から展開され、下半身が消失。上半身が肥大化。泥を包帯で人型にしたようなミイラの怪物、サクリファイス・ドーパントが出現した。

 

 

「多勢に無勢…っスね。じゃジブンはこの子ら守るんで、あと頼むっスお二人さん」

 

「…承知した。行くぞルーズレス」

 

「おっきいドーパント!いいね、『オオモノクイ』だね!」

 

 

《ナーブ!》

《ヴァイパー!》

《ティラコスミルス!》

 

 

ドーパントに変身したヴァイパーとティラコスミルスが先陣を切る、というよりも一直線にサクリファイスの首筋を狙って容赦の無い一撃を加えた。

 

ほぼ不意打ちに近い一撃、防御は皆無。

しかしサクリファイスの体勢が揺らいだだけで、目立ったダメージになっていない。

 

 

「手応えあったんだけどなー」

 

「ダメージが入らない訳が無い。ヤツの能力だ」

 

 

ヴァイパーのピット器官が、ドーパントの大群の中で一体が倒れたのを確認した。熱源反応から、そいつが首元に大きなダメージを受けたことまで分かる。ここから推察されるサクリファイスの能力は一つだ。

 

 

「sacrifice…日本語で『犠牲』か。ヤツは自分が受けた傷を手下に押し付けられると見た」

 

「理解できたか。理解できたなら死ね!山門様に歯向かう獣畜生風情が!!」

 

「へー!てことはぁ…」

 

 

背中から伸びる包帯の触手と、巨大な腕に爪がヴァイパーを殺しにかかる。

しかし、ティラコスミルスの初速度はサクリファイスの想定を凌駕し、一瞬で間合いを詰めて触手を切断。更にはティラコスミルスの強烈な蹴りが、振り下ろされた腕をも弾き返す。

 

攻撃を全て防がれた一瞬で、ヴァイパーの鞭のような蹴りがサクリファイスの胴体を貫いた。そしてティラコスミルスが頭部に全力の殴撃。衝撃で掠れる視界の隅でヴァイパーが消えたのを捉えたかと思うと、背後から波打つような連続の痛みが走る。

 

 

一連の攻撃が終わると、五体のドーパントがその場で倒れた。つまり、サクリファイスが反応できなかったさっきの一瞬で、五回も倒されたことと同義である。

 

 

「何回も倒せるってことじゃん!オトク!」

 

「数えるのも面倒だ。死ぬまで殺させてもらうぞ」

 

「有り得ない、この…化け物共が…!」

 

 

ナーブも襲い掛かるドーパントからμ'sを守る余裕を見せる。参謀としての役割が強いものの、彼もまた憤怒のNo3。低級ドーパントに遅れは取らない。

 

 

「ジブンから離れないで欲しいっス。最悪、メモリ使って自己防衛で」

 

 

ドーパントたちはナーブに敵わないと知りつつも、死に物狂いで攻勢を見せ続ける。まるで特攻兵の如き修羅の様相だ。不自然に思った真姫が、ナーブに声を掛ける。

 

 

「岸戸先生、この人たち…どこかおかしいわ」

 

「あー…知らない方が良いっスけど、まぁ言っとくっス。

この地獄で、もう既に結構な死人が出てるんスよね。で、多分この人たちはその遺族か関係者か…」

 

「まさか……!岸戸先生や私たちが首謀者だって、山門が吹き込んで…!?」

 

「探偵が板についてきたっスね、真姫ちゃん」

 

「そんなの…酷すぎる!」

 

 

彼女たちがこの感情を抱くことは少ない。少なくとも彼女たちが生きるべき世界は、もっと優しいものだから。でもそれが歪められ、想像を絶する邪悪が現れてしまった。

 

人を支えるはずの信仰心を好き勝手に塗り替え、軽々しく大勢を殺した挙句、残された人は悲しむことすらも許さない人形にする外道の天使。彼女たちは優しいからこそ、そんな山門に激しい嫌悪と怒りを覚えた。

 

 

「そりゃ怒るっスよね。でもその怒り、辛くても腹に留めておかなきゃダメっスよ。怒ってるのはジブンらも同じ、それをぶちまけるのは大人の役目っス」

 

 

目一杯伸ばされたナーブの腕がドーパントたちを薙ぎ払い、もう片方の腕から枝分かれした神経線維がドーパント軍団の体に侵入。その能力で動きを封じた。

 

体の底に煮えたぎる怒りのまま、善にも悪にも矛先を向ける暴獣の群れ。

それこそが、彼らが『憤怒』である所以だ。

 

 

ハイドは冷静に戦況を分析する。敵の数は多いが、ラピッド&ルーズレスコンビの敵ではない。サクリファイスを完封するまでそう時間は掛からない。ハイドもそれまでの間、背後の彼女たちを守ることは可能だ。

 

例えここに未知の増援が来たとしても、一方的に負けることは考えにくい。討ち漏らしはあれど戦力を削ぐという目的は達成できる。勝てるはずだ。

 

ただ一つ解せないのは永斗と同じ懸念。

何故奴らは奇襲をかけて来たのか。

 

 

そして、その懸念は実体となり、天から舞い降りた。

 

 

「おいおい…そりゃ聞いてないっスよ…」

 

「それは光栄なことだ。天使の降臨は、予期されぬもので無ければならない」

 

 

その場にいた全員の視線が集まった先は、光の柱から現れた白い翼。戦略的に有り得ないと分かっていても、網膜に焼き付いた光が現実を告げる。エンジェルが、戦場に現れた。

 

 

「山門様…!?なぜ……」

 

「ゲッ!あれエンジェルじゃん!どーする!?」

 

「狼狽えるなルーズレス。ならばヤツをここで討つまで。サクリファイスは任せるぞ」

 

 

ラピッドの言う通り。わざわざ現れてくれるのなら願ったり叶ったりというもの。あとは洗脳が効かないヴァイパーで大将を討ち取れる。

 

 

「蛇は人に知識の実を唆す悪魔の使い。しかし、時には人を裁くための神の使いでもある。どちらにせよ、僕の楽園を脅かす因子であり…僕への試練と言える」

 

 

エンジェルは後光を展開しない。視覚を遮断しているヴァイパーには無意味と知っているから。故に、その代わりとして一本の剣を握った。

 

それは実体を持たない光の剣。無駄な装飾の無い、簡素な剣だった。

 

ヴァイパーもそれを感覚で感じ取る。剣持ちを想定した動きに一瞬で切り替え、捻った体勢からカーブを描くような音速の蹴りを放った。

 

 

「僕の楽園に、悪魔も神もいらない」

 

「何…!?」

 

 

仕留めるつもりで放った攻撃が、回避された。

想定を遥かに超えた体捌きだった。あの速度の攻撃を捌く技量も、身体能力も、事前に得ていたエンジェルのデータを凌駕している。

 

それだけじゃない。あの一撃の回避に紛れ、光剣の剣先がヴァイパーの脚を掠め―――

 

 

「ッ…!?これは…っ…!」

 

 

ヴァイパーは自身の異変に気付いた。あの時、剣先は脚を傷つけることなく「透過」した。だが、その剣先が触れた部分から感じる「強烈な違和感」がヴァイパーの意識を刺す。

 

 

「蛇には声が聞こえないか…まぁいいでしょう。

必ず君たち憤怒が決起すると思っていた。そして仮面ライダーと合流し、君たちは僕の救済が届かない二人を得て歓喜しただろう。これで勝てる、恨みを晴らせると。だがその程度を覆せないようでは、楽園創造など夢のまた夢なのですよ」

 

 

エンジェルは剣を掲げる。絶望に沈みつつある者たちを、嘲笑うように。

 

 

「地球の本棚にも無い、僕のハイドープ能力。きっとこの世界規模の惨劇から、それは洗脳能力の拡大強化か何かだと結論付けたのだろう。だが違う、これは僕の努力の賜物に過ぎない。

 

僕が天から与えられたのは、この『救済の剣』。僕が救済できない神の使い、知恵を得た愚かなニンゲン、そんな彼らの心を斬り捨ててでも救済の道に導く、正義の刃。これに斬られた部分から僕の光が浸食し、脳に到達した時点で『救済の後光』を受けたのと同じ状態になる」

 

 

ヴァイパーの脚を襲う違和感はそれだ。まるで徐々に自分の脚では無くなっていくような感覚。あと10分もすれば満足に歩行もままならなくなるだろう。そうなれば、頭部を一突きされて洗脳されてしまう。

 

 

「僕はこの能力と実力を信者にも隠してきた。全ては君たち憤怒という、最後の障害を崩すこの瞬間のために。さぁ喜びたまえ全人類よ!救済を拒む者は潰え、世界が救われる時が来たのです!」

 

 

切り札のラピッドが潰された。あの剣の能力があれば、今まで完全洗脳を踏みとどまってきたアラシたちも山門の傀儡となる。ナーブの能力でも防げるかは不明だし、仮に防げたとしてここで確実に殺されるだけだ。

 

 

「最悪っスね…」

 

 

真姫たちを逃がそうにも、この状況だとドーパント軍団が邪魔で無理だ。となると今、ハイドに取れる最善の一手は…

 

 

「君らは適合者っスから、洗脳されても殺されはしない。後はせめて、ダブルがリベンジャー、アベンジャーを倒して逃げるまでの時間稼ぎをするしかないっスね…」

 

 

世界の命運はアラシと永斗に託すしかない。ハイドの役目はここで奮闘して死ぬこと。

それはルーズレスもラピッドも分かっている。今やるべきは、洗脳される前に敵をなるべく倒し、自害することだ。

 

その真意を悟った彼女たちが、憤怒の彼らを止めようと叫ぶ。

彼らは敵だ。でも決して邪悪じゃない。死ななければいけないなんて、そんなの間違っている。

 

 

天使は嗤う。虚偽で民を扇動し、地獄の玉座に君臨しようとしている。

 

愛情と命を弄ばれた珊瑚。救いを求めて騙され殺された民衆。邪魔という理由で死のうとしている憤怒の彼ら。命を賭して戦っても誰からも求められない仮面ライダー。

 

これだけの命を不幸にして、それでも天使は嗤うのだ。

こんな理不尽があるか。こんな世界が許されていいのか。

 

 

『これもまた人間』

 

『これもまた世界』

 

 

その瞬間、どこかでヘルが死に、無間地獄が世界を包み込んだ。

地獄の底に咲いた希望の花は、悪意の炎に焼かれ、

 

灰となって燃え尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て!!」

 

 

 

絶望を裂いて届いた声。飛び出した『彼』は、高笑いするエンジェルに渾身の一撃を叩き込んだ。その一撃は…槍の一撃。

 

 

「…素晴らしい、ここまで抗うとは…津島瞬樹」

 

 

もう何の力も無い槍を、それでも誇らしげに向ける。自分が弱いと知っていても、何も無いと嘆いても、それでも瞬樹はここに来たのだ。

 

 

「瞬樹くん!」

 

「すまなかった花陽…馬鹿な話をした。お前達の言葉が、俺に気付かせてくれた!」

 

 

エンジェルが天秤の錫杖を構え、雷を落とす。

瞬樹はそれを生身で回避し、油断の隙を貫く刺突を放ち続ける。

 

 

「止まりなさい」

 

 

エンジェルの言葉が瞬樹の動きを止めた。それは、まだエンジェルの洗脳が健在であることの証明。

 

 

「動け…!動け!俺が信じるのは……お前なんかじゃない!!」

 

 

ここに来るまでに、瞬樹は思い出した。

 

瞬樹の騎士道を形作った漫画の騎士。彼は、主人公なんかじゃなかった。

主人公は天使。騎士はそんな天使を慕うどんくさい男、とても活躍していたとは言えなかった。

 

でも、彼はずっと天使を守っていた。何があってもどんな強敵を前にしても、ただ守り続けていた。ただ特別になりたかっただけの少年が、どうしてそんな騎士に憧れた?

 

 

違った。瞬樹の憧れは特別を主張した妹じゃない。

そんな妹を守ってあげられるような、冴えなくても守ることだけはやめない、そんな騎士になりたかった。

 

 

「何も無くなんて無い!俺は俺だ!俺のこの心が、最初から騎士道に通じていた!!」

 

 

瞬樹の体を縛っていた洗脳の鎖が引きちぎられ、一直線の刺突がエンジェルの体に突き刺さる。その一撃は瞬樹の『信仰』のように、真っ直ぐで硬い。偽りの天使になんて、歪められるわけが無い。

 

 

「救済の後光を…打ち破った…!?

そうか、これが僕への最後の試練という訳か!」

 

 

喜びと屈辱の狭間で、エンジェルは再び笑いを上げる。

 

花陽は瞬樹の何を信じていたのか、その答えも出た。

そんなの一つしかない。瞬樹が彼女たちに見せていたのは、その姿と生き方だけだ。

 

強くなりたいと重ねてきた努力は消えてない。竜騎士であることを認めてくれた仲間たちはここにいる。

 

 

『お前の……名前を言えよ』

 

 

アラシはあの時、そう言った。

負けたからなんだ。過ちを犯したからなんだ。それで消えてしまうほど、この名前は軽くない!

 

 

「我が仲間よ!好敵手よ!憎き地獄の使者共よ!この地に生きる全ての命よ!誇り高き誉れ高きこの名を聞き、笑うがいい!それでも俺はこの名を叫び、讃え続ける!!

 

我が名は竜騎士シュバルツ!!白銀の竜と契約せし、天より出でし、断罪の竜騎士だ!!」

 

 

その「信仰」に呼応し、メモリが光り輝く。

声が聞こえる。「その心、命を賭しても貫くか」と。

 

その声に瞬樹が頷くと、『D』のメモリがドラゴンメモリとして復活を遂げた。

 

 

《ドラゴン!》

 

「変身!」

 

 

白銀の鎧を纏い、ここに竜騎士の仮面ライダーが復活した。瞬樹は決意を掲げるように、今一度名乗りを上げる。

 

 

「我こそは最強、無敵、唯一無二の断罪の竜騎士!仮面ライダーエデン!!騎士の名のもとに、貴様を裁く!!」

 

 

 

______

 

 

 

まだ足りない。

 

地獄を祓うには、まだ不十分だ。

 

 

『閉じた箱の中には、希望が詰まっている』

 

 

彼と彼女の心と共に、それは鼓動する。

 

それは必然。それは布石。それは誰かが望んだ未来。

それはこの惑星が生んだ―――

 

『機械仕掛けの神』

 

 

 




今回のエンジェル・ドーパントの能力はチキン革命さん考案の「キング・ドーパント」を元にさせていただきました!もう出せそうになかったので、「電流で敵を操る」から「光の浸食」を思いつき、言葉も光も使わない第三の手として使わせていただきました。着想からかなり離れ、原型が留まっていませんが…報告しておいた方が良いと思いまして……いやこんな形になってしまったのは申し訳ないです。

さて、エデンが復活しました。中二病瞬樹も久しぶりですね。
カッコいいものに憧れるって、ただ「特別が良い」ってだけじゃないと思うんです。小さいころに感じた「こうなりたい」を、ずっと大切にしていければいいのにと思います。

次回でH編ラストです!まだあと一つ二つ展開を残してますので、頑張って書かせていただきます!

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!

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