ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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ハイド イメージCV中村悠一
憤怒に所属するNo3エージェント。一人称は「ジブン」。「~っス」が口癖で、白衣と眼帯を着用している。ちなみに、眼帯はメモリ能力のサポートが用途である。性格は軽めで適当だが、状況を俯瞰する力や参謀としての実力は本物。また、ゼロ、ファーストと共に、憤怒の最古参である。その正体はかつて西木野総合病院に勤務していた医者で、本名は岸戸能晴(きしどあたる)。とある事件がきっかけで医師免許をはく奪された。μ’sのメンバーと関わっていくうちに、心境が変わり始めたようで…?
名前の由来は仮面ライダードライブのブレン。「毒」を英語にして「トキシック」。これをもじって「岸戸」。ブレンのコピー元、杵田光晴と「脳」から「能晴」。

特技:治療、諜報活動、部下の目を盗んでサボること
好きなもの:死んだ幼馴染、温泉卵、牛乳
嫌いなもの:自分、豆類全般

146です。龍騎見てたら遅くなりました。面白いですね。RT龍騎も、本編見てからだと全然違った楽しみ方ができます。

今回はアンケートの結果、ワンダーゾーン回をお送りいたします。

あ、これと同時にジオウ新作も投下しました。よろしければどうぞ。


第41話 不思議なB/メイドのヒミツ

8/13 音ノ木坂学院。

 

 

「ラーララー♪ラーララー♪」

 

 

校舎内で歌いながら踊り回るのは、練習着姿の穂乃果だ。

いつになくご機嫌。それもそのはずだ、今日の朝、彼女たちにはある吉報が届いた。

 

 

「オープンキャンパスのアンケートの結果、廃校の決定はもう少し様子を見てからとなったそうです!」

 

 

全員が部室に揃い、花陽の発表に全員が歓喜する。

ちなみに夏休み期間でも、部室には入れるようになっている。

 

 

「それって…オープンキャンパスのライブが評価された、ということでしょうか…?」

 

「そうなんじゃない?ま、私はどうでもいいけど」

 

「真姫ちゃんはいつも通りツンツンやね~。こういう時は、素直に喜んでもいいんとちゃう?」

 

「そうだよ!ともかくこれは、凛たちの大勝利にゃー!」

 

「まだ首の皮一枚ってとこだけどな。ていうか……

そういえばあったな。廃校なんて話」

 

 

アラシの一言に、皆が「あぁ……」とため息に近いような呟きをこぼす。

最近は組織の永斗奪還やら、オリジンメモリとの決戦やら、ゴールドメモリの襲来やらと殺伐とした展開が続いたため、廃校のことはほとんど頭になかった。まぁ、無理もないだろう。

 

だが、だからといって無視していいという訳ではない。当初の目的はこっちだ。今後も組織と戦いつつ、廃校も阻止する方向で進んでいく。…中々ややこしい展開になってきた。

 

 

「でもでも!それだけじゃないんだよー!」

 

 

穂乃果はそう言って、狭い部室の奥に行き、そこにある扉に手をかける、

前までは開かなかった扉だったが、穂乃果がドアノブを捻るとガチャという音と共に扉が開き、その奥には別の部屋が広がっていた。

 

 

「部室が広くなりました!」

 

 

一同が「おぉー」と歓声を上げる。何故か穂乃果は得意げだ。

 

 

「人も増えたし、これはありがたいな。

永斗も帰ってきたことだし、心機一転!ここから再スタートだ」

 

「ま、おかげさまでね」

 

 

アラシの後ろから、今まで黙っていた永斗が口を開いた。

凛から貰ったヘアピンを付けており、全体的に雰囲気が変わっている。そのことについては、ひとしきり希にいじられた後だ。

 

皆が喜んでいる中、絵里は冷静に意見する。

 

 

「安心してる場合じゃないわよ。生徒がたくさん入ってこない限り廃校の可能性はあるんだから、まだ頑張らないと」

 

「……!嬉しいです…!まともな事を言ってくれる人がやっと入ってくれました!」

 

 

そこに涙ぐみながら感動する海未。まともじゃない認定に少し不満げな凛と、大分ショックを受けているアラシ。全員揃ってのこの感じは久しい。永斗はこの時間を心から愛しく感じる。

 

 

(守らないとね、今度こそ……)

 

 

永斗はその決意を、心に強く刻み込んだ。

 

 

「ほな、そろそろ練習始めよか」

 

「あ…ごめんなさい。私ちょっと…今日はこれで!」

 

 

練習を始めようとしたとき、ことりはそう言って駆け足で去って行ってしまった。

 

 

「どうしたんだろう?ことりちゃん、最近早く帰るよね」

 

 

少し心配そうに穂乃果が言う。

 

その刹那、永斗は全てを察し、思い出した。

初めて穂乃果、海未、ことりの3人に出会ったときに味わった、あの漠然とした恐怖を。

そして、自分が何をすべきなのかを……

 

 

 

 

______________

 

 

ー永斗sideー

 

 

「すごーい!39位だって!20位に大分近づいたよ!!」

 

 

ネットでμ’sのアイドルランクを確認し、おおはしゃぎするほのちゃん、凛ちゃん。

ラブライブ出場の20位までは残り19。凄いと言えば凄いが、実は夏休みの始まりから2つしか上がってない。どうもほのちゃん達は忘れているようだけど。

 

 

「絵里先輩が加わったことで、女性ファンもついたみたいです」

 

「確かに…!足も長いし、背も高いし、美人だし!何より大人っぽい!」

 

 

会長さんを見てついうっとりするほのちゃん。会長さんには男女問わず、人を引き付ける魅力があるような気がする。いや、みんなかわいいんですけどね。

 

 

「背は永斗くんより高いにゃ!」

 

「やめて凛ちゃん。グサっとくるから」

 

 

その通り、僕よりも会長さんの方が大きい。相当なモデル体型だ。

それと、希ちゃんの加入もデカいと思う。言うまでもなく美人だし、何より大きい。何がとは言わないけど。そのお陰で男性ファンの勢いにも火がついている。

 

 

「さすが三年生…ってことかな」

 

 

僕が発した一言で、全員の目がにこ先輩に向く。

 

 

「何よ」

「貧相」

「うっさい!」

 

 

アラシの一言に物理的に反撃するにこ先輩。あ、アイアンクローが帰ってきた。

 

 

さて、こんな感じで時間が過ぎてくれると非常にありがたい。

その理由としては、この時間が好きなのもあるがそれだけではない。僕の脳は完全に戦争モードである。

 

簡潔に言うと、僕はことり先輩が帰った理由を知っている。そして、それを絶対に明かしてはいけないのだ。

 

 

「おし!じゃあ練習を始めるぞ。今回の一件で夏休みの半分程を浪費したんだから、その埋め合わせをしなきゃいけねぇ。人気も出てきたことだし、まずは次のライブに向けて練習だ!」

 

「人の重大イベントを浪費とかいわないでくれません?」

 

「それはそれ。これはこれだ。お前の過去とか組織の事とか、ラブライブへの道には関係ない」

 

「豪快すぎるんですがそれは」

 

 

まぁ、そう言ってくれるのはありがたくも感じる。何事もなかったように接してくれるのは凄く嬉しい。でも、分かってる。何事もなかった訳なんか、無いってことは。

 

そんなことを思っていると、死んでいたにこ先輩が起き上がり、言った。

 

 

「その前に、しなきゃいけない事があるんじゃない?」

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

 

「あの~凄く暑いんですが」

 

「我慢しなさい。これがアイドルに生きる者の道よ。有名人なら有名人らしく、街で紛れる格好ってものがあるの!」

 

 

炎天直下の秋葉原に、全身黒ずくめでマスク&サングラスの不審者が約11人。警察に捕まる前に可及的速やかに逃げたいものです。

 

ほのちゃんの言う通りかなり暑いのだが、そこは問題ではない。

 

 

「例えプライベートであっても、常に人に見られてることを意識する!トップアイドルを目指すなら当たり前よ!」

 

「じゃあなんで俺達まで…つーか時間ねぇって言ったよなアホにこ!」

 

「黒…!黒竜騎士!悪くない……!」

 

 

なんか色々言ってるようだけど、それどころじゃない。

秋葉原はダメだ。こんなところにいたらバッタリエンカウントも全然ある。そうなれば僕がことり先輩のおやつにされるのは自明!

 

さっきから暑さとは別の汗が溢れてくるのが分かる。早くここから引き離さないと…

 

 

「みんな、やっぱり帰って練習を…」

 

「凄いにゃー!」

「ふわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

凛ちゃんとかよちゃんの声が店の中から聞こえる。すると、中では2人が商品を見て感激していた。

いや、タイミングよ2人とも!

 

そこにあったのはA‐RISEのグッズ。僕だって一応知っている、ここは最近オープンしたスクールアイドル専門店だ。

 

 

「うわぁぁぁぁぁ…!ふわぁぁぁぁぁ…!うっわぁぁぁぁぁぁ……!」

 

 

かよちゃんからしたら夢の空間だろう。見たことないようなテンションと声で大喜びしている。

 

 

「Midnight catsに、あれは沖縄アイドルのLucky!名古屋のgeorgeまであります!あ、こっちは人気急上昇中の福岡アイドルB×M!凄すぎます!!」

 

 

凄い楽しそうなところ悪いけど、こっちとしてはそれどころじゃないんです。一刻も早く帰らなきゃマズいんです。

 

 

「こんなお店があったなんて…」

 

「あの、会長さん?感心してるみたいだけど、やっぱ帰って練習を……」

「見て見て!この缶バッジの子すっごく可愛いよ!まるでかよちんみたい!」

 

 

凛ちゃんんん!?空気読んでよ!ていうか、かよちゃんに似てるアイドルなんて見たことも…って…

 

凛ちゃんが持っている缶バッジを見て、即座に確信する。似てるっていうか…

 

 

「これ、かよちゃんだよね」

「え?えぇぇぇぇぇ!?」

 

 

かよちゃんだけじゃない。海未ちゃんのブロマイド、凛ちゃんのうちわ。あとほのちゃんのシャツまで売っている。新入荷のシールが貼ってある店の一角には、μ’sのコーナーが出来上がっていた。

 

 

「嘘でしょ……!」

 

「うううう海未ちゃん、これ私たちだよ!?」

 

「おおおおお落ち着きなさい!」

 

「そそそそうにゃ!まだ慌てるような時間じゃ無いにゃ!」

 

「ハラショー……」

 

「あれ?私のグッズが無い!?どーゆうことぉ!!」

 

「待てにこ!我が天使の宝具は全て俺が手に入れる!!」

 

「なぁ永斗、これ金とれんのかな?使用料的な」

 

「そういう考え良くないと思うよ、アラシ」

 

 

μ’sのコーナーに全員おおはしゃぎ。にこちゃんと瞬樹はグッズの争奪戦を繰り広げている。真姫ちゃんも黙ってはいるが、結構驚いている様子だ。かよちゃんは泣いて喜んでるし。

 

それにしてもねぇ…確かにこの短期間でこの急成長は異常ともいえる。アイドルショップが食いつくのも当然か。

 

その瞬間、僕の目に一枚の写真が映った。そこにいたのはメイド姿のことり先輩。

その間わずかコンマ1秒。人間を超越した速さで僕はその写真を取り去る。

 

 

「あれ?永斗君、さっきそこに何か…」

「何のことかな?ほのちゃん。虫でも止まってたんじゃない?」

 

 

あっぶねぇぇぇぇ!なんでこんなもん置いてんの!?店内は写真撮影禁止でしょうが!しかもそれを売るとか下衆の極み!オタクの恥さらし!平成最大の汚点!毎日家にゴキブリが出るくらいのバチが当たれバーカ!

 

っと、取り乱すのもこれくらいにしよう。なんとか窮地は脱した。あとはこの写真を秘密裏に購入すれば…

 

 

「すいません!あの…ここに写真が!」

 

 

店の外から高い声が聞こえた。この脳トロボイス、もういやな予感しかしない。

 

 

「私の生写真があるって聞いて…アレはダメなんです!今すぐ無くしてください!」

 

 

なんでだよぉぉぉぉぉぉ!!

そこにいたのは紛れもないことり先輩。しかもメイド服!もう言い逃れできない。

 

ことり先輩も僕に気づいた。でもまだ他の人はグッズに夢中で気付いていない。今のうちに逃がせば…

 

 

「あれ、ことりちゃん?」

 

 

ゲームオーバー。

 

 

ほのちゃんが気付いてしまった。続いて皆もこっちに気が付く。ことり先輩は咄嗟に逆方向を向いたけど、流石にこれはもう…

 

すると、何を思ったのかことり先輩はガチャのカプセル置き場からカプセルを拾い、両目を隠すように当てた。

 

 

「コトリ?What!?ドーナタディースカ??」

 

「わっ!外国人!?」

 

 

ことり先輩、流石に無理あります。別人のつもりなのだろうが、傍から見れば隠す気ゼロにしか見えない。凛ちゃんはアホだから騙されてるけど、後ろの会長さんに至っては、すっごい冷めた目で見てるからね。

 

 

「ことりちゃん…だよね?」

 

 

流石のほのちゃんでも分かるか…もうこれは諦めるのが…

 

ちょっと何ことり先輩、何その目!?そんな「事情分かってんなら助けろや」みたいな目でこっち見ないで!ていうか、何でことり先輩は僕にだけこんな怖いわけ!?

 

ダメだ。これ何もしなかったら後でもっと怖いやつだ。あぁもう!面倒くさいなぁ!

 

 

「違うよほのちゃん」

 

「永斗君?」

 

「この人は…その…留学生のコトリーナさん。メイド喫茶でバイトしてるんだ。ね!?」

 

「え…イ、イエース!マイネームイズコトリーナデェース!」

 

 

よし、フォローはした。アホの凛ちゃんと瞬樹は騙せてるっぽいけど…あ、ダメだこれ。ほのちゃん先輩「コイツ何言ってんだ」みたいな目をしてる。会長さんは僕を本気で心配している感じだ。逆に悲しい。

 

よし仕方がない。こうなれば……

 

 

「あー僕たち急用出来たから、急いで行かないとー。それじゃあ……

 

 

さらば!」

 

 

 

僕の合図でことり先輩が走り出す。当然、僕も逃げるが…

2秒後に海未ちゃんに捕まった。そういえば足遅かったわ僕。

 

後は頼むよことり先輩…取り調べでも出来るだけ吐かないようにするから……!

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

ことりが逃げること数分。どうやら穂乃果と海未を完全に巻いたようだ。

こんなこともあろうかと、あらかじめ脱出ルートを決めておいたのが功を奏した。永斗には悪いことをしたと思いつつも、今はとりあえず逃げる。

 

ある程度距離も離れた。もう安心だろう。

そう思い、ことりは足を止め、胸をなで下ろす。

 

 

「みーつけた」

 

 

寄りかかった壁の後ろから声がしたと思うと、そこに希の姿が現れた。

 

希のセクハラまがいの脅しもあり、ことりは抵抗することなく確保。一同の元へと連行されたのだった。

 

 

_____________

 

 

 

「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」

 

「こ…ことり先輩がアキバで伝説のメイド、ミナリンスキーさんだったんですか!?」

 

 

 

声を上げて驚く花陽。ここは秋葉原のメイドカフェ、ことりの事情聴取のためにやって来た。

 

 

「ひどいよことりちゃん!そういうことなら教えてよ!

言ってくれたら遊びに来て、ジュースとかご馳走になったのに!」

 

「そこじゃねぇだろバカ穂乃果。つーか永斗は知ってたんだな」

 

「まぁ、前からメイド喫茶には通ってたからね。そこで最近ことり先輩に、ミナリンスキーの正体を隠すようおど…頼まれたんだよ」

 

 

一瞬「脅されて」と言いそうになった永斗、慌てて誤魔化す。

アラシも思い出した。そういえば前にアイドル研究部の部室でミナリンスキーのサインを見たことがあったのだ。他にも思い当たる節はちらほらある。

 

 

「それにしても、いつからやってたんだよ。穂乃果や海未も知らなかったんだろ?」

 

「ちょうどμ’sを始めたころ……」

 

 

ことりの話によると、4月頃に路上でスカウトされ、試しに行ってみたところ衣装が想像以上に可愛く、働いてたらいつの間にか伝説になっていた…ということだった。

 

 

「私、穂乃果ちゃんみたいに皆を引っ張っていくことなんてできないし、海未ちゃんみたいにしっかりもしてなくて…一人だけ何もないから…」

 

「そんなことないよ!歌もダンスも、ことりちゃん上手だよ!」

 

「衣装だって、ことりが作ってくれてるじゃないですか」

 

「少なくとも、2年では一番まともね」

 

「そうだぞ、お前がいなきゃライブすら出来な…ってオイ真姫!?」

 

 

本日二度目のまともじゃない認定に、深く凹むアラシ。

まぁそうだろう。骨折を数日で直し、腹に穴が開いた数日後に登校してくる奴を、世間一般ではまともとは言わない。

 

 

「私はただ…2人について行ってるだけだよ」

 

 

ことりが何に悩んでいるのかは分からなかったが、きっと幼馴染だからこそ感じてしまうのだ。2人との間にある“差”を。

 

 

 

________________

 

 

 

ことりの事を他言しないよう約束した一同は、帰路につく。

帰る方向が同じ絵里、アラシ、永斗、穂乃果、海未は一緒に帰っていた。

 

 

 

「でも意外だなー。ことりちゃんがそんなこと悩んでたなんて」

 

「意外とみんな、そうなのかもしれないわね。

自分の事を優れてるなんて思ってる人間、ほとんどいないってこと。だからみんな努力するのよ」

 

 

絵里の言う通りだ。ことりは大きな差を縮めようとして、努力を重ね、伝説と呼ばれるに至った。少し前の絵里もそうだった、生徒会長として至らないと分かっていたから、自分を殺して学校のために動いていた。結局、それは永斗に看破されてしまったわけだが。

 

 

「そうだな。お互い高めあえる相手との出会い、それが人間を前に進めるんだ。ことりは恵まれたんだよ、お前らっていう出会いにな」

 

「会長さんは良いこと言うね。μ’sに入ってもらって、本当に良かった」

 

 

永斗の言葉を聞いた絵里は少し笑い、分かれ道で4人と別れていった。

そんな中、穂乃果がふと思いついたことを言う。

 

 

「海未ちゃんは私を見て、もっと頑張らなきゃ!って感じたことはある?」

 

「…数えきれないほどに」

 

「えぇっ!?海未ちゃん、何をやっても私より上手じゃない!私のどこを見てそう思うの?」

 

「悔しいから秘密にしておきます。穂乃果とことりは、私の一番のライバルですから」

 

 

そう言って笑う海未と穂乃果。そんな2人を、アラシは羨ましく感じる。

アラシもμ’sのみんなから学んだことは山ほどある。永斗だって同じだ。かつて一人だった2人の少年は、今では多くの仲間に恵まれた。

 

アラシと永斗は心の底から思う。

 

μ’sに出会えて、本当に良かった…と。

 

 

 

__________________

 

 

その日の夜。ことりが働くメイド喫茶に、人影が一つ。

その後ろにもう一つ人影が現れた。奇妙なマークが入った黒いコートに身を包んだ、黒音烈だ。

 

 

「調子はどうですか」

 

 

その声に反応し、店の中にいる人影は軽く頷く。

 

 

「暴食が少々不機嫌です。成果を上げるなら今のうちですよ」

 

 

烈の姿はその一言を最後に消え去った。

店内の人影は一本のメモリを取り出し、強く握りしめるのだった。

 

 

 

__________________

 

 

翌日。

 

 

 

「チョコレートパフェ、おいしい」

 

 

 

夏休み中の空き教室で、ことりが何やら大真面目な顔で酔狂な事を言い出した。

 

 

「生地がパリパリなクレープ、食べたい。八割れのネコ、可愛い。五本指ソックス、気持ちいい…」

 

 

そんな奇妙な様子を外から見つめる、穂乃果、海未、アラシ。

 

何故こんなことになったかというと、それは遡ること数時間前のことだ。

「アキバでライブよ!」という絵里の一言から始まった。アラシも絵里から提案されたときは驚いた。なにせ、アキバといえばA‐RISEのお膝元。しかし、アキバはアイドルファンの聖地。そこで認められれば大きなアピールとなる。ということで、アキバでライブをすることが決定したのだ。

 

そして問題はここだ。絵里とアラシは、作詞にことりを指名した。

理由としては秋葉原をよく知っている人物だから、あとは当初の夏休みスケジュールが崩れ、かなり厳しくなったため、作詞のスピードを上げたいというものだ。海未の負担を軽減するため、別の誰かを指名することにしたのだ。

 

という訳で、作詞に奮闘していることりだが…

 

 

「ふーわふーわしたものかーわいいな、ハイッ☆

あとはマッカロンたっくさん並べたら~カラフルーでし~あ~わ~せ~☆

 

うぅ…やっぱり無理だよおぉぉぉぉ!」

 

 

相当難航していた。ことりが壊れる程度には。

 

 

「中々苦戦しているようですね…」

 

「絵描き歌みたいになってるもんな」

 

 

その後も数時間考え込むが、ワンフレーズも出てこない。

ことりは涙ぐみながら諦めた様子で、歌詞ノートを閉じた。

 

このままじゃよくない。そう感じた穂乃果は、ことりがいる教室の中に飛び込んだ。

 

 

「ことりちゃん!」

 

「ほ…穂乃果ちゃん!?」

 

「こうなったら一緒に考えよう!とっておきの方法で!」

 

 

 

_________________

 

 

 

その一時間ほど後。

 

 

「おかえりなさいませ、ご主人様♪」

 

「おかえりなさいませ!ご主人様!!」

 

「お…おかえりなさいませ…ご主人様……」

 

「なんで俺まで…」

 

 

 

どういうわけか、2年組の4人はメイド喫茶でバイトすることとなった。

 

 

 

________________

 

 

 

「すいません。ここの赤い髪のめっちゃ可愛い子のグッズ、全部下さい」

 

 

ちなみに、μ’sのグッズが入荷されて数日後、真姫のグッズを買い占める一輝の姿が目撃されたとか、されてないとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりすぎて笑えないラブライブ本編回。まぁ当然のように事件をぶち込んでいきます。今回は全3話となってます。ことりは地味に扱いづらいキャラだから敬遠してきたけど、これを機に色々書けたらな~と思ってます。

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!

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