ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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どもです。146です!
早速ですが、新たにお気に入り登録してくださった
ピスケス23さん カズ トさん オー村さん ハクリさん 三毛猫クロスケさん 風太郎さん トム氏さん ミカエラさん
ありがとうございます!お気に入り登録したのに呼ばれてないって方がいたら、ご指摘をお願いします。

そして……

UA10000を突破しましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

いつも読んでいただいているみなさんのおかげでございます!まさかこうなるまで続けられているとは思わなかった…ここまできたら次は20000を目標に、最後まで書き切りたいと思います!

そんでは、本編どうぞ!


第23話 Vに届け/稲妻運ぶ真実

ーアラシside-

 

 

 

“雷獣”を知っているだろうか。

 

それは、最近噂になっている都市伝説。何の前兆もなく突然現れ、一瞬で去っていくという、身体から雷を放つとも言われている獣の様なもの。それが日本に伝わる妖怪になぞらえ、こう呼ばれている。

実際に目撃した人も多数いるので、存在の信ぴょう性は極めて高い。だが、動きが非常に素早く、現れた際は監視カメラも電流で破壊されてしまうため、その姿を正確に知る者は少ないという。

 

建造物なんかを破壊することもあるらしいが、雷獣による死傷者はいない。

 

一か月前から噂にはなっていたが、最近は特に目撃情報が多い。

昨夜も闇の中、流星のごとく宙を駆けていたらしい。

 

 

 

まぁ、そんなことは今の俺達にはどうでもいいことだ。

 

 

 

「後は残すところ、穂乃果の数学と瞬樹の英語だな…」

 

 

そう、今日で運命の期末テストがすべて返却されたのだ。

部室には瞬樹と穂乃果を除いた8人が揃っている。

現時点のテストの結果は…

 

凛:英語71点

にこ:数学70点

 

と、2人は見事に赤点を回避。それどころか、70点を超えていきやがった。

遊園地の条件に出したが、まさか本当にとるとは思わなかった。どんだけ単純なんだ。

それに加え、永斗が本気出したのが大きいな。もうアイツ、教師とかやって食っていけるんじゃないか?

 

そして俺はというと…

 

現文88点

古典62点

数学71点

科学59点

物理74点

地理80点

英語60点

 

俺も全教科赤点を回避に成功。古典と科学、あと英語は覚えることが多くてキツかったが、テスト範囲に的を絞り、そこだけを学習することにした。逆に現文や地理なんかはそこまで難しくはなかった気がする。

数学はにこに負けたくなかったから、それはもう本気でやった。

結果、1点にこの点数を抜き、見事に勝利した。学年違う上にたかが1点でも勝ちは勝ちだ。

 

 

「…ふぅ」

 

「フッ…呼んだようだな」

 

すると、穂乃果と瞬樹が扉を開け、部室へ。

 

 

「あっ穂乃果ちゃん!瞬樹くんも」

 

「お前らテストは!?」

 

2人が部室に入ると、ことりが声をかけ、つられて俺も本題を聞く。

すると穂乃果は鞄の中を探り出し、テストの紙を取り出した。

 

 

「もう少しいい点数をとれると思ったんだけど…

ジャーン!」

 

 

穂乃果広げたテストには、赤く74点と書かれている。

穂乃果も赤点を無事回避!何気に負けたのがショックなんだが…

 

「これでみんなで遊園地にゃ!」

 

「私が本気出せばこんなもんよ」

 

 

にこが得意げなのがムカつく。お前ギリギリじゃねぇか。

それに、これで3人が遊園地決定…今月の家計大丈夫か……?

 

 

「で、瞬樹は?」

 

問題はコイツ。ほぼ2桁以上をとったことがないと言っていた瞬樹。

全ての命運は、この自称竜騎士にかかっている…

 

 

「いいだろう。刮目するがいい!!」

 

 

瞬樹は答案をバッと両手で広げる。そこには…

 

 

「「「「「「「「「90点!!??」」」」」」」」」」」

 

 

そう、赤ペンで9と0の文字が書いてあった。

あまりに信じられないので、全員が声を上げた後、同時に二度見。

さらに同時に目をこすって確認するが、見間違いではなかった。

 

確かに、花陽に声を掛けられてからの瞬樹のやる気は異常だった。

でも、それだけでこんなになるとは…ていうか、最初からこれだけやればいいのに。

 

何はともあれ、これで全員赤点回避!条件は満たした。

 

 

「よし、理事長に報告だ。まずはスタート地点に立つことができた。

絶対行くぞ、ラブライブ!」

 

俺の言葉で全員の気が高まっているのがわかる。

俺たちは部室を飛び出し、駆け足で理事長室に向かった。

 

ここからだ…ここからμ’sの物語が始まる……

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

「国立音ノ木坂学院は、来年より生徒募集をやめ、廃校とします」

 

 

理事長室に到着した俺たちは、中で生徒会長と理事長が話していることに気づく。

それを聞いていると、突然告げられた無慈悲な宣告。

 

嘘だろ…?俺たちのやってきたことは無駄だったってのか?

 

いや、まだ確信するのは早い。俺たちは話の前後をはっきり聞いていたわけではない。

ここはもう少し話を聞いて、情報を……

 

 

「今の話、本当なんですか!?本当に廃校になっちゃうんですか!?」

「貴方!」

 

 

なんて考えているうちに、穂乃果が飛び出し、理事長に詰め寄っていた。

それに釣られ、ことりと海未も穂乃果に続く。

あのバカ!なんでそう考えもせずに動くか…

 

 

「お母さん!わたしそんなの全然聞いてないよ!」

 

「お願いします!あと一週間!

いえ、あと2日でなんとかしますから!もうちょっとだけ待ってください!」

「落ち着け。無理なこと言ったって現実は変わんねぇよ。

それで理事長、その話、詳しく聞かせてもらえませんか?」

 

俺も理事長の前に出て、穂乃果を落ち着かせる。

理事長に詳細を問い詰めると、理事長は少し戸惑うような様子で、

 

 

「えぇっと…廃校にするといっても、それはオープンキャンパスの結果が悪かったらって話よ」

 

「オープンキャンパス…ってなんだ?」

 

「学校の入学希望者に施設内を公開、紹介し、学校への関心を深めることを目的とするイベントです」

 

俺が海未に尋ねると、少し呆れたような顔になるが、それでも律儀に答えてくれた。

なるほど、そのあとアンケートでも取って、ざっくりした入学希望者数を割り出すってことか。

 

 

「なんだ…それなら…」

 

「安心してる場合じゃないわよ」

 

少し気が抜けた穂乃果に言ったのは、生徒会長だった。

 

 

「オープンキャンパスは2週間後の日曜日。そこで結果が悪かったら本決まりってことよ」

 

そういわれると、確かにそうだ。タイムリミットは実質2週間。決定しているわけではないにせよ、前より状況は比較にならないほど悪化している。廃校寸前の窮地と言ってもいいだろう。

 

 

「理事長。オープンキャンパスのイベント内容は、生徒会で決めさせてもらいます」

 

「…止めても聞きそうにないわね」

 

「失礼します」

 

 

生徒会長は強い口調で理事長にそう言うと、理事長もあきらめたように許可を出した。

その後すぐ、生徒会長は小さく礼をし、部屋から出ていった。

 

残された俺たちと理事長。

このままでは廃校にまっしぐら。俺たちに何ができる?

穂乃果も同じことを考えているようだ。そして、多分思いついたことも同じ。

 

 

「なんとかしてやる!」

「なんとかしなくちゃ!」

 

 

_______________________________________

 

 

 

理事長室を出た絵里。外には腕を組んだ希が。

 

 

「どうするつもり?」

 

 

望みは手元に一枚のカードを取り出し、表面に裏返す。

 

その絵柄は”star”の逆位置。

その意味は、不安、妄信、そして…自己完結。

 

 

「決まってるでしょ…なんとかしないと…!」

 

 

____________________________

 

 

 

「そんな!つまり…どういうことだ?」

 

「私たちには後輩がいないかもしれないってことよ。

ま、私はそっちの方が気楽でいいけど」

 

 

話を理解できない瞬樹と、それを補足する真姫。

真姫もあんなことを言っているが、本心はどうだかわからない。

 

 

「とにかく!今は私たちにできることをしないと!」

 

「できることって…何が…」

 

穂乃果はそう言うが、イマイチ伝わっていないようで、花陽が困惑している。

仕方ない。俺が説明してやろう。

 

 

「具体的に言えばライブだ。次回のライブ用に、テスト勉強と同時進行で作ってた曲と振付があるよな。アレをオープンキャンパスでやって、入学希望者の増加を図る」

 

μ’sの人気は上昇しているとはいえど、まだまだ認知度は低い。

正直、決定打にはならないかもしれないが、それでもやるしか道はない。

 

他の奴らが屋上に向かい、永斗と瞬樹はボトルにポ〇リを準備する中、俺は一人考える。

 

今から知名度を底上げするのは難しい。せめて、見てくれた人たちの記憶に残るぐらい…

素人から見ても”凄い”ってわかるくらいのレベルじゃねぇと…どうすれば…

 

 

「ん?アラシよ」

 

「あ?どうした瞬樹」

 

 

スポーツドリンクの粉を入れていた瞬樹が、困ったような声で俺に話しかけてくる。

 

「スポーツドリンクの粉が切れた。買いに行きたいのだが…」

 

「そんなの一人で…いや、不安だ。俺も行く」

 

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

というわけで、俺と瞬樹は近場のスーパーで粉末スポーツドリンクを買うことに。

残量の管理は永斗のはずなんだが、サボってやがったな……

 

しかも瞬樹が気付いたと知った瞬間に逃げやがって…今日の夕食にはナスを混ぜてやろう。

 

さて、そろそろ到着…

 

 

「あ!アラシ君に…瞬樹君だったっけ?こんなところで奇遇やん」

 

 

なんと希に遭遇。何気に少し久しぶりか。

 

「ん?此奴は何者だ?」

 

「生徒副会長だよ。つーか、なんでこんなとこにいるんだよ」

 

「さっきまで生徒会でオープンキャンパスのことで話し合ってたんだけど、アルパカ見に行った時にエリちが唾を掛けられて、顔を洗ってくるって言ったきり、どこかに行っちゃって、今探してるんやけど…」

 

「お前らがアホなことばっか提案するから、嫌気さして帰ったんじゃねぇのか?

いや、あのプライドだけは高そうな堅物がそんなことするとは…」

 

 

 

それは何が根拠だっただろうか。

 

殺気か、呼吸か、それとも単なる直感か。

 

とにかく俺は、俺とすれ違った男に回し蹴りを放っていた。

 

 

「アラシ君!?」

 

 

驚いた希が声を荒げる。

だが、その男は俺の蹴りを片手でガードしていた。

 

 

「久しぶりじゃねぇか。2週間ぶりか?ラピッド!!」

 

 

そう、完全に気配を消し、人ごみに溶け込んでいたが、

その男は紛れもなく、組織のエージェント ラピッドだった。

 

 

「ファーストの近況報告に思いのほか時間がかかってな

それじゃあ、任務再開と行こうか」

 

 

その瞬間、数名の悲鳴が聞こえたと思うと、

人ごみの中からティラコスミルス変身したルーズレスが、俺たちに飛び掛かった。

 

瞬樹は希を守るように前に立ち、エデンドライバーでティラコスミルスの攻撃を防いだ。

 

 

「アハハッ!誰かと思えば、アタシに負けた銀の仮面ライダーじゃん!」

 

「騎士道に敗北の二文字はない。あと俺は竜騎士だ!!」

 

 

ティラコスミルスは瞬樹に狙いを定めたようだ。

俺は必然的にラピッドとの闘い。上等だ!

 

 

「言ったはずだ。次は本気と」

 

 

《ヴァイパー!》

 

 

ラピッドは蛇でVと描かれた紫のメモリを取り出し、自身の掌に挿入。

 

その姿は、全身を鱗でおおわれ、両手に暗器のような牙を忍ばせた蛇のような異形。

”毒蛇の記憶”ヴァイパー・ドーパントに姿を変えた。

 

俺たちもそれぞれ、ドラゴン、ジョーカーメモリを取り出す。

 

 

《ジョーカー!》

 

《ドラゴン!》

 

 

瞬樹は槍型ドライバーにメモリを装填。

俺は腰に付けたドライバーにジョーカーを装填し、転送されてきたサイクロンを押し込む。

 

 

 

「「変身!!」」

 

 

《サイクロンジョーカー!!》

 

《ドラゴン!!》

 

 

俺はドライバーを展開。瞬樹はトリガーを引き、それぞれダブルとエデンに変身した!

 

 

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!!』」

 

「騎士の名のもとに、貴様を裁く!」

 

 

 

 

_________________________________________

 

 

 

 

 

「1・2・3・4・5・6・7・8!」

 

 

屋上にて。オープンキャンパスに向け、マネージャー不在の中練習に励むμ’sの7人。

 

ここしばらくテスト勉強合宿のため西木野邸に入りびたりだったため、あまり練習をしていなかったのだが、そこまでなまっていなかったようで一同は安心する。

 

 

「おぉ!みんな完璧!!」

 

「これならオープンキャンパスに間に合いそうだね♪」

 

ライブで披露する曲も決まり、部活紹介の時間でライブをすることも決まった。

あとは練習を重ね、本番に臨むだけなのだが…

 

 

「まだです。まだタイミングがずれています」

 

 

満足していないメンバーが一人。海未だ。

 

 

「…分かった。もう一回やろう!」

 

 

海未にダメ出しされるも、穂乃果たちはめげずに再度ダンスを行い…

 

 

「完璧!!」

 

「やっと私の踊りについてこられたわね!」

 

 

今度こそ。と喜ぶ穂乃果と、アラシがいないこともあり、少々調子に乗るにこ。

確かに、今までで一番出来の良かったダンスだったのかもしれない。

 

 

「まだです。まだダメです」

 

 

だが、海未はただ不満そうに否定を続ける。

そんな海未に対して我慢の限界が来た真姫が、海未に詰め寄って声を荒げる。

 

 

「何が気に入らないのよ!言いたいことがあるならハッキリ言って!」

 

すると海未は小さく項垂れ、真姫に一言。

 

 

 

「感動できないんです」

 

 

 

先日、生徒会長との一件の後。

永斗は地球の本棚で、海未は希から、それぞれ絵里の過去を知っていた。

 

7年前、絵里はロシアでバレエのコンクールの賞を独占。

小学生にしてその功績は”神童”と呼ばれるにふさわしいものだったという。

海未は実際に当時の映像を、希からもらっていた。

その実力は、まさしく天と地の差。到底及ばないと実感させられるものだった。

 

今の自分たちに、認められるほどの実力がないのは純然たる事実。

かといって、μ’sも学校を守るために励んでいる。このまま諦めるわけにはいかない。

 

そのために必要なこと…

 

海未は一人、それを確信していた。

 

 

 

______________________________________

 

 

 

ー瞬樹side-

 

 

「ハハハッ!今日はもっと楽しませてくれるんだろうね!」

 

「愚問だな。楽しむ暇もないほど、貴様を圧倒する!!」

 

 

ティラコスミルスが壁を蹴り、瞬間、俺の目の前に。

両腕の爪を槍ではじくも、奴の牙が俺の肩に突き刺さった。

 

 

「グッ…!」

 

俺はぶつかられた勢いに身を任せ、体をひねり、ティラコスミルスを建物の壁に俺ごと衝突させる。

肩から牙が抜け、俺は急いで距離をとった。

 

奴はすぐに体勢を戻し、俺に狙いを定めて構えをとる。

ティラコスミルスは瞬発力はトップクラスと見た。だが、裏を返せばスピード自体はそれほどでもないはず。一撃目をかわすことさえできれば、勝機はある…!

 

いや、違う。騎士ならばここは…

 

 

《ユニコーン!》

 

 

俺はユニコーンメモリを取り出し、オーバースロットに装填。

 

マキシマムオーバーは強力な能力ゆえに、使用時間は個体差はあれど、平均的に数分といったところ。さらに一度使えば、しばらく使用できなくなる。ユニコーンは3日といったところか。

前回は少し前に、あの…マーライオンとやらに使用していた。

ゆえに、前回の戦いでこの猫女に使うことはできなかったのだ。

 

 

《ユニコーン!マキシマムオーバー!!》

 

 

電子音が鳴ると同時に、ティラコスミルスが凄まじいスピードで接近する。

 

だが、その攻撃は我が聖鎧”モノケロスギア”によって完全に受け止められた。

避けられないのなら、正面から迎え撃つ。それこそ竜騎士!

 

能力によって爆発的に上がった腕力で、槍をティラコスミルスに振るう。

攻撃が直撃し、ティラコスミルスは背中を地面で汚しながら吹っ飛んでいった。

 

しかし、勢いが止まるとすぐに立ち上がる。

その眼つきはさっきよりも鋭く、殺気が刺さるようだ。

 

 

「ハハッ!いいよ、久しぶりだね。昔の頃を思い出す戦いは…」

 

 

なるほど。ここからが、本当の”本番”ということか…

 

俺が気を引き締め、槍を構えると

 

 

俺とティラコスミルスの間を、光る物体が通り過ぎて行った。

 

それは獣にも、流星にも似て……

 

 

 

 

________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

ダブルとヴァイパーの戦いは激化していた。

メモリを使ってからも、ヴァイパーのスタイルは蹴り主体。さらに、ヴァイパーは”毒蛇”の意。

当然、毒も使ってくるのだろう。

 

それならば、遠距離で戦えて、尚且つ解毒の可能なルナオーシャンにチェンジ。

ダブルはルナの能力で矢の軌道を捻じ曲げ、ヴァイパーに放っているが…

 

 

「無駄だ」

 

 

死角から放った矢でも、いとも簡単に蹴り落される。

まるで、360度に目があるように。

 

 

「永斗!これじゃ埒が明かねぇ。弾数増やして一気に決めるぞ!」

 

『了解』

 

ダブルの左腕はオーシャンメモリを抜き、かわりにトリガーを挿す。

 

 

《トリガー!》

 

《ルナトリガー!!》

 

 

そして、再びドライバーを展開し、ルナトリガーへとチェンジした。

 

すかさずトリガーメモリをトリガーマグナムに装填。

トリガーマグナムをマキシマム待機状態に変形すると、ヴァイパーに照準を合わせ、引き金を引く!

 

 

「『トリガーフルバースト!!』」

 

 

弾数にして100発以上。空間を埋め尽くす光の銃弾が、あらゆる方向からヴァイパーに一斉攻撃。

まず逃げ場はない。ダークネス・ドーパントのように”存在を消す”能力でもない限り、避けることは不可能に思える。だが、ヴァイパーは落ち着いた様子で回し蹴りの構えをとると

 

炸裂音と共に、銃弾は弾けて消滅。ヴァイパーは攻撃の後の体勢で、悠然と立ったままだ。

 

蹴り落したのか?いや、それにしては速すぎる。銃弾が消えたのは、構えをとってから一瞬だった。

アラシはそんな考えを巡らせるが、ヴァイパーが再び構えをとっていることに気づく。

 

ダブルは慌てて距離をとるため、後方にジャンプ。だが…

 

 

次の瞬間、ダブルの体に激しい衝撃が襲い掛かった。

 

 

「がぁっ!!」

 

ダブルから悶えるような声が漏れ、その体は数メートル先に。

後ろに飛んでいたため、威力を軽減できたが、それでも威力は半端じゃない。

しかも、ヴァイパーとダブルは結構な距離があった。蹴りが届く距離ではない。

 

 

『あのさ、アラシ。ちょっと、言いたいことがあるんだけど』

 

身に起こったことを分析するアラシに、永斗がそんな言葉をかける。

 

 

『コーヌスの件で、有毒生物について調べたときに、蛇についても調べたんだけど…』

「それ詳しく」

 

そんな会話を続けながらも、ダブルは攻撃を受け続けるが、

アラシは永斗の言葉に耳を傾ける。

 

 

『蛇ってのは耳と目が悪い。でも、その代わり味覚と嗅覚、触覚はチート。

皮膚から地面からの振動を感じ取り、敵の足音を確認。嗅覚で敵や空気中の匂いを、舌で空気の振動を感じることができる。更に、”ピット器官”という部分で、周囲の熱で外敵を認識もできる。わかりやすく言えば、生きる高性能レーダーってとこ』

 

なんでそんな大事なこと先に言わねぇんだコイツ。と、文句を言いたい気持ちでいっぱいだったアラシだったが、そんなことをしている間にやられそうだったので、やめておく。

 

それに、アラシはヴァイパーの攻撃の正体も勘付いたようだ。

 

蛇は全身の筋肉の伸縮に長け、骨格も特殊。全身が自在に曲がるように出来ている。

ヴァイパーは回し蹴りの構えの瞬間に、足の骨格をしならせ、ムチのように蹴りを放っている。

ムチは達人が使うと、先端速度は音速を超えるという。ラピッドの蹴りもそれと同等か、それ以上の速さがあるだろう。その上、筋肉を伸縮させることで、距離と範囲も自由自在。

接近して構えの隙も与えなければ、この手は破れるが、その場合腕についた牙から猛毒を撃ち込まれる。

 

ヴァイパーの能力が高性能レーダーなら、メモリの力を最大以上に引き出し放たれる蹴りは、言うなれば射程自在の大砲。そして、毒牙は伏兵。

 

即ち、ラピッド一人で要塞に匹敵する能力を持つことになる。

 

 

タネがわかっても、それは攻略には繋がらない。ヴァイパーは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

ダブルは防御の構えで攻撃に備える。さっきから攻撃を受け続けたせいで、既に変身解除寸前。

これ以上はダメージを受けるわけにはいかない。ダブルは身構え、ヴァイパーは蹴りを…

 

 

 

その瞬間、2人はまばゆい閃光と雷撃音に襲われる。

 

目の前に現れたのは、雷を纏った、いや…

雷が獣人の姿をしたような異形。見た目はオオカミにもイタチにも見える。

その姿はまさしく、都市伝説の”雷獣”。

 

雷獣の()()()を見たダブルは、驚いたように呟いた。

 

 

「背中に…生体コネクタ…?」

『なんかデジャヴ…』

 

そう、雷獣の背中には大きく生体コネクタが刻まれていた。

これは一度見おぼえがある。組織のエージェント部隊 1番手であるファーストことスラッシュ・ドーパントも、右手首から腕にかけて、生体コネクタが刻まれていたのを、ダブルははっきり覚えていた。

 

 

「でたな、”L"。標的変更だ」

 

ヴァイパーは視線を雷獣に向け、両腕の牙で襲い掛かった。

雷獣は強力な雷でヴァイパーを迎撃。だが、ヴァイパーは一瞬ひるんだだけで、すぐに構えをとり、音速の蹴りを放った。

 

しかし、雷獣はその攻撃速度を上回る瞬間速度で、攻撃を回避。

身の危険を感じたのか、雷獣は逃げ出そうとするが…

 

 

「逃がさないよっ!」

 

 

逃げだす方向に先回りしたのは、ティラコスミルス。

向かってくる雷獣に巨大な爪で一撃。予測できなかったのか、モロに攻撃を受けてしまう。

 

ひるんだところに、ヴァイパーがさらに一撃。

雷で反撃は加ええるものの、エージェント部隊の4番手と5番手の連携攻撃に、確実に雷獣は追い詰められていた。

 

 

その攻防の最中、ダブルは完全に蚊帳の外。状況もよく理解できていない。

もう戦闘不能寸前なのだ。雷獣のことも気になるが、あの2人があの謎のドーパントを相手しているうちに、逃げるのがどう考えても得策だ。

そう考え、逃げようとする際に戦いの様子を一瞥したその時。

 

 

 

追い詰められている雷獣の目は、どことなく苦しそうで…

 

 

 

気付けば、アラシはヴァイパーとティラコスミルスに向けて、マグナムの引き金を引いていた。

 

 

『ちょっとアラシ、何やってんの』

 

「わかんねぇ…でも…助けなきゃいけねぇ気がした…!」

 

 

銃弾の接近を察知したヴァイパーは、蹴りでその攻撃を叩き落す。

先にダブルを始末するという結論に至ったらしく、ティラコスミルスがダブルの方へ駆け出した。

 

ティラコスミルスは踏み込むとほぼ同時に、ダブルの目の前へ。

この能力を見慣れていないダブルは、その攻撃を防ぐことができず…

 

 

 

「貴様の相手は俺だ!!」

 

 

攻撃が届く寸前、エデンの槍がティラコスミルスを弾き飛ばした。

時間切れが来たのか、それと同時にユニコーンの鎧が消滅してしまう。

 

 

「いいね!アタシ、そーゆータイプは大好きだよ!

ホラ、アタシも仕事より楽しみを優先するタイプだからさっ!」

 

 

ティラコスミルスは雷獣そっちのけで、エデンに飛び掛かる。

ヴァイパーはかなり呆れながらも、雷獣の相手を続けるが、ダブルは銃弾で妨害。

 

 

「少しは空気ってもんを読めよ。お前の相手は俺たちだ!」

『瞬樹と台詞かぶって嫌なんだけど…』

 

「どいつもこいつも…邪魔をするな!」

 

 

その時、その場にいる全員の動きが止まった。

 

ヴァイパーのセンサーがなくとも分かるほど空気が震え、バチバチと音が聞こえる。

そして、激しく発光する雷獣。

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、放たれた雷撃が全てを蹂躙した。

 

 

 

 

 

 

______________________________________

 

 

 

ー永斗sideー

 

 

 

 

雷撃の痛みが走ると同時に、僕は目を覚ました。

意識が体に戻ったと言った方が正確だろうか。つまり、ダブルの変身が解除されたということだ。

ドライバーをつけている間は、僕とアラシの意識は繋がっている。

 

なるほど…どうやら無事の様だ。僕は安心すると、アラシがドライバーを外したらしく、僕の腰のドライバーも消えた。

 

 

頭が痛むな…変身したときにどっかに打ったか…枕でも用意しておけばよかった。

 

その時、僕はあることに気づく。

目を覚ました場所が公園だったことだ。こんなところで変身した覚えはない。

 

 

「やぁ、目を覚ましたようだね」

 

 

後ろから声が聞こえる。この声、忘れるわけもない。

 

 

「天金……」

 

 

そう、いつぞや僕と凛ちゃんを狙って襲ってきた、組織の最高科学者 天金。

なんで僕の場所が分かったのか、何の用なのかとか疑問はあるが、とりあえず面倒くさい。

 

「君の言いたいことは分かる僕がなぜ場所が分かったのか何の用があるかだね最初の質問としては理由として考えられるのは君の思考からプロファイリングしたかインターネットをハッキングして監視カメラをジャックしたか本当の答えとしては全部違うわけだけどやっぱり確率が高いのは僕の頭脳からして最初の選択肢で間違いないわけだけど偶然会ったていう可能性もあるわけでその場合の確率は……」

 

本当に面倒くさい。

 

 

「まぁ、それはいいとしよう。じゃあ後者の質問の答えだ。

いつまでたっても君たちが何も知らないんじゃ、興が冷めるからね。僕が教えてあげに来たんだ。

知りたいだろう?僕がなぜ君たちを狙ったか、なぜ彼女達がプリディクションの予知を打ち破れたか、さっき君たちが遭遇したドーパントが何なのか。僕たち組織が何を目的としているか…

 

答えはすべて、”オリジンメモリ”にある」

 

 

”オリジンメモリ”

その言葉を聞いた瞬間、僕の脳裏にノイズのかかった映像のような物が浮かぶ。

 

頭が痛い…まるで思い出すのを拒絶しているように……

 

 

 

「教えてあげよう、君が忘れた、この地球(ほし)の真実を」

 

 

 

___________________________________

 

 

その夜。絢瀬宅。

 

絢瀬絵里は一人部屋で頭を抱えていた。

 

オープンキャンパス用に作った原稿を、実際に中学生の高坂雪穂と亜里沙に聞かせたが、その際、亜里沙に…

 

 

「これがお姉ちゃんのやりたいこと?」

 

 

と言われてしまった。

少々堅苦しい文章になってしまったことは感じていた。でも、こんなことを言われるとは思っていなかった。

 

やりたいこと?そうに決まっている。学校を救うことは生徒会長の義務であり、音ノ木坂の卒業生である祖母から託された願いだ。そのために努力を惜しんだ覚えはない。

 

なのに…どうしてこんなにも苦しいのか…

 

 

苦しさゆえか、頭も痛む。

そういえば、放課後からしばらく記憶がない。

 

絵里が腕時計を見ると、その針は数時間前を指していた。

 

 

「故障かしら…?」

 

 

 

 

その様子を、一つの影が窓の外から見ていた____

 

 

 




半分くらい戦闘シーンでしたが、どうでしたでしょうか?
あと、毎回サブタイトルのアルファベットに悩む…関係があるように、それでいて被らないようにですからね……
あと、UA10000記念で何かしたいんですが、何か良い案ありますかね?

次回は、まぁ色々な謎が明らかになり、ハンパないほど詰め込む予定なので、かなり時間がかかることが予想されます。ご了承下さい。なる早で書きますので!!

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!

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