ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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遅ぇ!&長ぇ!で定評のある146です。
あ、ビルドドライバー買いました。ビルドガシャットも無事確保。
とりあえず田舎なので、幸いにも在庫は余りに余ってました。買いに行くのに数時間かかるのが難点ですが…

さて、話を戻して。
総集編です。ですが、丁寧にやったところと、凄い雑になったところの差が激しいです。
いや、総集編って難しい…つーか、こんなことやってる場合なのか?ストーリー進めた方がいい気も…


とりあえず、どうぞ!最後までお付き合いください!


第28話 **なる*/**の***

ーアラシsideー

 

 

7月30日。朝の6時。

 

 

「…よし、こんなもんか」

 

俺は小皿に入れたみそ汁のだしを口に含み、呟く。

毎朝の朝食は俺が作っている。今日は米にみそ汁、あとはスーパーで安売りだった卵を使った目玉焼き。いつもならもう少しひねるところだが、今日は時間がないし、これでいいとしよう。

 

ちなみに、みそ汁のだしは煮干しでとっている。煮干しなら比較的安価で手に入るから家計にも優しい。さらに、事前に弱火で炒めることで香ばしさを足すことができる。だしを取った後は醤油、みりん、砂糖で煮詰めて佃煮に。これで明日のおかずは困らない。

 

 

「さてと、そろそろ起こしに行くか」

 

俺はエプロンを外して、永斗の部屋に向かう。

今日は早いって言ったんだが…これで言うこと聞くようじゃ苦労しないが。

 

永斗の部屋のドアを前にして、ノックをせずにそのまま開ける。

寝ていた場合、ノックじゃ絶対に起きない。地震でも起きないと思う。

そして、もう一つのパターンが…

 

 

 

「あ、アラシ」

 

 

ドアを開けると、テレビの画面の前に正座している永斗。

そして、部屋には無数のスナック菓子の袋と空きペットボトルが散乱していた。

 

 

「こっちのパターンか…」

 

 

もう一つのパターン。それは”寝てない”パターン。

こいつは稀に、一晩中起きて大量の菓子とジュースを貪りながら何かをするときがある。俺からしたら家計にも響くため、空き巣より質が悪い。

 

 

「…今何時?あぁ、深夜30時か。

そんじゃ、おやすみ……」

 

「どんな時刻の数え方だ!つーか寝るな、オイ!!」

 

 

時計を見るや否や布団をかぶった永斗に強烈な蹴りを入れる。

 

 

「痛いなぁ…もうちょっと貫徹明けの人間に優しくなれないの?」

 

「自己責任だろうが!てか、今日何の日か知ってんだろ?」

 

「今日…?」

 

 

永斗は訳が分からなそうな顔をしている。

あれほど言ったのに忘れるか?コイツ…その頭脳を普通に生かしてもらいたいものだ。

 

 

「オープンキャンパスだよ!リハーサルやるから早めに集合って話だっただろうが!!」

 

 

今日はついに来たオープンキャンパス当日。夕方に部紹介の時間を利用し、μ’sがライブを行うことになっている。瞬樹のせいで時間が取れなくなって一時はどうなることかと思ったが、なんとか時間を取り返すことができた。

 

 

「そういえば…でもリハーサルでしょ?じゃあいいじゃん。

見た感じ大丈夫そうだったし。てなわけでおやすみ…」

 

「だーかーらー!寝るなって言ってんだろ!!

大体、朝まで何やってたんだよテメェは!」

 

「そんなの決まってんじゃん。溜まってたアニメの消化だよ。

こないだ〇mazonから届いたBlu-rayBOXもあるし、時間あるときに見ちゃわないと」

 

コイツの部屋にテレビ置いたのが間違いだった。

烈にでも頼んで、コイツの部屋のWi-Fi永久に切断させてやろうか。

ん?いや、そういえば…

 

 

「ソレ買ったって言ってたが、

そういえば、こないだの報酬からいつの間にか10000程抜かれてたんだが…」

 

「あー、きゅうにやるきでてきたなー

いそいでがっこうにいかないとー」

 

 

この後、滅茶苦茶説教した。

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

ー永斗sideー

 

 

「あー疲れたー」

「にゃー」

 

 

アラシに説教されながら学校に向かい、早朝のリハを終え、僕と凛ちゃん、真姫ちゃん、かよちゃん、ついでに瞬樹が教室に入る。

 

僕は演出やその他の最終チェック。といっても衣装合わせも出来てるし、振り付けも完璧。僕だって何回もチェックするのは面倒だから、一回で済むように仕事をしているつもりなんだけど…心配性過ぎなんだよ、皆。

 

凛ちゃん達は踊ってたわけだから僕より疲れてると思う。

多分、授業中寝るな。

 

僕も一眠りしようと席に向かおうとする。

すると、僕の後から教室に入ってきた生徒がいた。

今日もちゃんと来た。約束は守ってくれるみたいだ。

 

 

「お…おはよう…」

 

「おはよ、青葉ちゃん」

 

 

楯銛青葉。こないだ僕とゲームで勝負した少女。

以前は死んだ妹を名乗る、潔癖効率主義のボクっ娘だったが、μ’sの皆とアラシ、あとは僕の活躍で本来の彼女を取り戻した。

 

彼女は大企業の社長令嬢で、色々あってサイバーって言うドーパントに狙われてたんだけど、そっちも僕たちが撃破

青葉ちゃんを共犯者にすることで社長の立場を奪う作戦は失敗に終わった。

と言いつつも、やったことと言えばチートだけ。ゲーム界からすればご法度だが、現実社会じゃどうということは無い。

 

というわけで、青葉ちゃんは学校に通うことになった。

 

しかし、それからというもの青葉ちゃんの態度が妙によそよそしい。

あんなことがあった後じゃ仕方が無いか。また今度ゲームでもして話そう。

 

そんなことより眠い。

僕は自分の席に座り、机に突っ伏した。

 

 

「かよちーん!真姫ちゃん!永斗くん!あと、ついでに瞬樹くんも。

こっち来てにゃ!」

 

 

寝たいんですが。

 

仕方ない。授業中に寝ることにしよう。

 

 

「どうしたの?」

 

「私、予習したいんだけど」

 

「予習なんかいらないでしょ。真姫ちゃん頭いいし。

寝てても質問に適当に正答しとけば問題ないって」

「それ出来るのアンタだけだから」

 

「でも予習は大事だよ。予習と復習すればテストだって備えられるし」

 

「かよちゃんが言うと説得力あるね」

 

「フッ…俺も予習などしたことは無い!」

「「知ってた」」

 

 

「ちょっとちょっと!こっちに注目!!」

 

「あ、ゴメン」

 

 

凛ちゃんがちょっと怒ってる。

あと、多分凛ちゃんも予習とかしないだろうな。

 

 

「で、何?要件って」

 

「ふっふっふっ…それは…

ジャーン!!」

 

 

凛ちゃんはポケットから自信満々に小さな4つのフェルト人形を取り出し、僕たちに見せた。

 

その人形はそれぞれ僕たちの姿を模していた。

 

 

「μ’sも9人になったし、こういうのあったらいいなーって思って!

まだ未完成なんだけど、一年生の分だけ上手くできたから見せようと思ったんだ!」

 

「すごいね…凛ちゃん、昔はこういうの苦手だったのに…」

 

「あ…だから指がボロボロなのね」

「にゃっ!これは…」

 

朝から気になっていたが、凛ちゃんの指は何枚もの絆創膏に覆われていた。

慣れないことするもんだから指とか針で刺したのだろう。

 

しかし、それにしてもよく出来てる。

真姫ちゃんもかよちゃんも細かいとこまで作りこまれており、瞬樹も人形からアホさがにじみ出ている。

 

凛ちゃん自身の分もよく出来てる。鏡を見て作ったんだろうか。

僕だったら絶対無理だな。3分で飽きる。

でも…

 

 

「何故、永斗だけ凝ってるんだ?」

「にゃっ!!??」

 

そう、瞬樹の言う通り僕のだけ無駄に高クオリティ。

服とかもだし、寝ぐせも毛糸で再現してある。

 

「いや、ほら!たまたま最初に作ったのが永斗くんので、一番やる気があったっていうか、作ってたらいつの間にかこうなってたというか…別に永斗くんだから気合が入ったわけじゃなくて…」

 

何を焦ってるんだろうか。

 

 

「でも凛ちゃん、永斗くんヘアピン付けてないよ?」

 

「あ、そういえば…」

 

凛ちゃん作の人形には緑のヘアピンが付けてある。

 

「そういえば付けてない。ヘアピン。

いつもだっけ?」

 

「いつも付けてないわよ。自分に関心無さすぎよ」

 

「あ、それは…」

 

 

凛ちゃんは今度は鞄の中を探りだし、小さい箱を取り出し、僕に渡した。

 

 

「永斗くん、最初に会った時から結構髪伸びたから、寝ぐせもひどいし、こういうの欲しいかと思って……」

 

中には人形に付いてるのと同型のヘアピン。

凛ちゃんは何故かモジモジしてる。可愛い。

 

確かに髪は伸びた気がする。金もないし、散髪もできないし、する気もない。

 

 

「言われてみれば、初めて会ってから結構経つね。

確か5月の最初くらい…あれ?まだ2か月しか経ってないの?」

 

「私が仮面ライダーに初めて会ったのはもう少し前だけど…

μ’sに入ったのはそのくらいね」

 

「色んなことがあったから、時間がたつのがゆっくりに感じるよね…」

 

 

僕が凛ちゃんに会ったのは、ゲーム屋だった。

新作ゲーム タドルクエストを買いに行ったとき、偶然出会ったのが最初だった。

いまじゃそのゲームもアイテムコンプも済ませて全クリしたけど、時が流れるのは早いのか遅いのか…

 

 

「そういえば、3人が加入したときも色々大変だったねー」

 

「ん?なんの話だ?」

 

「そっか、瞬樹くんはまだいなかったから知らないんだ。

実はμ’sに入る前、凛たちドーパントに襲われたんだよ!」

 

「それも飛び切り変な奴に…今考えても面倒くさい」

 

 

凛ちゃん達を襲ったのは、組織の最高科学者 天金狼。

ぶつくさと独り言を言う変人で、四元素を操る”エレメントメモリ”で僕たちの前に立ちふさがった。

 

今思えば、天金はオリジンメモリの適合者である凛ちゃんを狙って来たのだろう。

あの時は本当に無茶した。僕もアラシも。

彼女達を”友達”として認識し始めたのもこの頃。アラシのおかげだ。

 

でも、気になるのは天金と初めて会った時の発言…

 

 

 

『久しぶり、士門永斗君……』

 

 

僕は天金と面識があった?なくした記憶に関係が?

だとしたらどういう関係?ただの顔見知り、もしくは敵。

 

それとも……

 

 

 

「永斗くん!」

 

「…あ、ゴメン凛ちゃん。なんの話だっけ?」

 

「話ってわけじゃないけど…

大丈夫?顔色悪いよ?」

 

 

…考えるのは止めよう。今日はオープンキャンパスだ。

いずれは分かることだ。今考える必要はない。

 

 

「大丈夫。それと、ヘアピンありがたく受け取っとくよ」

 

そう言うと、凛ちゃんは嬉しそうに顔いっぱいの笑みを浮かべた。

そんなに嬉しかったのかな?僕だってプレゼントくらい受け取るし褒めるよ。

 

 

「…?オイ、凛!俺の人形に竜騎士の象徴たる槍がついてないぞ!」

 

「爪楊枝でも持たせたら?」

 

「永斗との扱いが違いすぎなんですが!?」

 

 

 

________________________

 

 

 

ーアラシsideー

 

 

「ふぃ~終わった~!」

 

午前中の授業を終え、大きく伸びをする俺。

今日は午前中のみ授業をし、午後からはオープンキャンパスの取り組みをする。

本来今日は休日なのだが、授業の見学も兼ねて授業をした。生徒側からしたら飛んだ迷惑だ。

 

 

「やっと終わったね~。海未ちゃん、今日の数学分かった?」

 

「今日は単純なベクトルの問題でしたから。

次回からベクトル方程式なので予習をしておかなければ」

 

「さすが海未ちゃん…アラシ君は?」

 

「なんとなく分かった」

 

「海未ちゃんだけでなく入学して1か月しか経ってないアラシ君にまで…

私ダメなのかな…」

 

「そんなことないよ!穂乃果ちゃんだって…」

 

「甘やかすな、ことり。ダメなものはダメだとはっきり言っておけ」

 

「うぅ…アラシ君が厳しい…」

 

「日頃から勉強をしないからです」

 

 

1か月前は慣れなかったこの会話も、今じゃ無いと落ち着かない。

まさか俺がこんな生活をするとは…半年前の俺なら思いもしなかっただろう。

 

 

「お前ら、これからどうする?

ライブまではまだ時間があるだろ?」

 

「うーん…もう一回練習しておきたいところだけど、こうも人が多いと屋上だと見られちゃうし、講堂は使えないし…」

 

 

見られたらダメな理由としては、永斗曰く「ライブは初めて見た時の興奮が大事」だかららしい。

 

今日の朝練を見た感じだと特に心配はなかった。

事前練習は無くても大丈夫だろう。よって、俺は暇だ。

 

「じゃあ海未。ちょっと面貸してくれよ」

 

「私…ですか…?」

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

「あ、お待ちしてました!どうもお世話になってます、新聞部の部長及び編集長の鈴島です!」

 

 

俺たちは新聞部部室へ。そして毎度おなじみのインチキ新聞記者、鈴島貴志音だ。

 

 

「アラシ、これは…」

 

「前にマネージャーとしてインタビューに答えるっていう約束してな。

それが今日になって急にするって言いだすもんだから、こうして来たわけだ」

 

「いやー、実は今日の部紹介でウチの新聞を使って軽く紹介をするつもりなんですが、先日何者かに新聞をすべて破棄されてしまいまして。

急遽、新しい新聞を作ることになったのですが、最近作ったばっかりだったのでネタが足りず、ネタの数合わせとしてこうしてお呼びしたわけです!」

 

 

鈴島が涼しい顔で言った一言に海未は驚くが、俺は特に驚かない。

 

「新聞が全て破棄って…ただ事じゃないですよね!?」

 

「特に不思議はない。コイツ等、学校中に敵作ってるからな」

 

 

探偵部である俺たちに相談に来なかったところ、あちら側からしても大したことではないのだろう。こんな事件がよくあるって、部としてどうなんだ。

 

 

「さて、さっそく始めましょうか!」

「ちょっと待て、その前に聞きたいことがある」

「?」

 

俺はずっと疑問に思っていたことをぶつける。

 

 

「あの時、お前は俺がマネージャーになるってことを知ってたんだろ?

つまり、共学に向けてのプロジェクトを知ってたってことだ。

理事長に聞いたが、あれは廃校を免れる”最後の切り札”。機密事項のマル秘プロジェクトだったはず。それをどうやって?」

 

「それはアレですよ。理事長室に盗聴機仕掛けました」

 

 

帰ってきた予想以上の回答に、今度は俺も口を開けて驚いた。

 

 

「やっぱり理事長室は情報の宝庫ですね。新聞にできないようなこともわんさか出てきました。それに…”もっと面白いこと”を知れましたし」

 

 

その時、俺は背筋に悪寒が走るのを感じた。

コイツはただの変人じゃない。絶対に敵に回してはいけない奴だ。

 

「それで、今はその盗聴機は」

 

「バレると面倒なんで、既に回収しました。

さぁさぁ、始めましょう!言ったように、多少の脚色と変更は了承してくださいよ!」

 

 

鈴島がウキウキ顔で道具を取りに行ってる間、聞こえないようにヒソヒソ話で海未が話しかけてきた。

 

「何故私を呼んだのですか?できれば関わりたくないのですが…」

 

「最悪、俺とμ’sで一番戦闘力があるお前でこの部を制圧するためだ。

これ以上変な噂を立てられると困るからな」

 

「インタビューを受ける心構えではありませんね」

 

 

まぁ、本心は”被害者は多い方がいい”なのだが、これ言ったら流石に怒られる。

なんて考えていると、鈴島がやってきた。

 

 

「さ、アイドル研究部 μ’sのメンバーの園田海未さん!マネージャー兼、探偵部部長の切風アラシさん!インタビューを始めますよ!」

 

 

 

 

_________________________

 

 

 

ー永斗sideー

 

 

午前中の授業が終わり、僕と皆はオープンキャンパスをいろいろ回ってる。

授業?もちろん爆睡ですよ。

 

オープンキャンパスは一般公開もされているため、ちらほら明らかに中学生ではない人もいる。

 

他の部は部紹介の時間以外にも、ブース形式でいろいろしている。

僕たちも何かしようとは考えたが、ライブ以外に特に思いつかなかったし、無しにした。

部紹介ではないので、同好会も紹介をしている。これを機に仲間を増やして部にするチャンスだから。

 

 

「永斗くん、アラシ先輩はどうしたにゃ?」

 

「アラシはなんか用事があるって。適当に合流するって言ってた」

 

 

さてと、どこ行こうか。

ライブまでまだ結構時間がある。準備とかするにしても早いし…

 

とりあえず、テキトーに知り合いのとこ行くか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

「よぉ!士門か?こないだはありがとな!」

 

「ん?あ、鼠谷先輩か」

「違うよ、牛谷先輩にゃ!」

「何言ってるの。えっと…豹谷先輩じゃなかった?」

「誰だ貴様」

 

「虎谷だ!!あと、最後の奴は論外だろ!」

 

 

僕たちが向かったのはゲーム研究会。

噂で、ゲーム勝負を挑んでどこかの部から場所を奪ったことを聞いていたので、そこに向かった。

 

そんで、この…と…何とか谷先輩は、さっき言ったサイバー事件の依頼人。

父親を貶めたサイバーを捕まえてほしいという依頼で、見事に探偵部最初の依頼を解決した。

アレは僕もよく働いたと思う。うん。

 

 

「ゲームができるって聞いたんだけど」

 

「おう!待ってたぜ。さっきまで青葉もいたんだが…

今、部長が戦ってるから、それ終わったらアタシとやろうか!」

 

 

やっぱりゲームはこういう和気あいあいとした感じに限る。

こないだみたいな面倒なのはゴメンだね。

 

 

「ハッハッハ!また会ったわね、津島瞬樹!

いや、”沼津の魔王”!!」

 

「ッ…!貴様は…”鉄壁の竜使い”!」

 

 

あー、早速面倒な展開に…

彼女は九十九とか言ってたカードゲーマー。瞬樹に負けたプレイヤーだ。

 

 

「ここで会ったが百年目!改造した我が”零壁竜連牙”デッキで勝負だッ!」

 

「いいだろう!だが、デッキがない。

まぁいい、貴様など寄せ集めのデッキで十分だ!」

 

 

絶対負けるよね。あの強さ烈くんのデッキありきだもんね。

 

関わりたくないな…部長さんの試合でも見とくか。

 

 

奥では電子ゲームでの2対2の試合が。

ゲーム研究会側は部長さんこと、灰間先輩。そして、副部長の木部先輩。

 

そして相手が……

 

 

 

「ちょ…おかしいわよ!絶対今の反則よ!レフェリー呼んで、レフェリー!」

 

「の…希?キャラが動かないんだけど、どれがパンチだったかしら?」

 

 

にこ先輩と絵里ちゃんだった。

もう帰りたい。

 

やってるゲームはノックアウトファイター。

でもにこ先輩はコンボがよくわかってないし、絵里ちゃんはコマンドがよく分かってない。

 

 

「おやおや、また私たちが勝ってしまったね。大口叩いてその様とは…笑わせてくれる。

絵里もてんでダメじゃないか!堅物と小学生では勝負にもならないか。ハハハハハ!」

 

「もう一回よ!ダメダメな絵里はほっといて、今度は希と私で行くわよ!」

 

「ウチ、にこっちが負ける方に500円!」

「勝手に何やってんのよ!!」

 

 

カオス以外の何物でもない。何だこの惨状。

灰間先輩はにこ先輩の性格分かって煽ってるな。相変わらず性格が悪い。

 

まぁでも、別に損害が出るわけじゃないし…

 

 

「言い忘れたけど、ここでの部同士の勝負は賭け形式だからな」

 

 

…つまり、もう既に部の何かしらが奪われ、これから奪われようとしていると……

 

 

あーもう!面倒臭いな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

「はい、じゃあお疲れさまでした」

 

 

メンバーが受けた勝負を僕が受け、早急に勝って終わらせた。

カードも寄せ集めで案外勝てるもんだ。ノックアウトファイターも2対1でちょっと苦戦したが、何とか勝てた。

 

今度からゲーム研究会は僕一人で行こう。

 

 

さっきので3年生組と合流し、今は合計8人パーティー。

RPGじゃないんだから、全く…

 

 

「で、どこ行く?アラシはまだみたいだし」

 

「それなら。ちょっと行ってみたいところがあるんだけど」

 

 

手を挙げたのは希ちゃん。

 

口にする言葉に、事情を知る僕だけが驚愕することになる。

 

やれやれ、希ちゃんも変わってるよ。

会うのか…彼女に。

 

 

 

 

____________________________

 

 

 

ーアラシsideー

 

 

 

インタビューを受けること数十分。

俺たちはいままでのアイドル活動を余すことなく話したが…

 

 

 

「弱いですね」

 

「あ?」

 

なんだか文句ありげだ。

んなこと言っても知らん。これ以上は特には無い。

 

 

「記事にするなら…もっとこう、面白さというか、驚き感があるといいんですよ!」

「知らん」

 

「ていうか、jk9人に対して男3人って、圧倒的ハーレムじゃないですか!」

「知らねぇっつってんだろ」

 

「そうだ!マネージャー一人ずつメンバーに3股してるって設定でどうです?」

「良い訳ねぇだろ!!シバくぞ!」

 

 

本当にコイツは苦手だ。早急にぶっ飛ばしたい。

 

 

「じゃあ、探偵部の話教えてくださいよ!その話を盛…脚色して記事にするんで!」

 

「今、盛るって言いかけたよな?」

 

つっても、探偵部を結成したのはごく最近。

特に話すことは…

 

 

「それなら探偵部結成前の話をするのはどうでしょう。

色々ありましたし、それでもインタビューには十分かと」

 

「それです!じゃあお願いします!」

 

「勝手に決めてんじゃねぇよ。

まあいいや。それじゃ…そうだな…振り返りも兼ねて、穂乃果たちと出会った事件でも話すか」

 

 

 

あれは新学年が始まる前。閑古鳥が鳴く事務所に入ってきた突然の依頼だった。

 

やってきたのは穂乃果と海未。

その依頼内容は、「白い怪物を調査してほしい」というものだった。

 

 

「お!最近話題の怪物事件ですね!」

 

「最近じゃ増えてるからな。この時はそこまで多くは無かったんだが…」

 

 

俺は穂乃果たちが見たって言う、とある有名女優を追った。

話によると、その女優が怪物になったらしい。

 

そして調査を進めていくと、その女優以外にも行方不明になっている人物が多くいることが分かったんだ。

 

そして、その情報を見ているうちに、その法則性を発見。

その後の推理で見事に犯人を突き止めたってわけさ。

 

 

「わりとざっくりですね」

 

「事細かに教えるわけにはいかねぇからな。

被害者もここにいるし」

 

 

俺は親指で海未を指す。

海未は申し訳なさそうにうなだれている。

 

 

「犯人は海未に化けた怪物だった。

俺たちの前に現れた海未は、最初から偽物だったんだ」

 

「本当に面目無い…」

 

 

実のところを言うと、犯人は有名俳優。”ダミー”のメモリを使って犯行を行っていた。

実刑判決が下され、芸能界からは追放。今は刑務所で服役中だ。

 

 

「それで、その後は?」

 

「「その後?」」

 

「怪物が出た後ですよ。事件解決ってことは、怪物も退治したんですよね?」

 

 

しまったぁぁぁ!!このままではバレる!仮面ライダーが俺たちだってバレる!

どう誤魔化す?仮面ライダーが通りがかったとか不自然だし…

そうだ!

 

 

「知り合いに仮面ライダーがいるんだよ!

ちょっと連絡したらすぐ来てくれてさ~。だよな!」

 

「え…えぇ!最近、一緒に食事にも行きましたし!」

 

「そうそう!もうマブダチっつーか、もう兄弟だね!うん!」

 

「そうですか…」

 

 

あっぶねー!危うくバレるとこだった。

いや、大丈夫だよな?バレてないよな?我ながら苦しすぎる言い訳だったんだが…

 

海未を連れてきて本当に良かった。

他の奴らなら間違いなくボロ出してた…

 

 

「うーん…もう少し話を聞きたいですね!」

 

勘弁してくれ!

 

「時田くんは何か聞きたい話あります?」

 

 

その言葉に、奥で作業していた一人の生徒が反応する。

あの制服は…

 

 

「男子生徒か?俺たち以外もいるのか」

 

そういえば、理事長が俺たち以外も追って編入すると言っていた気がする。

 

 

「最近転入してきたテスト生、時田(ときた)(かい)くんです。

2年生ですが、違うクラスの様ですね。彼も私たちと志を同じくするジャーナリストです!」

 

「海未、知ってたか?」

 

「いえ。聞いてませんが…」

 

 

見た目は背は少し高めで、髪は男子ならよくあるくらいの長さ。

ぱっと見はおとなしそうな顔で、見た感じ普通の男子高校生といったかんじだ。

だが、志を同じくって…要するにカス野郎ということになるが。

 

 

「そうですね。僕は…”犯罪者連続毒殺事件”について聞きたいですね」

 

 

なんだそりゃ。そんなの担当した覚え…

 

あるな。あの事件か…

 

 

「…あの事件ですか。私から話すのはちょっと…」

 

海未も勘付いたようだ。

その事件とは、謎の人物”ひょっとこ男”が起こした、連続殺人事件。

社会に潜む犯罪者たちを証拠を使って脅し、命がけのゲームに参加させる。

失敗、ルール違反でゲームオーバーとなり、ひょっとこ男が”イモガイの記憶”を内包したメモリ”コーヌスメモリ”でプレイヤーを処刑して行くという事件だった。

 

俺たちの目の前でプレイヤーが処刑され、それで俺たちも捜査することになった。

 

だが、俺のせいで海未が毒を受け、誘拐されてしまった。

責任を感じ、俺は一時μ’sを抜け、海未を助けるためにゲームに参加した。

 

その後いろいろあって、俺はひょっとこ男のもとにたどり着き、新たなメモリ”オーシャンメモリ”を手に入れてコーヌスを撃破した。

 

大事なことに気づけた事件だったが、俺も海未も死にかけたし、何より犯人がまだ捕まってない。

 

 

「悪い。その事件は話せねぇ。別のでいいか?」

 

 

これ以上、海未に辛い思いさせるわけにもいかねぇしな。

 

 

その後、数十分間のインタビューを受け、俺たちは解放された。

ちなみに、その後公開された新聞を見て、その改変っぷりに絶句したのは言うまでもない。

 

 

 

____________________________

 

 

 

ー永斗sideー

 

 

僕たち一行が到着したのは、部がそれぞれ紹介活動をする中、片隅で小さく設けられているコーナー。

カーテンで仕切ってあり部屋のようになって、中は見えない。

 

看板には地味な感じで”占いの館”。

 

お気付きの人がいるかもしれないが、とある人物が個人的に結成した”オカルト同好会”の活動の一環として行われている。占いがオカルトに入るのか微妙なところだけども。

 

僕たちはそこに入る。事情が事情なので、僕と希ちゃんだけ。

すると、予想通りの人物がそこに座っていた。

 

 

「久しぶりね…東條希」

 

「せやね。深雪ちゃん」

 

 

制服の上にローブを身にまとったその少女は、3年生の斎藤深雪。

何を隠そう、彼女はかつて希ちゃんの命を狙っていたプリディクション・ドーパントだった。

彼女の未来予知の能力にはずいぶん苦しめられた。後から予知じゃなかったことが判明したけど…

 

ちなみに、そのとき壊した壁にもずいぶん苦しめられた。

 

確かあの頃はちょうどファーストライブ。彼女が予知した未来は”μ’sのライブには誰も来ない”だったが、オリジンメモリの加護を受けた適合者たちは集まり、その運命を突破して見せた。

今思えばあの時集まったのが今のμ’sで、あのプリディクションの犯行こそ、組織が適合者を判別する計画の一つだったのだろう。斎藤先輩にはその気がなかったようだけど。

 

彼女は本来学校に通えない身。殺人未遂、脅迫、メモリ所持、器物損壊etc…懲役もんだが、被害者である希ちゃんきっての要望で、僕たちは彼女を見逃すことにした。それでも要注意人物として、あれ以来アラシが監視している。

 

 

「何しに来たの?」

 

「何って、占ってもらいにきたんや。

ちゃんと上達してるか見てみたいからね」

 

 

斎藤先輩は気に食わないような表情のまま、タロットをシャッフルし、手際よく並べていく。

 

「タロット始めたん?前は水晶だったのに」

 

「水晶は止めたわ。

本当は占いを止めようとも考えた。占った未来なんて、簡単に変えられる。

私たちがやってることは、相手の未来を吹聴して生を縛り付けてるに過ぎないって…」

 

 

そこまで話すと、斎藤先輩の手が止まった。

 

 

 

「許せるの?」

 

 

斎藤先輩が放った一言で、空気が静まり返った。

僕はあえて何も言わない。この2人の関係は面倒だし、これは希ちゃんが出すべき答えだと思う。

 

 

「許すって…何が?」

 

「とぼけないで!忘れたわけじゃないでしょう?私があなたを殺そうとしたこと…

メモリに心を支配されてたとはいえ、そこの探偵がいなかったら、私はあなたを殺してた!」

 

斎藤先輩が指さしてるのは…あ、僕っすね。

とりあえず会釈しとこう。

 

 

「現にこうやって生きてるんやから、ええやん」

 

「そういう問題じゃないの!本当なら、私はあなたに顔向けなんてできない…」

 

「ウチはもう気にしてへんよ。ウチが好きで許してるわけだし…

ねぇ、中学の頃、ウチが転入してきた時の事覚えてる?」

 

 

おぉっと。希ちゃんの過去編か。これは少し気になるところ。

 

 

「ウチは両親の仕事で、頻繁に転校してて友達がいなかった。いつしか、友達を作ることに意味を感じなくなってた。でも、クラスで人気者だった深雪ちゃんだけが、ウチに話しかけてくれた…」

 

「…忘れるわけないでしょ。クラスで孤立してたあなたを見てられなくて、水晶片手に話しかけたこと。

でも、あれは上の立場だった時の哀れみ。あなたへの好意じゃない」

 

「そうかもしれんね。でも、ウチは知ってる。深雪ちゃんは本当は優しいってこと。

だから深雪ちゃんを許したんや。中学の時からずっと、友達になりたかったから…」

 

 

話を聞いた斎藤先輩の目が潤んでいる。

もっと早く話をできていたら、斎藤先輩が希ちゃんを友達として受け入れられていたら、彼女は怪物になる道を通らずに済んだのかもしれない。

 

 

「ほらほら、早く占ってよ。ウチらは占ってもらいに来たんよ」

 

「……いい結果になるかはわからないわよ」

 

「悪い結果でも、μ’sの皆でなら乗り越えられる」

 

「タロットなんてしばらくぶりだから、外れるかも…」

 

「きっと当たるよ。ウチにタロット教えてくれたの、深雪ちゃんやし。

カードがウチにそう告げてる」

 

 

 

…本当に凄いよ。希ちゃんは。

殺されそうになった相手を許して友達になるとか、普通じゃない。

 

斎藤先輩の罪は消えない。でも、彼女は希ちゃんに救われた。

 

今度は誰かが不幸になる未来でも、自分の破滅の未来でもなく…

誰かが幸せになる未来を見てほしいものだね。

 

 

 

出たカードは星の正位置。意味は「未来の可能性」。

 

 

 

 

 

 

そしてもう一枚。僕へのカード。

 

 

 

月の正位置。意味は…「うつろう実体」、「隠されたもの」……

 

 

 

 

 

___________________________________

 

 

 

ーアラシsideー

 

 

 

「ねーねーアラシ君!家庭部が部紹介のための料理作ってるって!行ってみようよ!!」

 

「弓道部は大丈夫でしょうか…部長は大丈夫だと言っておられましたが…」

 

「みんなどこだろう…携帯は持ってきてないし…」

 

 

うるせぇ。

 

新聞部のインタビュー、もとい取り調べを終えて再び穂乃果、ことりと合流したのだが、本当にまとまりと落ち着きがねぇ!主に穂乃果が。

 

永斗にも連絡したが、返事がない。まぁ、面倒がって返事しないのはよくあることだが。

どうせ部紹介の時間になれば集まることになってるから、特に焦ることは無いが…

 

 

 

「ちょっとアラシ君、あれ見て!」

 

「あーもう、うるせぇな!ずっと喋ってねぇと死ぬのか!遊泳性のサメかお前は!」

 

 

やっぱこいつをずっと相手するのはしんどい。絵里か花陽と合流したいものだが…

 

 

 

 

 

「切風のアニキ!」

 

 

後ろから声が聞こえ、俺たちはいっせいに振り返る。

そこに立っていたのは、複数の男たち。顔にピアス付けてるやつもいれば、眉毛沿ってるやつもいるし、ナンパにでも来たのかってやつもいる。見た目は完全に人生舐め切ってるような感じだ。

 

 

「お勤めご苦労様です!!」

「「「「ご苦労様です!!」」」」

 

「やめんか!恥ずかしい!」

 

 

俺はこいつらに見覚えがある。ちょこちょこ会っては、こうやって大声で挨拶してくる。やめてほしい。

穂乃果たちは怖がっているような感じで、俺に身を寄せ、小さな声で囁いた。

 

 

「アラシ君、この人たちは…?」

「アニキって言ってたけど、どう見ても年上だよね?」

「まさか…裏の業界に関りがあるのでは…」

 

「なんだよ裏の業界って…

アイツ等はとある事件の関係者だ。もうちょい正確に言えば、事件の発端となった奴らだな。

今はキツくお灸をすえて、改心してるが」

 

 

とある事件。それは俺に大きな心の傷を残して行った事件だ。

 

俺が音ノ木坂でバイトを始めた頃、以前から清掃員をやっていた小森さんという高齢の男性と知り合った。

小森さんは優しい人で、俺に正義について語ってくれたこともあった。

 

だが、小森さんはメモリを所持し、ダークネス・ドーパントとして夜間に迷惑行為を行う者たちを粛清していた。これが小森さんの裏の顔だった。

 

俺は悩んだ末にダークネスを撃破。小森さんはメモリ所持罪、暴行罪で逮捕され、現在服役中。

 

俺はその後、小森さんがドーパントになるきっかけを作ってしまった奴ら、つまり、ダークネスによる被害者を片っ端から当たり、小森さんの思いを伝え、訴えかけていった。

それが、目の前にいるコイツ等。不良グループの時なんかは聞いてもらえなかったから、少々手荒な手段を使った結果、こんな感じになった。

 

 

 

「俺たちあの後考え直したんです!今じゃ反省もしてます!

最近はアニキに考え方を変えられた奴らと一緒に、路上でストリートダンスやってます!」

 

「ここにいる奴ら、全員アニキに恩義感じてるんす!」

 

 

なんでこうなったかな…俺はただ少しでも反省してもらおうとしただけなんだが…

いや、確かにその時は昂ってたから、結構な勢いで叱ったり、全然関係ないことで人生論語ったりはしたけど…今じゃほとんど何言ったか思い出せん。

 

 

「何かあったら、いつでも呼んでください!力になります!!」

 

「いらねぇよ。お前ら弱いし」

 

「それはアニキが強すぎるんですよ…」

 

 

まぁ、反省してくれてんならいいとしよう。人に迷惑かけなくなったんなら、それに越したことは無い。

穂乃果たちは相変わらず怯えてんな。海未なんか弓があったら打ちそうな感じだ。

後からちゃんと弁明しておくか。

 

 

「あ、そうだ!さっき、この辺でとんでもないやつ見ましたよ!」

 

「とんでもない奴?」

 

「アニキほどじゃないんですけど、とんでもなく強くて…

さっき、ここに来る途中、自転車に乗ったひったくりに出くわしたんですよ。

捕まえようと追いかけてたんですけど、通りがかった眼鏡の男が、自転車に乗ったままのひったくりを一撃で蹴り飛ばしたんです!蹴られた自転車は一撃でボロボロに…」

 

 

蹴り…眼鏡…いや、まさかな…

 

そんな時、スタッグフォンに連絡が入った。永斗たちからだ。

俺たち以外の全員を連れてるらしい。早いとこ合流するか。

 

 

 

 

_____________________________

 

 

 

 

「あ、いたいた!」

 

 

穂乃果が永斗たちの姿を見つけ、指をさし手を振る。

こっちに向かって手を振り返してんのは…凛か。永斗は眠そうにあくびをしている。

 

 

「遅いよ。こっち色々と大変だったんだよ」

 

「こっちもこっちで大変だったんだからな、クソニート。

ちゃんと全員いるんだろうな。そろそろ準備しないと時間が…」

 

 

俺がメンバーの人数を数えていると、違和感に気づいた。

違和感って言うか、一人多い。にこの隣。3年生の制服を着てるのは…

 

 

 

「久しぶりね。切風アラシ」

 

「お前は…久坂陽子か!」

 

 

彼女も前に解決した事件の関係者。

にこの奴が脅迫されていたことがあり、それについて調べていた時に出会った。

彼女は元アイドル研究部で、やめた後はキックボクシング部で部長をやってる。一度手を合わせたことがあるが、中々の実力者だ。

 

彼女の協力もあり、俺たちは事件の犯人であるユニコーン・ドーパントを倒すことができた。

 

 

「この人が久坂先輩…私たちの先輩にあたるのですね」

 

「まぁ、私は結局やめちゃったんだけど」

 

「歌とかダンスとか得意なんですか!?」

 

「えっと…歌はにこの方が上手かったけど、ダンスは私が…」

 

「じゃあ、今度教えてください!先輩♪」

 

「だな。絵里とは違う視点で教えてくれるとありがたい。

よろしく頼むぜ。先輩」

 

 

「ちょぉっと!!私の時と態度違いすぎじゃない!?」

 

 

横でなにやらにこが騒がしいが、放っておこう。

 

 

「それより、なんでってこんなとこに?」

 

「途中でにこに会って、ちょっと凄い人見つけたから見てもらおうと思ってね。

ここに来るときひったくりに会って、そこで助けてくれた人なんだけど…」

 

 

ん?その話まさか…

 

 

「あ、そう。あの人」

 

 

久坂が指さした方向には、一人の男の腕を掴んでこちらに来る、キックボクシング部員と思しき女子生徒。そして…

 

 

 

「何のつもりだ。俺はその部紹介とやらには出ないと言っているだろう」

 

「ねーねー。アタシ飽きてきちゃったからそろそろ帰ろうよー!」

 

 

 

 

引っ張られてきたのは眼鏡の長身の男。後を追いかけてくるのは、茶髪で八重歯の女。

この面を忘れるわけがない。案外早い再会だったな…!

 

 

 

「ラピッド、ルーズレス……!」

 

 

「お前は…」

 

 

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

 

適当な口実を作って、俺と永斗、あと瞬樹だけで別の場所に移動。

ラピッドとルーズレスも連れてきた。

 

 

 

「何のつもりだ。仮面ライダー」

 

「それはこっちのセリフだ。何しにここに来た。

生徒を巻き込むようであれば、俺たちも黙っちゃおかねぇぞ」

 

 

俺と瞬樹は戦闘態勢をとる。永斗も相変わらず覇気の無い佇まいだが、警戒はしているようだ。

 

この2人は組織のエージェント部隊の刺客。

つい最近、俺たちと死闘を繰り広げたが、新たな力であるライトニングを手に入れ、俺たちが勝利した。

 

その後は朱月に回収され、それからは姿を見せていなかったが…

 

 

 

「勘違いするな。俺たちは戦いに来たんじゃない」

 

「何?」

 

「そーだよ!せっかくJapanに来たんだし、観光くらいしておかないと」

 

 

そんなことを言っているが、どうも信用できない。

だが、嘘をついてるようにも見えない。

 

 

「俺たちはお前たちにメモリを破壊され、既に任務からは外された。

俺は仕事以外で人を狙わない。そこまで俺たちは暇じゃない」

 

「ふーん、よく言うよ。休日にわざわざ学校見に来る大人がさ」

 

 

そう言う永斗の顔を、ラピッドは黙って見つめる。

永斗は気味悪がってすぐに目線をそらすが。

 

 

「なるほど。やはり……」

 

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いや何でもない」

 

 

さっきラピッドが何か言った気がしたが…

 

 

「俺たちはプライベートでここにいる。ルーズレスが暇だとうるさいからな。

それに……

 

戦いとは縁のない国で、お前たちがどう育ってきたのかに興味があった」

 

 

そう言って、ラピッドはどこか遠くを眺めるような目をする。

やっぱりか。外国人とは思ってたが、恐らく戦場を経験したことのある元兵士か何かだろう。

 

 

「いい国じゃないか。少なくともこの学校の中では、どいつもこいつも目が輝いている。

俺たちも、こんな国に生まれられたら……」

 

 

そう呟き、空を見るラピッドの目は、今度は酷く悲しそうに見えた。

同時に、その空に何かを強く望むような…

 

 

 

「でもアタシは今のままに満足してるよ。こうやってラピッドと一緒に暴れられるし!」

 

「あぁ…そうだな」

 

 

俺は初めて、この2人に俺と同じものを感じた。

組織の奴らも、ただの悪人ばかりじゃない。つらい過去を持ち、悩んだ末に道を踏み外したものだっている。

 

俺も一歩間違えば、どうなっていたか分からない。

もしこれから先、何かを抱え込んで、苦しみながらも人々に仇をなす者に出会ったとき…

 

俺はいつも通り、そいつに刃を向けることができるのだろうか…

 

 

 

 

「というわけだ。俺たちに戦う意思はない。せいぜい、与えられた幸せを謳歌するといい。

最後に言っておこう…」

 

 

すると、ラピッドはおもむろに口を開き…

 

 

「After a calm comes a storm.一人の戦士として、これだけは忠告しておく」

 

「じゃねー!今度また遊ぼうね、竜騎士クン!」

 

 

「上等だ猫女!今度こそ叩き潰してくれる!!」

 

「ホントに、できればもう会いたくないね…

あれ?どうしたのアラシ」

 

 

「…いや、なんでもない」

 

 

去っていくラピッドとルーズレスの背中を見ながら、アイツが最後に残した言葉が頭に木霊する。

俺も最近英語を勉強している。あの意味は「凪の次には嵐が来る」。これは一体…

 

 

時計を見ると、部紹介の時間が迫っていた。

 

 

 

 

「やっべぇ!急ぐぞ、お前ら!」

 

「えー…僕もう疲れたからそういうの…」

 

 

 

その時だった。

 

永斗が急にうめき声をあげて膝をついた。頭を押さえ、苦しんでるように。

 

 

 

「オイ、どうした!」

 

「いや…大丈夫。ただの頭痛。徹夜明けだからかな…?

でも平気だよ。ちゃんとμ’sのライブ見なきゃだし…」

 

「そうか…?」

 

 

 

とりあえずは様子を見ることにした。

本当何でもなければいいが…

 

 

 

_________________________________

 

 

 

 

数十分後

 

 

 

部活動の紹介が始まり、μ’sも衣装を着て、スタンバイ済み。照明なんかもOKだ。

ここは俺たちがする予定だったが、ヒデコ、フミコ、ミカの通称ヒフミトリオが引き受けてくれることになった。烈も手伝ってくれるらしい。

 

永斗と瞬樹はどこかに行ってしまった。すぐに戻ってくるだろう。

 

今までドーパントやら色々あり、落ち着いてμ’sのライブを見たことがなかった俺たち。

皆がそんな俺たちに気を遣ってくれた。地味にこういうのは嬉しいんだよな。

 

最初のライブはプリディクション襲撃のとき。

2回目はギャロウ・ドーパントの事件のときか…

 

あの事件で、初めて瞬樹と出会い、そこから仮面ライダーエデンが俺たちの仲間になったんだよな。

あのバカ中二病も、頼れるバカだった。そう思うと、あれから長かったような短かったような…

 

もうすぐライブが始まる。永斗がネットで拡散したこともあり、中々の人だかり。

ファーストライブの光景を思い出すと、なんだか感慨深い。

 

 

 

「全員、起立!」

 

 

人ごみの中から、どこかで聞いたような声が聞こえる。

しかもごく最近聞いた声だ。いや、もう間違いない。おかしいとは思っていた。こんな合法的に音ノ木坂に入れる行事で、やたらと知り合いに会う状況の中、コイツに会わないのは不自然だった。

 

 

 

「これより、我が妹の真姫を含めたμ’sのステージが執り行われる!

総員、踊り歌う女の子たちのために、命を燃やす覚悟はあるかぁぁぁぁ!!」

 

 

人ごみの間から見える赤髪つり目の長身。例によって西木野兄だ。

 

何やってんだ。シスコン拗らせすぎておかしくなったか?いや、もう既におかしかったが。

探偵として、路上で見つけた変態はとりあえず通報するべきだろうか…

 

様子を見ていると、一輝はこの暑い中着ていたローブを脱ぎ捨てる。

すると、中からは「真姫」と書かれたTシャツやうちわ。どっかで見たことある光る棒を持った姿に変貌した。

 

 

 

「μ’s親衛隊No.1!西木野一輝!!」

 

 

一輝の姿を見て、他の観客があからさまに引いてる。よし、考える余地なし。通報しよう。

てか、さっきは誰に叫んでたんだ?こんな変態についてくるような奴って一体…

 

 

 

 

「同じくNo.2!士門永斗!」

 

「同じくNo.3!津島瞬樹!!」

 

 

お前らかいぃぃぃぃぃぃ!!!

 

 

なんでこう、俺の周りには変人ばっかが集まるんだ!永斗はもう平気そうだな!安心したけど腹立つ!

つーか瞬樹はノリノリだ。いつもの竜騎士グッズに加え、花陽の応援グッズで身を包んでいる。

永斗は推しメンが決まらなかったのか、複数人のグッズを同時持ちしている。その姿は戦場に臨む軍人のよう。

 

 

 

……もうだめだコイツ等…これで廃校決まったらマジで殺す。

 

 

 

 

「皆さんこんにちは!」

 

 

 

始まった。ステージには衣装を着た9人。

 

 

 

「私たちは音ノ木坂学院スクールアイドル、μ’sです!」

 

 

 

絵里と希はこれが初舞台。だが、絵里は当然、希もアイツなりに努力してた。何も問題はない。

 

 

 

「私たちは、この音ノ木坂学院が大好きです!」

 

 

 

9人か…最初は穂乃果だけ。突飛で無茶な提案から生まれたμ’sが、まさかここまで大きくなるとは。

俺も永斗も巻き込まれ、1年組、にこ、瞬樹に希と絵里。

 

 

 

「この学校だから、このメンバーが揃い、この9人が揃ったんだと思います!」

 

 

 

誰もここまでやれるなんて思ってなかった。何度も過酷な運命が立ちふさがった。

でも俺たちは、アイツ等は…それを乗り越えて進んだ!

 

 

 

「これからやる曲は、私たちが9人になって初めて作った曲です!

私たちの…スタートの曲です!」

 

 

 

そう。ここがスタートライン。

スタートラインにも壁は俺たちを阻む。だが、いつもと変わらない。

 

壁ならば…超えるだけだ!

 

 

 

 

 

「聞いてください…」

 

 

 

 

 

 

 

僕らのLIVE 君とのLIFE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分全部振り返ったと思います(ドーパントが出た回は)。忘れてたらスイマセン。
やっと終わったオープンキャンパス…書いてるうちに学園祭みたいになったが、俺は気にしない!(いや、スイマセン)

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!















































μ’sのライブが大盛況で幕を閉じ、オープンキャンパスも幕が下りる。

そんな中、組織の幹部 ゼロは校舎の屋上からその光景を眺めていた。




「久しぶりだな。これがお前の学校か…南」


風で黒服をなびかせ、その光景に背を向ける。

振り返ると、そこには白衣を着た男が。だが、天金ではない。彼が身に着けるのは実験用の白衣。この男が着ているのは、まるで医者のようなもの。
顔立ちは若く、整っている。しかし、その顔には医療用の眼帯が。



「奇遇っスね。ゼロも来てたんスか」

「ハイドか…その恰好は紛らわしいと言っているだろう」


”ハイド”と呼ばれたその男は、癖のように自分の肩をかく。


「良いじゃないっスか。これジブンのアイデンティティですし。
あ、さっきラピッドとルーズレスに会いましたよ。他にもウチのと、それ以外にも何人か。
こんなにウチの上位メンバーが揃うなんて、いつぞやの忘年会ぶりっスね」

「そんなことより、奴のことは調べたのか。
お前のメモリの能力と技術を買って、俺はお前をNo3に配置している」

「分かってるっス。期待には答えますから。
さっき彼の記憶刺激してみたところ、バッチシ反応がありました。どうやら”力”は封印されてるようです。記憶と一緒に例の本棚に」

「そうか……」



ゼロは再び学生たちの光景を見下ろす。
そこにはアラシやμ’sの姿も。



「ハイド、アサルトを除く行動可能なエージェント全員に連絡を取れ」



その言葉の意図を察したハイドは「了解っス」と言い残し、屋上を後にした。





「”傲慢”でも”暴食”でもない。
仮面ライダーを…空助の忘れ形見を始末するのは、俺達”憤怒”だ」





その名を示すが如く、ゼロは固く拳を握り締め、眼差しが鋭く変わる。



ライブを終えたμ’sの現在のランクは53。ラブライブまで残りわずか。
しかし………










「我々の計画における最重要人物。
七幹部”怠惰” 士門永斗の奪還作戦を遂行する」






平穏は時として、音を立てて崩れ去る______








第28話 怠惰なるF/平穏の幕引き





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